ルーバン・クレイの失踪
「バディ!」
私の掛け声でツァトゥグァ様から頂いた不定形の怪物。数ヶ月共に仕事を重ね徐々にに連携が取れるようになってきた。
今もフランケンシュタイン博士の生み出した継ぎ接ぎの怪物との戦闘で、私の掛け声一つでタイミングよく飛びかかり、身体能力の高いフランケンシュタインの怪物をいとも容易く押し倒してしまった。
「これでおしまい」
私は継ぎ接ぎの怪物の頭に弾丸を放ち、仕事を終えた。
「バディ、お疲れ様。」
私は鞄の中から生のジャガイモを取り出しバディに向かい投げた。
「……!」
私はバディがジャガイモを食べ終わるのを待ち、依頼の報告に教会へと向かった。
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「無事に戻ってくれて何よりだエヴァ。」
今回の依頼は親が殺されてしまった私を拾って育ててくれたチャド神父によるもので、ロンドンを守るチャド神父に代わり、マンチェスターに現れた継ぎ接ぎの怪物を始末するものだった。
「はい。ワースのように知性のある継ぎ接ぎではなく、フランケンシュタイン博士の……いわゆる失敗作だったので問題なく倒すことができました。」
「そうか……だが、油断だけはするなよ。」
私は教会の談話室でチャド神父と紅茶を嗜みながら依頼完了の報告をしていた。
「エヴァ、続けてで悪いんだが、もう一つ依頼を頼んでもいいか?」
「なんでしょう?」
チャド神父は話すべきか迷っているのか、険しい表情で重たい口を開いた。
「……失踪したルーバン・クレイを見つけて欲しい」
「クレイくんが!?」
「あぁ、グレンと共にオックスフォードへと吸血鬼退治に向かっていたんだが、グレンと離れ逃げた吸血鬼を追いかけてから消息不明だ。」
数ヶ月前の吸血鬼とグールに夜事件。私に協力をしてくれていたクレイくんが消息不明になったことに、私は少なからず動揺していた。
「……普通に考えたら死んでますよね。」
「普通ならな。ブラヴァツキー夫人が生きていると言ったんだ、彼女が言うなら間違いないだろう。」
「…………」
ブラヴァツキー夫人は全てを知っているかのように物事を語る。そして神の使徒は、夫人の根拠のない助言に何度も救われてきた
「生きているのに帰ってこないとなると……捕まっていると考えるのが妥当ですかね。」
「恐らくそうだろう。あの悪魔の力があっても気絶させられているとしたら意味がない。仮に死んでいたとしても構わない、彼を探してはくれないだろうか……。」
「それは構いませんが……どうして私に?」
チャド神父は怒りの表情を浮かべ、どうして私に頼んだのかを話してくれた。
「君も知っているだろう、教会が非情であることは。彼が行方意不明になったと知った上層部から早々に捜索中止の命令が届いたんだ。」
「そう……でしたね。すみません、離れて長かったもので、忘れてしまっていました。」
私が頭を下げたからか、チャド神父は申し訳なさそうな、悲しそうな複雑な表情をしていた。
「君が謝ることじゃない……こちらこそ、すまない。私は肝心な時にいつも無力だ……!私があの時に止めていれば、君は怪物なんか知らずにすんでいたというのに……。」
チャド神父は会う度、私のあの日の決断をまるで自分を責めるように謝罪してくれている。
「……私は何度でも言いますよ。チャド神父は親を失った私を自分の娘のように育ててくれた。私はチャド神父の事をもう一人の父親のように愛しています。」
この人と話す時はいつもと違う自分……昔の怪物なんて知らなかった時の自分に戻ることができる。
「エヴァ……本当にすまない。」
「上を向いてください。私に背中を見せてくれる親はもう、あなたしかいないのですから。」
チャド神父は顔を上げ、扉から出ようとする私を見送ってくれた。
「行ってきますお父さん。」
「あぁ、……行ってらっしゃいエヴァ。」
私はチャド神父のいる教会を出て、クレイくんが行方意不明となったオックスフォードへと足を運んだ。