fallout-error17-   作:ジュメイ

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全5話は書き終わってるので今日中に全部上げれる
勢いって大事だよね

読んでくれてありがとう
みんなもfalloutシリーズ楽しもう


第2話:奉仕

エトが倒れたのは、午後の「情動育成講義」

の最中だった。

 

かつての流行歌を聴き、そのメロディが心に

どんな彩りを与えるかを語り合う、この都市で

最も平穏な時間。

 

スピーカーから流れる古いピアノの旋律に合わせて

エトは急に椅子から崩れ落ち、喉をかきむしった。

 

「カハッ、あ、が……っ!」

 

彼の首筋にある味覚コントロール・パッチが、

見たこともない禍々しい「赤色」に激しく点滅している。

駆け寄ろうとした俺を制したのは、教室の隅に

控えていた『監督官』だった。

 

黒い強化樹脂のバイザーで顔を隠し、胸元には監督官を

示す不気味な記号が刻印されている。

 

監督官が、冷淡な手つきでエトの状態を確認する。

 

「……Unit A-18。脳内ナノマシンの異常過熱を確認。

 修復コスト、許容範囲外。このままでは全体の

 幸福度を0.00007%低下させる。幸福効率を下げる前に

『聖域』での奉仕が推奨される」

 

「待てよ、監督官! 抑制剤を使えばまだ抑えられるはずだ!

 そうすれば成人認証までに回復して、また社会に

 貢献だってできる!」

 

俺の叫びを、監督官はバイザー越しに冷たく切り捨てた。

 

「不許可だ。現在の彼への抑制剤投与は、全体幸福に

 寄与しないという計算結果が出ている。……安心しろ

 A-17。彼は今日、予定より少し早く、みんなの『礎』

 になる名誉を得ただけだ」

 

社会を維持する歯車となる『労働者』

 

システムを運用する側に回る極少数の『執行者』

専門分野での開発研究を行う『専門者』

 

そして――

自らの幸福を全て社会に捧げる『奉仕者』

 

奉仕者は、都市の最深部にある「聖域」で

社会全体の幸福を祈り捧げる。最も名誉ある役割。

 

だが、一度「聖域」へ入れば、二度とそこから

出ることは許されない。

 

幸福度を維持するため、ただひたすらに、死ぬまで

社会の礎として祈り続ける。

 

本来、それは18歳の成人認証で、アマテラス様から

直接「聖別」される輝かしい未来のはずだった。

 

だが、著しく社会の幸福に貢献できないと

判断された者には、選択の余地などない。

 

監督官は倒れ伏すエトの左腕を掴み、埋め込まれた

P.A.C.T.のホログラムを強制起動させた。

 

「Unit A-18。奉仕者への意向確認を行う。

 自ら『承認』を押せ。期限は今日中だ。

 私は君の――自発的な決断を尊重する」

 

その瞬間、教室に残された生徒たちが一斉に拍手を始めた。

 

「おめでとう、A-18」

「最高だね」

「みんなのために、頑張って」

 

狂気じみた祝福の雨が降る中、俺だけが拳を握りしめ

拍手を拒んだ。監督官の無機質な視線が、俺を射抜く。

 

「Unit A-17。Unit A-18を部屋に連れて行け。

 同室者として、彼の決断を最後まで見守る義務を命じる」

 

監督官の声は、父親のような慈愛を装いながらも

絶対的な拒絶を含んで耳の奥に響いた。

 

静まり返った寮の自室。

 

ベッドに横たわるエトの首筋では、いまだに

パッチが不吉な赤色を放っている。

ナノマシンの暴走による熱のせいか、彼の視線

はおぼつかない。

 

「……ねぇセブ。僕、みんなの『礎』に

 なれるのかな……。怖いよ、

 でも……みんなが拍手してくれたんだ。

 僕が奉仕すれば、世界が幸せになるんだろ?」

 

左腕のP.A.C.T.には、無機質な【奉仕への同意:承認】

のボタンが、まるで奈落の入り口のように浮かび上がっている。

 

「俺は、エトと一緒に成人認証を受けて、一緒

 に幸せになりたいんだ。奉仕を選んだら…

 …もう二度と、会えないんだろ」

 

俺は机の奥に隠していた「それ」を取り出した。

数ヶ月前、エトと一緒に廃棄場で見つけた旧型のデバイス

 

――大和存立機構(J.E.C)と『試作型ツクヨミ』

 

の刻印が刻まれたガラクタだ。

今のスマートな埋め込み型と違い、手首に無骨な

金属をはめて使う旧世代の遺物。

 

二人で夜を徹して修理し、ようやく起動にこぎつけた。

だが判明したのは、膨大なジャンクデータと

今のマップからは抹消された古い工事区画や隠し通路の記録だけ。

 

何が起こるかわからないその「異物」を装着することは

今まで怖くてできなかった。

 

「セブ……それ、何をして……」

 

「エト、動くな。ガラクタのマップに隠し通路がある。

 それも元に今、薬を取ってくる。抑制剤さえあれば

 お前のナノマシンを鎮めて、成人認証を一緒に受けられる」

 

俺はエトの震える手を握り、自分に言い聞かせるよう

に力強く言い放った。

 

「俺の『最大幸福』は、お前と一緒に生きることだ」




【件名:選ばれし貴方へ――アマテラス様からの特別な招待状】

Unit ◯-◯◯殿
あなたは、このジオ・TOKYOにおいて、
誰よりも「優しく」「自己犠牲の精神に富んだ」
魂を持っていることが証明されました。

本来、社会を維持する労働者となることは尊いことですが、
アマテラス様はあなたに、それ以上の光栄を用意されました。

『聖域の奉仕者』

あなたはもう、労働に疲れることも、将来に不安を抱く
こともありません。
「聖域」の揺籠の中で、ただ幸福を感じ、その余剰分
を社会へ分け与えるだけの、最も神聖な人生が始まります。

これこそが、あなたが生まれてきた真の意味です。
共に、完璧な世界を完成させましょう。

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