「リュウイチさん!!リュー見ませんでした!?」
新発売の【ディヴィニティ オリジナルシン】の売上も上々でベル達が帰ってきたら下層進出の祝いも兼ねて宴会でも開こうとリュウイチは【豊穣の女主人】に予約でもしようと訪れた時、第一声は「いらっしゃいませ」ではなく慌てたシルのそんな言葉だった。
「リュー?ここの店員のリュー・リオンか?いや、特に見ていないが」
「そうですか」
「何かあったのか?」
「リューが居なくなったのニャー!!きっとサボりだニャー!!」
「何時もフラッと居なくなることはあったんだけどね、ただ今回のはどうも普段のとは違うみたいなの」
そう言って差し出された手紙を受け取りサッと流し見る。
「で?ギルドに行方不明者の捜索として依頼しないのか?」
「そんな金あるわけないのニャー!!それにギルドはいっつも仕事が遅いから無駄なのニャ!!」
「………………………………」
その時、バァン!!と何かを叩き付ける音が響く。
「バカ娘ども!!くっちゃべってないで働きな!!小僧も用がないならさっさと出ていきな!!まだ準備中だよ!!」
「ああ済まないミアさん、店の予約をしたいんだが」
「そういう事は早く言いな、それで?何時だい?」
「予定が狂わなければ数日後を頼む、ズラす時はまた言いに来るからそのつもりで頼む」
「あいよ、用事が済んだなら早く行きな、此方は忙しいんだ」
「ああ、また来る」
リュウイチはそう言うと大人しく外に出た。
『逃げられはしませんよ、スパルタ人、真実から幾ら目を背けようとも何も変わりません。貴方は偽りの自分を演じる事しか出来ないのです。指導者、夫、父親』
『そして、逃れられない運命の鎖に縛られている。貴方は変われない、貴方はこれからも永遠に、獣のまま』
頭に響くゲームのフレーズ、リューはそのゲームをやる事は無かったが同僚が楽しそうに遊んでいるのを横で見ていた。
同僚が進めるゲームの先は謎を残しながらもまだ未来の可能性を見せていた。
しかし言葉を自分に浴びせられている様な感覚は消えず常に何処かに残り続けとうとう耐えられなくなった。
その言葉を振り解く事は出来なかった、だってそれは全てが事実だったから、怒りの業火に身を委ね道を阻む者を殺しその快楽に浸った。まさに獣の様に。
そんな忌まわしい過去から逃れるため冒険者の身分を捨て自分を偽り続けた。そしてその過去が今、己を縛る鎖の様に絡み付いている。
その鎖を振りほどかない限りリュー・リオンは【疾風】を忌まわしく思い続ける。