クエストのNPCが師匠ヅラしてくる上にクソうざいんですけど   作:伝承者

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第1話

「だぁーっ! あ、た、れーっ!!」

 

 

 もはや恒例となった俺の叫びが、寂れた洞窟の中に木霊(こだま)する。

 いや、こいつマジで攻撃が当たんねぇんだこれが。

 

 

「ほっ、はっ、ほほっほほ〜い」

 

「っ〜!」

 

「そんなんじゃ10年経っても当てらんねぇぞ〜? にししっ」

 

「このっ……!」

 

 

 金髪チビぃ……! いい加減にしろぉっ!!

 もう1週間だぞこんちくしょうめっ!

 

 

「言ったろ? お前が俺に1発でも攻撃を当てられたらそこで終わりだってな」

 

「ただのお使いクエストでお出しする難易度じゃねぇから怒ってんだが!?」

 

 

 目の前のジョタジジイは基礎ステが余程高く設定されているのか、俺の振るう剣は一切当たらない。

 それを考慮して魔法を使うとあら不思議、何倍にも膨れ上がって跳ね返って来るではあーりませんか!

 キレそう、キレてるわ。

 

 

「まあまあ、そんなかっかしなさんな。怒ってちゃ見えるものも見えなくなっちまうぜ」

 

「おちょくってくる元凶が何を言う」

 

 

 こいつこれでおちゃらけてるからほんとに手に負えないんですよ皆さん。

 まず持ってる武器が木の棒だし、避けた後に尻で俺を突き飛ばしたりなど一々動作が舐め腐っているし、舐められているこちらも悪いんだけどなぁ!

 

 

「おらぁ!」

 

「残念」

 

「……」

 

 

 不意に放った俺の横薙ぎは、ヒョイっと身体を傾けるだけで避けられてしまった。

 何で後ろからの攻撃を見ないで避けられるんですかね。

 難易度調整ミスってんぞ運営ぃ!

 

 

 

 


 

 

 

 

「くっそー……また一撃も当たりゃしねぇ!」

 

「にししっ! 今日は結構いい線行ってたと思うぜ?」

 

 

 いい線行くだけじゃ困るんだよなぁ。

 

 

「イベントまで時間もねぇし」

 

「ほうほう、イベントとな?」

 

「……」

 

 

 NWOで行われる初めての大規模イベント。

 それに向けて俺は、このクソ難しいクエで他のプレイヤーにないアドバンテージを得ようと画策していたのだが。

 結果、只々俺がバカだったことが証明されただけって言う。

 

 

「お前、力が欲しいのか」

 

「じゃなきゃあんたに延々と挑みになんか来ねぇっての」

 

 

 途中から引けなくなって自暴自棄になってたのもある。

 しかしバグみたいなトップ層プレイヤーに、俺のような小市民が勝ちたいのならこのNPCに一撃当てられて然るべきでは? とも思う。

 

 

「何でここまで頑張ってんだ?」

 

「ん」

 

「そのお祭りで勝てなくたって何かある訳じゃねぇだろ」

 

 

 なんだ藪から棒に、初めての会話パターンだな。

 んまぁ……。

 

 

「このイベント、俺の友達が参加し損ねる予定なんだよ」

 

「ほうほう」

 

「だったらそこで頂点取れなきゃ、あいつに勝つのは夢のまた夢だなって」

 

 

 ネッ友なそいつは、対人戦闘ゲームとしては最強なんじゃないかってレベルで強い。

 なんとびっくり俺は全戦全敗中である。

 

 

「諦めの悪さはどこでも一緒なんだなーお前」

 

「それだけが取り柄だからな」

 

 

 そんなあいつなのだが、ちょっと前に聞いた話だとこのイベントには参加できないそう。

 ……だったらやってやろうじゃねぇかと思い至ったわけで。

 

 

「女か」

 

「ん? ……まあやり取りした限りじゃ多分?」

 

「にしし、そうかそうか」

 

 

 相変わらず表情の読めないジジイだこと。

 何考えてんのかほんとにわからん。

 

 

「じゃ、一応クエストクリアだ」

 

「……は?」

 

 

 てれれーんという陽気な音と共に、クエストクリアのウィンドウが表示される。

 は?

 

 

「お前は俺のお眼鏡に適ったわけさ、だから最初の報酬だ」

 

「いやいやいや、俺あんたに一撃も入れられてないんだけどなぁっ!」

 

「それはまた今度、いつかやり合おうぜ、じゃなっ!」

 

「あ、おい待てこらこのチビっ!」

 

 

 消えやがった。

 あいつの去った後に残されているのは、報酬と思しき宝箱。

 いやいやいや。

 

 

「……納得いかねぇーっ!」

 

 

 何だあいつ、何なんだあいつ!!

 時間かけるだけかけたのもイラッと来るが、俺に目的を完遂させずにどっか行きやがった!

 

 

「結局名前もわかんねぇままって」

 

 

 

『クエスト:罪の継承【憤怒Ⅰ】をクリアしました』

 

 

 

「しかも続きものだったんかい」

 

 

 これ受けた時『罪の試練』って名前じゃなかったっけ?

 途中でクエスト名変わるとかありかよ、どこぞの某運命ゲーか?

 

 

「開けたくないけど、とりあえず」

 

 

 はたしてこれで受け取っていいのかという葛藤がないでもないが、イベントに勝てる可能性を捨てるわけにもいかない。

 

 

 

全反撃(フルカウンター)

 魔力攻撃を倍以上の威力にして跳ね返す。

 跳ね返すには武器と専用のモーションを必要とする。

 

 

 

「これあのインチキ魔法反射スキルか」

 

 

 倍以上ってなんだほんとにインチキじゃん、でも魔法攻撃だけってのと専用のモーションありきなのか。

 モーションというとあれだな、あれ。

 

 

「木の棒を持ってたのはこれのためだったんだと」

 

 

 戦ってる時にはほっとんど使わないくせに何で持ってんのかなって思ってたけど、そういう理由だったと。

 

 

「で、もう一つのは」

 

 

 

『魔剣ロストヴェイン』

【破壊不可】【神器解放】【実像分身】

【STR +20】【VIT +20】

 

 

【破壊不可】

 この装備は壊れることはない。

 

【神器解放】

 使用してから7分間の間、使用者の全ステータス+7する。

 日に3度使用可能。

 

【実像分身】

 【神器解放】時のみ使える。

 使用者のスキルを持った分身を作り出す。

 分身のステータスは分身の数に比例して減少する。

 

 

 

「わからん」

 

 

 ナニコレ、スキル使える分身だせるけど相応にステは下がる的な?

 下がり幅と分身のAIによっては強そうだけども。

 【神器解放】スキルは要するに【実像分身】のおまけ感覚だろうというのはわかりやすい。

 ……いやぁ、あいつとかトップのプレイヤーに通用したらいいけど。

 

 

「とりあえずやるだけやってやんぞ、おー!」

 

 

 目指せ1位! やってやるぞトップ層入り!

 ……ペインってプレイヤーやばいらしいけどっ!

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