ワタルとウララ   作:パンちゃんドラム

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 ワタル、スイーツ部きっての自由人とエンカウント。
 フラグが2つ立ちました。



おかしな話、変わった子達。

 

 ──誰なんだあの子はいったい。

 

 ドアを開けたらそこに居た、ピンクのサイドテール少女に遭遇したワタルは、寮の自室の扉の前で少なからず動揺していた。天気もよく、予定も決まっているので出掛けようとした矢先にこれである。

 

 ワタルは身に覚えの無い少女が、自室を訪ねて来たことに戦慄した。ストーキングとか、捜査令状などの、そういった何らかの事件性を帯びたなにかによるものを勘繰ってしまうくらいに、彼女は今、とても混乱していた。

 

「───いな。…………のに……」

 

 扉越しにくぐもった声がなにか喋っていた。

 あのサイドテールの少女のものだろうか?

 ……私はこっそり、扉に備え付けられている覗き窓から、慎重に外の様子を覗く。まさかとは思うけど、【変なの】が来訪した訳じゃないよね…?

 

 私の警戒レベルが跳ね上がる。

 中学時代の出来事が頭を過ぎった。

 

 

 ──扉を開いたらそこは異世界でした、なんて事、もう二度と体験してたまるかっての……!!

 

 

  私はかつて経験した、【変なの】による【異界拉致未遂事件】を思い出して瞬間的に頭が茹で上がる。

 

 あの時は散々だった。

 視界いっぱいの山、山、山!ちょっと水溜まりがあるかと思ったら普通に敵性生命体(エネミー)だったし、銃も効かない爆弾も効かないクソキャラ相手に、2時間半も戦わなければならなかったのはかなりストレスが溜まったものである。

 

 その後、3時間かけて【異界】から脱出したはいいものの。当然のようにキヴォトスでは時間が普通に流れていたため……!

 

 結果、当時の私は無事、五体満足で中学校に遅刻した。ちなみにその日は、私の通っていた中学校の年度末に行われる定期考査の日である。校門前に到着したら既にみんな帰った後って知った時、私は膝から崩れ落ちたよね。【異界】に拉致られて遅刻しましたとか、言い訳にすらならないから当時の私はめちゃくちゃ絶望した。

 

 

 そして。

 

 

 ストレス発散の為、定期的に怒りによって噴火する私の頭は……あの日はもう、類を見ないくらい激しく燃えた。とりあえず、下手人と思わしき【変なの】をシバキ倒して異界の場所を吐かせ、そのまま異界に突入してその場所全てを更地にするくらいにはキレ散らかした。

 

 無論、原生生物も敵性生命体も等しく全て地面に埋めた。二度とそのツラ見せるんじゃねぇわよ。

 

 ……とはいえ、そんな過去の話は今は良い。問題は目の前の少女が、【変なの】かどうなのかを確かめる方が先である。

 

 そう思って、私はドアの覗き窓から外側を見た。

 

 ───さて、結果は。

 

 

「パイの匂いに釣られて出てこないかな……」

 

 ………………なるほど。

 結果から言えば、一応【変なの】ではなかった。彼女は他人をお菓子で釣り出そうとしているだけである。

 

 

 ……【変なの】ではなかったね、うん。

 

 

「よいしょ……っと。ほら、美味しい美味しいストロベリーパイだよ〜」

 

 そう言った彼女が、紙袋の中からストロベリーパイを取り出した。サイドテールの少女は扉の隙間からパイをこちらへと向け、イチゴとクリームの香りを手で扇いで送り込もうとしている。

 

 ────とびっきりの変な子じゃん!?

 

 私は心の中で悲鳴をあげた。

 

 

「──ほーら、おいでおいで〜……甘ーいクリームとイチゴが乗ってるよ〜……」

 

 

 なぜそれで釣れると思った。

 私の事を小動物かなにかと勘違いしているサイドテール少女に対して思わず目を剥く。扉の横に付いている、その茶色いチャイムは使わないのだろうか。私はとても理解に苦しんだ。

 

 

 ──しかし、彼女は一体なぜ私の部屋を訪ねたのだろうか?

 

 

 そんな疑問が脳内を過ぎる。普通なら、チャイムを鳴らすか扉をノックして部屋の住人を呼び出し、そのまま挨拶したり談笑したりするのが一般的なはずだ。

 ……だが、彼女は扉の前でこうして私をおびき出そうとしている。───なんの為に?

 

 

「……うーん、だめかぁ」

 

 

 いや駄目に決まってるでしょ。

 私は思わず、思考を中断して脳内でツッコミを入れた。チャイム等の呼び出し手段を使わず、お菓子を使って住人を呼び出そうとするなんて、前代未聞にも程がある。非常識ってレベルではない。常識の斜め上を走り抜けるような行動だ。

 

 しかも傍から見たら、扉の隙間からパイの香りを送り込もうとしている不審者である。これでは、いつ他の入居者に見られて彼女が通報されるか分からない。

 私は彼女の行動に頭を抱えた。

 

「──むむむ、かくなる上は……」

 

 今度は一体、何をしようというのか。

 私は次にこの少女が何をしでかすのか、とてつもなく不安になった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 つい先程、私がチャイムを鳴らしたと同時に中から出てきた恩人が、なぜかいきなり扉を閉めた。その事を不思議に思いつつ、私は様々な方法を駆使して、彼女を扉の向こう側から引っ張り出してみようと試みている。

 

 さっき試した、『甘〜いスイーツの香りで釣りだそう作戦』は失敗に終わってしまったけれど、扉の向こう側からは物音がしていたから、手応えありだったのは間違いない。

 

 そう確信した私は、次の作戦へと移る。

 

 

「ふふふ……、これを見るといい……」

 

 

 そう言って、私は扉の向こうに居るであろう彼女へ向け、タッパーの中から取り出したストロベリーパイを見せつける。

 

 陽光に当てられて燦然と輝くルビーのようなストロベリーに、その上に満遍なく降り積った粉雪のようなシュガー。ストロベリーとパイ生地の間でクリーム色の絨毯となりながらも、その存在を仄かな香りとともに主張してくるカスタードクリーム。パイ生地からはバターの香りがカスタードとストロベリーの香りを纏めて包み込み、それらが渾然一体となったこのパイは、私の食欲を強かに刺激した。

 

 そして、そのパイを1口。

 

 ──パリッ!

 

「ん〜……美味しい〜……」

 

 ──1口、パイを食べると、口の中に焼きたてのクッキーの様なサクサク生地に、偏りなく練り込んだバターの香ばしい香り、慈母の如き包容力でパイを包み込むカスタードの味が溢れ出る。

 

 そうして舌の上でまろやかな甘味を堪能していれば、ふとその奥に、ストロベリーペーストの微かな酸味。自らは主張せず、春の雪解けのように解けていく静かな風味が、カスタードの海の中で揺蕩っていた。

 

 思わず顔が綻ぶ。間違いなく、私が食べてきたパイの中でも最上にあたる味。こんなにも美味しいパイを、独り占めするのは勿体ない。扉の向こうに居るマリトッツォの恩人にもご馳走させてあげたい。

 

 ……そう思いながら、私は緑色の扉を見た。

 

 

 ──ガタン。

 

 

 ───扉の向こうで、物音が聞こえる。

 

 

 

 よし、もう一押し。私は再び、ストロベリーパイへと向き合った。口内に残るカスタードが、次の一口をとパイを欲し、今か今かと唾を増してくる。その提案に従って、私は再び口を開いた。

 

 

 ───しゃく、パリ。

 

「────〜〜………」

 

 

 1口大にカットされ、生地とカスタードに乗せられたストロベリーと一緒に、1口。その瞬間、瑞々しいイチゴの風味が口内に吹き入る。そして、イチゴの香りに合わせてパイ生地、カスタード、生クリームが順に、私の舌の上を席巻した。

 

 

「ん〜〜〜……」

 

 

 頬に手をあて、思わず揉みこむ。

 美味しい、とても美味しい。

 間違いなく、今週食べたデザートの中では1、2を争うくらいには美味しかった。私は元々垂れ気味な目尻をさらに垂れさせて、ストロベリーパイを堪能する。

 

 ……そうして食べる事5口半。すっかりストロベリーパイを1つ食べきってしまった私は、緑の扉へ目を向ける。

 

 

「…………美味しいよ?」

 

 ───にひ。と扉へ向かって笑いかけた。

 

 

 

 

 ──ギィ……

 

 1拍の後、扉のノブが動く。

 ゆっくり、恐る恐ると言ったふうに、扉が私の方へ向けて開かれていく。

 

 そして。

 

 

「───あの、すみません」

 

 

 そうして開いた扉の隙間から、金髪ボブの少女がひょっこり顔を見せた。

 

「なんでチャイム使わないんですか……?」

 

 怪訝そうな顔で、彼女は私の方を見つめる。

 

「…………えっ、鳴らしたよ……?」

 

「えっ」

 

 彼女の発言に対して私は、心外な……、と困惑の表情を浮かべた。

 

 首を傾げた金髪の少女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、私とチャイムを見比べる。

 

「…………?」

 

「……うーん?」

 

 そんな彼女の姿に、私は首を傾げた。

 恩人の少女は扉の隙間からするりと抜け出て、右手をドアノブに手を添える。そして、備え付けの茶色いチャイムに左の腕を大きく伸ばした。

 

 

「んっ」

 

 

 カチリ、という音と共に、チャイムのボタンは沈み込む。しかし、彼女が右手で抑える半開きの扉の向こうからは、何の音も聞こえない。

 

「…………あぁ、チャイム。壊れちゃってたんだ」

 

 合点がいったとばかりに、私はポン、と手を打った。そして、全てを理解した恩人の少女はガックリと肩を落とす。

 

「───タスク追加ぁぁ〜〜………」

 

 ドアノブから手を離して、少女はチャイムの前で俯く。その背中は悲哀に満ち溢れ、彼女の周りには、重くどんよりとした空気がまとわりついていた。

 

 ……なんだか可哀想に思えてきて、思わず彼女の背中に手を乗せる。

 

 パタン……、と。緑の扉は力無く閉じた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ──トリニティ総合学園の南側の歩道。

 北を見れば、白を基調としたレンガブロックが敷き詰められ、道の片側にお行儀良く仕立てあげられた植え込み達が整列する、中世時代の宮殿に繋がりそうな道が存在している。

 

 そして、まっすぐ向こうを見れば、学園校舎を絵画の額縁のように切り取る白いアーチが見えており、そのアーチの間から流れてくる泉の水が白い歩道を分けていた。

 

 決して華美ではなく、しかし調和の取れた風景。どこかの画家が一枚絵として描いていてもおかしくないであろうその景色は、私が初めて見た時に思わず見惚れてしまうくらいだった。

 

 入学式に参加したあの日、あのアーチの奥に進んで行く時は、それはもうワクワクしたものである。The・お嬢様学校って風景だったからね!

 まぁ、今の印象はちょっと違うんだけど。

 

 そんな優美とも、悠然とも言えるその景色の中に存在する白い歩道の隣の泉は、春の日差しに照らされながらキラキラと輝いていた。

 

 どこかからか時刻を告げる10回目の鐘の音が響いてくる中、小鳥がゆっくりと羽を休めながら泉の水を飲んでいる。

 

 のどかだ……。

 そう思って鳥達を見ながら歩いていると、不意に鳥達が羽ばたいた。

 

 

 ──ぷるぷる、ぷるぷる。

 

 いつの間にか、見覚えのある水まんじゅうが白い噴水の縁に現れている。私は【変なの】から目を逸らし、アーチの向こうの校舎を仰いだ。

 

 

「あ〜、もう最悪……。ツイて無さすぎて頭にきそう」

 

「元気だしなよ……。ほら、ストロベリーパイ」

 

「あんがと……。あ、美味しい……」

 

 

 イチゴとクリームのマリアージュに、サクサク食感のパイ生地がマッチ。とても美味しいスイーツに、私の不機嫌はどこかに吹き飛ぶ。

 

 そんな私の様子を見て、ナッちゃんは柔らかく顔を綻ばせた。

 

 ──現在、私と『柚鳥ナツ』……ナッちゃんは『トリニティ・スクエア』の噴水前まで2人で歩いている。つい先程、寮の部屋の前でちょっとしたすれ違いはあったが、私がナッちゃんの事を【変なの】と勘違いしそうになっただけだったので、即座に和解できた。

 

 そして何の因果か偶然か、私は過去に彼女を助けた事があったらしく、そのお礼としてストロベリーパイまでいただいてしまったのである。

 女神様……?と、私は彼女に手を合わせた。

 

 そんなこんなで、部活動のメンバーと集まる約束をしていた彼女の行き先がトリニティ・スクエアだったので、ちょうどスクエアから程近い『大聖堂』に用があった私も途中まで一緒する運びとなったのである。

 

 

「んー、イチゴの酸味とカスタードの甘さが絶妙〜」

 

「ふふ、気に入ってくれたようで何よりだよ」

 

 

 そう言った彼女は微笑みながら、懐から紙パックの牛乳を取り出して飲み始めた。紙パック式の牛乳を見るのは久しぶりで、私は思わず質問する。

 

「そのタイプの牛乳パック見るの中学以来ね。ナッちゃん、牛乳好きなの?」

 

「──ん、……うん。好き。まろやかな口当たりとちょっとした甘さがいいんだよね〜」

 

「へぇー」

 

 彼女の言葉に私は頷いた。確かに、後味や匂いが気にならなければそうだろうなと思う。栄養満点で骨も丈夫になるし、いい飲み物よね。嫌いな人は嫌いらしいけど、私は比較的好きな部類だ。

 

 空にはお日様が出ていて、気温がややぽかぽかしていて暖かい。それに釣られて私達も、のんびりゆったりと南通りを歩いていく。

 

 ……そういえば、牛乳を飲み続ければ身長が伸びやすくなるって言われてるみたいだけど、あれ自体は真偽不明な噂なのよね。栄養たっぷりだから、健康的な生活を送っていれば身体の成長に対してプラスに働くとか、そういう事実が曲解されてるんじゃないのかな?

 

 そんな風に牛乳について色々考えていると、ナッちゃんから質問された。

 

 

「そういえば、ワタル。聖堂に用事があるって言ってたけど、珍しいね?」

 

 

 ストローの飲み口を咥えながら、彼女はコクリと首を傾げる。私も首を傾げて、彼女の疑問に返事を返した。

 

「うん?そう?」

 

「うん、時間的に礼拝は終わってるでしょ?それ以外で行くって……もしかして告解?」

 

「違うわよ?!」

 

 告解、という言葉を聞いて、私は慌てて否定する。思わず声が上擦った。声が大きかったのか、はたまた食い気味に否定したからか。ナッちゃんはびっくりしたように口を開けている。

 

「い、いや……だってほら……!告解って悪い事したなって時にやるものだし!私、最近悪い事とか全然してないからね!!」

 

「お、おぉ……」

 

 しどろもどろになりながら、私は彼女に必死に弁明した。本当に、最近悪いことはしていない。していないんだけど、なんかこう……不安になっちゃうじゃん……!

 

 私は入学式の前に見た、変な姿のシスターさん達を思い出して口の端が引き攣る。

 

 

「────なので告解はしません!Q.E.D.!!」

 

 

「そ、そっかぁ……」

 

 高らかに、告解をしない旨を宣言しながら空に向けて指を指すと、彼女もゆっくり頷いた。納得してくれたようで何よりです。はい。

 

「ちなみに今回はお祈りしに行くために行きます。お祈りしたら帰ります。それだけよ」

 

「それだけ」

 

「それだけよ」

 

 ……とまぁ、そんな感じで他愛もない話をしつつ歩いていくと、アーチ前の階段まで着いた。後は傾斜の緩い階段を昇れば、トリニティ・スクエアの噴水前に着ける。

 

 するとここで、私の対人センサーに、アーチの陰から人の気配が引っかかった。1人、2人…3人か。既知が1つに他2つ……。

 

 

「──何見てんのよ、カズサ」

 

 

 既知の気配に対して呼び掛けると、ため息を付きつつアーチの陰から彼女は出てくる。

 

「いや、ああもデカい声出してたら気になるでしょ……」

 

 ちょっと呆れた様子で私を見下ろす彼女は、黒いジャージのポケットに手を入れながらそう答えた。

 

「どっから見てたのよカズサ!」

 

「QEDから。あれ、ポージングする必要あった?」

 

「うがーっ!?忘れろぉ!!」

 

 彼女にQEDのくだりを指摘されて、気恥しさを隠すように彼女へ向けて走り出す。いつもならドロップキックをお見舞いしてやれるのに、今日は目の前の階段がとても邪魔だ。

 

 

 それはそれとして跳ばないとは言っていない。

 

 

跳躍強化ァ(グラスホッパー)!!」

 

 

 階段の斜面を垂直に蹴って、私はカズサへ向けて大跳躍。カズサは面倒くさそうな表情をしながら、未だポケットに手を入れっぱなしである。

 

 

「──ちぇぇぇすとぉぉぉっ!!」

 

 

 狙いすまして空中を蹴り、反転。

 私のまっすぐ伸びた左脚がカズサに向けて飛翔した!

 

 

「はぁ……」

 

 

 対するカズサはギリギリまで私の脚を引き付けて、ひょいと左に身体を逸らして避ける。

 

 

 着弾。

 

 

「……やるじゃない」

 

「いい加減そういう絡み方やめなってば、周りから引かれるよ」

 

 カズサの後方、約7歩くらいの場所に着弾した私がパラパラと舞い上がったホコリを払うようにして立ち上がると、苦い表情をしたカズサが私に対して文句を言ってきた。

 

 ……私は少しばかり逡巡して、彼女に向けて親指を立てる。

 

「善処するわ」

 

「アンタの即答、全然信用出来ないんだけど」

 

 私の返答にカズサが呆れ返る中、私と彼女のやり取りに置いてけぼりにされているナッちゃん含む3人は、ぽかーんとした様子で私達を眺めていた。隠れて見ていた2人が気になった私は、不明な気配の出処であるアーチの方を確認する。

 

 ん?あの特徴的なツインテールは……。

 

 

「──あ、ヨシちゃんじゃん。やっほー」

 

 

 彼女に向けて手を振ると、ヨシちゃんが盛大にコケた。

 

 何?近くに【変なの(ぷるぷる)】でも居た??

 

 思わず【変なの】を探し始めた私を見て、カズサは右手を頭に当てながら、とても頭が痛そうにしていた。

 

 





・遠芽ワタル
 よく見える【変なの】の存在に、若干ウンザリしている年頃の女の子。しかし、彼女の食い扶持の維持にも【変なの】の存在は欠かせないため、彼らへの八つ当たりは程々に留めている。

 実は【異界】に月イチくらいの頻度で侵入している。


・杏山カズサ
 不良時代の精神から成長を果たした、褒め称えられるべき女の子。テンションの上がったワタルに軽く注意出来るくらいには、気遣いや良識に満ち溢れたとっても偉い少女である。(ワタル評)

 なお、スイーツ部のメンバーの中では1番怒らせると怖いと専らの評判。


・柚鳥ナツ
 牛乳をこよなく愛する、スウィート&フィロソフィーな女の子。マイペースに周りを振り回す事は多いが、落ち込むワタルにお菓子をあげたり、話を聞いたりするなどコミュニケーション能力はなかなか高め。

 だけど、ワタルの大跳躍にはさすがにびっくりした。


・《跳躍強化》
 ワタルが自身に流れる《神秘》の性質を変質させて使用する、技術的な技の1つ。靴に付与してキック時の衝撃を増やしたり、物体に付与して弾力性を高めたアイテムをゴムボールのように変化させる事が出来る。

 区分的には『振動属性』。厳密には『弾力装甲』を小分けにしたようなイメージ。バブルボールのようなアトラクションで使用すると大惨事が確定する。


・【さんやさんれい】
 ワタルが拉致されかけた謎の異界。灰色で剥き出しな山嶺が幾つも並び、迷い込んだ者にその圧倒的存在感を見せ付ける。3日の内に頂上へ辿り着かなければ、元の世界へ帰れなくなるという厄介な場所。

 ……が、ブチギレたワタルの手によって全ての山が大地に陥没した。ついでに巻き添えを喰らったその地域の生命体が土の中に植えられた。これが後の、【ジオ・ベース】という世界の基礎である。

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