お、お気に入りが付いてる……!嬉しい!
大感謝です、これからも励みます!
あと、ゴールデンウィークですね。
書きだめがそこそこあるので、今日から6日まで隔日投稿致します。どうぞお楽しみください。
訳の分からない事を喚き散らしながら襲いかかってきたワタルをシメた後、私達は立ち幅跳びの記録を計測した。結果は言わずもがな、ワタルが381cmで私は362cm。ぼちぼちって感じの記録である。ワタルのドヤ顔はまあまあウザかったけど。
とは言え、他の種目は週の初め頃に粗方終わっているため、これでワタルがぶうぶう文句を言う事も無くなる筈だ。心の安寧を取り戻した私は、ひと息ついて安心する。
そして私とワタルは今、彼女と約束した通り、お昼ご飯を奢るためにトリニティ総合学園の『学生食堂』へやって来ていた。
「───遂にやってきたわ……。トリニティの胃袋、『学生食堂』!」
「体育終わったのに元気だね、アンタ」
そんな中、約束を取り付けてきた当の本人は微塵も疲れを感じさせないケロッとした顔で、初めて訪れる食堂に喜びの声を上げていた。体力測定が終わった直後だと言うのに、彼女の元気はまだまだ有り余っているらしい。体力お化けめ。
「それじゃあ、約束通り高い定食頼むわよ。お財布の中身は充分かしら?」
溢れ出る食欲を隠しきれていない笑顔で、ワタルはこちらの方を向く。まるで飼い主が奮発して買ってきた餌を目の前に置かれたワンコみたいだ。私がこの前テレビで見た、『世界のおもしろワンコ映像百連発スペシャル』の中の1つの映像に、今のワタルの姿が重なって見える。
私はため息をつきながら、彼女の手に2000円を握らせた。
「約束は約束だからね……、まあ大丈夫でしょ」
「おっけ、じゃあ行ってくる」
私のお金を受け取ったワタルは、意気揚々と歩き出していく。
……どこに向かってるんだろ、アイツ。
私は彼女が退いた場所から見える、2つ並んだクリーム色の券売機を見て思った。
「……ワタル、そこに券売機あるよ」
「え」
私がその券売機を指差すと、2、3歩歩みを進めていたワタルがぎこちない動作でこちらに振り向く。どうやら浮かれすぎてて気が付かなかったらしい。そんな事だろうとは思ってたよ。
毎度の事ながら、どうしてこうも注意力散漫なのか。呆れた私はワタルの肩を叩き、フリーズしている彼女を再起動させた。
「ほら、行くよ」
「えっ、あっ、あ。うん……」
若干挙動不審ながらも、彼女はなんとか再起動を果たしたようで、顔を赤らめさせながら私の後ろに着いて歩き始める。
──なんか、中学時代もこんな事してたな……。
私はふと、昔の記憶を思い出して遠い目をした。
「ねぇ」
券売機に彼女を連れてきた私だったが、彼女の押したボタンを見て思わず声を上げる。
「──何よ、言ったじゃない。高いの頼むよって」
「それにしたって限度はあるでしょうが、大盛りまで許可した覚えはないんだけど?」
私は目の前で点灯する2つの赤いランプを指差して、彼女の言葉に口の端をヒクつかせた。
彼女が今、注文しようとしているのは食堂でもかなり高めの値段が設定されている定食の、『薄切りローストビーフ定食 〜春野菜のマリネを添えて〜』。それの大盛り版である。
通常の物よりも全ての食材が3割増しな『薄切りローストビーフ定食(以下略)』の大盛り版だが、お値段は通常価格の5割増し。絶妙に採算が取れているのかが分かりにくく、それでいて大盛りすると一食2000円を越えるという……学生のお財布事情を鑑みれば、もの凄いダメージを叩き込んでくる高級定食だ。
それをあろう事か、ワタルはその大盛りのオプションを付けて、澄まし顔で私からタカろうとしている。ここまで何も言わずに静観していた私でも、彼女のその暴挙は止めざるを得なかった。
「アンタねぇ、いくらタカろうったって遠慮ってものはあるでしょ」
私は腕を組みながら、トントンとつま先で地面を叩く。
「え、自分だけで味わうのもなんだし、カズサにも分けてあげようと思ってたんだけど」
……しかし、きょとんとした顔で彼女は不思議そうに首を傾げた。
「…………」
「だってこれ、カズサのお金じゃん。だったら大盛りにして一緒に美味しいもの食べようかなーって」
「……それ、先に言っといて欲しかったかな」
なんだ、また私の空回りか。
私は憮然とした顔を彼女から背ける。
後出しジャンケンで繰り出された彼女の価値観に、私の視線は斜め下に向いた。
ふとした時に言動に挟まり、こちらのペースを乱す彼女の独特な価値観。『ご飯は一緒に食べると美味しい』だったり、『勉強すると世界が面白く見える』だったりするそれは、スケバン時代から常に私の行動の機先を制して不意打ちしてくる。
「本っ当にコイツは……」
先に言えよ!と公共の場で強く言えるはずもなく。
私は乱暴に頭を搔いて、息を整え心を落ち着けた。
アンガーマネジメント、怒りを6秒我慢して心を落ち着ける方法。高校に上がるからと言って、モモトークでワタルが教えてくれた方法を使って、私は心を制御した。まさか教わった本人に対して使う事になるとは思ってはいなかったが、実践するには良い機会だと思う。
息を吸って、吐く。
深呼吸。
「はー……もう、今回だけだからね……」
「ん、了解!」
軽い返事を返す彼女に呆れ返りながら、私も自分の昼食を注文するために、券売機のボタンを押した。
「あ、お金足りない。小銭小銭……」
「おい」
「いただきます、────おいしい……」
私が注文したサンドイッチを持って席に戻ってくると、彼女は既にローストビーフ定食を食べ始めていた。いつもは勝ち気な表情をしている彼女の、つり上がっている目尻は幸せそうに垂れ下がっており、ローストビーフを味わう口元はとてもだらしなく緩んでいる。
近年稀に見る、ワタル渾身の恍惚の表情だった。
「薄切りなのに香り高い……ソースを付ければ引き立ち2倍……!?誉れ高すぎる、この定食お買い得過ぎでは??」
「相変わらず訳わかんない事言っちゃって。お高いんだからそうなんでしょ、多分だけど」
お肉を飲み込み、素っ頓狂な事を言い始めた彼女にツッコミを入れながら私も席に座る。美味しい物を食べた時の彼女はいつもこうだった。具体的な美味しさを語ったかと思えば、意味不明な言葉を口走る。いちいち発言内容にツッコミを入れるのも疲れるため、私は目を輝かせて同意を求めてくる彼女の視線をスルーした。
食レポする芸能人でも、彼女の口走る単語の羅列よりかは一貫性があると思う。今度、芸能事務所にワタルの履歴書でも送ってやろうかな……と、私は柄でもない嫌がらせの計画を考えた。
──すごい!ドロドロすぎるスープですね!ヘドロ超えてデロリアンってレベルで濃厚です!!
……面倒くさい事になりそうだし、やめとくか。
「カズサはロマンが無いわね……ほら、食べてみて」
毒にも薬にもならない彼女の未来について考えていたら、ワタルがいつの間にかローストビーフが3枚取り分けられている小皿を、こちらに向けて差し出してきていた。ご丁寧に小皿の隅には肉に掛からないよう、器用にソースが分けて置かれており、本来のローストビーフとソースを付けた時の食べ比べが出来るようにされている。
こういった気遣いは出来る癖に、なぜ普段の言動がああも雑なのか。今も昔も分からない、彼女の不思議な部分だった。
「野菜もちょうだい、バランス悪いし」
しかし、ローストビーフだけだと栄養に偏りが出そうだな……と思った私は、大盛り版で増えているであろう春野菜のマリネを彼女に要求する。
それを聞いた彼女は腕を組み、なぜか私に対して優しく微笑みかけてきた。
「───成長したわね、カズサ……」
「何目線で言ってんのよアンタは」
優しい顔で私を見ながら頷く彼女に、思わず私はツッコミを入れる。彼女が言いたい事は分かるけど、それはそれとして釘を刺さないと調子に乗ってボケ倒し始めるのは何なのだ。それに対してツッコむ羽目になるこっちの身にもなって欲しい。
『1に健康、2に健康。身体は何時でも資本です。私に負けた数、パプリカ丸かじり体験1回ね』
『上等だコラァッ!!!』
ちなみにだが、ワタルが言っているのはこの時のことだと思われる。当時、喧嘩っぱやかった私の主食は、手軽に食べられるジャンクフードなど出来合いの物が多かった。そんな私の食生活を見かねたのか、ワタルは澄まし顔で私を挑発し、私は通算2桁に登る辛酸を、文字通りその舌で味わされている。当時の私はヤケクソで、枕とパプリカに八つ当たりした。
が、栄養バランスのいい食事をしながら身体を動かしまくっていたお陰か、私の身体能力は彼女に釣られてどんどん上昇。なぜか20人までの普通の不良相手なら、正面きっての銃撃戦を傷1つ負うことなく制圧出来るようになってしまった。
そしてその後、後方でサムズアップするワタルにもイラッと来たので、ついでにボコボコにした記憶がある。
「あのジャンクフードを気にせず食べてた子が、今じゃ栄養バランスを考えて食事する……。私、とても誇らしいよ……」
「アンタがそう仕向けたんでしょうが、忘れたとは言わせないよ」
とは言え、今じゃ普通の女子高生に戻って自炊を始めた私にとって、あの時の出来事は変え難いものであるのは事実だ。身体を張って私の食生活を変えてくれた彼女には、今はとても感謝している。
私は春野菜のマリネを小皿に受け取って、サンドイッチを食べ始めた。
私が注文したのは、食堂の中でも安い部類に入る『三色彩りサンドイッチ』。ベーコンとフレッシュトマト、レタスをマヨネーズを塗ったふわふわのパンで挟み込んだ、サンドイッチ系列の中でもそこそこ人気があるメニューだそうだ。食堂のサンドイッチは安くて美味しく、しかも片手で食べられてお手軽という事で、入学してからちょくちょく私も買いに来ていたりする。今回チョイスした『三色彩りサンドイッチ』は、レタスの水気とトマト酸味のお陰でしょっぱいベーコンが程よくさっぱりしており、パンとマヨネーズで味が整えられていてかなり美味しいと話題の物だ。1口食べただけで前評判通りの美味しさが舌の上で広がり、思わず口の端から笑みがこぼれる。
「…………」
「……あげないよ」
何やら前方から視線を感じたのでそちらに目を向けると、ワタルが私の食べかけのサンドイッチを凝視しながら固まっていた。左手にフォークを持ったまま半端に口が開いた状態で固まっているので、彼女の姿がすごくアホっぽく見えてしまう。
ワタル、ここまで食い意地張ってたっけ?
地面に相手を這いつくばらせて、冷酷に敵を嘲笑う彼女の姿を間近で見てきた私は少し不思議に感じた。
「…………はっ!」
「おはようワタル、いちいち固まってたら昼休み終わっちゃうよ」
私がそう指摘すると、彼女はあたふたと焦ったように言い訳し始める。
「──だ、だってなんかカズサの食べ方が美味しそうに見えたんだもん!」
空いてる右手で私を指差しながら、彼女は私に抗議してきた。そんな事で固まってたんだ、ワタル。
「そう?次はアンタも頼めばいいじゃん」
「〜〜〜〜〜、そうする……」
私が遠回しに『自分で買いなよ』と伝えると、彼女はちょっと唸った後、諦めたように肩を落とした。
そのやり取りの後、数分の間静かな時間が続いていく。私は3つあったサンドイッチ2つを食べ終え、彼女から貰ったマリネと、ローストビーフに舌鼓を打っていた。
「────……」
その間ワタルは、食事中にも関わらずスマホを開き、ちょっと考え込む素振りを見せながら、定期的に画面に何かを打ち込んでいる。
「ちょっと、マナーが悪いよ」
再び考える様子を見せながら、定食に付属されているバケットの1切れを口に咥え込んだ彼女を見て、私は思わず注意した。彼女は私の方を少し見た後、口に含んだバケットを1口分、水で流してから話し始める。
「あ、ごめん。時間が経ったら体力測定の結果忘れちゃいそうだからスマホに打ってた」
「なんでさ」
不思議に思った私は、彼女に意図を尋ねた。これまでそういった事に口煩かったのは、目の前に座る彼女の方である。私の頭の中で、さらに『?』マークが大きくなった。
「あー、んとね……。最近新しく友達が出来てね。その友達が体力測定の詳細なデータが欲しいって言ってきたから送ってたの」
「OK、一旦話を整理しよっか」
圧縮言語やめろ。
私は半目で睨みながら、彼女の話の聞き取りをする。
「──まず最初に、新しく友達が出来たんだっけ?」
「うん、そう。ゲヘナの子」
信じられない答えに耳を疑った。
まさかあの喧嘩っぱやいワタルが、同じくらい喧嘩っぱやいであろうゲヘナの生徒と友達になる?河原で拳で語り合ったのだろうか。私はぽやっとした顔をしてこちらを見る、呑気そうな彼女の額に手を当てた。
「え、何すんのよ」
「熱出てないか確認してるだけ」
「失礼すぎるでしょ!!」
左手を使って私の手を払い、頬を膨らませてワタルが怒る。熱が出ている様子も無くこの反応を返してくるなら、彼女が言う通り、本当に新しく友達が出来たらしい。
「まさかあの、銃より先に顔に向かって拳を飛ばすワタルに新しく友達が出来るとはね……。おめでと」
「
新たに友達が出来た事を祝うと、彼女は不満気な表情を浮かべながらも、どこか嬉しそうにマリネを頬張る。どうやらその友達とやらと、ワタルの関係性は良好らしい。じゃじゃ馬な彼女が気に入るという事は、相当その友達は彼女の手綱の握り方が上手いようだ。
「ちなみに、その友達と会って何週間?」
「え、4日」
OK、友達も"そっち"側ね。
頭が痛くなってきたのは気の所為だと思いたい。
「それで?なんでその子はアンタの体力測定のデータ欲しがってるのさ」
それはそれとして、気になった部分について質問する。なぜその子はワタルのデータを欲しがっているのだろうか。幾つか思い浮かぶ予想の中に嫌な物が混じり、私は彼女の事が少し心配になった。
大丈夫?変な詐欺師に騙されてないよね?
「うん、実はね。その子がバイトでガンスミスやってるんだけど……」
「バイトでガンスミス?マジで言ってる?」
想像とは違う答えが彼女の口から飛び出てきた事に、驚いて聞き返す。
「そうそう、銃の整備とか、銃の売買するやつ」
「え、すご。よく知り合ったね、そんな子と」
「一応先輩だよ?しかも、カズサが紹介してくれたカフェで会ったの」
「へぇ〜」
聞いてみれば、その人とは私が彼女にクーポンコードを送ったカフェでたまたま出会ったらしい。運命か何かのような出会いをした彼女に少し羨ましさを感じた私は、どんな人なのか気になった。
「その人、どんな人よ?」
「うんっとね〜、イタズラ好きなタイプかな?」
おっと?
笑顔でそう言った彼女を見た私の頭の中に、さっき考えていた幾つかの悪い可能性が再浮上し始める。
「その人凄くてさ〜、銃にめっちゃ詳しくて、なんでも撃てるらしくてね?私の新しい銃も作ってくれるって言ってたから依頼しちゃった!」
「ワタル、大丈夫?それ騙されてない??」
う、胡散臭い……!?
詐欺師が被害者を騙す時の定型文の1つじゃないっけそれ??
私は彼女の事がとても心配になってきた。
「え、大丈夫だよ。詐欺だったら問答無用で顔面凹ませるし。今回は大丈夫」
大丈夫、と両手指を合わせて微笑む彼女から一瞬だけ凄まじい気迫が発される。その気迫に気圧されたのか、周囲で雑談していたお嬢様グループのお喋りが一瞬だけ静まった。
「……相変わらずバイオレンスだね、アンタ。でも流石に心配なんだけど?」
私はそれを無視して彼女に問い掛けると、渋々と言った様子でスマホを操作し始める。そして私に見せ付けるように、画面に拡大表示されたマップを見せてきた。
「ほらここ、ガンショップ『アーリヒカイット』だよ。口コミ欄見てみて」
彼女が差し出してきた水色のスマホを受け取り、お店の口コミ欄を確認してみる。
・お店から叩き出された。☆1
・銃の扱いがとても丁寧で、いつもお世話になっています。また整備をお願いしたいです。☆5
・受付の人が綺麗!接客も丁寧で、分かりやすい説明や豊富なサービスなど、概ね満足でした!
ただ、火力が高い銃ばかりのおすすめが多かった事は少し残念です。☆4
・銃の価格が高く、一丁買うために相場の2、3倍必要だった。二度と利用しない。☆2
………流し読みしたところ、賛否が入り混じったレビューが多かった。お店の総合評価は☆4.3で、比較的良いお店であるという事は判断出来る。私はスマホを返して、ドヤ顔のままバケットを口に運ぶ彼女に向けて質問した。
「……まあ、つまり安心できるお店だったからお任せしたって事ね」
私の質問に対して、彼女はバケットを咀嚼しながら頷く。
「うん、ならいいんだけど……」
そこで私は言葉を区切った。まだ気になる事があったからだ。ワタルはバケットを飲み込んで、私の方へと向き直る。
「何よ、歯切れ悪いわね」
「ん……、いや。ワタルの銃、まだ使えるでしょ?買い換える必要あるのかなって思ってさ」
彼女の持つ深緑色のアサルトライフルを思い出して、私は疑問に思ったのだ。ストック部分はまだ伸ばせるみたいだし、まだまだ現役で使えると思っていたんだけど……。
「ん……あ〜、アレね……。ほら、音なるじゃん」
「あぁ〜、"アレ"かぁ……」
ものすごく気まずそうな顔をしたワタルが、私から目を逸らす。私も彼女が目を逸らす理由がアサルトライフルに搭載されたその機能の事だと察し、口の奥の方でそれをぼかした。
彼女のアサルトライフル、名前は『
『トリガー!』
という、アルトボイスな少女の声で音声が流れる仕組みになっている。どうやら小学生の時に買った銃だったらしく、当時のワタルがかっこいいと思って付けて貰った機能だったんだとか。
スケバン時代の彼女はよくその機能を使いながら銃撃戦をしていて、音声を馬鹿にしてきた連中はまとめて彼女の拳と銃弾とスリッパでタコ殴りにされていた。セミオートの時よりも威力が上がるんだよね!と生き生きしていた彼女が、この機能を自慢げに語っていた事を思い出す。
「そうだよね……、年齢的に恥ずかしいもんね……」
ようやく彼女も"それ"から卒業する時が来たのか、と感慨深くなった私は、先達として彼女の選択を祝福した。
「いや、奇襲とか隠密行動に向いてないじゃん」
「根っからの
上げて下げるなよ。
私の期待を返してほしい。
三白眼を彼女に向けて、私は話の続きを促す。
「……ちなみにお値段は?」
「75%offで42万、中3の時に貯まってた貯金が3割強消し飛んだわ」
「高いってツッコめばいいのか、まけてくれてる事に感謝してこいって言えばいいのか、私分かんないよ……」
私はとりあえず、彼女の新しい銃についてはもう何もツッコまない事を決めた。
結局、何を言っても本人の選択だ。
私は彼女が詐欺被害に合わない事だけを祈っておこう。
そう結論付けて、私はワタルから貰ったローストビーフを口に運び、彼女の幸せそうな顔を眺める。元気そうでいいな、と彼女の浮かれた様子を見て、私はなんとなくそう思ったのだった。
・遠芽ワタル
よく食べてよく休む、元気いっぱいの元スケバン系女子高生。カズサの食生活を改善した実績を持つ。
愛銃の名前は『All tale』。
元になった銃はアサルトライフルのAK-12。
彼女の兄が命名し、ワタルが好きな要素を盛り込んだ。ワタルのために最新式の銃を買い与える辺り、彼女の兄はだいぶ過保護。
・杏山カズサ
元相方のボケ発言が止まらない事に頭を痛める、苦労人系元スケバン女子高生。現在進行形で地力がワタルよりも上で、本気を出せば5分ぐらいで彼女を鎮圧する事が出来る。
愛銃の名前は『マビノギオン』。
元になった銃はブレン軽機関銃。
カズサが命名したようで、由来はとある騎士道物語の中から取ったそう。実はワタルのスケバン名を考えたのも彼女だったりする。