内務局員アンナはお掃除をがんばります!   作:朝日橋立

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十二話め 面白い人です!

 第二分隊の中で一番単純な人というと、レフ・カラーモフさんだろうと思う。

 実際彼とはあんまり話したことがない。

 彼に価値がないというと、たぶん嘘になってしまうんだけど、優先的に関わる必要性には欠けていた。

 しかし、彼自体には疑いの目を向けていることは、嘘偽りのないことだった。

 

 さて件の青年カラーモフさんであるが、彼は目前で暇そうに教科書を眺めている。

 

「数学の予習ですか?」

 

 目があった。

 怪訝そうに顔を顰めた。

 ……全く失礼だ。

 

「数学に不安がある感じですか?」

 

「……ない」

 

「ええ、本当ですか?」

 

 何とも嘘っぽい言葉を疑う。

 彼の実際の成績は知らないが、凄惨だとは聞いたことがない。

 

「私が勉強を見ても良いですよ。これでもこの分隊だと、一番か二番には勉強ができる自信があります!」

 

 根拠のない自信なのだけど、教鞭を振るえる自信自体はあった。

 再び目が合う。少し先程よりは目が開いている。

 

「問題はないんだが」

 

「ああ、えっ?」

 

 呆れたような言葉に、こちらが戸惑ってしまう。

 仮に先程の言葉が真だとすると、あの間は何だったというのか……。

 少し苦手な人かもしれない。

 

「暇をつぶせそうと思ったのに、残念です」

 

 はあ、と溜息を吐くように言う。

 カラーモフは教科書を閉じ、こちらに差し出した。

 

「それじゃあ教えて貰おうか」

 

「ええ、ええ、よかろうというものです」

 

 

 

 *

 

 

 

 レフ・カラーモフ自体について、特段評価を変えるべき出来事はなかったと思う。

 彼が有能か無能かというと、どちらかというと確かに有能ではある。

 しかし、彼が内務局の同僚であるならば、何かにかこつけて排除していた可能性が高い。

 だって、私が反革命の方に居たら絶対に利用するもん。

 

 理解力があることは認める。

 けど、如何せん応用力がないよね。うん。

 

 ……ああ、でも彼自体は有用かもしれない。

 価値がないという評を改めるべきだろう。

 

「教えるの上手いな」

 

 カラーモフさんがそのように言った。

 あんまりそのような実感はなかったが、褒められたことは純粋に受け入れることにした。

 

「ありがとうございます。でも、カラーモフさんが凄いだけですよ」

 

 さて、一体彼をどのように利用すべきだろうか。

 まだ私は完璧に彼を制御できるとは限らないが、まあ大丈夫だろう。

 

「私あんまりカラーモフさんと話したことなかったですけど、本当に面白い人ですね」

 

「まあ、そうだな。俺は別の分隊の方に仲がいい奴が多いし」

 

 近頃気になる噂を聞いたことがある。

 ある人達が不法な通信機を持っていると。

 現実にそうだ。内務局との通信のノイズが多すぎた。

 

 しかし、これで外との交流経路を得た。

 

「そうだとしてもです! これからはよろしくお願いしますね」

 

 差し出した手を、彼は確かに握った。




沢山お休みをいただいてますが、お気に入りなどたくさん増えていてありがたいです。
投稿頻度は増やしていく所存です。
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