本日はウララsideでお送りします。
彼女のはちゃめちゃな仕事ぶりを、どうぞお楽しみください。
追記:UAを見ていたら、拙作が50人以上の方々に読まれている事に気付きました。いつもご愛読して下さりありがとうございます。
ゆっくり進行ですが、頑張って書いていきたいと思います。
───カチ、カチ、と、壁に掛けられた時計がリズムを奏でる。時計の長針は10を指し、窓から射し込む光は、茜色に染まりかけていた。
───コツ、コツ、コツと、ウララが彫刻刀で木を削る。1つ彫刻刀を打つ度に、木材は鮮やかな風の紋様が浮かび上がらせた。彼女は集中し、1つ1つ丁寧に、銃の銃床部の木材を削っていく。
ガンショップ『アーリヒカイット』の一室。
ウララに与えられた専用の作業室に、木を打つ静かな音が響きわたる。
彼女は朝に朝食を取ってから、ずっとこの部屋で引きこもって作業をしていた。青いデニム生地の作業着に身を包み、髪を後ろで一纏めにした彼女の表情は真剣そのもの。作業に集中出来るように、トレードマークであるゲヘナ学園の制服は木の丸椅子の上に丁寧に畳まれており、作業室の壁際には、やる気を高めるためにウララが手掛けた自慢の銃達がズラリと並べられている。
「──ふぅ、これで一段落」
納得のいく出来栄えになったのか、彼女は腕で額の汗を拭いた。長時間同じ姿勢を取り続けた彼女の身体から、パキパキと身体に悪そうな音が鳴っている。それに気付いたウララは柔軟運動で身体を解し、身体の調子を1つ、また1つと平常時の状態まで治していった。
「んー、にしても。渡そうと思ってた銃が全部ハズレだったのはびっくりしちゃったな〜……」
そう独り言ちる彼女の目線の先には、ウララが手掛けてきた銃の数々。ありとあらゆる場面に対応出来るように、流通している銃と取り回しをほぼ同じくらいまで調整したウララの愛すべき子供達がそこにある。
「……割と寄せれてた自信はあったんだけど」
先日、『アーリヒカイットで銃を買う!』とワタルが息巻く前に撃たせた銃の一部には、ウララが組み上げた銃もあった。
しかし、適正アリだと思っていたアサルトライフルやスナイパーライフル、果ては携行火器のハンドキャノンまで若干弾かれたような様子がある。根本的に銃との相性が悪いとしか思えないその反応に対面した彼女は、大いに頭を抱える事となった。
「現時点での対応策としては、反動をガッツリ抑えて射線合わせをしやすくするくらいしか出来ないかぁ……」
悩ましげな表情を浮かべて、スナイパーライフルの銃床用に作っていた装飾を見る。
風が逆巻きながら、草木をどこかへと運んでいく様を彫り出した、躍動感溢れる木彫りの紋様。
舞い散る木の葉や風の流れがよく表現されたそれは、見る人が見れば一等級の芸術作品だと褒め称える程の流麗さ。
……ウララから見ても、渾身の出来栄え。
銃床の装飾として使うのがもったいないくらいの完成度だった。
「んー……」
ウララが右に首を傾げる。
まだ足りない。
彼女へ届ける最高の銃にするためには、彼女の身体が拒絶反応を起こさない、限界ギリギリまで反動を無くさねばならないのだ。
「うーん……」
ウララが左に首を傾げる。
しかし、いくら悩んでも答えが出ない。ケンさんとウララの持てる力を結集したとしても、今回のオーダーは間違いなく、過去一番の難題だった。
──ピピピピピ、ピピピピピ……。
「あ、やば。今日17時からお客さん来るじゃん」
予めセットしていたタイマーを見て、弾かれたように顔を上げるウララ。手早く装飾や工具類を片付けた彼女は、パタパタと駆け足で作業室を後にしていった。
◇
いつもの制服に身を包み、鏡の前で身だしなみを整える。桃色の髪、白い翼、トレードマークのにっこり笑顔!
にー、と口元を引き伸ばした私は、準備万端で鏡から離れた。
愛銃の一丁、
18時頃には帰るらしいけど、念の為にね。
店の看板を『OPEN』から、『CLOSE』へと変えて鍵を閉める。
「それじゃあ行ってきまーす!」
もはや5年の付き合いとなる、私のバイト先の店に挨拶をして、私はお客さんとの合流場所へ向かい始める支度をする。
時刻は16時25分、柔軟体操はしっかりと。
そう思った私は準備運動がてら、その場でカッコ可愛い決めポーズを模索し始めた。
◆
D.U.自地区、路地裏。そこは煌びやかなビルの光が彩り照らす表通りとは違い、スケバン、ヘルメット団などの不良達が根城を築く無法地帯。その中の1つ、入り組んだ路地裏に落っこちてきた不幸者を狙おうと、今日も今日とて『カナカナヘルメット団』は罠を張り巡らせていた。
彼女達のグループの数は15人、多いとは言いきれなくとも決して少ない数では無い。そんな彼女たちはいつも、弱きをいたぶり金を巻き上げ、その金で日々の生活を潤している。
端的に言い表すなら、チンピラ崩れ。だが、学園を溢れた生徒同士、なにか通じ合うものはあるのだろう。彼女達は不良とは思えないレベルの連携で獲物を追い詰める狩りの技術を使い、この一帯で幅を利かせていた。
「リーダー、ただいま戻りました」
「……ああ、どうだった」
──しかし、今夜は妙に獲物が来ない。人通りは元から少ないが、普段は縄張りと知らない不良のグループが通り過ぎるくらいは人が通る。そんな道を狩場にしているはずなのだが……、今日1日は異様なまでに静かだった。
違和感を覚えたカナカナのリーダーは、昼のうちに部下を1人、情報収集へ向かわせる。そして今、道を見据えて警戒するリーダーの前に、情報収集を終えた部下が帰還した。
「……どうやら『
その一言を聞いたカナカナのリーダーは、勢いよく椅子から立ち上がる。ガタガタと身体を震わせ、目を見開き、かつてその身に刻み込まれた恐怖を思い出した彼女は、無線機を掴み声を張り上げた。
「総員、すぐに撤収しろ!武器と荷物をその場に置いてもいい、急げ!!」
急いで現場に張り込ませた部下を、無線で呼び戻そうとするリーダー。しかし、無線機からはザーザーという砂嵐の音しか鳴らず、リーダーは時すでに遅し、と部下の安否を悟る。青ざめた顔のまま、彼女は情報収集に務めてくれた部下と共にその場を逃げ出した。
夕陽がオレンジ色に輝き、少しずつ沈み始めた。D.U.自治区のビル街の間を夕焼けが照らし、郊外に佇むアーリヒカイットの路面に影を産む。
そんな中、ウララは店の前で屈伸運動をしていた。
16時29分。時計で時間を確認した彼女はとてもいい笑顔を浮かべながら、スタンディングスタートの構えを取る。
「じゃ、今日も張り切って行ってみよー!」
16時30分。ウララは銃を構えて地を蹴った。
◆
D.U.自治区、郊外。大通りに程近い住宅街のY字路で、2人の不良生徒が下卑た笑いを浮かべている。
「だから私は言ってやったんだよ!てめぇのシケた財布じゃな〜んも買えねぇよ、ってな!!」
「ギャハハハハ!!カワイソー!!」
彼女達は誰かから奪い取った茶色い財布を宙に投げ、今日狩った獲物の悲鳴をリピートしているようだ。
──そんな彼女達の背後へ、薄闇に紛れた銃口が1つ。
スチャッ。
「おはようございまーす!!」
「「ぎゃあああああ!?!?!?」」
銃声二発。本日最初の犠牲者2名が空へ打ち上げられた。茶色いお財布をキャッチしたウララはどこからともなく取り出した縄を使って、気絶した不良生徒2人を手早くカーブミラーへ吊るしていく。
「ふんふんふふ〜ん」
ご満悦のようだ。ウララの手によって、不良生徒の現代アートが30秒足らずでカーブミラーに完成する。住宅街に住む一般住民が見たら、思わず二度見をするであろう光景がY字路の前に現れてしまった。
そして、銃声に引き寄せられたのか、ウララの近くにまた2人。次の獲物を感知したウララが、忍び歩きを開始する。
「なんだなんだ?」
「一体何が」
「2名様、ごあんなーい」
ギリリリリ……。
「ぐぇ……!?」
「がぁ……?!」
苦もなく獲物をサイレントキル。釣りたての魚をキュッと〆るかのごとく、獲物の意識をブラックアウトさせた。さながら、その腕前は熟練の狩人のよう。彼女は両脇に抱えた不良生徒を、薄暗い小道へ放り投げる。
「ふー。さて、次つぎ!」
そう言った彼女は、翼をはためかせて手を払った。
「ぐあっ!?」
「ペきょっ!?」
「ほげぇぇぇっ??!」
続いては、大通りに繋がる廃れた裏路地。
ウララが操るショットガンの銃声と共に、建物の壁に獲物達の凄惨な悲鳴が木霊する。身体がだいぶ温まってきたのか、彼女のテンションはもれなくハイに突入していた。
「おい、今の悲鳴まさか!?」
他の不良生徒の悲鳴を聞き付けたヘルメット団員が、他2人に退却を促す。
「やべぇ、早く逃げ」
しかし、死神の足音は止まらない。
「そいやーっ!!」
「「「うぎゃぁぁぁぁああああ!?!?」」」
掛け声一閃。
ヘルメット団員3名、轟沈。
フィニッシュムーブは鮮やかな三角蹴り。
リーダー格のヘルメット団員はビルの間に2回激突した後、力無く墜落した。
「はっはっは、不良はお星様よ☆」
なんとも恐ろしい。悪魔のような哄笑が、ビルの間に木霊する。これではどちらが悪役か分からないものだ。こうなるともう、大抵の輩には手が付けられない。大人しくヴァルキューレに通報しよう。
なお、到着までの無事は保証されない。
彼女達不良生徒は、見つからない事を祈って路地の隅っこで震えるしかない。無論、見つかったらジ・エンド。一巻の終わりである。
その後も、彼女の快進撃は止まらない。
「待って、助け」
「ダメ〜!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」
寂れたアーケード街で、命乞いをする不良をぶっ飛ばし。
「待って、今回私何もやってn」
「更生したら聞いたげる!」
「わぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
今回は何もやってないと、舐めた口を聞いた不良をきりもみ回転で空に打ち上げる。
なおも止まらぬ蹂躙。さながら入れ食い状態である。次々とお星様に変わっていく獲物達を見て、ウララはとてもニコニコだ。
まだまだ夕日の沈みきらない空へ、不良達が打ち上がっていく。これはD.U.自治区に生息する『仲介人』という人物が、定期的に起こす『
これら一連の虐殺現象は、全てウララがお客様へのサービスとして始めたもの。彼女曰く、お客様を店に案内する際、毎回毎回出会い頭の不良達を退けていてはお客様が安心出来ないから、らしい。以前、たまたまおでん屋台で相席した公安局局長の『尾刃カンナ』は、彼女の証言に頭を抱えた。
このサービスを幾度となく続けた結果、ウララがお客様の送迎をする時のみ、不良達は波が引くかのように自治区の暗がりへと消えていく。
そりゃそうだ、誰だって痛い思いはしたくない。日常的には起こらないものの、ウララのサービスは不良達にとって、恐怖そのものなのだ。逆らった奴らはすべからく粛清対象である。流石ゲヘナと言わざるを得ない。
そんな事もあってか彼女のお客様サービスは、D.U.自治区全体の治安を微妙に向上させていた。
そんな事実に、ヴァルキューレの公安局長はいつも頭を抱えている。彼女の愚痴飲みウーロン茶は、今日も止まることを知らない。
「じゃーねー!」
「「「ぬわらばっっっ!!!?」」」
そうしてまた3人、可哀想な不良達が沈む夕陽へ向かって打ち上げられる。
「ふぅ、さっぱりさっぱり。……んー?」
静かになった路地裏で、彼女はふと違和感を覚える。いつもは大遁走をする不良達を追ってちぎっては投げ、ちぎっては投げをするのだが、今回のルートは妙な静謐さを湛え、不気味なほどに静まり返っていた。
「……ふーん?」
囲まれている。数はだいたい10…、いや、前方に居る子達を含めれば13くらいだろうか?
十字路に立つウララは、足を止め、路地の両端へ意識を向けた。
カナカナヘルメット団の奇襲役2人は、路地の角で無言の視線を交わす。
──バレているのか?
──いや、まさか。
ヘルメット越しに顔を見合わせた彼女達は、自身の配置に付いた。
獲物達が蠢くその気配を感じ取ったウララは、潜み隠れて居るであろう不良達へ挑発する。
「新顔さんかな?……おいでなさいな」
奇襲役達は顔を見合わせ、即座に仕掛けることを決めた。彼女達は銃の残弾数を確認し直し、位置に着く。
暗く影が落ちるビル街の路地裏、人っ子一人通らないそこで、音も無く戦端が開かれた。
ビルに囲まれた、見通しの悪い路地の角。そこから銃口が2つ、向けられる。
それを見たウララは地面を蹴り、ビルの壁面へ向かって跳躍した。
──
カナカナヘルメット団の奇襲は、その跳躍によって空を切る。失敗を悟った奇襲役は、すぐさま路地へ飛び出てウララを狙おうとした。
急襲
壁に着地したウララの制服の裾が翻り、彼女の姿をビルの影へ溶け込ませる。次の瞬間、ウララは壁を蹴り、三角飛びの要領で奇襲役へと迫った。
路地へ飛び出てきた奇襲役の1人は、タイミングを合わせてきたウララの突進をもろに食らい、アイアンクローの要領でヘルメットを掴まれ、地面に叩き伏せられる。飛び出た奇襲役を囮として発砲しようとしたもう1人は、ウララが左腕に抱えたショットガンで即座に沈黙させられた。
──リロード音。
「あら、意外と知恵があるタイプ?」
ウララは沈黙した奇襲役2人を見て、ニタリと口元を歪ませた。
奇襲役達が倒された事で、所定位置で待機していたヘルメット団員達に動揺が走る。囮役を務める彼女らは、団員達の中でも早々に落とされる事は無いと、リーダーから選ばれた実力者2名だったからだ。
ウララへと仕掛けられた奇襲は、カナカナヘルメット団の定石である釣り戦術。囮とする団員がまずは対象を発砲、対象が運良く気絶した場合はそのまま金を巻き上げ、対処してきたら味方が揃っている場所まで囮が釣り出し、全員で袋叩きにする。これをするだけで、獲物はすぐに音を上げてきた。彼女らの勝利パターン、これが必勝の策だったのだ。
……しかし、この女は奇襲段階で囮を黙らせた。これまでとは一線を画す獲物の登場に、カナカナヘルメット団の団員達は浮き足立つ。その内の1人、カナカナヘルメット団のサブリーダーが、リーダーの指示を仰ごうと、無線機のボタンを押した。
──ザザッ……、ザー……。
……妨害されている。その事実に顔を青くしたヘルメット団員の目の前に、濃い影がかかる。
「ハロー?」
死神の銃口が火を吹いた。
バレるはずが無い。そう思っていたヘルメット団の隠れ場所に、獲物と思っていた者が、……羽付きの彼女が現れた事でパニックに陥るヘルメット団員達。1人、1人と倒れていく仲間たちに、残ったメンバーは震え上がる。室外機の裏、路地の角、果てはダンボール箱の中まで。余すこと無く彼女達は、ショットガンの銃撃で倒れていった。
「やだっ、やだっ…!助けて……!?」
──マズルフラッシュ
「なあもう勘弁してくれよ!!襲おうとした事は謝」
──マズルフラッシュ
「お前っ……、何が目的」
──マズルフラッシュ
ダンッ!
ヘルメット団を処理しているウララの羽根に、閃光が命中した。
ゆっくりと振り返る。
そこには、ぼろぼろになり、ヘルメットがひび割れた状態で震えながらアサルトライフルを撃った奇襲役の姿があった。
「やめろよ……!そいつらは、そいつらは大切な仲間なんだよ……!!!」
足を震わせ、怯えながらも奇襲役は仲間を傷付ける悪魔へと突貫する。
─────悪魔が笑う。
「うあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
マズルフラッシュが交差した。
轟音。
パラパラと舞う埃を払いながら、ウララがにこりと笑う。
「───度胸は合格、今度からは無策に突貫しちゃダメよ?」
満足そうな表情を浮かべて、ウララは目の前のヘルメット団員の首根っこを掴み、彼女を路地の横道へ投げ入れた。
……そうして、カナカナヘルメット団達は路地裏の横道に、十把一絡げとばかりに放り投げられた。この後、踵を返して戻ってきたリーダーの手によって、彼女達は介抱されるだろう。
この惨状を引き起こした張本人は笑顔を浮かべ、鼻歌交じりに路地裏を歩いていった。
◇
───D.U.地区の駅前広場、17時。
「ほほいっと到着。17時ピッタリ!」
「おぉ……、流石だねぇウララちゃん。今日もよろしく頼むよ」
少し骨のある不良達を軽く捻ってきた私は、時間通りに合流予定地に辿り着いた。
「それでは本日も、ウララによる裏道ルートでご案内いたします。安全安心なナビゲートで、しっかり店までお届けいたしますね!」
「ほっほ、頼んだよ」
月が顔を見せ始めた空の元、私はお客様を店まで案内を開始する。今夜もバイト先は賑やかになりそうだと感じ、私は夜風に羽をパタつかせた。
・羽生ウララ
不良生徒は纏めてぶっ飛ばす系な、仕事デキ一般女子高生。今日も不良を纏めてお星様に変えた。
仕事の邪魔にならなければお星様にする必要ないんだけどなー、と本人は語っている。
・尾刃カンナ
ウララの蛮行でいつも顔が険しくなっている、現ヴァルキューレ公安局長。D.U.地区の治安が向上している事は認めるが、彼女の私刑を止められない事に日々悶々としている。
ウララからの好感度はそこそこ高め。
仕事、人格は満点。面白みは50点。
もうちょっと遊びましょう。と、ウララは語る。