赤血操術の可能性を追い求めたい! 作:甚一くんは…髪と眉毛がアカンわ
申し訳ない……。
「あ゛ーあたまいたい……。」
「はは、昨日は盛大に酔っぱらってたからね。」
ガンガンと頭に響く頭痛に耐えながら森を歩く。今、俺と夏油は任務をこなす為に山奥にいる。本来なら今日は休みだったのだが、緊急の任務が入ったとかなんとかで休日出勤を強いられているのだ。
「休みは消えるし夜蛾先生に怒られるし…今日はもしかして厄日だったりする?」
「いいじゃないか。硝子と一緒のベッドでぐっすり眠ってたんだから。」
「ニヤニヤしてんじゃねえよクズ二号がよぉ…!」
そう、こいつは昨日、家入に絡み酒をされていた俺を気づいた上で無視したのに加え、俺と家入が同じベッドで寝ているところの写真を撮っていたのだ。その写真のせいで五条にも一緒に寝たのがバレた。本当に殴りたい。
「はぁ…。…ん?あれ探してた呪霊じゃない?」
「あ、本当だ。前から思ってたけど、千花って目がいいよね。」
「呪力とか残滓を見るのは苦手なんだけどね。昔から目だけは良かったんだよ。」
雑談をしながら呪霊に近づいていく。これが通常の学生であれば、呪霊への恐怖や緊張で話をするような余裕は無かっただろうが。生憎、夏油は将来の特級なので、そんな感情とは無縁なのである。
「へえ、手足が四本ずつに頭が二つか。強そうだね。ぜひ欲しい。」
「頑張れポケモンマスター。」
この呪霊は奇形児への恐れが集まってできた呪霊らしいのだが、階級で言えば精々三級、つまり夏油なら片手で捻り潰せるくらいの強さなので、俺は後ろで観戦しておくことにする。
案の定、ステゴロでのごり押しで呪霊はボロボロになった。まあ、三分は持っていたので三級にしては強い方だろう。
夏油が手を伸ばして、呪霊を球体へ変え、それを飲み込む─
「夏油、ちょっとストップ。」
のを、俺が止める。
「何か気になることでもあったのかい?」
「そういうのでは無いんだけど…ちょっと一回
怪訝な表情の夏油から呪霊玉を掠め取り、それを昨日の飲み会で使わなかった大きな海苔で巻く。海苔が呪霊玉を包み込んだことを確認してから、俺は夏油に呪霊玉を返却した。
「はい。」
「君は何をしてるんだ???」
何って……呪霊玉を海苔で巻いただけだが?
知っての通り、呪霊玉はクソまずい。マジで。
しかし、どんな味の物体でも舌に触れなければ味はしない。なので、何かで呪霊玉を包めば味が誤魔化せるのでは無いかと前から考えていたのだ。
というのを夏油に軽く説明する。
「いやまあ、その考えはありがたいんだけど…。…というか、なんで君が呪霊の味を知ってるんだい?」
「夏油の顔見てれば大体は想像つくよ。自覚ないかもしれないけど、呪霊玉を飲み込む時、一瞬嫌そうな顔するんだよねお前。」
これはガチ。
夏油は呪霊玉を飲む時、一瞬嫌そうな顔をして躊躇うのだ。まあ、俺のように原作の知識を持っている状態でじっくりと見つめなければわからない程の微々たる変化ではあるが。
昨日の飲み会でわかったのだが、夏油はかなりの健啖家だ。そんな彼が呪霊玉を高頻度で飲み込むのはかなりキツイだろう。それならせめて、味を失くすとまではいかなくても、少しでもマシな味になって欲しいと思う。
「まあ、意味ない可能性もあるから、あんまり気にせずゴクッといきなよ。」
「そんなビールみたいに…。」
少し呆れた目で見られたが、仕方がない。夏油の闇堕ちを回避する為なら、俺の威厳なぞ安い物だ。
今度こそ、夏油が呪霊玉を飲み込む。…効果はあっただろうか?これで効果が無いと呪霊玉の味を改善するんじゃなくて、味覚をバグらせて味を誤魔化す方向にいかなきゃいけなくなるんだが…。
「…………だいぶマシになった……。」
「マジで!?」
マジか!!正直言ってダメ元だったのであんまり期待してはいなかったんだが、成果が出るとは!
「いやあ、よかったね夏油!これからは毎日海苔を持ち歩く様にしなよ!」
「………長年の悩みがこんな方法で解決するとは………。」
複雑そうでウケる。
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「……ってことがあったんだよね。」
「ホントに何してんの?」
家入の冷たい目が突き刺さる。最適解だと思ったんだけどなあ。
「ていうか、そんな問題抱えてたなら言えよ。味覚系の問題は呪具で誤魔化し効くんだから。」
「いや、わざわざ言うことでも無いと思ってたから……。」
夏油も五条に怒られてた。そうか、五条に頼って呪具を使わせてもらっても良かったのか。思いつかなかったな…。
まあしかし、これで闇堕ち理由の一つは消えたっぽいか。
後は非術師への悪感情だけど………。これに関しては今は何もできないので放っておこう。
ある日、母親から電話がかかってきた。
「もしもし。どうしたの、なんかあった?」
「いやいや、なにか問題が起こった訳じゃなくてね?最近、連絡してないから、様子を確かめようと思っただけよ。」
…ああ、そういえば最近はあまり連絡してなかったな。心配をかけてしまって申し訳ない。こちらは大丈夫であることを伝えて、少し雑談をする。
「そういえば、お隣に新しく夫婦さんが引っ越してくるみたいなのよ。」
「あんな場所に引っ越してくる人いるんだ……。」
最寄りのスーパー行くのに三十分も掛かる所だぞ…?田舎では無いので店がないという訳じゃないのだが、立地が悪すぎる。
「珍しい人もいるんだね。その人、何で名前なの?」
「名前はねえ、確か伏黒さんだったかな?」
思わず言葉が出せなくなる。伏黒ってまさか。
「………ちなみに何だけど、伏黒さんの夫って筋肉ムキムキの男の人の男の人だったりする……?」
「え?うーん、引っ越し作業してるのを見ただけだからあんまり自信ないけど、多分そうだったと思うわよ。知り合いなの?」
……いや、まだ確定した訳じゃない。隣に引っ越してきたのは呪術のじの字も知らないボディービルダーの伏黒さんかもしれない。
「わかった。近いうちに一回帰ってくる予定だから、その時に挨拶行ってみるね。」
「帰ってくるの?ならちゃんと連絡してよ。美味しいご飯たくさん用意しとくからね!」
「うん、ありがとう。それじゃあね。」
伏黒甚爾。旧姓は禪院。
呪力を持たない代わりに超人的な身体能力を持つフィジカルギフテッドであり、呪具を使用して呪術師を殺す「術師殺し」だ。
夜蛾先生に頼んで調べたところ、呪詛師としての活動は再開している。しかし、妻や息子をはじめとした家族についての情報は全く出てこなかった。
つまりは。
「まっっったくわからん。」
何もわからない。
しかし、原作の知識を使用すれば予想くらいはできる。
そもそもとして、原作では伏黒甚爾の妻が死んだ正確な日時は示されていない。しかし、描写的に伏黒甚爾が呪詛師としての活動を再開したのは妻の死後だ。そこから推測すると、今はおそらく津美紀の母と生活している頃だろう。
できればこの時点で、呪術高専と敵対しないという縛りを結んでおきたいのだが…妻が死んだ後の伏黒甚爾は自暴自棄の様な状態になっているので、縛りを結ぶのは難しいかもしれない。なんなら呪術師であることがバレた時点で殺される可能性もある。
しかし、怯えて行動せずにいるのは馬鹿のすることだ。それに、まだ『お隣の伏黒さん』が伏黒甚爾かどうかは確定していない。なので、とりあえず実家に帰って顔を見に行くことにしたのだ。
「なんでそんな難しい顔してんの?」
「静かにしときなよ、悟。千花もそういうお年頃なんだ。」
「久しぶりに来たな、ここ。」
何故かさしす組もついてきたが。
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「ただいま。帰ってきたよー。」
玄関から少し大きな声で話すと、リビングの方からパタパタと足音が聞こえる。
「おかえり〜!…あらっ!硝子ちゃんに…新しいお友達かしら?」
「うん、高専でできた友達だよ。名前は…」
「五条悟でーす!千花の親友やってまーす!」
「初めまして、夏油傑です。千花くんにはいつもお世話になってます。」
「あら〜!いい子たちね〜!」
「ごめんね、事前に連絡できなくて…。」
「いいのよ、そんなことよりアンタに友達ができたことの方が大事なんだから!ほら、入って入って!」
「「「お邪魔します。」」」
母さんが「おやつ持ってくるわね!」といってキッチンの方は引っ込んでいく。そのタイミングで、俺は気になっていたことを聞くことにした。
「…で、何でいきなりついてきたの?」
そう、こいつらは昨日いきなり、
「お前、明日実家帰るんだろ?俺らも行く!」
とか言ってついてきたのだ。硝子は俺の親とも交友を持っているからわかるが、夏油と五条はマジでわからん。
「え〜。」
「なんでって。」
「「丁度ヒマだったから。」」
「ぶん殴るぞ。」
このクズどもが…!
拳を握ったところで、タイミング悪く母さんが戻ってくる。クズ二人は何食わぬ顔で俺の部屋のゲーム機を勝手に取り出していた。
「おやつ持ってきたわよー。…何かあったの?」
「いや、何も無かったよ。」
ニッコリと笑顔を作って誤魔化す。母さんは訝しげな顔をしたが、スルーしてくれた。
「そう?それならいいけど。私、今から晩御飯の材料買いにスーパー行くから、留守番頼んでいい?」
「おっけー。」
母さんが家を出ると、比較的大人しかった*1五条が急に荒ぶり始めた。
「なあ、千花の部屋のエロ本探そうぜ!」
「いいね、千花の性癖を暴露しよう。」
「やめろ馬鹿ども。」
油断も隙もないなこいつら。
「千花のエロ本は勉強机の二重底になってる引き出しに入ってるぞ。内容は女攻めのやつだった。」
「家入!?!?!?何で知ってんの!?!?!?」
「なんだ、もう硝子とは呼んでくれないのか?酔った時はあんなにいっぱい呼んでくれたのに。」
「」
ああ、なんて新鮮なインスピレーション…!これが……
(社会的な)死か!!
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人権の消滅を感じて死にかけていると、家のチャイムが鳴る。ナイスタイミング!
「……ちょっと応対してくる。」
そそくさと玄関に逃げて、ドアを開く。
「はーい。」
「あっ、如月さんですか?引っ越しのご挨拶に来たんですけど…。」
息が止まる。何故なら、今目の前に立っている夫婦と、その後ろにいる子供が、見覚えのありすぎる見た目をしているからだ。
女性の方は、ウニのトゲの様に跳ねた癖っ毛に、優しそうな顔立ち。
男性の方は、服を着ていても隠しきれない筋肉と、口元についた傷跡が目を引く。
そして子供は、女性に似たウニの様な癖っ毛に、男性に似た顔立ちをしている。
俺の目の前にいるのは、間違いなく伏黒夫婦とその子供、伏黒恵だった。
それも、妻が生きている状態の。
如月千花 性癖が若干M寄り。思考回路が若干変だったりする。
家入硝子 千花のエロ本は中学二年生くらいで見つけた。ちなみに酔っ払った千花に下の名前で呼ばれていたのは事実。
五条悟 クズ一号。学生の時の五条の性癖はなんかピュアそうなイメージがある。
夏油傑 クズ二号。夏油の性癖はなんかエグそう。顔もえっちな感じだし。
いつの間にか評価バーに色がついておりました…!
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