ワタルとウララ   作:パンちゃんドラム

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 隔日投稿、これにておしまい。
 そこそこ読む人が居たらいいなと思いながら、書きだめ文章を続けます。

 次回の更新は一週間後です。


急転直下、顔面蒼白

 

 ケンさんの頼もしい宣言を聞いて安心した私は、【アーリヒカイット】のカウンターの奥、談話室でソファーに座って休んでいた。

 

 ケンさん達には結構な無茶振りをした自覚はあるのだが、彼の不敵な笑みを見るにアテがあるらしい。今はバックヤードの方で、ゴソゴソと何かを探すような音が聞こえてくる。

 ウラちゃんは説明の準備のために、私に麦茶を出した後、パタパタとどこかへ行ってしまった。

 

 ……そんな中、私は談話室の中でゆったりとくつろいでいる。

 ふかふかとは程遠い、だけど座り心地の良いソファー。

 換気扇みたいな、少し音が大きいエアコン。

 それらが私の体温をちょうどよく保ち、心地良さを与えてくれていた。

 

 

 

 ──瞼が落ちていく。

 

「はいはーい、お待たせしました〜」

 

 はっと目が覚める。どうやら室内の居心地の良さに、思わず船を漕いでしまったらしい。談話室にウラちゃんが入ってきたので、私は急いで眠気を振り払って居住まいを正した。

 

「──あれ、もしかしてワタルちゃんお疲れ?ここなら仮眠室もあるし、お昼寝した後にでもオーダーメイドの説明しよっか?」

 

 私の様子を見たウラちゃんが、心配したように顔を覗き込んでくる。

 

 ……眠いかと言われたらそうだけど、すごい眠いとかではない。帰ったらお布団ダイブが確定してるくらいだ。

 

 そう思った私は、彼女へ向けて首を横に振る。 

 なんせ、私がこれから共に戦っていく2丁目の愛銃なのだ。それを作る為にも、しっかり聞かなければなるまい。

 

 私は頬を自分で叩いて、意識をしっかり浮上させる。ウラちゃんはこのまま説明をしてもいいのか少し迷ったようだが、私のやる気を見て笑顔を見せた。

 

 

「さて、まずはワタルちゃんの適正に合う銃を言っていくよ。分からない所あったら聞いてね〜」

 

 長い桃色の髪を後ろで一纏めに結んだウラちゃんが、デフォルメされた銃が描かれた表を持ってきて、向かい側の椅子に座る。

 

 様々な項目がいくつも設定されているその表は、銃を扱ったことがない人でも自分の適正に合った銃が見つけられるよう、丁寧に作られている事が見てとれた。

 

「1つ目はアサルトライフル、さっきワタルちゃんから見せてもらった子だね」

 

 そう言った彼女は、つい先程まで店に預けていた私の愛銃、『All tale(アルタイル)』をテーブルの上に置く。ついさっきまで、ウラちゃんが軽くメンテナンスをしてくれていたのだ。

 

 帰ってきた相棒を、私は両手で迎え入れる。モスグリーンのストック部分に彫られたミレニアム製を示すロゴが、どこか得意げな表情をしたように見えた。

 

「……知っての通り、アサルトライフルは牽制、精密射撃、狙撃となんでもこなせるオールラウンダー。火力、射程もそこそこあって初心者にもおすすめ」

 

 私が相棒を抱えると同時に、ウラちゃんが説明を再開する。

 

「そして色んなカスタマイズが出来るっていう、器用万能で優秀な銃だね!」

 

 説明がスっと頭に入ってきた。

 私は軽く頷いて相槌を打つ。

 

 表を指差しつつ、身振り手振りを交えた彼女の説明を聴きながら、プロだなぁ……と、私は感心した。

 

「2つ目はサブマシンガン。通常のマシンガンより小さくて、なおかつストックを使って体に固定することで反動を逃がしやすく出来るの。ワタルちゃんは集弾性を含めた命中率が高いから、継続火力として見るならかなりのポテンシャルが発揮できると思うね」

 

「へぇ〜……」

 

 サブマシンガン、連射の強い銃。

 今までアサルトライフル以外使ってこなかったから知らなかった。小学校の授業より、ちょっと丁寧でちょっと詳しい説明を聞いて、私はサブマシンガンを撃つ自分の姿を想像してみる。

 

 ──軽快な音。弾の跳ねる音。

 集中砲火で敵を制圧しつつ、追い討ちの近接戦闘を仕掛ける私……。

 

 ちょっとアリかも。

 

 

「──そして3つ目、これが本命だね」

 

 

 私がサブマシンガンについての想像をしていると、ウラちゃんが神妙な顔付きをしながら私に向き合っていた。

 

 本命、という言葉を聞いた私は、思わず気を引き締める。

 

「──スナイパーライフル。単射長射程高火力、いいところに当てれば、文字通り一撃必殺が狙える銃だね」

 

「スナイパーライフル……」

 

 スナイパーライフル、キヴォトスでは後方支援武器として使われる事が多い玄人向けの銃種。

 

 トリニティの治安維持組織である『正義実現委員会』では、副委員長の『羽川ハスミ』先輩が使っている事で有名だった気がする。確か、立てこもりが起きた時に、犯人を窓越しの一撃で仕留めたんだったかな?

 

 ……ただ、火力がある反面、基本的な行動は他の銃種より複雑で、なおかつ適切なタイミングで撃たないと効力射にならない、というピーキーな性能をしている。

 

 ──総じて、私にとってスナイパーライフルは、比較的扱いにくい銃としてカテゴライズされていた。

 

「反動自体は大きいけど、姿勢や扱い方次第では無視できるし、何よりもワタルちゃんの撃ち方に一番合ってる銃だよ」

 

「そうなの?アサルトライフルとは撃ち方が変わりそうなんだけど……」

 

 私に合ってる、という言葉に疑問を持つ。

 いつも私が銃を撃つ時は、足を動かしながら視界に写った敵に弾を浴びせているのだ。その戦闘スタイルと相性がいいのだろうか?

 

 その疑問をぶつけてみると、ウラちゃんはうんうんと頷く。

 

「そうなんだよね〜、周りが認識出来ないくらい集中するって、スナイパー向きの適正なの。あとは射線を合わせるのが上手い、っていうのも条件に入るかな?」

 

「あー、言われてみれば確かにそうかも……?」

 

 どうやら、私が銃を撃つ時のルーティーンがスナイパーライフルとの相性が良かったようだ。

 

 確かに、そういう条件の適正で言うなら私に当てはまる。基本的にアサルトライフルを撃つ際は常時セミオートなのだが、上下左右にブレる照準を敵に合わせたりする事自体は、直感的に行えていた。

 

 つまり、私の戦闘方法から射線合わせの技術を抜き出して見ると、そうなるのだろう。ちょっと納得。私はふむふむと頷いた。

 

 ……しかし、私がスナイパーライフルを扱う事になったとして、気にかかる点がもう1つある。

 

「……でもさ、スナイパーライフルって反動も大きいんだよね?後方支援で使う分には良いんだろうけど、前線に万が一出るとなったら扱いきれないと思うんだよね……」

 

 ぶっちゃけて言うと、私の戦闘スタイルは、私自身のスタミナと身軽さをフルに活かした、近~中距離の高速戦闘なのだ。スナイパーライフルを扱うにしては距離が近く、持て余してしまう可能性が出てしまう。反動が大きいのも戦闘中のデメリットになりやすい、と私は考えた。

 

 しかし、彼女はどこか困った様子で頭に手を当てる。

 

「それなんだけど、ワタルちゃんの姿勢が1番ブレなかったのがスナイパーライフルだったんだよね〜」

 

 ちょっぴり申し訳なさそうな表情で、彼女は本命の理由を説明してくれた。ウラちゃんの羽があまり動いてないのを見るに、本当に悩んだ上でのおすすめなのだろう。

 

「あーね……、確かに他のよりかは撃ちやすかったかも」

 

 説明を聞いた上で、銃を撃った時の感覚を再度思い出してみる。

 

 えーと、まずマシンガンは……

 

『────っ!!』

 

 姿勢制御に必死だったから分かんなくって…。

 

 次のロケットランチャーは……

 

『おわぁぁぁぁぁぁっ!?!?』

 

 バックブラストに吹っ飛ばされて……。

 

 ……うん、やばかった銃TOP4はいいや。

 

 そんなこんなで銃を撃った時の感覚を思い出していくと、意外とウラちゃんが挙げてくれた3つは、然程身体に負担がかかっていないことに気が付いた。

 プロってすごい……。

 

 そういえば、『キヴォトス人には、その人それぞれに合う銃の種類が決まっている』という話を昔、彼が話していた事を思い出す。どうやら、私がアサルトライフルばっかり使っていたので実感が湧かなかったらしい。

 

 その事を彼女に伝えてみると、羽をパタリと動かして得意げな表情になった。

 

「そうそう、だから趣味で使う銃と実戦で使う銃を分けてるお客さんも居るんだよね〜」

 

「ほぇー……」

 

 そんな、日常生活では絶対耳にしないであろうトピックスをウラちゃんが教えてくれる。

 変な雑学が増えちゃった……。

 

「──ちなみに私は全種使えるよ。凄いでしょ?」

 

「聞いてないよ?でも普通にすごいわね、それ……」

 

 ふふん……と胸を張ったウラちゃん。部屋の明かりに照らされたヘイローまでもが、どこかドヤ顔をしている時のような雰囲気を帯びた。

 

 客に乗せられてどうする店員。

 

 端的に心の中でツッコミつつ、私は3つの銃種から吟味する。

 

 

 ──今まで通りの戦法を使いつつ、火力を底上げ出来るアサルトライフル。

 

 ──集弾性を維持しつつ、断線火力で確実性を上げられて爽快感も出やすいサブマシンガン。

 

 ──長射程からの一射必殺で、私の適正ともがっちり噛み合っているスナイパーライフル。

 

 ……とりあえず、アサルトライフルは除外として。

 

「うーん……」

 

「ふふっ」

 

 今の愛銃とほぼ同じ戦い方ができるサブマシンガンか、立ち回りそのものが変わってくるスナイパーライフルかの2択で、私は大いに悩むのだった。

 

 

 

 

「……よっし、決めた!」

 

「おっ?」

 

 うんうん悩む事30分、途中で頭から湯気が出たりもしたが、私はようやく手にする銃を選択した。用意されていた麦茶のグラスは結露していて、小さな氷がぷかぷかと浮いている。

 

 集中のしすぎで今まで何も飲んでいなかった私は、グラスを掴んで一気に麦茶を煽った。

 

「──っ、ぷはぁ……。あー……、また考えすぎちゃった……麦茶ご馳走様」

 

「ん、喜んでもらえて何より」

 

 ……一息つき、麦茶で喉を潤した私はウラちゃんへ向き直る。

 

「オーダーメイドの銃……スナイパーライフルで、お願いします」

 

 椅子に座ったまま、深々と頭を下げて依頼する。誠意を見せてくれた職人さんを含め、対応してくれた店員さんに対しても通すべき筋があるだろう。

 

 というか、そうあった方がいい。関係性は気持ちよくあれた方がいいって知ってるからね。

 

 そう考えていると、ウラちゃんも姿勢を正し、私へ向けて礼儀正しくお辞儀した。

 

「ご注文を承りました。当店、アーリヒカイットが誠心誠意、貴女様に見合う銃をお届けいたします」

 

 椅子に座りながらも、丁寧に。

 きっちりと着込んだ制服と、しっかりと背筋を伸ばし、羽を折り畳んでお辞儀をする。

 

 そんなウラちゃんの、しっかりとした大人な姿を見て……、ちょっとかっこいいと思った。

 

 普段からふざけ倒す彼女だけど、きっちり締めるところは締めるその姿勢。私は多分、そういう線引きがしっかりしている彼女だからこそ、ここまで仲が良くなれたのかな……とひっそり感傷に浸る。

 

 

 ──しかし、次の瞬間。彼女は勢いよく扉の外へ声を張り上げる。

 

「───オーダー、入りましたぁ!反オサ火タカ、爽快感マシマシのスナイパー一丁!」

 

「あいよぉっ!任せなァ!」

 

 ……ウラちゃんとケンさんの大声で、私が浸っていた感傷は即座に消え去った。台無しである。

 

 ていうか、掛け声おかしくない?ラーメン屋? 

 注文の取り方が客数回転デッドヒートしてる時の食堂とか居酒屋のそれだよ?

 

 風情もへったくれもない彼女達のやり取りに対し、私は何度目かも分からなくなったツッコミを心の中で大きく叫んだ。

 

 

 

「それじゃ、作る銃も決まった事だし、契約用の書類一式持ってくるね〜!」

 

「────いってらっしゃーい……」 

 

 非常にご機嫌なウラちゃんが談話室から出ていく様子を見送った後、私はテーブルに頭を乗っける。

 

 ──いや、うん。分かってたけど。分かってたけど、さ。こっちが完全に感傷に浸ってただけなんだけどさ……。

 

 このままだと心の中が風邪ひきそう……。

 

「あ゙〜……」

 

 私の内心は、ここまでの一連の流れにおける温度差でやられかけていた。なんせ、考え込む事が多い私の逡巡速度に対して、ウラちゃん達が挟む合いの手のタイミングがちょうどいいのである。ツッコミが止まらない。

 

 ……それに加えて、オマケ感覚でウラちゃんのヘイローという情報のノイズが付いてくる。情報量が多すぎて、もはや私はどこからツッコんで良いのか分からない。

 

「うぼぁ〜……」

 

 なので、一旦情報を処理する時間が必要だ。チルタイムである。机がちべたくて気持ちいい。

 

 ベッドにうつ伏せになって枕へ八つ当たりするように、私は頭をクールダウンさせていく。

 

 ……横を見ると、麦茶のグラスから結露した水が水溜まりを作っていた。ウラちゃんが帰ってきたら、布巾持ってきてもらおうかな……。

 

「…………」

 

 ──グラスを持ち上げる。すっかり氷が溶けて、麦茶を薄めた水が底にちょっぴり残っていた。

 

「……」

 

 飲んでみる。

 味の薄い、麦茶味の液体が喉の奥を滑り落ちていった。あまり美味しくはない。

 

「んー……」

 

 ──テーブルの上に頬杖を付いて、グラスの下から部屋の明かりを覗き込む。軽めのグラスの薄茶色が透けて見えた。グラスの底で水滴が踊っている。

 

 ……楽しそうだ。

 

「───」

 

 ……グラスの底が虫眼鏡みたいだと思った私は、それを通して部屋を見る。

 

 遮光カーテン、観葉植物。あるいは飾られたアサルトライフル。様々な景色が薄茶に染まり、少しだけ楽しくなってきた。

 

「───♪」

 

 鼻歌まじりにグラスを揺らして部屋の中を見回していく。扉、壁紙、本棚。時計にテーブル、エアコン、工具箱……。

 

 ──ふと、何かが心の奥で引っかかった。

 違和感を覚えた私は、何の気なしに部屋全体を見回す。

 

「うん……?」

 

 なにか、忘れているような……。

 そう思った私は無意識に、手元のバックをまさぐった。

 

 うーん、う〜〜ん、う〜〜〜ん…………。

 

 あっ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ──ガチャリ、と談話室の扉が開く。

 硬質な靴音を鳴らして、ウラちゃんが部屋に入ってきた。

 

「はーい、書類持ってきたよー」

 

「………」

 

「あり?」

 

 ……つい先程、私は一番大事なことが頭から抜け落ちていた事実に気付き、顔を真っ青に染めていた。

 

 そうじゃん、すっかり忘れてたけど買うからにはお金が必要じゃん……!!

 私、現金1万円しか持ってきてないよ……!?

 

 バックに触れた際に嫌な予感がして、お財布の中をひっくり返したらお出かけ用の1万円しか入っていなかったのだ。

 

 ちなみに小銭は28円。消費税にも届かない。

 

 

(お、終わったぁぁぁぁぁ…………!!?)

 

 

 この事実に気付いてしまった私の内心は冷や汗ダラダラ。眠気が吹っ飛んだ私の身体は震えが止まらなくなり、オマケに呼吸も浅くなっていく。内心で白目を剥いて一回転した私の心は、後悔に塗れて今、崩壊しようとしていた。

 

 マズイ、ホントにどうしよう……!!

 

 辛うじて、バックの近くへ置いていたハンチング帽を抱え、俯きながら震えている私を心配したのか、ウラちゃんが近付いてくる。

 

「おーい、ワタルちゃん。大丈夫?」

 

 ウラちゃんが、背中をゆっくりさすって落ち着けようとしてくれた。

 

 あっあっ落ち着く……。

 

 一瞬だけ彼女の体温が服越しに伝わり、安心感を覚えた。

 

 

 ──ごめんやっぱ辛いわ。

 なんせ、ここまでのウラちゃん、ケンさんの好意とかをまとめてぶち壊す可能性が出てきたのだ。心が痛いってレベルじゃない。

 

 せっかく準備してもらってる最中なのに……!!

 

 休日、しかも治安がだいぶ悪くなっている今日に、私の安全を鑑みた上で危険が及ばないように自慢のお店を紹介してくれたウラちゃんにも。

 

 自慢の銃達を弾代を気にせず試射させてくれて、真摯に私に合う銃を探してくれていたケンさんに対しても。これじゃあ申し訳が立たない。

 

 グラスの中から景色を眺めてはしゃいでた自分を殴りたい……!!

 

 自身に対して毒を吐くも、そうこうしている間に時計の秒針は小気味よく進んでいく。言わないと埒が明かない、というか、今言わないと非常にマズイという気持ちで、私は何とか声を振り絞った。

 

 

「ぁっ…ぁの……、わっ…わた、私…おか……お金、1万しか」

 

(お、終わったぁぁぁぁっ……!!!)

 

 

 内心でどもりすぎて逆に伝わらない、私自身の震え声を糾弾した。この時ばかりは、自分のコミュニケーション能力の低さを恨まずには居られない。そういうところだぞ私……!

 

 こんな状態では、とてもじゃないが弁明すらままならないだろう。視界がぐにゃぐにゃと波打つ中、私は申し訳なさでいっぱいになりながら、オーダーメイド銃の注文キャンセルを伝えるために、口を開こうとした。

 

 

「──ん?ウチの店、分割払いOKだから大丈夫よ?」

 

「勝ったぁっ!!!!!」

 

 ───私の脳内で、勝利のBGMが再生される。

 席から勢いよく立ち上がり、大きく上に両腕を上げたその姿は大変面白かったと、後にウラちゃんが写メ付きで話してくれた。

 

 

 

 閑話休題(落ち着きまして)

 

 

 

 大変お見苦しい姿を見せましたが、私のオーダーメイド銃は諦めなくても良さそうです。私はやりました。無敵です。

 

 神様、マジでありがとう。いつも感謝してるので、ついでに宝くじで3等賞当てさせてください。

 

 ……よし、告解終わり!

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫!!すっごい元気!!!」

 

「よかったねぇ」

 

 落ち込みからハイボルテージで気持ちを持ち直した私を、微笑ましい表情で見るウラちゃん。

 

 若干生暖かい目のような気もするが、今の私は気にしない。

 

 たとえ、頭を撫でられていたとしても、それは罪悪感による贖罪ではないのだ。

 

 

 ないったらないのだ。

 

 

「あ、そうそう。原価と素材代だけまででケンさんと合意したから、通常より75%offで買えちゃうよ!」

 

「おぉ、すっごいお得」

 

 そう言って、私に対して自慢気に予算の見積もりを見せてくるウラちゃん。75%offとか太っ腹すぎである。

 

 まぁ……なんか、そこそこ値段が張る金属が多いような気がするけど……多分大丈夫でしょ。

 

「そして今年度からキャッシュレス決済も導入しました。誉めよ、崇めよ、奉れ───!」

 

「ははーっ、神様仏様ウラちゃん様……!」

 

 神か?

 神だね。

 神だったわ。

 

 神の三段活用で自己認識を改めた私は、ウラちゃん達を崇め奉った。

 

 ごめん神様、さっきのお願い取消していいから、今だけはウラちゃん達を崇めさせてほしい。

 今度必ず教会に顔出しますので……!!

 

 

 ───なお現在、ガンショップの談話室内でトリニティ生がゲヘナ生に傅くとかいう、両校生徒が見たら噴飯物の絵面が出来上がっているのだが、ここには私とウラちゃんしかいないので問題は無い。

 

 神様に許可をとったので無問題(モーマンタイ)だ。

 多分、きっと、めいびー。

 

「ちなみにちなみに、お値段は如何程で?」

 

「んー、だいたいこの位かな〜」

 

 そう言って、ウラちゃんが電卓をカタカタ叩いて見せてくれた値段は42万円。見積もり書類の金額と見比べてみて、確かに75%offなお値段と確認できた。キヴォトス基準で見ると結構高めだが……。

 

「おけ、キャッシュ一括でお願い出来る?」

 

「まじ??」

 

「大マジ」

 

 払えちゃうんだなぁ、これが!!

 余裕の笑みを浮かべ、私はサムズアップする。

 

 こちとら中学3年の1年間、使う機会のなかったバイト代が溜まってるんじゃい。キャッシュが使えるなら余裕なのよ!ガハハ!

 

「ケンさーん!ワタルちゃん思ってた以上にいいお客さんだったよー!!キャッシュ即金ー!!」

 

「何ィ!?そりゃ気張らなきゃバチが当たるなぁ!!」

 

 ワハハと作業室であろう場所からケンさんの笑い声が聞こえてきた。私のために腕を振るってくれて、なおかつかなりおまけもして貰っている。

 

 銃に困った時は、絶対ここに頼ろう……!

 

 私は良縁に対して、ありったけの感謝の念を送ったのだった。

 

 そんなこんなで、アーリヒカイットでゆったりした時間を過ごしていると、気付けば時計の針が15時15分を示していた。

 

「あ、ヤバ。もうすぐ帰りの電車が来るじゃん」

 

「わ、急がなきゃ!急いでお会計するね!」

 

 荷物をまとめて急いでカウンターに向かう私達。キャッシュカードを使ってお会計を済ませ、即座に転身!

 

「それじゃあ、ケンさん。色々とありがとうございました!」

 

「おう、気をつけて帰んな!次来た時はとびっきりの一丁こさえて待ってっからよ!」

 

「はい!」

 

「じゃあケンさん、ワタルちゃん送ってくるね〜」

 

 ケンさんに挨拶する。ウラちゃんが私の隣へと並び、店の扉を開けてくれた。

 

 扉の外から眩しさが漏れる。

 

「ではでは、お客様のお帰りです。帰り道も私、羽生ウララがお送りさせていただきます。よろしくお願いしますね!」

 

 他人行儀……、どちらかと言えば接客時のわざとらしさで、私に恭しくお辞儀をするウラちゃん。

 それを聞いて、なんだかおかしくなった私は笑いながら、扉の外へと抜けていった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「今日は突然私のわがままに付き合わせちゃってごめんね〜。いきなりガンショップに連れてこられて混乱してたでしょ?」

 

 アーリヒカイットからの帰り道、私がサングラスを外して道順を覚えていると、ウラちゃんが申し訳なさそうに謝ってくる。

 

「──いいわよ別に。次から行く場所教えてくれれば良いだけだしね」

 

 全然気にしてないって訳では無いけれど、割と誰でもやらかすミスではある。次からやらなきゃ良いだけなので、その事に関して私はあまり怒る気は無かった。

 

「そっかぁ……。ありがとね、ワタルちゃん」

「うむ、良きにはからえ」

 

 ちょっとふざけた言い回しで、ジメッとした空気を吹き飛ばす。クヨクヨタイムなんて5秒で充分足りるのだ。何よりも、ここまでノリが合う友達とは元気にふざけあってた方が楽しいからね。

 

「あ〜、ワタルちゃんの帰る時間がもうちょっと遅かったら、その汚れた服も洗って返したかったんだけどな〜……」

 

「ま、それはしょうがないわよ。その分多めにまけてくれたんでしょ?」

 

「そうなんだけど〜……」

 

 うー、と納得出来なさそうに呻くウラちゃん。

 きっと、彼女なりの真面目さでもあるんだろう。彼女もまた、ケンさんと同じようにお客さんに誠実で、一度受けた仕事を投げ出す事はないという姿勢が見て取れる。

 

 良い店に出会えた。それだけで、今日1日のお出かけは価値があったと言える。

 

「───完成は7日後、ね」

 

「うんうん、任せて!迷惑をかけた事とかいいタンカ、その他もろもろ全部込みで…、張り切って作っちゃうから!!」

 

 ボソリと呟いた私の言葉に、力強いウラちゃんの宣言が返ってくる。私は、くるりと彼女に向き直った。

 

 ──まだ夕陽には程遠い、午後の陽射しが私達を照らす。

 

「期待してるからね、ウラちゃん」

 

「モチのロン!」

 

 彼女の元気いっぱいな返事を聞けた私は、安心したように再び歩き始めた。

 

 

 

 だんだんと、駅に近い大通りへと歩いていく。道中にあったねじれこんにゃくのオブジェとか、道端を過ぎった黒猫とか。私達は他愛も無い話をしつつ、駅まで楽しく向かっていく。

 

 私達が駅に着いた頃には銃撃戦も治まっており、ヴァルキューレのパトカーが忙しく走り回っていること以外、特に騒がしさは感じられない。

 

 どうやら、今朝から起こっていた不良達のお祭り騒ぎは収束に向かっているようだ。

 

「じゃあ、また今度ね〜!」

 

「はいはい、そっちも気をつけて帰ってねー」

 

 まだまだ元気が有り余っていそうなウラちゃんが、ぶんぶんと私に手を振りながら、人の波の向こう側へと消えていく。彼女に適当な返事を返した私は、空調の効いた涼しい駅の中へと足を進めた。

 

 

 

 ──ふと、何気なく振り返ると、暖かい陽射しがキヴォトスのビル郡に反射していた。遠くに聳え立つ白いサンクトゥムタワーと、澄んだ青い空のコントラストは、今まで見ていた景色とは、少しだけ違って見える。

 

 

 今日の私の運勢は可もなく不可もなく。服は汚れて、懐も寒くなったけど……、なんだかとってもいい気分。

 

 くるり、と駅の構内に身体を向けて歩き出す。

 ホームに響く電車の走り出す音が、嬉しそうに弾んだ気がした。

 





 キヴォトスの間違いトピックス

・『個人個人に合う銃は決まっている!』

 →そんなことは無い。キヴォトスにおいて、銃は個人個人の身体能力に合う銃を使ったり、戦術面で使う銃種を変えるのが普通である。

 余談だが、ワタルは間違った知識から。ウララは自身の感覚からこのトピックスを信じてしまっている。彼女達がこの間違いに、気付く事があるかは……今後、あるかもしれない。
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