内務局員アンナはお掃除をがんばります!   作:朝日橋立

30 / 30
閑話五 幽霊

「いやー、中々うまくいかないもんですねー」

 

 気の抜けた声に苛立ちを覚え、そのヘルメットを叩きつけた。

 コンと鈍い音が鳴る。

 

「それでどうするんですかね。大佐」

 

「今、考えている。邪魔をするんじゃない」

 

「それは今朝も聞きましたぜ」

 

 やはりこの男は癪に障る男だ。

 もとはと言えば、この作戦も癪に障る。

 

 大佐はイラついたように貧乏ゆすりを繰り返す。

 バトル共和国への義勇軍団はたった二個旅団である。

 その内一つは防衛線の末に壊滅し、今は彼の旗下に移った。

 

「我々は怨霊らしいですし、やっぱり怨霊らしく戦いましょうぜ」

 

 これは我々義勇旅団につけられたあだ名というべきものだった。

 突如出現し、破壊的打撃を行う。

 まさに怨霊部隊である。

 

「縁起の悪い名前だ。全く」

 

 大佐は熱心な無神論者である。

 旧ジェール帝国の王権神授説ですら疑っていた。

 彼が信じていたのは端正で、正確な軍部独裁こそを信仰していた。

 

 その彼は亡霊を嫌っていた。

 これはジェール帝国の亡霊であるし、そして今の政界に座るピエロの小男である。

 彼はまさに帝国の亡霊、悪霊である。

 

「我々はこの森を突破し、前線への復帰を目指す」

 

「正気ですかい? これは無理があるでしょう。森の兄弟の案内なしに行ったところで、さらに状況を悪くするだけでしょうよ」

 

「それじゃあ他に何がある」

 

「いつも通りアカどもの物資を頂いて、味方がくるのを待てばいいでしょうよ」

 

「それじゃダメなのだ。じきに我々は完全に孤立する」

 

 アカの亡霊はついには前線を食い破ろうとしている。

 まさに飽和的攻撃によって。

 反撃をしようにも惰弱なバトル国軍では勝ちようがない。

 

 大佐は行き詰っていた。

 進むも引くも、留まるのも全てが地獄への片道券である。

 加え、彼らへのアカの圧力も強まっている。

 襲撃に即応する部隊が幾つか出来ていた。

 

 現状はいまだその部隊を挫く能力は有している。

 しかし、もはや戦車に継続的戦闘能力はなかった。

 捨ておくことも考えたが、足を捨てることは出来ない。

 

「……我々はあと何回戦える?」

 

「規模によるもんですが、砲弾を集めれば二回は戦えることでしょうよ」

 

「……そうか。一つ作戦を思いついた」

 

 大佐は広げた地図に線を描き足した。

 現在地から南下し、そのままジェールへと帰国する進路である。

 

「あっはは、これは地獄ですな」

 

「我々は怨霊なのであろう? であるならば、ここに地獄でも作ってやろう」

 

「補給はどうするんで?」

 

「ここに通る補給部隊を強襲し、最低限のガソリンと食料を奪う。これが一回目。二回目の戦闘は国境部の突破だ」

 

「しかし、ここはどうすんで? こんな平原は抜けられんでしょう」

 

「……我々はこの街を強行突破する」

 

 とんとんと街を叩く。

 我々の味方、おぞましい狐野郎によるとここで民衆蜂起が起きるらしい。

 それに乗じてまっすぐと走らせるだけだ。戦闘行為はしない。無理やりにでも抜けてしまおう。

 

「始動はいつですかね?」

 

「ここで野郎を回収したらすぐに突っ込む」

 

 大佐。コンスタンティン・ホト大佐は悪運の強い男である。

 そして生きぎたない男であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい!(作者:魔法少女マジデ☆ドコダ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

百日紅凛は転生者。魔法少女がいる世界にTS転生してしまう。▼女の子になったのなら、魔法少女をやってみたい。▼そう思っていたのに、凛に与えられたのは変身ヒーローの力だった。▼でもさ、魔法少女やりたいよね!!▼そんなノリで魔法少女ごっこをしながら、変身ヒーローの後輩の少年とか新人魔法少女とかを振り回していく、記憶喪失系TS転生変身ヒーローちゃんの話。▼ついでに、…


総合評価:1011/評価:8.63/連載:20話/更新日時:2026年10月17日(土) 09:03 小説情報

TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします(作者:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物)))(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

大学生の主人公は、いつの間にやら美女ボディで異世界に居た。でっけぇ胸にでっけぇ夢を詰め込みながら、彼……あるいは彼女はこう考える。▼「ダウナーお姉さんごっこがしたい!」▼片手には小さな竪琴を。もう片方の手は握り締めて敵をぶん殴る。▼吟遊詩人系TSダウナーお姉さん(要審議)の爆誕である。▼カクヨムでも掲載しています。


総合評価:1134/評価:7.95/連載:24話/更新日時:2026年10月18日(日) 18:01 小説情報

TS触手は悪女の使い魔(作者:毒蛇)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

培養槽で目覚めると、触手を生やした女となったエレノア。 ▼男に戻る条件は──とある悪女を破滅の危機から救うことらしい。 ▼これは、テロも聖女も教会も魔王も、運命すら触手で変えていく話。▼カクヨムでも投稿してます。


総合評価:3429/評価:8.87/完結:56話/更新日時:2025年11月20日(木) 20:06 小説情報

TS上位存在(作者:甘朔八夏)(オリジナル:現代/ノンジャンル)

「全部あなたのせいだ」▼「お前ら苦しみたいのか?俺みたいに」▼「消えろ!!あんたの事なんか認めない!!天使は悪じゃないといけないんだ!!!」▼「あなたに守られたからあなたを傷つけてしまったから、ぼくの人生はめちゃくちゃだ」▼「そんなにやさしく、『近づくな』って言わないでほしいな」▼「……私は1人じゃないといけないから(人間さんエッッッッロ…………)」


総合評価:3775/評価:8.77/短編:9話/更新日時:2026年07月03日(金) 14:51 小説情報

主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ!(作者:匿名退場予定)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

いい感じのところで主人公に未来を託して死ぬヒロインにTSしちゃった▼でも、原作再現とかできるなら楽しくね?▼だから死ぬまでの余生を楽しむぞ!▼……なんかいきなり主人公くんと仲がいい状態から物語がスタートしちゃったけど、まあいっか▼そんな話


総合評価:1623/評価:8.65/連載:17話/更新日時:2026年10月18日(日) 09:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>