TWINZAETH AFi - Lunar Ruins   作:PUNICA

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序章(Ver.1.01.0)

 過去に一度、死んだ事がある。

 私が持つ全ての感覚器官で『死』を体感したのだ。身も心も人工物である私が、生死の概念を理解する筈もないと馬鹿だの阿呆だの言われたが、断固として私はこの身を以て死を体験したと言い張り続けるまで。

 

 私はヒーリア。

 正式名称は『王室御用達のネイラー社製の、西の大洋に浮かぶ諸島帝国領デネフォージ、その王の第一子たるシェイン・ニコラウス・デネフォージの機巧従者(サーヴァント)(特別仕様機)』だが、非常に長いので開発コードネームのまま呼ばれている。兎に角、私はシェイン王子だけの為に造られ、彼だけの為に働いた。

 働いたとはいうが、王子は身分の割には非常に欲の少ない──言ってしまえば楽な子であった。だから私の性格設定も非常にのんびりとした感じになってしまった。日々、主人の我が儘を処理し続けて消耗するだけの存在ともいえる機巧従者としては、異例のケースになったらしい。

 だがシェイン王子は『忌み子』でもあった。それ故に周りから白い目で見続けられ、生まれつき高い魔力を常人以下にまで制御する目的で技術を叩き込まれた。魔導的制御は非常に神経を使う技術で、まだ齢二桁もいかない子供にとっては荷が重すぎるものだった。

 気丈な方ではあったが、それでも精神が憔悴しかける王子をどうにかこうにか支えた。結論でいえば、側にいてあげるだけで良かった。本当に楽な子供だった。

 更に王子は十二才になった時、近隣国の王女の従者になる事が決まっていた。後に許婚関係に発展するのが慣例的なパターンである。あくまでこれは慣例であって、従わなくて良い。何となく思うところがあったので移動中、王子にはこれを何度か言い聞かせた。

 

 まあ、それは置くとして。

 死亡する直前の出来事なので虚覚えだが、そこで事件が起きた。

 

 『非道的魔導実験の賜物』とも『来るべき超未来の生物』とも『邪神の落とし子』とも謂われる深淵生物の大群が、車で移動中にポンッと現れた。

 それでも最強剣士(事実)である王様、最強魔導士(見込み)であるシェイン王子、最強従者(自称)たる私がいれば何とか突破できる程度であった。しかし敗北した。私は大破、王と王子は消息不明と最悪の形になった。

 

 その事実を知ったのは後になった二ヶ月後。ネイラー本社のピット内である。私の素体は十数年分の最新鋭技術で更新され快適である筈なのに、ただひたすら苦痛だった。記憶媒体にノイズがあったらしく、事件を事細やかに想起する事すらままならない。

 自分が唯一死亡を確認できたのは自分だけという皮肉な結果だった。先程もいったように、人工物故それすらも否定されたのだが。

 

 あれから私は毎日、記憶媒体の最適化と復元を行っている。これはその一環だ。

 

 二十七回目の復元作業、終了。

 結果は失敗。これからも。

 

 




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