1話
突然変異細胞が産声を上げたあの日から、一世紀と少し。
世界は変わった──すべての人間が何らかの“スキル”を覚醒する時代へ。
優秀なスキルを持つ者は「特級」、凡庸な者は「初級」と、五段階に分けられる。
誰もが能力者、誰もが異能者。魔法のように日常へと溶け込み、社会は能力を中心に回っていた。
そんな中、東京都心の一角にある、世界でも名高い『政府公認民間自治組織』【海堂組】の新世代──十代目(予定)兼、高校生──
講堂には全国から集められた少年少女が座り、緊張と期待が入り混じる中、明人は静かに自分の順番を待つ。
「次は……二階堂明人君、覚醒確認へ」
拍手と共に壇上に上がる。
覚醒した他の生徒たちはすでに、火を操る者、水を操る者、念動力を行使する者、身体の一部分を動物に変える者──色とりどりのスキルを見せつけてきた。
明人の胸の奥に、静かな鼓動。緊張感を感じながら測定機械へ手を置く。
すると──
「ピピピピピピッ!」
──電子音が講堂中に響き渡った。
「………はっ?」
「何アレ?」
「ほう、おもしろそうじゃなぁ」
驚きの声とざわめき。
明人は自分の胸に手を当て、どのような結果であれ受け入れる覚悟を持って見上げ──固まる。
巨大なモニターに表示された自分の等級は、初級EX──“超感知”。
初級の中でもEX?そんな等級があるのか?
そして何より──覚醒してから頭の中で反芻する警笛が反応した先には、近くの席に座る一人の少女がいた。
少女は青碧の短い髪を揺らし、澄んだ蒼色の瞳で明人を見ている。次の番が少女なので緊張しているのか明人を見たまま動けないようだ。
超感知が反応した対象は、どうやらこの少女らしい。
少女を認識したその瞬間、明人の目に信じられない光景が映った。
──狙撃。
一発の弾丸が、少女の頭部に向かって吸い込まれるように飛んでくる。スローモーションのように、世界が止まった気がした。
「――くっ!」
無意識のうちに体が動く。明人は咄嗟に少女の前に飛び出し、肩で弾丸の一撃を受け止めた。
激痛が肩を貫く。金属の感触とともに血が滲む。
少女は驚きの声を上げ、床に転がる。
明人は片手で痛む肩を押さえながら、もう片方の手で少女を抱き寄せる。
「大丈夫……今、俺が守る!」
ありえない光景に周囲の生徒や教師陣たちは凍りつき、講堂内は一瞬で騒然となった。
どこから撃たれたのかも分からないそんな恐怖に騒然となるのは当たり前だ。──だが、明人のスキル『超感知』は弾道の軌跡、危険の発生源、敵の位置までも無意識に感知していた。
「……ここか」
感知した場所は講堂からおよそ十km離れたビルの屋上。普通なら不可能な距離だがスキルによっては可能かもしれない。
講堂が騒然とする中入口外で待機していた一人の女性護衛がすぐに駆け寄る。
「二階堂様!落ち着いて、肩を押さえて!」
彼女──
明人は苦痛に顔を歪めながらも、少女の体を覆い隠すように最寄りの救急病院へと運ばれた。