おっさんキヴォトスに行く 作:無い頭のおっさん
スランプ突入中・・・
たすたすたす・・・
【アラバ海岸・ビーチ】
夕方
昼間の強い日差しも、少しずつ柔らかくなってきた
海面には夕日の光が長く伸び
波が、ゆっくりと砂浜へ打ち寄せている
「・・・・・・。」
「綺麗ですねー」
「せやなぁ。」
おっさんとユメは
特に目的もなく、海岸沿いを歩いていた
昼間はあれだけ賑やかだった浜辺も
夕方になると少しだけ静かになる
観光客の姿もまばらになり
聞こえてくるのは、波の音と
遠くから聞こえる人の声くらいだった
「アンラさん。」
「ん?」
「この辺り。」
「ちょっと道が狭くなってますね。」
「せやな。」
海岸沿いの大通りから少し外れた場所
建物と建物の間にある、細い路地のような場所へ差しかかる
その奥から
ふわっと
香ばしい匂いが流れてきた
「・・・・・・。」
ユメが足を止める
「・・・・・・?」
「どうしたんや?」
「今。」
「なんか、いい匂いしません?」
「ん?」
おっさんも鼻を動かす
醤油
バター
そして
焼けたとうもろこしの香り
「・・・あー確かにしよんなー」
路地の先
小さな屋台が出ていた
その前に立っているのは
「・・・・・・。」
見覚えのある四人
ハルナ
アカリ
イズミ
ジュンコ
「・・・・・・。」
おっさんは
一瞬で理解した
(美食研究会やんけ。)
原作で知っている
というより
この四人を見て、気付かない方が難しい
屋台の前には
焼き網
炭火
そして大量のとうもろこし
どうやら今日は
焼きトウモロコシの屋台をやっているらしい
一方
隣にいるユメはおっさんから聞いていて知識で知ってはいるが、
実際に見た事はないので気付かず
「・・・・・・。」
ただ、屋台を見ている
じーっと
「・・・・・・。」
「ユメちゃん?」
「・・・・・・。」
「ユメちゃん?」
「・・・・・・食べたい。」
即答だった
「そらそうなるわな。」
「うん。」
ユメは
焼きトウモロコシを見つめたまま
目を輝かせている
その様子に気付いたのか
屋台にいたハルナが、こちらへ振り向いた
「あら?お客様ですわね。」
優雅な笑顔
「ごきげんよう。」
「美食トウモロコシへようこそ。」
「今日は焼きトウモロコシを販売しておりますの。」
「究極の味を求める私たちが、自信を持ってお勧めできる一品ですわ。」
その横から
アカリが顔を出す
「おっ、いらっしゃいませ~。」
「今日はいっぱい焼いてますよ~。」
「うーん。」
「いい匂いですね~。」
イズミも
「いらっしゃーい!」
「焼きたてだよ!」
「今ちょうど美味しく焼けてるから、絶対おすすめ!」
そして
ジュンコは
「・・・・・・い、いらっしゃい。」
「・・・・・・。」
「べ、別に売りたくてやってるわけじゃないんだからね。」
「ちゃんと美味しいものを食べてもらいたいだけで・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「その。」
「・・・・・・買う?」
ツンとした態度のまま
しっかり客に勧めている
おっさんは苦笑する
(やっぱりこの四人やなぁ。)
「焼きトウモロコシ。」
隣から
ユメが小さく呟いた
「はい?」
ハルナがユメを見る
「そちらのお嬢様。」
「もしかして、焼きトウモロコシがお好きなのかしら?」
「・・・・・・。」
ユメが少しだけ恥ずかしそうにする
「うん。好き。」
「でしたら、ぜひ。」
ハルナが焼き網から一本を取り上げる
表面には
綺麗な焦げ目
そして
その上から塗られた醤油が、炭火でさらに香ばしく焼けている
「こちら。焦がし醤油とバターで仕上げておりますの。」
「・・・・・・。」
ユメの目が
さらに輝いた
「お値段は・・・?」
「一本、こちらのお値段になりますわ。」
提示された値段を見る
「二本ください!。」
「ありがとうございますわ。」
ハルナが微笑む
「では。最高の状態でお渡しいたしますわね。」
アカリが横から
「焼きたてなので、熱いですよ~。」
「火傷しないように気を付けてくださいね~。」
イズミも
「うん!」
「今のが一番美味しい!」
「早く食べてみて!」
ジュンコは
「・・・・・・そ、それじゃあ。」
「どうぞ。」
二本の焼きトウモロコシが手渡される
「ありがとー!」
ユメが嬉しそうに受け取った
おっさんも一本受け取る
「ほな。ありがとうな。」
「こちらこそ。」
ハルナが優雅に頭を下げる
「美味しいものを召し上がる時間。」
「どうぞ、存分にお楽しみくださいませ。」
「行こ、アンラさん。」
「おう。」
二人は屋台を後にした
◇
海岸へ戻る
夕日は
もうかなり低い
空が
橙色から赤色へ
ゆっくりと変わっていく
「いただきます。」
ユメが
焼きトウモロコシを両手で持つ
そして
一口
「・・・・・・。」
止まった
「・・・・・・。」
「どうや?」
「・・・・・・。」
ユメがゆっくり顔を上げる
「美味しい。」
「せやろなぁ・・・」
「・・・・・・すごい。」
「とうもろこし自体が甘いのに。」
「この焦がし醤油が・・・・・・。」
もう一口
「・・・さらにバターまで。」
「これ、反則じゃないです?」
「まぁ。」
おっさんも一口齧る
「・・・うまいな。」
とうもろこしの甘味
香ばしい醤油
そして
バターの濃厚な風味
それぞれが喧嘩するどころか
全部が綺麗にまとまっている
「これは美食研究会名乗るだけあるわ。」
「美食研究会?」
「・・・・・・あ。」
しまった
「なんでもない。」
「・・・・・・?」
ユメが首を傾げる
「・・・・・・?」
まぁ今はええか
二人はそのまま、海を眺めながら
焼きトウモロコシを食べていく
夕日
波
潮風
そして
手の中の焼きトウモロコシ
妙に贅沢な時間やった
やがて、最後の一粒まで食べ終わる
「・・・・・・。」
ユメが満足そうに息を吐いた
「美味しかった。」
「おっさんもや。」
「また食べたいなぁ。」
「せやなー」
「今度はお昼に食べましょうか。」
「おう。」
「・・・・・・。」
その時だった
「ぐぅ~~~~。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
おっさんはゆっくりユメを見る
ユメもゆっくりおっさんを見る
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「ユメちゃん。」
「はい。」
「今。」
「はい。」
「食ったよな?」
「・・・・・・うん。」
「一本丸々。」
「・・・・・・うん。」
「おっさんも一本食ったけど。」
「うん。」
「・・・・・・なんで腹減るん?」
「・・・・・・。」
ユメの顔が見る見るうちに赤くなる
「ち、違います!」
「何がや。」
「これはですね!」
「はい。」
「ちょっと食べたことで!」
「うん。」
「お腹が活性化したんです!!」
「・・・・・・は?」
「だから!」
ユメが慌てて説明する
「少し食べたことで胃が刺激されて!」
「もっと食べられるようになったっていうか!」
「その!」
「・・・・・・。」
「活性化したんです!」
「・・・・・・。」
おっさんは何とも言えない顔になる
「今食ったやん・・・・・・。」
「だから活性化したんですってば!」
「そんな機能あるんか。」
「あります!」
「どこに。」
「私にです!」
「・・・・・・。」
「さよか・・・」
「はい!」
ユメは恥ずかしさをごまかすように
突然、おっさんの腕を掴んだ
「じゃあ!」
「ん?」
「レストラン!」
「・・・・・・。」
「レストラン行こう!」
「お、おう。」
「さぁ!」
「さぁって。」
「早く!」
そのままぐいぐい引っ張られる
「おいおい、ユメちゃん。」
「お腹空いたんです!」
「分かった分かった。」
「行くから!」
「やった!」
「・・・・・・。」
夕暮れの海岸を
二人はホテルへ向かって歩いていった
【アラバリゾート・レストラン】
昼とは
まるで別の店みたいやった
照明は少し落とされ
暖かな光が店内を包んでいる
大きな窓の向こうには
もう暗くなった海
その上に月明かりが細く伸びていた
「・・・・・・。」
そして
ビュッフェの料理も
昼とは完全に様変わりしている
昼間は素朴なゲヘナ料理が中心やった
夜は
明らかに豪華や
分厚い肉料理
香草を使ったグリル
海鮮のロースト
海老
蟹
貝
丸ごと焼かれた魚
色とりどりの前菜
濃厚なスープ
焼きたてのパン
さらに
デザートも
昼より明らかに種類が増えていた
「・・・・・・。」
ユメが
完全に止まった
「・・・・・・。」
「ユメちゃん?」
「・・・・・・。」
返事がない
昼と同じく魂を持っていかれとる
「ユメちゃん。」
「・・・・・・はい。」
「今度は聞こえた。」
「・・・・・・すごいですね。」
「せやなぁ。」
「夜ってこんな豪華になるんですか?」
「ホテルやからな。」
「それにしたって・・・・・・。」
ユメの目が輝く
「何食べよう・・・・・・。」
「悩むなぁ。」
「うーん・・・・・・。」
ユメが真剣に考えている横で
おっさんも
肉料理を少し
海鮮を少し
パンも
そして
昼間気に入った黒パンも追加する
「またそれ取ってる。」
「うまかったからな。」
「ふふっ。」
ユメも
自分の好きな料理を取っていく
もちろん
デザートも
「・・・・・・。」
紫色
触手
(まだ居ったんか・・・)
(というか隣のパンケーキ食われとらんか・・・)
「・・・・・・。」
見なかったことにする
「普通のパンケーキにしよ。」
「またそれなんやな。」
「だって、こっちの方が安心するし。」
「せやな。」
二人で料理を持って
また窓際の席へ。
「いただきます。」
「いただきます。」
まずは
肉料理
「・・・・・・。」
「うまっ。」
昼とはまた違う
香ばしく焼かれた表面
肉の旨味
ユメも
一口
「・・・・・・美味しい。」
「せやろ。」
「これもいいですよ。」
「どれや?」
「こっち。」
ユメが料理を指差す
「これ。」
一口
「・・・ああ、うまいな。」
「でしょ?」
ユメが笑う
海鮮
肉
スープ
焼きたてのパン
そして
昼とは違う
少し贅沢な料理の数々
二人で
ゆっくり食べる
「これ。」
「ん?」
「この海老、美味しいですよ。」
「お。」
「ほら。」
「ほんまや。」
「こっちの魚も。」
「これもええな。」
「昼とはまた味が違うね。」
「夜用に味付け変えてるんやろな。」
「ホテルってすごいですね。」
「せやなぁ。」
「・・・・・・。」
ユメが一口食べるたび
小さく笑う
その顔を見ながら
おっさんもゆっくり料理を口へ運ぶ
「・・・・・・。」
こんな時間も
悪くない
そう思っていた
そんな時だった
ふと、レストランの入口へ視線を向ける
「・・・・・・。」
見覚えのある姿が
2人
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
先生
そして
その隣には――
「・・・・・・ヒナちゃん?」
思わず小さく呟く
ユメも気付いたらしい
「え?、どこ?」
おっさんは視線だけで入口を示す
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
ユメもそちらを見る
そして
「・・・・・・あ。」
小さく口が開いた
「先生ですね・・・」
「せやな・・・」
「その隣、ヒナさんですね・・・」
「せやな・・・・・・」
二人とも
数秒
黙る
先生達は何やら普通に話しながら、レストランの中へ入ってきている
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
嫌な予感が
おっさん達の中で
猛烈な勢いで膨らんでいく
「・・・・・・ユメちゃん。」
「はい。」
「今日。」
「はい。」
「休暇やったよな?」
「・・・・・・うん。」
「絶対。」
「・・・・・・うん。」
「仕事に巻き込まれんようにするって約束したよな?」
「・・・・・・した。」
二人
顔を見合わせる
そして
「・・・・・・。」
ほぼ同時に詠唱を行う
「「【我、陽炎ノ様ニ消エ行ク者】」」
瞬間
二人の姿が
ふっと
空気へ溶ける
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
ユメが小さく囁く
「これで大丈夫?」
「大丈夫や。」
「先生に見つからない?」
「多分。」
「多分なんだ。」
「そこはほら。」
「休暇やし。」
「・・・・・・。」
ユメが
ほんの少し笑う
「なんだか。」
「隠れてるみたいで楽しいですね。」
「楽しいんかい。」
「うん。ちょっとだけ。」
その間にも
先生とヒナは
こちらへ近付いてくる
「・・・・・・。」
先生が
店内を見渡す
ヒナも
何かを探すように周囲を見る
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
おっさんは心の中で
頼むからこっち見んな
そう思う
二人は
特にこちらへ興味を示すこともなく
そのまま奥の席へ進んでいった
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
しばらく待ち
完全に離れたところで
ユメが小さく息を吐いた
「・・・・・・よかった。」
「せやな。」
「危なかったですね。」
「ほんまにな。」
「でも。」
ユメが
目の前の料理へ視線を戻す
「ご飯、冷める前に食べましょうか。」
「・・・・・・。」
おっさんは思わず笑う
「それもそうやな。」
「せっかくの休暇ですし。」
「せや。」
二人は
何事もなかったように
食事へ戻る
「・・・・・・。」
「このお肉、美味しいですよ。」
「お。」
「ほら。」
「ほんまや。」
「こっちの海鮮も。」
「おー。」
「これも、昼とはまた味が違いますね。」
「せやなぁ。」
その向こう
少し離れた席では
先生とヒナが
何やら真面目な顔で話している
けれど
おっさん達は
そちらを見ない
聞かない
関わらない
「・・・・・・。」
(今日は休暇や。)
(何も知らん、何も見てへん。)
「アンラさん。」
「ん?」
「次、何食べます?」
「んー。」
おっさんは料理を見る
「海老いこか。」
「じゃあ私も。」
「おう。」
二人で立ち上がる
気配を消したまま
何食わぬ顔で
ビュッフェへ向かう
その姿は
そこにいるはずなのに
誰の目にも
留まらなかった
それから
しばらく
二人は食べ続けた
肉、魚、海老、蟹、
パン、スープ、デザート
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
そして
ようやく
「・・・・・・。」
ユメが背もたれに身体を預ける
「お腹いっぱい・・・・・・。」
「おっさんもや。」
「今日はいっぱい食べましたぁ・・・」
「トウモロコシも食ったしなぁ。」
「・・・・・・。」
ユメが少し考える
そして
「あ。」
「ん?」
「温泉。」
「温泉?」
ユメの目が
また少しだけ輝いた
「うん。せっかく温泉あるんだし。」
「入りたい!」
「ええやん。」
「行いきましょう!」
「おう。」
ユメが嬉しそうに立ち上がる
「やったー!」
「そんな楽しみなんか。」
「楽しみですよー。」
「ずっと楽しみにしてたので。」
「せやったな・・・」
2人でレストランを出る
そのまま、ホテルの案内に従って
大浴場へ向かった
【アラバリゾート・大浴場】
廊下の先
大きな暖簾が二つ
左右に分かれて掛かっている
片方には
【男湯】
もう片方には
【女湯】
その奥へ進むと
どうやらそれぞれ露天風呂も用意されているらしい
さらに案内板を見る
【露天風呂】
その先
少し離れた場所には
もう一つ
【混浴露天風呂】
という案内まで出ていた
「・・・・・・。」
おっさんは案内板を見た
「・・・・・・。」
そしてユメも見る
「・・・・・・。」
2人
無言
「・・・・・・」
「混浴もあるんですね。」
「あるみたいやな。」
「・・・・・・」
ユメが少しだけそちらを見る
けれど
「普通に男女別で入るか。」
「そうですね・・・」
ユメも素直に頷く
「ほな。また後で。」
「うん、また後で。」
「おう。」
二人は
それぞれの暖簾をくぐった
露天風呂
夜
空には星
風は涼しく
湯は暖かい
「・・・・・・。」
ユメは
湯船に肩まで浸かる
「・・・・・・はぁ。」
思わず
深い息が漏れた
「気持ちいい・・・・・・。」
昼間から歩き回り
食べ
また食べ
そして
ようやく落ち着ける時間
「・・・温泉って。」
「やっぱりいいですね。」
誰に言うでもなく
小さく呟く
そのまま、しばらく
何も考えず湯に浸かっていた
一方、おっさんも
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
湯船に浸かり
静かな夜を眺めていた
「・・・・・・。」
「平和やなぁ。」
今日は仕事らしい仕事もしていない
先生にも見つかっていない
飯も食った
温泉にも入った
「ふぅ・・・。」
(これでええねん。)
たまには、こういう日があっても
ええやろ
しばらくして
二人はそれぞれ大浴場から上がった
着替え
廊下へ出る
「アンラさん。」
「ん?」
「気持ちよかったですね。」
「丁度いい温度やったなー」
「また入りたいです。」
「明日も入ればええやん。」
「・・・・・・。」
ユメが少し嬉しそうに笑った
「そうします!」
2人は
そのまま客室へ戻っていった
【アラバリゾート・スイートルーム】
部屋へ戻る
窓を開ける
バルコニーへ出る
夜風が
海の匂いを運んでくる
二人で椅子に座る
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
静かだった
遠くで
波の音
ホテルの灯り
そして
夜空
「・・・・・・。」
おっさんは
ふと
虚空へ手を突き入れた
「?」
ユメが見る
次の瞬間
何もなかった空間から
一本の瓶が現れる
深い色の液体
まるで
濃い赤紫色のワインのような酒
「・・・・・・?」
「それ、お酒ですか?」
「あー・・・・・・。」
おっさんは少し言葉を濁し
「まぁ、今はもう手に入らへん、幻の酒やな。」
「幻・・・そんなに珍しいの?」
「まぁな。」
「・・・・・・。」
ユメの目が
瓶へ向く
「飲んでみたいです・・・」
「おう、ええで。」
おっさんはグラスを二つ出す
そして瓶を傾ける
とく
とく
赤紫色の液体が
グラスへ注がれる
月明かりを受け
その酒は
不思議な輝きを見せていた
「・・・・・・綺麗ですね。」
「せやな。」
おっさんはそう言うとグラスをユメに渡し
ユメが受け取る
「そんじゃあ、休暇に乾杯。」
「乾杯!」
二人で
グラスを軽く合わせる
そして
一口
「・・・・・・。」
ユメが目を丸くする
「・・・・・・。」
「どうや?」
「・・・・・・ワイン。」
「うん。」
「ワインなんですけど・・・」
もう一口。
「・・・・・・ワインじゃないみたい。」
「おう。」
「もっと芳醇で。」
「濃厚っていうか。」
「味が深い。」
「せやな。」
おっさんは何食わぬ顔で飲む
(そらそうや。)
(血が素材やからなぁ・・・・・・。)
まぁそんな事は言わんけんども
「特殊な製法なんやろ。」
適当に誤魔化す
「なるほど・・・・・・。」
ユメは納得したらしい
そして
また一口
「・・・・・・美味しい。」
「やな。」
二人で
夜風に当たりながら
少しずつ酒を飲んでいく
「今日は。」
ユメが呟く
「いっぱい食べましたね。」
「食ったな。」
「海も見て。」
「焼きトウモロコシも食べて。」
「レストランにも行って。」
「温泉にも入って。」
「・・・・・・。」
ユメが
嬉しそうに笑う
「いい休暇だね。」
「せやなぁ。」
おっさんもグラスを傾ける
「こういうんも悪くない。」
「うん。」
また
一口
そして
また一口
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
気付けば瓶の中身は
少しずつ減っていった
「・・・・・・。」
ユメの頬がほんのり赤くなる
「アンラさん。」
「ん?」
「これ、美味しいですねぇ。」
「せやな。」
「もう一杯!」
「あいよ。」
注ぐ
「・・・・・・。」
また飲む
「・・・・・・。」
そして、さらに時間が経つ
「アンラさぁん。」
「ん?」
「海がぁ・・・・・・。」
「海が?」
「ちょっと、揺れてますぅ。」
「・・・・・・。」
おっさんは海を見る
揺れている
当たり前や
波があるから
「ユメちゃん。」
「はい。」
「海はいつも揺れてるで。」
「・・・・・・。」
「そうなんですかぁ。」
「そうや。」
「なるほどぉ・・・・・・。」
「・・・・・・。」
これは完全に酔っとる
「もう終わりやな。」
「えぇー。」
「お酒はここまで。」
「まだ飲めますよ?」
「その台詞言う奴は大体飲めへん。」
「飲めますぅ。」
「はいはい。」
おっさんは瓶を片付ける
ユメは少し不満そうに頬を膨らませる
「むぅ・・・。」
「でも。」
「ん?」
「今日は、楽しかったです。」
「・・・そらよかった。」
「うん。」
ユメはふらふらしながら立ち上がる
「じゃあ、もう寝ます。」
「おう。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
ユメは自分のベッドルームへ向かう
「・・・アンラさん。」
「ん?」
振り返る
「今日は、ありがとうございました。」
「・・・・・・。」
「色々。」
「・・・・・・。」
おっさんは少しだけ笑う
「ええよ、休暇やからな。」
「・・・うん。」
ユメが嬉しそうに笑う
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
やがて、扉が閉まる
おっさんもバルコニーから部屋へ戻る
夜は静かだった
今日一日の疲れがようやく身体へ戻ってくる
「・・・・・・。」
ベッドへ向かい
そして、そのまま横になる
「・・・・・・。」
目を閉じる
海の音が遠くから聞こえてくる
今日は何もなかった
仕事も、事件も、戦闘も
面倒事も、何も
「・・・・・・。」
(たまには。)
(こういう日も、ええもんやな。)
そう思いながら
おっさんは静かに眠りへ落ちていった
絶賛スランプ!
こういう時は、先のストーリーをかきだして、
テンション上げていくしかない!
気合と根性で頑張る!
ちなみに、今回出て来た先生とヒナの視点ですが、
また後日先生とヒナの夏休みを投稿する予定なのでそっちで書きますね!
あと、ユメちゃんが飲んでいたのは、
ドラゴンブラッドのワインですね・・・
アンラが別の世界で古龍シバき回した時の産物だったりします。
なのでマジで幻の酒で少なくともキヴォトスでは手に入らないかな・・・
まぁそれで言うと前の神酒の方がレアなんですが。