赤血操術の可能性を追い求めたい! 作:甚一くんは…髪と眉毛がアカンわ
学校の関係上、今まで以上に不定期な投稿にはなりますが、見ていただけると嬉しいです。
おかしい。
今、伏黒甚爾の妻が生きているのは、明らかにおかしい。
本来、伏黒甚爾の妻は伏黒恵を産んでからすぐに亡くなったはずだ。しかし、俺の前には伏黒恵と手を繋いだ伏黒甚爾の妻の姿がある。どういうことだ……?
「あの…大丈夫ですか?」
黙り込んだ俺を気遣う様に伏黒甚爾の妻が話しかけてくる。そうだった、今は会話中なんだった。
「ああ、すみません。ご丁寧にありがとうございます。…そういえば、どうして引っ越し先にここを選んだんですか?私が言うのもなんですが、ここはあんまり立地が良くないと思うんですけど…。」
お礼を伝えるついでに、ずっと気になっていた事を聞いてみる。伏黒甚爾が呪詛師の活動を再開しているなら、金に困っている訳ではないだろう。なのにも関わらず、ここに引っ越す理由がわからなかったのだ。
「ああ、最近、あまり体調が良くなくて…。病院に行っても原因がわからなかったので、ちょっと街から離れて療養しようと思っていたんです。それで、自然が多くて人が少ないここに引っ越してきたんです。」
「なるほど…。」
体調が優れないということは、もしかしたら亡くなる寸前なのかもしれない。
さて、ここからどうしようか。正直、俺が一番コミュニケーションを取りたいのは伏黒甚爾なのだが……今のところ、伏黒甚爾は一言も言葉を発していない。多分、喋る気もないだろう。
うーん、何かしら伏黒甚爾が反応しそうな会話はないかな…。
一人で頭を捻っていると、唐突に背後でドアが開く。振り向くと、何故か五条が玄関に来ていた。
空気が張り詰める。伏黒甚爾は明らかに五条を警戒している様子だった。やべえ、どうしよう。とりあえず五条には戻ってもらわなくては。
「どうしたの五条。トイレはこっちじゃ「ちょっと静かにしてろ。」…?」
俺の言葉を遮って、五条はサングラスを外した状態で、伏黒甚爾の妻を凝視している。伏黒甚爾の警戒度がどんどん上がってるから早く帰ってほしい。
「…おい、何のつもりだ?」
敵意を滲ませ始めた伏黒甚爾が、唸る様に口を開く。怖すぎて胃に穴が開きそうだ。
伏黒甚爾の威嚇すらも完全に無視していた五条が、伏黒甚爾の妻を見たまま、唐突に口を開いた。
「アンタ、呪われてるぞ。このままじゃ死ぬ。」
空気が凍る。伏黒甚爾の妻と伏黒恵は困惑しているし、伏黒甚爾はその言葉を聞いた瞬間、殺気をこちらに飛ばしてきた。
正直なところ、俺も困惑している。いくら呪力探知が苦手な俺でも、この距離まで近づけば呪いの気配を見逃す事はない筈だ。
しかし、五条が嘘を言うとは思えない。そんなことをしても五条には利益が無いからだ。しかも、こいつは六眼を持っている。なら、見間違えという線も薄い。
「……五条。それは事実なんだな?」
念の為に確認すると、五条は頷いた。ならば、やるべき事は一つだろう。
「一つ、縛りを結びませんか。
その名前を口にした瞬間に、俺たちに向けられる殺気が膨れ上がる。
ピリピリと肌を刺す殺気に耐えながら、言葉を紡ぐ。
「縛りの内容は、『私たちはあなた達を傷つけず、嘘をつくこともしない。その代わり、この場で戦闘を始めない。』…以上です。」
「…目的は何だ。」
「もちろん、呪霊の祓除ですよ。我々は呪術師ですから。」
…言ってから思ったが、この発言は逆効果じゃないか?伏黒甚爾は禪院家で迫害されていたのだから、呪術師にいい印象を持っているわけがない。やらかしたか…?
「……いいぜ。縛りを結んでやる。」
よかったぁぁぁぁ!!!
ここで断られてたらもうどうにもできなかった。何ならこの場所で戦闘を始められる可能性もあったし。正面から戦えば人数差で俺たちが有利だっただろうが、この人なら一旦引いて、一人一人を闇討ちするくらいのことはしてきそうだから、絶対に敵対したくなかったのだ。
「それで、お前らはどうやって呪霊を祓う気だ?」
「うーん…五条、この人に憑いてる呪霊は何級くらい?」
「戦闘力だけなら弱めの二級くらいだな。でも五感と呪力を誤魔化す術式を持ってるから、それも含めたら一級。」
「じゃあ、家入の反転術式でぱっぱと祓っちゃうか。五条、家入呼んできてくれない?」
「オッケー。」
一度リビングに戻って行った五条を見届けて、伏黒一家に現状を軽く説明する。伏黒甚爾の妻と伏黒恵はあまり理解できていない様子だが、伏黒甚爾が理解できてればいい。
祓除は結構アッサリと終わった。この呪霊は隠れることに特化している分、戦闘力は皆無だった様だ。家入の反転術式から逃げようとして伏黒甚爾の妻の体から出てきたところを夏油が一瞬で呪霊玉に変えていた。弱い。
「本当に助かった。妻を助けてくれてありがとう。」
伏黒甚爾がすごく丁寧なお辞儀をしてくる。イメージと合わなすぎる…!
心の中の
「頭を上げてください。気にしなくていいんですよ、これも私たちの仕事ですから。」
夏油が伏黒甚爾に向かって言う。助かった…!今回の俺は何もしていないので、頭を上げてくれとは言いづらかったのだ。何もやってない奴が言うセリフではないからね。
「何か礼をしたいんだが…」
「あ、じゃあ天の逆鉾ください。」
キタ!!正直なところ、今回この家族を助けたのはこれが欲しかったという部分もある。術式の強制解除とか不安要素すぎる。万が一、羂索の手に渡ったら何をされることか…。
「…あー、いや…。」
ん?なんかすっごい口ごもってる。
「…俺、ほぼ全部の呪具売っぱらったんだよ。今持ってるのは釈魂刀くらいで…。」
は???
何でも、感覚で妻の状態が本人の認識以上に悪いことを悟っていたため、妻の体調を治すために呪具を金に変えて、様々な病院を巡っていたらしい。
頭を抱える俺を気まずそうに伏黒甚爾が見ている。
……まあ、売ってしまったものは仕方ない。理由も理由だし。ひとまず、高専と敵対しない縛りを結んで帰ってもらった。
にしても、今回は運が良かったな。多分五条がついてこなかったら俺は呪霊を発見できてないし、家入と夏油がいなかったらあんなに簡単には祓えなかった。俺の術式だとどうしても殺傷力が高すぎて、伏黒甚爾の妻に致命傷を与える可能性があったから。
…ふう。今できる事は大体片付けたし、そろそろこっちの問題も考えなければならない。
この…加茂家からのお呼び出しについてだ。
俺がこの問題についての相談相手に選んだのは五条だ。理由は、俺たちの中では一番呪術界についての知識が多いからである。
「加茂家からの呼び出しぃ?んなもん無視しとけばいいだろ。」
五条が心底面倒そうに言う。正直、俺も無視したいところなんだが……
「遠回しに脅しをかけられてるんだよねぇ…。」
『どうしてウチの相伝を持ってるのか気になるからウチに来てね!拒否したら君の親族や友達に危害を加えるよ!』
呼び出しの手紙の内容は大体こんな感じだった。つまり、俺がこれを拒否すると両親にも家入や夏油にも迷惑が掛かるということだ。一般家庭出身の二人は後ろ盾がないので、こういう問題を持ち込むのは避けたい。
「…いかにも御三家の老害が考えそうな話だな。」
「だから取り敢えず、呼び出しには応じようと思ってるんだけど…どんな話をされるのかがわからないんだよね。予想できたりする?」
「十中八九加茂家の人間になれって言ってくるぞ。今のあいつらは必死だからな。」
ああ、そういえば今の加茂家には相伝を持った術師がいないのか。そこに後ろ盾も何もない赤血操術持ちが生えてきたと…。
必死になって俺を取り込もうとする訳だ。加茂家にとって俺は、現状を手っ取り早く打破できる最高の人材なのだろう。
「どうしたもんかな…。」
「……お前、いつ加茂家行くんだよ。」
「ん?えーと、三日後かな?」
「俺も付いてくわ。」
「は?」
「お待ちしておりました。如月千花様。………そして、五条悟様。こちらへどうぞ。」
マジでついてきやがった…。こいつ最近ついてきすぎだろ、家にも来たし。ピクミンかこいつは。
お出迎えの人の言い方から五条に対する本当に帰ってほしいという感情が読み取れる。ちょっと面白い。
「こちらで当主様がお待ちです。」
「ありがとうございます。」
一応お礼を言っておく。礼儀は大切だからね!
襖を開けて室内に入る。その中には、白髪混じりの初老の男性が座っていた。
見たところ、さして強いという訳では無さそうだな…。
「良く来てくれた。私は当主の加茂
「ご丁寧にどーも。こっちの自己紹介は省略していいよな?どうせ熱烈なラブレター送ってくるくらいに知ってるんだろ。」
五条の挑発に、道源が眉をピクリと動かす。沸点低いな、こんなの挨拶代わりの煽りだろ。こんなんで怒るなら俺たちのクラスでは生きていけないだろう。
「…ああ、そうだな。自己紹介は省略して、本題に入ろう。─君を呼んだ理由は、お見合いを申し入れたかったからだ。」
………???OMIAI?お見合い!?!?何で!?!?
…いや、良く考えたらそうなるか。相手は俺を加茂家に引き込もうとしているのだ。相手側からすれば、一番楽に引き込む方法は、家の誰かと婚約を結ばせる事なのだろう。
戸籍を改竄する必要もなければ、親族との交渉にもあまり手間が掛からない。少なくとも『子供を売ってください』なんて交渉よりは楽だろう。
「どうして君に発現したのかはわからないが……君が持つ術式は、我が加茂家に代々伝わるものだ。故に、君を加茂家に招きたい。もちろん、相手は君が選んでくれて構わない。」
ふむ…。魅力的な提案ではあるな。俺の強さならば、恐らく次の当主の座は約束されるだろう。自慢じゃないが、俺はなかなか強いのだ。そして、当主になれば上層部に干渉することのできる権力や、莫大な資産を手に入れることもできる。
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。」
まあめんどくさいから断るんだけどね。そりゃ結婚はしてみたいが、御三家に所属するデメリットがデカ過ぎる。
「…何故だ?」
「こちらに利がないからですよ。金に困っている訳でもありませんし、権力が欲しい訳でもないのですから、加茂家の立場は私にとって足枷にしかならない。」
ハッキリと言って聞かせる。これで諦めてくれるといいんだが…。
「だが「だがじゃねーんだよ。」…なんだと?」
これまで沈黙を保っていた五条が、唐突に口を挟む。
「本人が断ってるんだから、大人しく諦めろ。それとも、お前は俺の目の前でこいつを脅すつもりか?」
あ、なるほど。五条がついてきた理由は話を早めに終わらせるためか。
確かに、五条の前で脅しを掛ければ、五条家に加茂家を攻撃する大義名分を提供することになる。。こいつがいる以上、加茂家は俺を大人しく解放するしかない訳だ。それに、この後に俺の周辺に危害を加えようもんなら、全力で五条が加茂家を叩くだろう。
「お話はこれで終わりでしょうか?でしたら、私たちは失礼します。」
「…………わかった。すまなかったな、忙しいところを呼びつけてしまって。」
正直なところ、俺も帰りたいので会話を終わらせる。「何が『すまなかった』だ。心にもないくせに…。」何で五条の声が聞こえたのは気のせいということにしよう。
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帰り道で、五条に礼を伝える。
「助かったよ、五条。ありがとう。」
「おー。今度なんか奢れよ。」
「はは、喜んで奢らせていただきますよ。」
本当に五条の存在はありがたかった。俺一人じゃどうやって断るかわかんなかったし。
あー疲れた。…というか、結局俺の術式はどこから遺伝したんだろうな。加茂家からしても俺の存在は予想外だったみたいだし。
まあいいや。深く考えることでもないだろう。
如月千花 伏黒妻の救出の際はあんまり役に立たなかった。実は加茂家からの呼び出しを二回ほど無視している。
家入硝子 伏黒妻の救出のMVP。この人がいなかったら呪霊の祓除の負荷に耐えられずに伏黒妻が死ぬ可能性があった。
五条悟 MVP②。この人がいなかったら伏黒妻は死んでたし、千花は一日中加茂家に拘束されてた。
夏油傑 MVP③。伏黒妻に負荷が掛からないように爆速で祓除を終わらせた人。