有栖川大学病院。
柿崎めぐは幼少期から心臓が悪くこの病院の316号室に入院していた。
今まで心臓の発作で何度死にかけたか分からない。
物心ついた時から病院暮らしの彼女は世間の情報に疎かったが彼女には大切な友達が二人いた。
同じく心臓病に苦しみ、有栖川大学病院に昔から一緒に入院し知り合った塚本美穂。
母親が有栖川大学病院に持病で入院しそのお見舞いに来ていた天真爛漫な少女である豊川祥子。
当時幼かった事もあり三人はすぐうち解けた。
そんな三人も中学三年生の代だ。
成長した彼女らは今日もめぐの病室に集まり世間話に花を咲かせていた。
「美穂。白咲中を卒業したら何処に行くのですか?」
「花咲川か羽丘に行きたいわ。親は月ノ森に行けってうるさいけど……」
「まぁ!月ノ森でしたら同じクラスになれる可能性がありますわね!めぐは何処に行きたいのですか?」
「そうね……あまり考えたことないけど」
一応勉強は月ノ森の中等部の祥子に見て貰ってる上に彼女から「この成績ならここら辺の高校は大丈夫ですわね!」と言われてるので勉学に関しては不安はない。
問題は馴染めるかどうかだろう。
「私みたいなガラクタが……他の子達と一緒に勉強していいのかな?」
「いいに決まってますわ。めぐはめぐよ。人間に代用品なんていないんです」
「祥子の言う通りね。めぐがガラクタなら私なんて人間以下よ」
「なに言ってるの?美穂が人間以下なら私はケダモノだわ」
「貴女達、卑下マウントの取り合いはやめなさい……。めぐも美穂も私の幼馴染みで大切な親友と言う自覚をお持ちになって」
「あ〜、ごめんなさい祥子」
「私もごめんなさい祥子」
「宜しいですわ。あら?めぐ。窓の下に何か白い紙が落ちていますわよ」
「本当ね。どれどれ……」
めぐは手に取り紙を確認する。
『巻きますか?巻きませんか?』
「この時代に手書きの嫌がらせって逆に手が込んでる感あるわね」
「嫌がらせなんですのこれ?。大した意味もなくこの言葉を書いた人が飛ばした紙が偶然めぐの病室に入ったとか?」
「二人共……。ここ三階よ?。しかも私が記憶してる限り今日は風もそんなに強くないし、紙が飛んで来た覚えもないわ」
めぐの言葉に暫しの間沈黙が走った。
「………ふふふ。下手なミステリーよりよっぽど謎ね」
美穂は笑いながら窓を開け外を見る。
「まぁ。怪我したわけでもないですし悪戯を風が運んで来たと思いましょうよ」
「……嬉しくない悪戯ね。それにしても何を巻くのかしらね」
「あら。ミステリーじゃなくてクイズだったのかも」
「いずれにせよ。謎は深まるばかりですわ。あらもうこんな時間」
いい時間帯になって来たので今日はここで三人は別れた
「ごきげんようめぐ」
「またねめぐ」
「じゃあね。祥子。美穂」
二人が帰った後めぐは「どうせ何も起きはしない」と高を括り『巻きますか?』にマルをつけた。
夕食の時間になり夕食を食べ暫く読書した後、眠くなった彼女は消灯し横になる。
(ほら……結局何も起きないじゃない)
つまらない日常が今日も終わる。
睡魔が次第に彼女の意識を奪っていきめぐは眠りの世界へと落ちた。
「いい夢を見ておられるようだ」
声の主は彼女の病室に忍び込むと……黒い鞄を置いていった。
―――――
真夜中の病室。
カーテン越しに月の光が薄っすら差し込むその室内で黒い鞄が独りでに開いた。
黒いゴシックロリータのドレスを纏い、黒いヘッドドレスに銀髪の長い髪、何かへの反逆を現すかのような逆十字……。
鞄から現われたのは人形だった。
「ふん……。586600時間ぶりに目覚めたと思ったらまた
永き眠りからローゼンメイデン第一ドールである水銀燈が目を覚ましたのだ。