最終話です
どうぞ
どれほどの時間、落下していたのかはわからない。
全身を叩きつけるような衝撃と、肺の中の空気を
すべて引きずり出すような突風。
意識が混濁する中で、俺の網膜ディスプレイには、
ノイズ混じりのツクヨミのログが明滅していた。
『……バイタル、低下。……外部放射線量
許容値を超過。……セブ、起きろ。
死ぬには、まだ早い』
「……ごほっ、ごほっ……」
喉に焼けるような砂の味が広がる。
目を開けると、そこにあったのはジオ・TOKYOの
白い天井ではなく、吸い込まれるほどに高く
不気味なほど赤茶けた「空」だった。
俺は、瓦礫の山の上に放り出されていた。
周囲を見渡せば、そこはかつて「トウキョウ」と
呼ばれた都市の残骸。緑の蔦に侵食された高層ビルが
折れた牙のように天を突いている。
「これが……外の世界か」
毒と砂しかないと言われた場所。
しかし、俺の肌を撫でる風は生温かく、
鼻を突く土の匂いは、アマテラスの無菌室では
決して味わえない「生」の気配に満ちていた。
俺は震える手で、胸元からエトの遺書を取り出した。
ボロボロになった紙の端切れ。そこには
あいつの「意思」が宿っている。
「……ハァ、ハァ……。ツクヨミ、生きてるか」
『バックアップ電源に切り替え完了。
……セブ、現在地不明。ですが、
アマテラスの信号は届きません。ここは、自由です』
「自由、か」
俺はふらつく足で、瓦礫の山を降りた。
地平線の彼方には、見たこともない異形の影や、
錆びついた鉄の塊が転がっている。
過酷な世界だ。アマテラスが言う通り、
ここは地獄かもしれない。
だが、俺の心臓は今、かつてないほど激しく、
自由なリズムで脈動していた。
[unit-A17、セブ、error17]
――今の俺の全てで、俺の本当の人生は、
この最悪で最高の腐った世界から始まる。
誰かが言った。
[――人は...過ちを繰り返す...]
だが、その愚かさすらも抱えて、俺たちは
選択し決断し続けるしかない。
その意思こそが、人を人たらしめるのだから。
「……流してくれ。あいつが好きだった歌を」
『了解。……管理者セブ、良い旅を』
ツクヨミのスピーカーから、盛大なノイズと共に、
あの旋律が流れ出す。
――「上を向いて歩こう」
俺は、一人で歩き出した。
涙がこぼれないように、赤茶けた空を見上げながら。
いつの日か、この荒野のどこかで、エトが見たかった
「本物の幸せ」を掴み取るために。
そして、あの揺籠をぶち壊し、人々に本当の
「選択」と「決断」をさせるために。
赤茶けた地平線の先、俺の一歩が
乾いた砂を力強く踏みしめた。
セブのerror17の物語はここで一旦終わりです
拙い文章と妄想を読ませてしまってすまない
最後まで読んでくれてありがとう