ハーメルンの笛吹き
「まさか、君と仕事をすることになるとはね。」
私は女王様直々の依頼によりハマースミスへとやってきていた。依頼の内容はハマースミスを中心に子供の行方不明者が続出しているから、犯人の確保、または原因の追求を急いでくれとのこと。
お優しい女王様の慈悲により、一人では大変だろうとのことで
女王直属近衛騎士団の実力は確かなもので、悪魔の力を利用する神の使徒とは違い、純粋な人間の力で怪物と張り合うだけの実力がある。
「大変だったんだよ。君が魚面の人たちを沢山殺しちゃったから、女王様と僕たちで対応することになったんだからね。」
「……その節は申し訳ありませんでした。」
「まっ僕はどうでもいいんだけどね。女王様にとっては彼らも等しく守るべき国民らしいから、次からは気をつけてね!」
ケリーくんは、まだ幼い顔をこちらに向け、笑顔み見せた。
「それで、今はどこに向かっているのかな?もしかして聞き込みってやつ!」
「そうです。まずは情報を集めないことには犯人を特定することはできませんから。」
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あれから数時間。二人で聞き込みをして得られた情報は大きくわけて二つある。一つは十一歳より若い子供のみが失踪していること。もう一つは子供が行方不明になるまで日には必ず笛の音色が聞こえていたという。
他にも様々な証言があったが、どれも不明瞭な証言ばかりで信用はできない。
「今ので何か分かるものなの?僕にはさっぱりだったんだけど。」
「証言で特定なんて、そんな上手くいくことの方が少ないですよ。ただ、子供の失踪、笛の音色で連想される事件は頭に浮かびますよね。」
「……なるほどね。ハーメルンの笛吹きかな?」
千二百八十四年。ドイツにあるハーメルンは大量のネズミに悩まされていた。そこに現れた笛吹き男が、報酬を貰う代わりにネズミを退治すると申し出た。男の笛の音色に釣られるように移動するネズミは沼に落ちて溺死した。
ネズミ退治を完璧にこなした笛吹き男だったが、町の人たちが報酬を払うことはなく、怒った笛吹き男は子供たちを笛の音色で誘い、子供たちは二度と町には戻らなかったという。
「でもさ、同一犯だったら七百歳超えてるよ!?そんなことってありえるの?」
「ありえる……ケリー君は怪物を見た事は?」
「……ないよ。怪物の退治は危険だからって先輩たちが連れて行ってくれないから。」
私は怪物の知識を少しだけケリー君に教えることに決めた。
「例えばドラキュラ伯爵は知ってる?」
「知ってるさ……教会が長年かけても殺しきれない不死の怪物だろ?」
「そう。教会は四百年以上ドラキュラ伯爵を追いかけて未だ殺せていない。」
「じゃあ今回の相手はその……」
「いいえ。ドラキュラ伯爵はこんなことはしないでしょうね。私が言いたいのは、何百年も生きる怪物なんて幾らでもいるから、ハーメルンの笛吹きが生きてる可能性は捨てきれないってこと。」
「それで?これから僕たちはどうするの?割と手詰まりな気がするけど……」
「ここからは根気の勝負。笛の音色やフラフラと歩く子供に注意して、気づいたら追いかける。」
「結局こうなるんだね……」
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あれから三日間。私とケリー君はハマースミスで周囲の警戒を続けたが、笛の音色はおろか子供の行方不明も起きなかった。
「ねぇ、ブラウンさん。犯人はもう、ハマースミスから移動したんじゃない?」
「それはないよケリー君。犯人は何十人もの子供を誘拐したんだよ?馬車だろうと、なんだろうと、そんな人数の子供を連れて移動しているなら騒ぎになるはず……」
「でもさぁ……」
ケリー君が何かを言いかけた時、私たちの耳に美しい笛の音色が響いた。その笛の音色は一瞬、何も考えられなくなるほど美しい音色で、気づくと笛の音色は鳴り止んでいた。
「……ケリー君。私たち、どれくらいの間意識を支配されてたか分かる?」
「多分……十分近く。」
私は自分の頭を撃ち抜きルシファーを呼びつけた。
「ルシファー!あなたの聴覚でも笛の音色は聞こえない?」
「無理だな。ただ、怪物の気配は感じる。」
「それはどこ!?」
ルシファーは私の問いかけに言葉で答える代わりに地面を指さした