ワタル、二丁目の銃を手に入れるの巻。
手痛い出費にも関わらず、とてもにこにこしています。可愛いですね。
追記:前回、予約投稿日の日付を勘違いして1日早く投稿していました。反省。
午後の日差しが頂点を少し過ぎた辺り。
ガンショップ『アーリヒカイット』のカウンターテーブル上に鎮座する木箱。その箱の中身を、店主のケンさんはじっと見つめていた。
黒光りする銃身に、フォアエンドからストック部にかけて彫り込まれた、風が草花を運んで行く金色の装飾。そして何よりも目を引くのは───
「…………ったくよぉ、毎度のことながら張り切りすぎだぜ。お嬢……」
金色の、風の流れと草の蔓でさり気なく編まれた『Maxwell』のロゴだった。
「……運送費、人件費、競り落とし、素材費用。全部引っくるめても採算取れねぇぞ?」
彼は2階の休憩室で眠る、破天荒な少女に向けてため息をつく。彼の手指は計算の為に幾つか曲げられ、諦めたように開かれた。
目の前に鎮座する、少女が作り上げた傑作を見る。
今まで自分が取り扱ってきたどの銃よりも、先へ進んだスナイパーライフル。それを誰にも真似する事の出来ない方法で、質を落とさず、注文通りに……少女は改造しきってしまった。
──間違いない。目の前のコイツはどんな銃でも届かない、遥か高みまで登りつめるポテンシャルを秘めた最高傑作。彼はそう確信した。
「トンでもねぇ
彼は木箱の蓋をそっと閉め、カウンターテーブルを離れる。壁に掛けられた時計の長針は、既に8へと迫っていた。
「おーい、お嬢!そろそろ時間だぜ!!」
階段を登りつつ、未だ眠りこけているであろう少女に対して彼は呼び掛ける。そうしてから3分後、アーリヒカイットの2階部分はバタバタと音を立てて騒がしくなった。
◇
──トトン、トトン……
列車が揺れるリズムに合わせて、私の背中がふかふかしたクッションの上を浮き沈みする。水色のスマホの画面に映る時計は『13:32』を表示しており、その下には私とウラちゃんが綴った、モモトークの会話内容が記されていた。
ウララ◀
『ワタルちゃん、集合場所決めてなかったけどどこにする?』
ワタル▷
『駅前でいいんじゃない?』
『南口?』
ウララ◀
『おっけー、向かうね!』
画面から目を上げると、人で混み合う車内の隙間から見える、窓の外を流れる景色が、次第にゆっくりと遅くなっている。
『────まもなく、D.U.シラトリ区。D.U.シラトリ区でございます。お降りの際は、足元にお気を付けください』
列車のアナウンスと共に、ガラス越しから車輪とブレーキの擦れる音が聞こえ始めた。駅のホームに入ったためか、外の景色は暗くなり、列車が停止する音がよく響く。停止した列車の扉へ向けてぞろぞろと人が移動する中、私も椅子を立ち上がった。
『ドアが開きます』
滑らかに横開きした列車の扉から、人の波が溢れ出す。それに従って私も、少し高揚した気分を抑えながら列車を降りた。
私が駅の南口を出ると、人が行き交う道の間からひょっこり白い翼が見えている。そして私が翼に気が付くと同時に、あちらも私に気が付いたようだ。
「──やっほー、ワタルちゃん!5日ぶり!!」
「うん、おはよ。ウラちゃん元気だね?」
「うん!すっごい元気!!」
上手く人混みをすり抜けながら私の方へ、ウラちゃんは元気いっぱいな笑顔を見せながらやってくる。
「うん?ワタルちゃん、今日は違うコーデ?」
「ふっふっふ、そうよ。前回の失敗を活かして動きやすい格好で来たわ!」
そう言って、私はウラちゃんに胸を張った。
本日の私のコーデは、白いTシャツにサンドベージュ色のジャケットを羽織り、紺色のキャップを被って同じ色のデニムのジーンズを履いた、ボーイッシュなものである。肩にはいつもの白い肩掛けカバンだ。もちろん、赤渕の伊達メガネも装着済みである。
私のファッションを見たウラちゃんは、感嘆の声をあげて拍手した。ふふん、凄いでしょ。
「ワタルちゃん、可愛いからメガネ外した時のギャップ萌えが狙えそうなコーデだね!」
「でしょ〜?ウラちゃん、分かってるぅ!」
ウラちゃんに褒められ、ご機嫌度がかなり高まってきた私は彼女に対して向き直る。
「──それで、ウラちゃん。出来上がったのよね?」
なんと、お昼ご飯を食べていた正午過ぎに、ウラちゃんから『調整完了!』とメッセージが送られてきたのだ。あまりにも仕事が早い。私は即座に出掛ける仕度を整え、ウッキウキで駅のホームへ突っ走った。駆け込み乗車で怒られちゃったけど。
まあ、この後待ってるイベントを考えたら誤差だ。
そんな感じで気分を高揚させた私の質問に、ウラちゃんは笑顔で答えた。
「うん、もっちろん!行く?」
「行っちゃう!!」
もちろん私は即答する。
どんな見た目で、どんな性能の銃なのか、今からとても楽しみだ。
そんな私の顔を見たウラちゃんは、礼儀正しくお辞儀する。
「──それでは、本日もウララがお送りする、裏ルートで安全にご案内致します。よろしくお願いします」
しっかりと挨拶した彼女を見て、しっかりしてるなぁ……と思いつつ、私は口を尖らせた。少なくとも、友達同士の会話の時くらいはリラックスしても良いのに。
「……そんな他人行儀じゃなくても良いのに」
しかし、その言葉を聞いた瞬間に彼女は私の肩を捕まえ、ぷくっと頬を膨らませながら私と目線を合わせる。
「それはダメだよ!だって、今のワタルちゃんは"お客さん"でしょ?公私はしっかり分けなきゃ!」
そう答えた彼女は、私の目をしっかり見据えた。それが彼女のプロ意識というものなのだろう。私はそう判断して、頷く。
……そんな私を見たウラちゃんは、表情を笑顔に戻して私の手を握った。
「大丈夫、商品の受け渡しが終わったら元通り。そしたら、どこか遊びに行こう?」
「…うん。分かった!」
ウラちゃんの言葉を聞いた私は納得して、ゆっくり首を縦に振る。それを確認したウラちゃんは握った手を解き、前を向いて歩き出した。
「じゃあ、出発しよっか。行きも帰りもウラちゃんにお任せだよ!」
「
「せいかいっ!」
私は彼女に連れられて、アーリヒカイットに繋がる道を歩き出す。私の手を握っていた白い手のひらは、ちょっと硬くて暖かかった。
◆
ガラガラと、横開きの扉が音を立てながら開く。その扉の奥からは、私の鼻に火薬と鉄の匂いがほのかにミックスされた独特な香りを届かせ、ガンショップ特有のどこかリラックスしたような……それでいて硬質な空気が流れている。
扉を潜ればここが縄張りであると示すかの如く銃達が立ち並び、己の存在を見せつけるショーウィンドウ。濁った白色の光を灯す、少し汚れた天井の電球。そして銃達が道を開けるようにした視界の中央、木製のカウンターテーブルの向こう側に私達を待ち構えている人物が1人。
──ケンさんだ。
「おう、いらっしゃい。注文の品は完成してるぜ?」
私に向け、白い犬歯を剥き出しにして笑う彼は待ちきれないと言わんばかりに、テーブル上に乗せられた細長い木箱を優しく叩いた。きっとあの中に、注文した銃が入っているのだろう。私は伊達メガネを外して、視界のフィルターを切り替えた。
──瞬間、木箱を起点として黄金色の奔流が溢れ出す。心地よく、それでいて力強い。まるで昔見た映画の中に登場した奇跡の光景、『黄金色の麦畑』にその身を委ねたかのような感覚が、私の全身を包み込んだ。
……いや、あのちょっと待って。
普通の銃を注文したんだよね、私?
大丈夫?誰かの注文した銃と間違えてない??
立ちくらみが起きそうな程の目映ゆい光に包まれながら、私は頭の中で疑問符を浮かべる。私が注文した筈の補助機能もりもりな普通の銃は、いつの間にか神秘的で神々しく輝くトレジャーへと様変わりしてしまったらしい。どうしてこうなった??
「すっごいから、本当にすっっっごいからびっくりしないでね?」
私の隣で興奮した様子のウラちゃんが、待ちきれないと言わんばかりの表情を浮かべている。なんなら彼女のヘイローの内円が、凄まじい速度で上下左右に荒ぶっていた。
ウラちゃんのヘイロー、ちょっと落ち着いてくれないかな。内心いっぱいいっぱいな私の気持ちを汲み取ってほしいんだけど?
「う、うん。楽しみにしておくね」
私はぎこちない笑顔で彼女に答えた。
現状、私が取れる精一杯の誤魔化しで。
実は既にネタバレされてるんだよねこれ、酷いよね。興奮の火に水を刺されるどころか大量のオイルを投下されて、逆に火が消えかかってるこの感じ。ネット的表現なら、餌がお皿にうず高く積み上げられていく様子を見ているネコの気分だ。
情緒おかしくなる。
加減は
……だがしかし、私の目の前には黄金色の奔流が現在進行形で噴き出す謎の木箱が存在している。私は輝く木箱から目を逸らし、ちょっと現実逃避した。
──ウラちゃん、私は期待をいい意味で裏切られるっていう意味では間違いなく、人生の中で1番びっくりしてると思う。
……でもさ、これ。どこから突っ込めばいいのか分かんないよ。値段設定、本当にアレで大丈夫だったの???
光の奔流に負けず劣らず、ご機嫌ツヤツヤとした顔で木箱を見る彼女に、私は心配の目を向けた。
「それじゃ、お待ちかねのオーダーメイド銃だ。受け取りな!」
しかし、情報を処理しきれずに置いてけぼりな私を他所に、ケンさんが木箱を私の前へスライドさせる。それに合わせて、私を包む光の奔流の輝きがより一層強くなった。
ぶわりと風が巻き起こるように。
繭が私を包みこむように。
私は光に飲み込まれる。
光の中で私は瞠目した。
あの、本当に銃だよねコレ!?
なんか神託の杖とか、選定の剣的な謂れがあるタイプのアーティファクトじゃないよね!?!
内心で悲鳴を上げる。なんせ、私の前へ移動しただけでこれだ。アニメや漫画などであれば、間違いなく1話か2話辺りに起きる運命の出会いとかのそれだった。
「ね、ねぇウラちゃん。これ、本当に私が注文した銃だよね?」
戦々恐々とした内心と共に、私は木箱の中身を隣の彼女に尋ねる。すると彼女は不思議な表情を浮かべてこちらを見た。
「そうだよ?箱の大きさ、貼ったラベルもちゃんと同じだし。何よりワタルちゃんの銃を梱包したのは私だからね」
少し自慢気な表情で彼女は言い切る。
ヘイローの目もギュルン!と回転した。
私は観念して肩を落とす。
……それなら間違えようは無いか。
目からハイライトが消え失せた感覚を味わいつつ、私はケンさんへ向き直る。
「……これ、店内で開けても良いですか?」
「おう、もちろんよ。なんなら今日は試射までやってくんだろ?問題なんて最初っからねぇさ」
「分かりました、ありがとうございます」
ニヒルに笑いながら許可してくれたケンさんに頭を下げて、私は輝く木箱の上部へ手をかける。すると、私の腕を掴むように流れを変えた光が、箱を開けろと催促した。
……もう、何もツッコまない。
なんで光が感情を持ったように動いてるのとか、どうして推定銃(?)が光ってるのとか。全部、全部に絶対にツッコんでやらない。ウラちゃんの愉快に荒ぶり続けるヘイローを含めたこの光景は、どうせ私にしか見えていないのだ。ツッコミを入れ続けてもキリが無い。
私は木箱の蓋を握りしめ、一思いに持ち上げる。
「………………!?」
──光が溢れた。
箱を開けると同時に、店内には吹くはずのない少し強めの風が、私の髪の毛を揺らしていく。輝きは収まることなく私自身を包み込み、私は思わず瞳を閉じた。
───広がる紺碧、巻き起こる対流。
暖かな風に包まれた私が目を開くと、そこにはどこまでも澄み渡る青空が広がっており、
大空。天空。そう言いたいのだろうか。
私は今、身体を宙へ投げ出され、纏った風と共に強制スカイダイビングを体験させられている。
私は頭を抱えた。
「ねぇおかしくない??!なんで銃買いに来ただけでこんな目に合わなきゃいけないわけ!?」
落ちていく速度に合わせて体勢を変えながら、私は思いっきり空に向かって叫ぶ。不満爆発、今日のアンラッキーここに極まれりだ。私は空中にも関わらず、バタバタ手足をバタつかせて姿勢制御を試みる。だが、目の前の雲海達は私の様子をどこ吹く風と言わんばかりに、白く大きな身体を風に揺らした。
景色が突き抜ける。
雨が上へと遡っていく。
雲海を突き抜けていく私の腕が、暖かな光に飲み込まれた。
眩しさに、思わず目を覆う。
──瞬間、景色が変貌を遂げた。
雲のヴェールが吹き散らされ、生命を育む地表が見える。地表は黄金色の植物に覆われており、ざわざわ、さわさわとざわめき立てながら上を見上げ、開かれた空へと目を向けていた。
そして、次の瞬間。ばたばたと植物達が地表へと倒れていき、何かの文字を形作っていく。
『
「───なんで英語喋れるのよっ!!!!!?」
地上に向かって落ちながら、私は植物達が作ったミステリーサークルに対してツッコんだ。
「──ねぇねぇワタルちゃん。ボーッとしてるけど大丈夫?」
ウラちゃんの声が聞こえ、私はハッとする。
辺りを見回すと、そこは銃が立ち並ぶアーリヒカイットの店内であり、先程まで目の前に広がっていた青空と黄金色の大地は、私の前から綺麗さっぱり消え失せていた。私は震える指を拳で包み、動揺を隠して笑顔を浮かべる。
「……だ、だいじょぶだいじょぶ!平気!」
「そう?なら良かった」
目を瞬かせたウラちゃんはそう言うと、銃の方へと視線を向けた。一応、私の動揺は隠し通せたらしい。私は胸を撫で下ろし、ふっ、と短く息を吐く。
多分、あの幻像は十中八九、銃が私に見せてきたものだ。あの、身体の自由が効かない映像の中を泳ぐ感覚には覚えがある。古物や古本が何かを伝えたいと思っている時、私の頭に勝手に流れてくるヴィジョンだ。バイト中とかよく見るヤツ。
あれ、アッチ側から勝手に投げつけられるから苦手だ。バイト中なら大歓迎なんだけど。
そう考えて、私は頭の中でため息をつく。
意思持ちの物品は気難しい奴が多いからだ。
どうしたものか、と悩みつつ、私は今月まだ訪れていない、あの真っ黒ショップの事を思い出す。あそこの店長にこの銃を見せたら、なんと言われる事やら。懸念事項が増えた私は、意思持ちの銃を取り巻くあれやこれやでさらに頭を抱えた。
──まさかとは思うけど、これヴィンテージ品じゃないよね?
そんな考えが頭を過ぎって、私はウラちゃんに質問する。
「ねぇ、ウラちゃん。これのベースって
「違うよ〜。ね、ケンさん?」
「おう、新品ピカピカのを買い叩いて来たからな!」
ウラちゃんに尋ねられて、ガッハッハッと笑うケンさん。彼らの笑い声に包まれて、私はがっくり肩を落とした。
どうやらこの銃、新品らしい。
まさか意思持ちの銃を作ってくるとは恐れ入る。キヴォトスのどこを探しても、こんな名店見つからないでしょ。ある意味国宝級だ。とんでもない所に銃の製作頼んじゃったなぁ、と私は彼らに遠い目を向ける。
「──あ、そうだ。銃見なきゃ」
そういえば、光の奔流やら壮大な風景やらで件の銃の姿を見る事を忘れていた。私は手の中に収まっている、重量のある鉄の塊へと目を落とす。
──大きく、それでいて細い銃身に、私の身長に近い全長。コッキングハンドルや排莢口が普通の物より一回り大きく、しかし、あまりゴツさや厳つさを感じさせない、洗練されたデザイン。
そんなシンプルでスタイリッシュな造形を黒に染めた、金色の装飾が施されたスナイパーライフルが跨がるように、私の両腕を占有していた。
「えっ……と、大きくない?」
思わずそう呟くと、ウラちゃんが頷く。
「うん、もちろん大きいよ。だってそれ、対物ライフルだし」
「対物ライフル!?!?」
彼女の言葉を聞いた私はあんぐりと口を開けた。私が反動を抑えながらいい感じに撃つ事が出来る銃を、と注文した上で、手元にやってきたのはまさかの対物ライフル。私の予想を斜め25度くらい突き抜けた物を彼女達は渡してくるとは思わなかった。びっくりとかドッキリを軽く越えて、私の心はぎっくり腰だよ。予想外にも程がある。て言うか、取り回し悪くない??
「こ、これ大丈夫かな。私撃てるかな……?」
私がそう懸念を口にすると、ウラちゃんは軽くウィンクする。
「ふっふっふ、それは試射してからのお楽しみよ?」
何やら意味深に笑うウラちゃん。
絶対まだなんかある奴だこれ。
私は遠い目をしながら、面白そうに私達を見ているケンさんへと質問した。
「………ケンさん、試射の代金ってお幾らですか」
「おう、その銃に合う弾なら10発で400円だ。ソイツには5発装填出来るから、ざっと2マガジン分だな!」
「20発でお願いします」
「あいよ、毎度あり」
腕を組みながら笑うケンさんに、お財布の中から800円を渡す。彼はレジにお金を入れた後、カウンターの後ろの棚の1つを開けて、弾が入った箱を2つ取り出した。
「ねぇワタルちゃん、試射する前に銃の説明とかしなくて大丈夫?」
ケンさんから弾を受け取った私に、ウラちゃんは目を輝かせながら聞いてくる。対して、私は疲れきった声で答えた。
「演習場で聞く……、情報量でお腹いっぱいだからちょっと間空けさせて……」
もう勘弁して欲しい。
情報は鈍器じゃないのだ。
私は気持ちしおしおになりながら、大きな銃を両腕で抱え込む。
「──それじゃあワタルちゃん、演習場行こっか!」
あの、早いです。
ウラちゃん早いです。
待ってください後生ですから。
そんな私の声にならない悲鳴も届かず、彼女は店内の右側にある扉の前に立ち、私を急かすように手招きした。どうやら銃の説明をしたくてうずうずしていたらしい。私は天井を見上げ、気疲れでちょっとうずくまった。
しかし、逃避してても仕方ないので諦めて彼女の案内に従う。ブルーな気持ちを抱えたまま、重い足取りで私はウラちゃんの方へと歩き始めた。
ずっしりとした重量が、私の腕をたわませる。
私は何気なく視線を落とした。
黒の銃身、金色の装飾。
目を奪われるような美麗なそれに、扉の先の陽光が反射する。何か伝えたがっているのか何なのか、私には分からないけれど──
──『
私は応援されているような気がした。
「……ふふっ」
銃を撫でる。
意思持ちの銃を撃つなんて、初めての経験だ。
しっかり前を向いて、足に力をちゃんと入れる。
手に取り生まれた義務感か、はたまた私の別の気持ちか。
応援されたからには、マスターとして応えてあげなきゃと、私は重い銃を抱えて、1歩前に踏み出した。
──せっかくだし、名前で呼んであげた方がいいんだろうか。
──それよりもマスターって呼ばれたし、『相棒』って呼んであげてもいいかもしれない。
──でも、それだと『
歩みを進めていくうちに、そんな考えが浮かんでは消える。なんだかんだとは言ったものの、私も心のどこかでは浮き足立っていたらしい。扉に向かう私の足音は、いつの間にかリズミカルな音を奏でていた。
現金だな、と私は自嘲する。
でもいいや、と私は笑った。
「それじゃあ、張り切って行ってみよー!」
扉を開くと同時に、ご機嫌なウラちゃんの声が演習場に響き渡る。午後の光に照らされて、私は銃を抱えて外へ1歩、砂地の演習場に踏み出した。
・遠芽ワタル
神秘、変なの、ヘイロー問わず"視る"事ができる、不思議な体質を持った女子高生。今日も彼女の周りには、この世の不思議が満ち溢れている。
・羽生ウララ
銃の作成にかけては右に出る者がいないとされる、キヴォトス屈指のガンスミス。最高傑作に刻まれた彼女の装飾は、銃に生命を吹き込んだ。
・ケンさん
銃の目利きや店の運営、リスク管理等を一手に引き受けている、アーリヒカイットの剛毅な店主。今日、生涯掛けて観てきた銃の、最高地点が更新された。
・【????】
いのちすくすく。そらはきらきら。
おはようますたー、あなたはげんき!