内務局員アンナはお掃除をがんばります!   作:朝日橋立

16 / 16
十四話め お茶会というものですよ!

「ねえねえ、アンナちゃん」

 

 呼ぶ声に顔をあげる。

 少し眠たそうにしてる顔があった。

 

「どうかしました? マルファさん」

 

「ここちょっと教えてもらいたくって」

 

「ああ、えっとそこはこうですね」

 

 少し端っこにメモを取って示した。

 段々と寒さが辛くなってきたこの頃は、勉強ばかりをしていた。

 

「はあ、ちょっと疲れちゃったね」

 

 マルファさんが息を吐いた。

 突っ伏した彼女を見て、私も教科書を閉じた。

 

「確かに少し疲れましたね」

 

「何時間目だろう」

 

「うーん、そうですね。14時頃からですから、4時間前後ですね」

 

「そりゃあ疲れちゃうよ」

 

 そんな彼女を笑いつつ、確かに疲れたと天井を見上げる。

 もう少し先で学科試験があるのだが、マルファさんがその対策をしようと言い出したのだった。

 あんまり勉強をしなくてもいけそうなものなのだが、どうしてもということで付き合っていた。

 

 はあ、と息を吐く。

 そして顔をあげると、見知った顔と目があった。

 

「やあやあ諸君、諸君」

 

 このように声を挙げ近づいてきたのはケーレルさんだった。

 彼はすぐ隣に腰を掛けた。

 長椅子はあんまり長くはないが、しかしというものである。

 

「勉強やってるのかい?」

 

「うん、ちょっと私が不安でね」

 

「ほう、ところで菓子を持ってきたんだけど、食べない?」

 

「あっ、食べたいです」

 

 さて、そうしてケーレルさんはクッキーを出した。

 あっ、これは内務局時代に好んでいたものだ。

 センスがいい。

 

「あっ、おい。カラーモフ!」

 

 ケーレルさんが少し声を張った。

 

「何やってんだ?」

 

「茶入れてよ、菓子やるから」

 

「はあ? まあ良いが。手伝えよ、お前も」

 

「そこにドミトリー少年がいるぜ」

 

 ジェーヴシキンさんに指が向けられた。

 ずっと本を読んでいた彼は、やっとこちらに視線を向けたようだ。

 

「邪魔なんだが」

 

「あっ、それじゃあ私が淹れるよ。だからおいでよ」

 

 マルファさんがカラーモフさんとお茶を淹れに行くのを見つつ、ジェーヴシキンさんの方に視線を向けた。

 彼は依然として納得していない様だ。

 

「良いじゃないですか。お茶しましょ、お茶」

 

 どうにも顔を顰められてしまった。

 以前から変わらずに、嫌われているようだ。

 

「ずっとそうしてると、少し疲れるでしょう」

 

「疲れない。この程度では」

 

「ええ、でも良いじゃないですか。息抜きです。そうした方がこの後も集中できますよ」

 

 さて、今のところこのように分隊で仲良くやろうという流れは、存在していなかった記憶がある。

 そのためにというべきか、あるいはやはりというべきか、いまだ彼らに対して正しい認識を持てているつもりはない。

 端的に言えば、この流れに巻き込んでしまおうと思ったのである。

 

「何読んでるんだい、少年よ」

 

 ケーレルさんがそのように絡みに行ってるのを見た。

 ……ところで、彼はこのようなわざとらしい話し方をする人だったろうか?

 疑問は残るが、しかしひどく陽気な日なのだろう。

 

 はあ、とやはり溜息を吐いたのはジェーヴシキンさんであり、しかし予想外に本を閉じたのも彼であった。

 

「お待たせ」

 

 マルファさん達が持ってきたお茶を飲み始め、やっとケーレルさんに疑問を呈した。

 

「ところでどうして突然に?」

 

「先輩殿から貰ったんだよ。媚び売っててよかったよかった」

 

 へえ、と少し感嘆した。

 あんまりそういった人の印象はなかったが、どうやら演技派らしい。

 

「あっ、今の言わないでよ、怒られちゃうしさ」

 

「うーん、そうですね……。どうしましょうかね」

 

「交渉だ。これを一個やろう」

 

 いえーい、と受け取った。

 ジャムの乗ったものだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

いや、死神とか聞いてないし(作者:おおは)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

死神少女にTS転生してしまった一般人。▼本人はただの下っ端役職だと思っている。▼だがそんなはずもなく。▼8月中に更新いたします▼(カクヨムにも載せてます)


総合評価:3678/評価:7.8/連載:11話/更新日時:2026年06月21日(日) 20:03 小説情報

転生したら竜だったので、とりま竜種目指しまっす!(作者:遊燐千)(原作:転生したらスライムだった件)

▼突如車の交通事故に巻き込まれて死んでしまった童貞アラサーこと、竜田水生。▼次に目を覚ましたとき…なんと!!!立派な竜になってしまっていた!▼しかも、転生した世界はあの転生したらスライムだった件の世界…、せっかく竜になったんだから最強の竜種とか目指して、あわよくばリムルの仲間に入れてもらいたいなぁ…。▼なんて願いを抱く主人公の転スラ世界ライフです。▼※オリス…


総合評価:447/評価:7.73/連載:16話/更新日時:2026年08月16日(日) 03:00 小説情報

TS転生したら人類の敵だった(作者:生しょうゆ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

私の名前は伊藤桜。前世の記憶がある女子高生!▼そんな私はある日、自分の家族を惨殺し、この世界に原作があることを知ったのだった。▼この作品はカクヨムにも投稿しています。


総合評価:5454/評価:8.41/連載:29話/更新日時:2026年06月11日(木) 01:42 小説情報

転生先がゴブリンだった。(作者:ひまなめこ)(原作:転生したらスライムだった件)

地球と言う星の日本と言う国にある青年がいた。▼作中では生前の名前が明らかになることのないモブオブモブの平凡な男。▼そんな彼はある日突然目を覚ましたら、ジュラの森と言う広大な森林のある小さな集落でゴブリンの村長(後のリグルド)の娘として転生していた。▼彼にはチートと呼ばれる者は無かった。▼厳しいジュラの森の環境によって次々と死んでいく仲間達を見て、自分の弱さを…


総合評価:864/評価:8.29/連載:11話/更新日時:2026年05月19日(火) 21:46 小説情報

TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ(作者:SIS)(オリジナル現代/ホラー)

SAN値直葬系マスコットとそれを心から愛する転生者(正気)の日常。▼※序盤とタイトルを書き直しました。▼気分転換に書いた作品を投稿欲を満たすために投稿してみます。▼続き書いたら増えます。


総合評価:2875/評価:8.54/連載:45話/更新日時:2026年08月20日(木) 07:34 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>