教会
事件の犯人を始末した私は、依頼主に報告するためセントラル地区にある教会へとやってきた。
(ここに来るのは何回目だろうか……)
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千八百八十年 九月八日
あれは父と母が殺され、帰り道がわからず、ゆくあてもなくさまよっていた頃。そんな私を保護してくれたのは一人の神父だった。
神父に教会へ連れられ、私は見習いとして教会で生活することになった。
日々の雑用や祈りの毎日は、荒んだ私の心を無心させてくれていた。そんなある日のこと。
「チャド神父。この可愛らしいお嬢さんはどなた?」
「この子の名前はエヴァ・ブラウン。先月、親を殺されてしまったらしく。彷徨っている所を一時この教会で保護いたしました。今はヤードにこの子の身内を探させています。」
「そうですか……そんな悲しいことが……」
目の前の綺麗な女性は、どこか異質な雰囲気を漂わせていた。
「初めまして、私の名前はエレナ・ブラヴァツキー。教会の方々とは少し懇意にさせていただいているの。」
「……初めましてエヴァ・ブラウンです。」
これが私とブラヴァツキー夫人の出会いだった。
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千八百八十三年 五月 教会内
それから同じような生活が続き三年が経った。ヤードの調べによると、私の親族は全員殺されていたらしく、私を引き取ってくれる身内は見つからなかった。チャド神父はそんな私を自分の娘のように愛してくれた。
「エヴァ、こちらに来なさい。ブラヴァツキー夫人が君に要件があるそうだ」
ブラヴァツキー夫人は三年前と同じ美しさで私を待っていた。
「お久しぶりねエヴァちゃん。少し背が伸びたかしら?今日はあなたに大事なお話があってきたの。」
「私に大事なお話ですか?」
「そうよ。チャド神父。地下をエヴァちゃんに見せたことは?」
「……ありません!あるわけが無い!」
質問をされたチャド神父は酷く取り乱していていた。
「そうですか……では、私とエヴァちゃんを地下に案内していただけますか?」
「それは……!……わかりました」
チャド神父は震えた手で私の手を握り、小さく「……すまない」とブラヴァツキー夫人に聞こえない声で囁いた。
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教会地下
地下に入ると嗅いだことのない異臭が漂っており、吐瀉物が喉を迫り上がるのを感じた。
「相変わらずの匂いね。さぁ、行きましょうチャド神父。」
ブラヴァツキー夫人に急かされるようにチャド神父は足を進めた。一歩また一歩と階段を降りるあび匂いは強くなり、目的地に着いた時、その正体は明らかになった。
「なん……ですか……これ……」
地下の部屋は、牢屋がこれでもかと並べられており、中央には手術台が置かれていた。牢屋の中には見たことの無いような生き物が牢屋の中で倒れていた。
「
まるで物を紹介するようにブラヴァツキー夫人は怪物たちを指さした。
「
「……それで……私は何を?」
聞くまでもない、子供だった私にこんな話をする理由なんて一つしかない。
「あなたのパパとママを殺した犯人。
「……あいつのことを知ってるの?」
「雲が太陽を隠している時だけ人を殺すことから
あいつが私にナイフを振りかぶった時、太陽が現れていなかったら私は……
「今教えてあげるのはここまで。この先を知りたいなら
私は迷うことなくブラヴァツキー夫人の提案に乗った。これであの男に復讐ができる。この時の私はそれしか頭になかったから。
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それから二年間、
「やめろ!俺は人を殺してなんかいない!俺は……!」
目の前の男は同僚により頭を潰され息絶えた。
「ブラウン。何を躊躇しているのです?まさか怪物の言葉を信用した訳ではありませんよね?」
怪物を殺し続けているうちに気づいてしまった。目的のために人を殺す……自身もまた怪物なのだと。
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千八百九十年 教会
「ブラヴァツキー夫人……私はあなたの期待に答えたはずです。次はあなたが約束を守る番だ。」
父と母が殺されてから十年が経った。痺れを切らした私はブラヴァツキー夫人を問い詰めていた。
「五人です……」
「?」
「
「!?」
「もちろん、分かったこともあります。
「だったらどうして、私のお父さんとお母さんが……」
「……話すべきか迷っていたのですが……話すべきなのでしょうね。あなたのお父様とお母様は、過去に奴隷の販売、奴隷が禁止されてからは怪物たちにターゲットを移し、貴族たちに高値で売りつけていたことが分かりました。」
「うそ……お父さんとお母さんがそんなこと……」
「残念ですが、嘘ではありません。本当はもっと早くに話すべきでした。申し訳ありません。」
「じゃあ私は……何のために。」
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翌日。私はブラヴァツキー夫人に
「……当然ですね。私はあなたとの約束を果たせなかったのですから……」
「いえ、チャド神父とブラヴァツキー夫人は今日まで私を父と母の代わりに育ててくれました。それだけでも充分、感謝しています」
ブラヴァツキー夫人は私に近づき一丁の銃を手渡した。
「一度怪物の世界に深く足を踏み入れたあなたは、きっともう普通の生活には戻れないでしょう。この銃をお守り代わりに持っていきなさい。」
「これは?」
「軍の知り合いから頂いた物なのだけれど……見せた方が早いわね。十分」
ブラヴァツキー夫人は自分の頭に引き金を引いた。
「彼の名はルシファー。私が契約をした悪魔の一人で、こうして引き金を自身や相手に向けて引くことで、使用者の寿命を引き換えに力を貸してくれるわ。」
「久しぶりだなブラヴァツキー夫人。ようやく私を扱うものが現れたのか?」
「えぇ、彼女が新たな契約者よ。」
その時初めて見たルシファーは背が高く、不気味で、どこか恐ろしかった。
「初めまして新たな契約者。私の名はルシファー。あなたの名前は?」
「……エヴァ……ブラウン」
「そうか……エヴァ心配する必要はない。悪魔と言っても私は他の悪魔とは違う。お前が払う対価に相応しい働きをすると約束しよう。」
悪魔と呼ぶには紳士で礼儀正しい目の前の存在は、軽く会釈をして誠意を表した。
「ルシファーは天界に帰るために千の悪の魂を集めているの。あなたなら上手く、いい関係が築けると思うわ」
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千八百九十二年 二十一時 教会
そして今でもたまに、こうして依頼を回してくれる。
「そう、今回の犯人は吸血鬼だったのね。被害者の遺体は見つかりましたか?」
ブラヴァツキー夫人は初めて会った日から少しも老ける様子を見せない。一部ではブラヴァツキーも怪物なのではと噂が囁かれている。
「……見つかったのは衣服と遺骨だけです。遺骨に関しては被害者のものかも分かりません。」
「そうですか……つまり別の怪物も関わっていたと。」
「……グールが関わっていましたが、そのグールたちは人を殺すことなく生活していました。ブラヴァツキー夫人、彼らを見逃してはいただけないでしょうか。今回の犯人の場所を教えたのは彼らです。グールの鼻は役に立ちます、どうか……。」
ブラヴァツキー夫人が困った表情で頭を悩ませていると、ブラヴァツキー夫人の隣に立っていた、チャド神父が質問を投げかけてくれた。
「もし、その怪物が人を殺したらどうする」
「その時は容赦なく殺します。あくまで利用価値があるから……ただそれだけです。」
私の言葉にブラヴァツキー夫人は立ち上がり、答えを述べた。
「いいでしょう。特例で、そのグールのことはあなたに一任します。ですが居場所を教えていただかないことには判別することはできません。教えてくれますね?」
この物語は魍魎たちが跋扈するイギリス。ドラキュラ伯爵やカーミラ。ヴィクター・フランケンシュタインに