fallout-error17-   作:ジュメイ

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本作はFallout4の世界観をベースにした、日本を舞台とするオリジナルストーリーです。
「もし、あの核戦争の日に東京でVaultのような計画が動いていたら……」
そんな妄想から生まれた物語です。楽しんでいただければ幸いです。



プロローグ:揺籠

2077年10月23日

 

アメリカと中国の、積もり積もった憎悪により

世界が核の炎に包まれたその日、極東の島国も

また例外ではなかった。

 

しかし、東京を焼き尽くすはずだった無数の閃光は、

空を覆う最新鋭の高エネルギー防空システム

『ヤタガラス』によって、その多くが成層圏で霧散した。

 

皮肉にも、世界で最も過密な都市は、世界で最も

「効率的な防衛」によって、その形を留めることに成功したのである。

 

だが、守られたのは都市の骨組みだけだった。

 

空から毒を含んだ「黒い雨」が降り注ぎ、地上から

酸素と秩序が失われていく中、選ばれた国民たちは

足元に広がる約束の地へと導かれた。

 

新宿駅の地下深く。巨大な防護扉の前は地獄と化していた。

 

「通せ! 入れてくれ!」

「子供だけでも、頼む、子供だけでも入れてくれ!」

 

怒号と悲鳴が入り乱れ、重武装した警備ドローンが

冷徹に銃口を向ける。

 

左腕の個人用管理端末『P.A.C.T.』に

「入域許可」の青い信号が灯らない者は、

どれほど叫ぼうとも鋼鉄の門をくぐることは許されない。

 

背後の地上では、ヤタガラスの迎撃を抜けた

ミサイルがビルをなぎ倒し、熱線に焼かれた

人々が「影」となってアスファルトに刻まれていく。

 

やがて、重厚な油圧の音と共にハッチが閉ざされた。

残された数百万の悲鳴を、厚い岩盤とコンクリートが遮断する。

 

それが、地下都市ジオ・TOKYOという「天岩戸」の産声だった。

 

それから、二百年の時が流れ、地下都市は独自の進化を遂げた。

 

統制AI『アマテラス』が管理する、静謐なる揺籠。

 

そこは、個人の欲望が社会の不純物(エラー)と見なされる場所。

すべてのリソース、すべての時間、そしてすべての「命」は、『総幸福量最大化原則』という巨大な数式に捧げられる。

 

一人の飛び抜けた幸せより、百万人の平均的な満足を。

 

一人の自由な死より、百万人のための奉仕を。

 

かつて、誰かが言った。

 

[――人は...過ちを繰り返す...]

 

ならば、その愚かさごと管理すればいい。

それが、アマテラスが導き出した、人類生存への

唯一の「慈悲」だった。

 

 

 

 

ジオ・TOKYOの住民たちは、一度も太陽を

見たことがない。

 

彼らにとって、頭上にあるのは『青空』ではなく、

完璧な調光システムによって管理された『第一天井』だった。

 

朝六時に点灯する疑似太陽光。

夕刻に流れる、穏やかな郷愁を誘う電子メロディ。

そして、就寝前の数分間、網膜に直接語りかける統制AIの囁き。

 

『国民の皆さん、今日も一日「幸せ」に過ごせましたか?』

 

『あなたの笑顔は、この都市を動かす最も尊いエネルギーです』

 

ジオ・TOKYOは、ただの避難所ではない。

ここは、人類が二度と「過ち」を起こさないように

最適化された、史上最も巨大で清潔な、

自律思考型社会実験場。

 

あるいは、外の世界に残された放射能の嵐や、

飢えた略奪者たちの叫びを完全にシャットアウトした

地球上で唯一の「聖域」なのかもしれない。

 

今日も、管理デバイスから微弱なパルスが送られる。

それは、脳内の不快指数をゼロにし、

心地よい倦怠感と「偽りの充足」を市民に与え続ける。

 

眠りに落ちる直前、誰もがこう思うのだ。

 

自分たちは、世界で最も幸せな「最後の人類」なのだと。

 

……それこそが、アマテラスが計算し尽くした、管理(愛)のかたち。

 




2077年10月23日。
「あの日」に、もし日本にVaultのような場所があったら……という妄想からこの物語を書きました。

アメリカのような広大な平原がない日本では、点在するVaultを作るよりも、既存の地下鉄網を連結・拡張して「一箇所に全リソースを集中させる」方が効率的なんじゃないか?
そんな「日本の合理性」が、もし最悪の方向に突き抜けたら……。

深夜のノリで一気に書き上げた物語ですが、楽しんでいただければ幸いです。
次回「第一話:幸福」から、本格的にセブの物語が始まります。
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