書類に名前を書いて上に送ったり、下に送ったり……そんな繰り返しの生活にも飽き飽きとしてきた。
慣れ過ぎた。忙しさも一段落して、今や平和も平和である。
部下との交友を深める時間でさえ十分すぎる。
時折カードゲームなんかをやっているが、少し私の権威というものが失われてきたようにさえ思う。
これはいかん、と何か教育をしようものにも、その指導内容すら思いつかない。
さて、次の書類に手をのばして内容を読み込む。
……これは以前に駐屯地に侵入した少年についてだ。
「あっ」
これが成功するとは思わなかった。
小エビでマグロを釣り上げたようなものだ。
もう別のことを考えようかと悩んでいたところであるが、これは全く幸いである。
「えーと、憲兵隊の内線は……」
メモを開きつつも内務局への報告も考える。
これは掃討できたとは言えないが、それなりに潰せるだろう。
また昇進するかもしれない。いえい。
うーん、何人か捕まえて拷問かな……。
あんまり得意じゃないのだけどね。
頑張っちゃいますかね。
*
「なるほどです」
報告書をパラパラとめくった。
尋問の計画書を出したら、ぱっと却下されて憲兵隊側に仕事が移ってしまった。
これは果たして私の成果になるのだろうか……。
内務局の方からも怒られるかもしれないが、もとはと言えばこれは業務の越権だ。
あれは国内で、こっちはまだ領土の確定していない紛争地域。
怒られたら甘んじて受け入れるしかないが、私も文句だって言いたい。
「幸か不幸か……。結局のところあの子は罪を犯してしまいましたか……」
彼に対して愛着もなければ、そして残念がる必要もない。
けれど命を無駄にするのは全く分からないし、逃がしてやった恩がこう帰ってくるのも不思議な気持ちだ。
煽ったことも要因としてあろうが……。
「はあ、とりあえず色々と練り直さないと。えーと、これは早急に対応しないとな。駐屯地に襲撃をしたところで現状は変わらないのにな」
色々と考えつつも読み進める。
興味深いことがあるとすれば、度々出てくる部隊だろうか。
第十一義勇機甲旅団。どうやら外国勢力と繋がっていたらしい。
なるほど、これが補給を潰していたのか。
……にしても不思議だ。
一体旅団規模で何ができるというのだろうか……。
それに、どうしてこっちはこれを撃滅しきれていないのか。
そもそもなぜ前線は抜かれているのか……。
全く前線には不満ばかり浮かぶが、しかしいくら文句を言っても後方勤務の身分だ。
下手なことを言うのは失礼というものだろう。
……だとしても、抜かれた機甲部隊の対策はしてほしいものだ。
前線から離れているとはいえここも大集積地。
いや、まあ嫌な妄想はやめよう。