〔2097年4月上旬。国立魔法大学附属第一高校入学式前日。〕
この日、達也たちいつものメンバーが学校近くの喫茶店に集まっていた。普段は学校帰りや、何かしら事件に巻き込まれた時以外はこういう休日にこの店に集まることはない。だが、その風景は平日とは全く変わることはないのが至って不思議とも思えた。
ほのかと深雪は達也にぴったりとくっつき、それを遠くで雫が目を細めて見つめる。幹比古と美月は、目があえば互いに目をそらすというぎこちない間柄を演出するのに対して、レオとエリカは相変わらずの夫婦漫才状態。
本題に戻るが、なぜ彼らは集まったのか。それは明日、深雪が入学式にてスピーチを行うため、その景気づけを兼ねて新入生について語り合おうとエリカが計画したからだ。いつもと変わらない空気の中、達也が新入生のデータを開いていた。
「なんだ、今年はそんなにパッとしない連中ばかりだなぁ…」
「あんた馬鹿なの、この総代の彼って千葉家のライバルと言ってもいい三十辺家の長男だよ。これでよくパッとしないなんてよく言えるわね。」
「みとべ…なんだそれ?」
「三十辺流棒術よ!あんたそんなのも知らないの?流石ノウキンね」
「てめっ、誰がノウキンだとこのアマ!」
「なに、やるって言うの?上等じゃない!」
「エリカちゃん落ち着いて!」
「レオもほら、落ち着きなよ。」
いつもの定番と言っていい夫婦漫才が始まり、美月と幹比古もいつも通りにあたふたした。この時の他4人の掛け合いもいつも通りだった。
「出た、夫婦漫才。ほのかも達也さんとすればいいのに…」
「ちょっ…ちょっと何言い出すのよ雫!わっ私は、べっ別にたちゅやさんと…」
「まぁほのかったら、お兄様との何を妄想しているのやら。」
深雪の氷のように冷たい視線と共に、手に持っていたカップのコーヒーが冷気を放ち始めた。それを察知した達也は、深雪も手に手を重ねて言った。
「深雪落ち着け。たとえ他の誰かがオレの事を考えたとしても、オレはいつもお前の事を思っているから安心しろ。」
「はぁ…お兄様…私もお兄様の事をいつも思っておりますわ。」
深雪の頬が赤く染まったのと同時にコーヒーからも熱が戻ったが、ごたごたの収まったレオたちからは冷たい視線が二人に集まっていた。
あれから何分経っただろうか、8人はそのまま新入生のデータを見ながらコーヒーとクッキーを囲んで話していた。ほのかの従妹がが入学したこと、総代の使う無系統魔法について、そしてエリカがある話を持ち出したことで一同は静まり返った。それは、伝説の不良「ワンダリカ」についてだった。
〔同日・午後7時草加市某所のレストラン〕
草加市随一のレストランの隅の席に、2人の男が皿を囲んでいた。片方は壮年で黒いスーツを着ており、もう一方は黄緑と白の目立つ第一高校の制服を着ていた。だが、花形のエンブレムは付いていなかった。2人の会話の少なさと内容からして、親子ではないことは分かった。
「君も明日から魔法科高校の生徒となるのか。少し早いが、入学おめでとう。」
「そこまで祝うことではないだろ。そこまで嬉しくはねぇ。」
「でも我々グループの人間としては嬉しいことだ。支援してきた人間が二科生ではあるが、名高い魔法科高校に合格するなんて。」
いかにもアウトローどうしの会話にも思える。だが、その表現も彼らの関係性からして間違ってるとは言えないものだった。壮年の男は青年に、最終調整の終わったブレスレット型の汎用型CADを手渡した。
「我々は、君の目的が達成するまで支援はさせていただこう。もちろん、資金も武器も何もかもだ。」
「なぜあんたたちはそこまでする。オレは最近まで警察や犯罪者に目をつけられた男だぞ。」
このセリフからして、彼はただの中学生だったとは言えないことが分かる。普通はこのような人間に支援を行う人間とはほとんど居ない。だが、もし本当に居るとしたら対象から何かしらを見出したからであろう。結局男は微笑むだけで、何も答えることはなかった。
「まぁいい。だがオレはてめぇらの犬になるつもりはないからな。」
「もちろんだとも。逆に我々が君の犬になる覚悟だ。」
「ふっ…本当にアンタはモノ好きなんだな。」
「この話はここまでにして、さぁ食べてくれ。今日は君のお祝いだからな、ハ十崎颯太君。」
ハ十崎颯太。彼もまた、魔法科高校に入学する人間。21世紀末に卒業する通称「世紀末組」の一人となる。そして彼は、世紀末に向かう日本や世界の魔法師たちの陰謀に巻き込まれるかもしれないであろう。だが、レオを除く第一高校の生徒はまだ知らない。彼こそが、2年前に突然現れた伝説の不良、ワンダリカだということを…。
こんな感じで物語を展開していこうと思います。やはりまだ文章が鳴っていないと思いますが、とにかく頑張って投稿していきます!
次回から、第一章である入学編を開始します。