仮面ライダーエンブリオ 〜Episode 0〜(エイプリルフール企画) 作:大島海峡
「どこ行ったんだろ為供クン、もう授業始まっちゃうよ?」
誰にともなく零したのは、八重岸りんくだった。
玩具は教師に没収されないようしまい、右を見て、左を見てクラスメイトの姿を探す。
だがそうこうしているうちにチャイムが鳴った。
数学教師が、彼女を含めたまだ立っている生徒に、着席を促す。
だが、座る寸前、窓越しに、ロータリーに、若い男が侵入してくるのが見えた。
黒いVネックのシャツの上から羽織った、ロングコートを靡かせて。
だが、瞬きをしないうちに、突然男の影が消えた。
見間違えか。
そう思った次の瞬間、けたたましい破砕音と共に、窓ガラスが外側から突き破られた。あの男が、りんくの机の上に立っている。
ここは、三階のはずだ。人間が一跳躍で、侵入できる位置ではない。
眉のない、傲岸不遜な頬の中心から顎にかけて、傷痕が一線、引かれている。
鷹のような鋭い眼差しが、りんくを捉えた。
「まだ懲りずに、ごっこ遊びをしてるのか」
そう、低くせせら笑いながら。
男の言葉が飲み込めず、腰を中途で浮かせたまま、りんくは身をすくませて固まっていた。
「撃つのか、それを。試してみるか? 木偶人形」
そしておもむろに、背後に退いた教師に向けて問いかけた。
「『武』のパラダイムシフターたる
そう嘯かれた教師は、こわばった表情で自らの懐に手を入れている。
直後、彼はそこから拳銃を取り出して引き金を絞った。
その銃口を定め方は――何故だか――きわめて正確であることが分かった。振り返ることもできず、放たれた銃弾は男の胴体を貫通するはずだった。
だが、男の肉体はふたたび常人からかけ離れた俊敏性を見せるや、教師の眼前に降り立った。
二発目を撃つ間に、恐竜が鳴くがごとき奇声と共に繰り出された正拳が、教師の腹部を打ち、その背まで貫通した。
その穿たれた穴から、電流のごときものが迸った気がするが、直視することは出来なかった。
その光景を目の当たりにした時点で生徒たちは、悲鳴をあげて逃げ散っていく。
もちろん、りんくもそのうちの一人だったが、目ざとく彼女を認めた男はその前方に降り立ち、足裏で地面を踏みしめた。靴の溝までもくっきりと表れるほどその跡を目にしたりんくは、その場にへたり込む。
「悪いな、足癖が悪いんだ……お前も知っての通り……いや、
訳の分からない物言いは、すでに、恐慌の極致にあって声も発せない彼女には理解できないものだった。
だが構わず、その細腕を捉えて顔を近づけるや、狂猛に笑いかけるのだった。
「まぁ丁度いい。お前にも見せてやろう――耽溺していたこの日常が、どれほど無価値な妄想の産物であったかを――玉石為供の死をもって」