◆
傀儡国ジスターヴ——魔王クレイマンが治めるその国は、周辺は深い霧に覆われ、黒き森が行く手を阻んでいる。高い崖の上に聳え立つ城、その最奥の部屋からクレイマンは全てを見下ろしていた。ワインを携え、他国に蠢く自身の策謀にほくそ笑む。
クレイマンの部屋に客人が一人いた。クレイマンが心を許している仲間の一人であり、その中で最も世渡り上手な頭脳を持つ存在。中庸道化連のラプラスがソファで寛いでいた。
「聞いたで。ユーラザニアへ攻め込むんやて?」
窓の外を眺めていたクレイマンが振り返り、余裕の笑みを浮かべながら答える。
「あぁ、首都はミリムが消し飛ばしたが、あの国は人口だけは多い。各地に点在する集落には、人間も多数住んでいる。私の覚醒のための、ちょうどいい生贄になってくれるだろう。そう思わないか?」
魔王種が真なる魔王へ開花するための明確な条件は明らかになっていない。ただ、大勢の人間の魂が必要だという事は、古き魔王であったカザリームが推測していた。
そしてクレイマンは、そのカザリームの配下である。
ラプラスは道化らしく手品を披露しつつ、思考する。
(非戦闘員も含め皆殺しってことかいな。なんや強引すぎるっちゅうか、ちょいと焦りすぎちゃうか?クレイマン)
ここまで攻撃的な姿勢を見せれば、他の魔王達の反感を買ってしまいかねない。
そうなれば多勢に無勢だ。いくらミリムを支配したとはいえ……彼女の力に頼りすぎるのもよくないだろう。
しかも今は——
「なぁ、
「あぁ、それなら問題ない。薬指のミュウランが、あのスライムに殺された。それは魔王の座を奪うという私に対する脅迫であり、それを焚き付けたのが魔王カリオンだと判明した。そう主張するつもりだよ」
「なるほど、向こうが先に裏切ったんなら筋は通……ってミュウランちゃん殺されてもうたんかいな!」
ラプラスが声を荒げて衝撃の事実を聞き返すと、クレイマンは酷く冷静に呟いた。
「
「そうか、ええ子やったんになぁ」
「ハハハッ、君は優しいな。この前ティアにも言われたよ、〝道具は大切に扱わないとダメだ〟って、君が教えたんだってね、ラプラス」
再び窓の外に視線を戻し、血のように真っ赤な瞳で睨む。
「だからこそ、道具を壊した者には、責任を取ってもらわないと」
(そういう意味とちゃうんやけどな……)
ラプラスはクレイマンの言葉に違和感を覚える。
数十年前までは、もっと思慮深い性格だったはずだ。
だからラプラスは、その違和感を口にした。
「なぁクレイマン、ほんまに自分の意思で今回の作戦を決めたんやな?」
クレイマンは彼の言葉に表情を歪ませ、ラプラスの向かいのソファに座り込んだ。
「何を言うんだラプラス? 私に命令できるのはカザリーム様と恩のある〝あの方〟のみ。それは君が一番よく知っているだろう」
「分かった、ならええわ。ワイはもう行くけど、最後に友人として忠告や」
ソファから立ち上がり、クレイマンに背を向ける。
何か胸騒ぎがするものの、最早ラプラスには彼を止める手段など持ち合わせていなかった。
「魔王ミリムの支配を過信せんほうがええ。あれはカザリーム会長よりも昔からおる、太古の魔王の
ほな、と軽い挨拶の後、ラプラスは影になって消滅した。
この場にはクレイマンしかおらず、友人からの忠告を静かに咀嚼する。その意味を理解して、右手に力がこもりワイングラスを粉々に壊してしまった。クレイマンの白い服が赤く染まる。それはまるで、不吉な運命を匂わせているようだった。
(私が何者かに影響されているとでも言いたいのか? ラプラスのやつ何を根拠に……)
「忌々しい……」
その独り言を拾うものはいなかった。
◇
エドマリス王は、芯から冷える寒さを感じながら瞼を開ける。
そこは王に似つかわしくない薄汚れた石の部屋。右手は壁の鎖に繋がれていて、まともに動かすことすらできなかった。質素な服に変わった自分の姿を見て、エドマリスはこれまでの記憶を思いだした。
魔物の主を怒らせ、兵士達が目の前で死んでいく様を……と、そこまで気づいて左腕を見る。斬られたはずの左腕が復活し、何事もなく動かせることに気づいた。
「目が覚めたか?」
鉄格子越しに声が聞こえてくる。慌てて振り向くと、薄桜色の整った長髪が目に映る。
しゃがんで自分と目線を合わせ、無邪気な笑みを湛える少女らしき人物の瞳に射抜かれる。その紅の双眸は、王に献上されたどの献上品よりも深く鮮やかに見えた。その美しさへ見惚れそうになるが、近づこうとしてジャラリと鳴る鎖の音が意識を目覚めさせた。
「こ、ここはどこだ!?ヌシは誰じゃ!? 余が誰か分かっておるのか!? 余は大国ファルムスが王、エドマリス」
「知ってるぜ、お前達の優秀なフォルゲンが教えてくれたよ」
「フォ、フォルゲン……?」
「あぁ、先遣隊を惨殺し、フォルゲンを呪ったのは俺だ」
少女はエドマリスの言葉を上から覆いかぶせて黙らせ、あの時の疑問を最悪な形で晴らした。
彼女は懐から黒い仮面を取り出す。エドマリスの脳裏を過ぎるのは、あの全てを滅ぼした恐ろしき暴君の姿だ。しかし、〝色〟が違う。魔物の主を無慈悲なる死の青だとすれば、目の前の存在は煮え滾る生命の赤だ。触れたら身を滅ぼしてしまうのは分かっているはずなのに、逃れられない魔性の炎。
エドマリスは無意識に左手を伸ばし——二の腕から大剣で叩き斬られた。
「汚らわしい手で触れるな!」
「ぐ、あああああ!!!」
「おいシオン、死なせるなよ?」
「大丈夫です。死ぬことはありえませんよ!」
鎖の音が鳴り響く。
斬られたはずの左腕から、何故か血が出ていない。エドマリスは理解が追いつかず、ただ襲ってくる激痛の波を全身で喰らうしかない。じたばたと暴れるエドマリスを見て、少女は冷たく見下ろした。
「〝初めまして〟エドマリス王。俺はエミルス=アゲンスト、この国のもう一人の王であり、今からお前を拷問する者だ。こっちはシオンな」
で、ここはジュラ・テンペスト連邦国の地下牢で……と、淡々と説明し始める。
人間の悲鳴に関心は無いようで、さらっと概要を話した後自分の話を聞いていないことに苛立っていたようだった。
「はぁ……とりあえず今から尋問していくぞ。ファルムス王国の内情を全部吐き出してもらうまで終わらないからな。それ以外は何も喋るなよ」
「ま…まて! 小娘よ、話を……」
「あ゛? お前の脳は家畜以下か?」
エミルスと名乗った者は、途端に声を荒げる。
すると、突然顔にナイフで刺されたような激痛と、胸を強く締め付けられるような圧迫感が襲った。内側から爆発したような感覚に、エドマリスは声を出すことすら出来ず苦悶の表情を浮かべる。意識を飛ばしそうになるが、僅か数秒のところで一気に血流が巡った。心臓の鼓動が鼓膜を叩いているようだ。
「リムルに聞いたんだが、人間の三大激痛ってやつに血管が原因のものがあるらしい。今これを試してみたんだが、その様子じゃ想像を絶する苦痛らしいな」
子供のような無邪気な笑みが恐ろしい。
エミルスが指で空中を叩くと、エドマリスの脳が触れられた錯覚を覚える。
これから起こる出来事を理解してしまい、エドマリスは震える声で止めようとする。エミルスはただ笑い、指を動かした。脳を掻き混ぜられるような不快感が襲い、酸っぱいものが込みあげてくる。しかし、吐き出してしまえば身体を斬られてしまうのではないかという極限の恐怖に、無理やり飲み込んで嗚咽を漏らした。
すると、関心したような声を上げてまた笑う。
目の前の存在は、人間を容易く殺せる存在なのだと再認識させられた。だが、エミルスは怯えるエドマリスを暫く眺めた後重い動作で立ちあがった。
「……お前達に恨みは無い。全ては俺の弱さが招いたもので、俺の傲慢が原因だった」
隙を与えちまったのは俺だ、と静かに呟く。
エミルスの瞳は先程とは違い、勢いを失っていた。
「だが、お前達のせいでこれから国民がこれ以上の恐怖に怯える日々を送るし、お前達の愚かな作戦で深い傷を負った奴等がいる。その制裁は受けてもらう。……これはお前が背負うべき業で、俺達が背負うべき業でもある」
エミルスは振り返り、シオンの肩に手を置く。「後は任せた」と一言だけ伝えると、エドマリスの牢から立ち去った。
残された鬼は、鋭い眼でエドマリスを睨みつけて怒りの言葉をぶつける。
「……貴方の決断が、エミルスに哀しみを植え付けた。貴方の決断が、リムル様の綺麗な手を人間の血で汚させた! 千に刻もうが、未来永劫切り刻もうが物足りない。この世に生を受けたことを後悔させてあげましょう」
悪鬼は大剣を振りかざし、己の
隣から王の悲鳴が響き渡る中、ミュウランとエミルス。そして吐き気を催して急いで出ていった男は拷問が終わるのを静かに待っていた。
エミルスは肉の塊と成り果てたラーゼンを見ながら、今後の動きについて考える。
エドマリスに対する拷問がすぐに終わったのは、シオンに譲ったというのもあるが、すでに練習が終わっていたからという方が正しい。
(結局、あの女についてのまともな情報は得られなかったな)
◇
「
「知ってるのか?」
「あぁ、ちょっとな」
貴賓館に戻ると、リムルが待っておりラミリスから知らされた情報を共有される。
すでに、俺が知っているところを追い越そうとしている。クレイマンの倒し方もワルプルギスの内容も知らない。 こっから先は予測を立てて行動していく他無いだろう。天魔大戦がどうたら、
ワルプルギスの議題は「ジュラの森の盟主が魔王を騙ったこと」。魔王カリオンがジュラの森の相互不可侵条約を破り、ミュウランの存在をリムルに知らせ、殺された。
だから問いただすってか。そもそもミュウランが生きてる時点で破綻してる告発だが、今のリムルにクレイマンが勝てるわけがない。
「となると、問題はミリム。そして既に動き出してる魔人の対処って感じか?」
「……本当にやるつもりか?」
「それが一番手っ取り早い。まさか、俺がクレイマンに負けるとでも?」
「万が一があるだろ」
「例え肉体が消滅しても、お前がいれば復活はできる」
「そういう問題じゃ……」
ンだよ、少し前まで乗り気だったくせに随分食い下がってくるな。俺だって死にに行くつもりは毛頭ねぇ。むしろ助ける為に行く。
反論する材料が無くなったのか、小言を言う母親のように事前準備はしっかりしろと何度も釘を刺して承諾した。こいつ魔王になってから面倒くさくなってきたな。……こっちが本性だったりするのか?
「なぁエミルス、色々疲れたんじゃないか。明日に備えて風呂に入ろうぜ」
「……別にいい、ゆったりする気分じゃねぇし」
「気を張り詰めるのも良くないぞ、体の芯まで温まるのも大事なんだ」
「自然影響無効だろうが」
「雰囲気を楽しむんだよ!!」
我儘な魔王を宥めながら、一応助言を受け入れて風呂には入った。結果は烏の行水だったが。
畳の部屋で寛ぐ仲間達に合流すると、不自然に空けられているリムルの隣の席に座り込んだ。何故かシュナ特製の椿という赤い花が飾られた白い浴衣を着せられている。脱衣所にいつの間にか置いてあったんだ。着るしかなかった。
ラミリスはトレイニー達にチヤホヤされたのが余程お気に召したのか、いつの間にかこの町に住むことになったらしい。確か元配下だったっけ。本人達が嬉しそうならそれでいいか。
「……いただきます」
ニホンの食事を再現した料理。リムルにしつこく教えられたせいで、箸はそれなりに使える。周りを見れば全員驚くほど使いこなしていて、地力の違いに驚かされた。それにしても、俺専用の七味なる調味料が中々いいスパイスになって食が進む。ヴェルドラが羨ましそうにこちらを見ている気がするが、無視を決め込んだ。欲しけりゃリムルに頼め。
料理を味わっていると、リムルが俺に問いかけてきた。
「エミルス、捕虜の取調べはどうなった?」
「……俺が話してもいいんだが」
チラリとシオンを見る。キラキラした瞳でスタンバっていたシオンは、俺の視線で更に瞳を輝かせていた。余程リムルに報告したいんだな。俺は呆れたように笑いながら、二人から視線を逸らす。
「シオンがまとめてるから、そっちに聞け」
「はい! お任せください」
「そ、そうか」
自信満々なシオンは、懐からメモ帳を取り出した。ヨウムとミュウランは「マジかよエミルスさん」と言いたげな視線を送っていたが、シオンが発表したそうにしてるのを止める理由は無い。情報は手に入れたんだ。身体が肉の塊に変化しても復活出来るし何も問題無い。
まぁ、取調べというより拷問に近かったな。
シオンはメモ帳を見ながら手に入れた情報を述べ始める。
「まず、エド…ノヨル?」
「エドマリス王だな」
「そのエドマリス王に接触した商人がいたそうです。その商人が我が国の絹織物なんかを持ち込み、王の欲を刺激したのだそうです。それで、今後の流通の主流がファルムスから我が国に移るのを恐れ、今回の件に繋がったみたいです」
「その商人の正体は分かるのか? 御用商人とか?」
「そこまでは……申し訳ございません」
「分かった。それで西方聖教会関係者は?」
「は、はい、黒幕が判明しました。その名は……えっと、名は、ニコニコプ……」
「レイヒム大司祭が語ったところによると、元凶はニコラウス・シュペルタス枢機卿」
シオンが忘れているようだったから、ミュウランが代弁した。
神に対する敵対国として討伐する予定、などとほざいていた。だから兵士共の士気が高かったんだろう。
予定なら、まだ西方聖教会と交渉する余地があるかもしれない、とリムルが呟くとフューズが力強く答える。
「ならば、俺が揺さぶりをかけてみましょう」
「我がドワルゴンも、テンペストとの貿易を大々的に宣伝しよう」
「そして、我らがサリオンも正式にテンペストとの国交樹立を宣言し、他の国々が興味を持つようなことになれば、西方聖教会も迂闊には動けませんからな」
人類国家三国と繋がりを持つテンペスト、後ろ盾があるとここまで動きやすくなるんだな。
武装国家と魔導王朝が
三名の捕虜をヨウムが救出したことにして、凱旋を演出することは決まっていた。ここでリムルが疑問を口にする。
「エドマリス王、レイヒム大司祭……あと一人は誰だ?」
「あぁ、確かラーゼンとかいう老骨の魔術師だったぞ」
俺が何気なく返事すると、ガゼル王や他の奴等がいきなり食いついてきた。
「英雄ラーゼンだと、それは確かなのか?」
「間違いない。腕は立つみたいなんだが、ディアブロとネクロの戦いを見て心が折れちまったらしい」
「そんなばかな、ファルムス王国を数百年に渡って支え続けた英雄が……」
「
それは相手が悪かったとしか言いようが無いな。
そんな思いを込めてディアブロを一瞥するが、当の本人は俺が見ていることに気づいた途端、寒気がする笑みを浮かべてきた。ほんと、相手が悪すぎる。
リムルは納得した表情で頷き、そしてヨウムに告げた。
「ヨウム、エドマリス王・レイヒム大司祭・ラーゼンの捕虜三人を連れて行動を起こしてもらうわけだが、ディアブロも連れていけ」
「えっ」
酷く動揺したな。黒の眷属達は隅っこで上司の無様な姿を眺めているようだ。いや、一瞬だけ見て手元に視線を戻していた。
あれ何やってるんだ? なんか作ってるみたいだけど……まぁ黒色同士通ずるものがあるんだろう。変人の考えていることは分からない。
数年かかるかもしれない仕事を、ディアブロはすぐに終わらせてくると豪語していた。マジで出来そうだからなコイツ、むしろなんでリムルは何も気づかないんだよ。能天気はこれだから。
「では、そのクレイマンとの戦についてだが……そちらのラミリス君の知らせで、俺が狙われているということが分かった」
「エッヘン!」
……まぁ、重要な情報だったのは確かだし。
自慢げに飛び回ったラミリスは、ヴェルドラの近くにある漫画へ誘われていった。
ソウエイがクレイマンの軍勢の動きを報告してくれた。
およそ三万、魔王ミリムの領地で編成しているらしい。軍を率いているのはクレイマン本人ではなく、中指のヤムザという幹部。狡猾で残忍な性格だが、実力は本物であるとミュウランが説明した。
とはいえ、獣王国の戦士団がテンペストと合流しているのに、この戦力は少なすぎる。
アイツの立場から考えるなら……覚醒魔王、か?
「もしかしたら、狙いは俺達じゃなくてユーラザニアの民かもしれないな」
「なに?」
俺の言葉にスフィアが反応する。
「アイツは真なる魔王になるのが狙いかもしれない。ユーラザニアの民の魂を狩り尽くし、自分の力とするために」
「ッ、くそ!」
あまりに稚拙なやり方だけどな。
モークシャンも魔王種止まりだったし、何かと自己顕示欲が強かったからそう考える可能性が高い。だったら、ワルプルギスの後でもやりようはいくらでもあるのに、生き急ぐ獣みたいだ。
ミリムの領地からユーラザニアまでは二日、テンペストから急いだとしても二日以内に辿り着くのは難しい。
ユーラザニアの具体的な位置が分からない以上、転移も難しいな。
……チッ、どうすれば。
全員が黙り込んだ時、リムルがポツリと呟いた。
「転送魔法で全員送れたらよかったんだけどな」
「リムル様、転送魔法で軍を送るのは危険すぎます」
と、シュナが言う。
「あぁ、だよな。言ってみただk」
《解。転送魔法は、小さなコストで物資の転送が可能です。異空間を通して転送先の座標と繋ぐのですが、その際に魔素を大量に浴びるので有機物の転送には向きません。しかし、結界にて身を守れるものならば、転送による影響を受けません》
『じゃあ俺達魔物や魔人なら、転送は可能ってことか?』
《是。問題ありません。もしくは、対象者の保護を組み込んだ完全転送術式を用いても可能です。完全転送術式はすでに開発してあります》
なんだコイツ……用意周到すぎる。
脳天気なリムルの相棒としては満点だな。
《……フッ》
なんで笑った?
《……》
……まぁいい。
相変わらず規格外で便利なスキルだなぁおい。俺もそれに乗っかってる以上、文句はねぇけどよ。
リムルが表で完全転送術式について話せば、さすがリムル様と賞賛の言葉が聞こえてくる。ヴェルドラは漫画を見てるし、リムルに冷たい視線を送っているのは俺だけだった。
自慢げに言ってるが、全部ラファエルのおかげだろうがと言いたくなる。
「あとは君たちの覚悟だけだ。術を使えば全軍を一気に送り出すことができるが、安全確認はできていない。それでも俺を信じるか?」
リムルの言葉に、ベニマルが力強く応える。
「悩むまでもない。俺の忠誠はリムル様に捧げた。忠実なる家臣である以上、死ねと命じられたら死ぬだけです」
三獣士や他の仲間たちも同様に頷く。
リムルの信頼はとても厚いようだ。
さて、そろそろいいだろう。
「話はまとまったな?」
「あぁ、お前の
リムルの返事に頷き、全員の注目を集める。
この作戦は、
「——俺は明日、クレイマンの懐に潜り込む」
そしてこれは、大前提に仲間の協力が必要な作戦だ。