内務局員アンナはお掃除をがんばります!   作:朝日橋立

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十四話め お茶会というものですよ!

「ねえねえ、アンナちゃん」

 

 呼ぶ声に顔をあげる。

 少し眠たそうにしてる顔があった。

 

「どうかしました? マルファさん」

 

「ここちょっと教えてもらいたくって」

 

「ああ、えっとそこはこうですね」

 

 少し端っこにメモを取って示した。

 段々と寒さが辛くなってきたこの頃は、勉強ばかりをしていた。

 

「はあ、ちょっと疲れちゃったね」

 

 マルファさんが息を吐いた。

 突っ伏した彼女を見て、私も教科書を閉じた。

 

「確かに少し疲れましたね」

 

「何時間目だろう」

 

「うーん、そうですね。14時頃からですから、4時間前後ですね」

 

「そりゃあ疲れちゃうよ」

 

 そんな彼女を笑いつつ、確かに疲れたと天井を見上げる。

 もう少し先で学科試験があるのだが、マルファさんがその対策をしようと言い出したのだった。

 あんまり勉強をしなくてもいけそうなものなのだが、どうしてもということで付き合っていた。

 

 はあ、と息を吐く。

 そして顔をあげると、見知った顔と目があった。

 

「やあやあ諸君、諸君」

 

 このように声を挙げ近づいてきたのはケーレルさんだった。

 彼はすぐ隣に腰を掛けた。

 長椅子はあんまり長くはないが、しかしというものである。

 

「勉強やってるのかい?」

 

「うん、ちょっと私が不安でね」

 

「ほう、ところで菓子を持ってきたんだけど、食べない?」

 

「あっ、食べたいです」

 

 さて、そうしてケーレルさんはクッキーを出した。

 あっ、これは内務局時代に好んでいたものだ。

 センスがいい。

 

「あっ、おい。カラーモフ!」

 

 ケーレルさんが少し声を張った。

 

「何やってんだ?」

 

「茶入れてよ、菓子やるから」

 

「はあ? まあ良いが。手伝えよ、お前も」

 

「そこにドミトリー少年がいるぜ」

 

 ジェーヴシキンさんに指が向けられた。

 ずっと本を読んでいた彼は、やっとこちらに視線を向けたようだ。

 

「邪魔なんだが」

 

「あっ、それじゃあ私が淹れるよ。だからおいでよ」

 

 マルファさんがカラーモフさんとお茶を淹れに行くのを見つつ、ジェーヴシキンさんの方に視線を向けた。

 彼は依然として納得していない様だ。

 

「良いじゃないですか。お茶しましょ、お茶」

 

 どうにも顔を顰められてしまった。

 以前から変わらずに、嫌われているようだ。

 

「ずっとそうしてると、少し疲れるでしょう」

 

「疲れない。この程度では」

 

「ええ、でも良いじゃないですか。息抜きです。そうした方がこの後も集中できますよ」

 

 さて、今のところこのように分隊で仲良くやろうという流れは、存在していなかった記憶がある。

 そのためにというべきか、あるいはやはりというべきか、いまだ彼らに対して正しい認識を持てているつもりはない。

 端的に言えば、この流れに巻き込んでしまおうと思ったのである。

 

「何読んでるんだい、少年よ」

 

 ケーレルさんがそのように絡みに行ってるのを見た。

 ……ところで、彼はこのようなわざとらしい話し方をする人だったろうか?

 疑問は残るが、しかしひどく陽気な日なのだろう。

 

 はあ、とやはり溜息を吐いたのはジェーヴシキンさんであり、しかし予想外に本を閉じたのも彼であった。

 

「お待たせ」

 

 マルファさん達が持ってきたお茶を飲み始め、やっとケーレルさんに疑問を呈した。

 

「ところでどうして突然に?」

 

「先輩殿から貰ったんだよ。媚び売っててよかったよかった」

 

 へえ、と少し感嘆した。

 あんまりそういった人の印象はなかったが、どうやら演技派らしい。

 

「あっ、今の言わないでよ、怒られちゃうしさ」

 

「うーん、そうですね……。どうしましょうかね」

 

「交渉だ。これを一個やろう」

 

 いえーい、と受け取った。

 ジャムの乗ったものだった。

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