レジスタンスを探すといっても、何か堂々と動くことは出来ない。
現地の人たちからちょっと聞いたりする程度である。
この数日を通してそれなりの情報は集まったが、しかし裏どりは取れていない。
「はあ」
溜息を吐きつつも、報告書と睨めっこする。
横流ししてもらったこれではあるが、既知の事実ばかりが乗っている。
このルートの情報はあんまり重視しなくてもよいだろう。
「失礼します。ヴロンスキー少尉」
顔をあげると、数日ぶりの顔を見た。
輜重部隊のロン曹長である。
「どうかしましたか? 曹長」
「いえ、本日にここを発つので挨拶を、と思いまして」
「律儀ですね。それだけの目的ですか?」
「それだけだったら幾分も男らしいのですが……。目的は別です。手紙を届けて貰いたく」
「手紙ですか? 郵便局からも出せるでしょう」
「検閲もありますから」
言いたいことは理解できた。
噂によると輸送路を狙った急襲が増加しているらしい。
彼は死ぬ可能性を考慮しているのだろう。
「了解です。……しかし、一応検閲は行いますよ。読んでも?」
曹長は微妙な顔をすると、しぶしぶと頷いて手渡してきた。
さっと読みこむ。
問題はなさそうだが……。
「はい、大丈夫です。はんこは……あった。私的なものとして受け取ります。住所はここでよろしいですね?」
「お願いします、少尉」
本来は中々ダメなことなのだが、ちょっとばかりは許されるだろう。
私は見逃してはいけない立場なのだけどね……。
「はい、確かに受け取りました。……そうですね、餞別です。これをあげましょう」
机に置かれていたペンを彼に手渡す。
首都から持ってきたもの……何か卒業祝いとして送られてきたものだった記憶がある。送り人は知らない。
*
「さて、君の知っていることを幾つか教えて貰えますかね」
小隊の管轄地域に不法侵入した少年を捕らえた、と報告が上がったのは今朝だった。
だのにこんな夜に対応をしているのは、少々忙しさに手が回らなかったからだ。
どうやらこの街は集積地になるらしく、その仕事がこちらにも回ってきたのだ。
「何も知らない」
黙ってしまった少年に、溜息を吐きたくなるのを我慢する。
わざわざ私が尋問をするのだ。
アドバンテージを捨てる意味はない。
「罪状を読み上げると、窃盗と
わざとらしく強調をした。
少年は顔をばっと上げると、憎々し気に歪めた。
「くそ女。ここは僕らの土地だ」
「……なるほど。ここは共和主義者の土地だと」
少しメモをしつつ、一度溜息を吐く。
まったくわざとらしい溜息だ。
少し下手になったかもしれない。
「ええ、ええ。ここは貴方たちの土地であったでしょう。ですから我々は解放をしているのですよ」
これは方便である。
実際のところ大義名分の存在を、これは記憶の彼もそうだし、大前提私も確かだとは思わない。
ただの侵略戦争であろう……。
「いやいやしかし、私は一つ優しさを見せましょう。今回のことについてあなたを不問とします。我々は何も見ていないし、そして何も盗まれていない」
こんな風に言った。
実際罪に問うつもりはない。
すると、今までが憂さ晴らしのように見えるが、これは決して違うと弁明する。
彼の気持ちを逆なでしただけで何か決定打を吐くことを期待したのと、あるいは彼がこれからレジスタンスに与することを期待したのである。
あとは芋を引くだけだ。
「えーと、君。君はストーキングってできますか?」
「ストーキングですか?」
「彼を追ってください」
「不問にしたのでは?」
「まあ、次に罪を犯すかもしれないでしょう?」
部屋に戻ろうとしたところで、一つ忘れていたことを思い出した。
呆然としつつも準備を始めた男を呼び止めた。
「危なかったら拳銃を使うことを許可します。ただ無駄撃ちはしないでください。生かして欲しいですが、それは次善です。最善は君が生きていることです」