ジャック・ザ・リッパー
「号外だ!号外だ!あの、ホワイトチャペル殺人事件のジャック・ザ・リッパーが先日捕まった!」
「少年、一つ買わせてくれ。」
千八百九十二年 九月十三日 曇り。少し肌寒くなってきたロンドンの街全体に大きなニュースが舞い込んだ。ホ
ワイトチャペル殺人事件。千八百八十八年から去年の千八百九十一年にかけて十一人を殺害された未解決事件。
初めの事件からしばらくして、とあるニュース配信会社の元に届いた一通の手紙。その内容は当時操作をしていた警察を揶揄うような内容で、手紙の最後の差出人の名前がジャック・ザ・リッパーであったことから、今日までその名前で呼ばれている。
この話題はしばらくロンドン中で騒がれることとなり、ジャック・ザ・リッパーの逮捕をイギリス中が認知したであろう一ヶ月後、事件は起こった。
第二のジャック・ザ・リッパー現る。捕まったのは犯人ではなかった! という見出しで複数の新聞社が新たなジャック・ザ・リッパーの誕生を報じた。
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「ここまでは君も知っての通りだ。」
新たなジャック・ザ・リッパーが誕生してから一週間が過ぎた頃。私の事務所にヤードの副本部長ロバート・アンダーソンさんが訪れていた。
「新たなジャック・ザ・リッパー……奴はこの一週間で三人の女性を殺害している。我々はジャック・ザ・リッパーの名前を使った、模倣犯ではないかという線で捜査を進めているが、手掛かりらしき物は見つからず、こうして君の元を尋ねたというわけだ。」
「依頼という話ならお受けしますが。こういった事件であれば、ホームズさんの方が適任では?」
「彼なら既に捜査に協力していただいている。むしろ、その彼が君の専門の仕事だと言っていた。」
「怪物が関わっていると……?」
「それは分からない……しかし彼がそう言うのであれば、その可能性が高いのかもしれない。」
シャーロック・ホームズ、彼の評判は留まることを知らず。怪物について知ってからというもの破竹の勢いで事件を解決していると噂を聞いた。そんな彼のことを当然ヤードも評価しているようだ。
「……分かりました。でしたら、まずは遺体の写真を見せてください。ホームズさんが見た後では情報が得られないかもしれませんが、何か手がかりが得られるかも……」
「そうだな……これが写真だ。」
写真を見ると、それぞれの遺体には同じ刃物でつけられたであろう切り傷や刺し傷が散見された。遺体からは眼球や鼻、唇に耳などの顔のパーツや幾つもの内蔵が抜き取られており。到底、人のした所業には思えなかった。
「やはり大した情報は得られませんね。今、ホームズさんはどこに?」
「彼なら事件現場の近くに宿をとって捜査しているようだよ。」
「そうですか……(だったら事件現場で会うことができるかも……)」
私は万が一に備え、怪物退治用の武器を体に隠し。切り札の入ったカバンを手に持ち、事件の起こったというホワイトチャペルの路地裏へと向かった。
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一人目のジャック・ザ・リッパー……仮にファーストと呼ぶとしよう。ファーストの初めの事件が起きた頃、ここ、ホワイトチャペルは、ロンドンでは有名なスラム街として知られていた。
暴力や略奪は当たり前、売春や麻薬。様々な犯罪の蔓延る巣窟となっていた。皮肉なことに、ファーストの犯罪が未解決事件として扱われるようになり、世間に広まることで不潔で危険なホワイトチャペルへの注目は集まり、治安は多少改善したように思える。
「やぁ、Missブラウン。そろそろくる頃だと思っていたよ。」
事件現場にはホームズさんとワトソン先生の姿があった。
「Mr.ホームズ、ワトソン先生。噂はかねがねお伺っております。教会では、あなたたちの話でもちっきりのようですよ。」
私とホームズさん、ワトソン先生は。くだらない話題を交えつつ、本題へと移った。
「さて、Missブラウン。今回の事件、君はどう思う。」
「死体を直接見たわけではないので確かなことは分かりませんが。人間が起こした事件とは考えたくはないですね。体のパーツが抜き取られていたことから可能性としては儀式や魔術などではないかと思いますが……」
「単に食事をしたかっただけとは考えられないかい?」
「それはないんじゃないか?怪物にしては切り口が綺麗すぎる。食べるだけなら素手で取り出せばいいのに、丁寧に腹部や内蔵を切開しているのは不自然だ。」
ワトソン先生の言う通りだ。ホームズさんと相当な山場を超えてきたのだろう、今の彼からは多少の余裕すら感じられる。
「どちらにせよ、私のすることは変わりません。被害者が女性しかいないので、私が囮になって犯人をおびき出します。」