酒に狂った男   作:鶏肋

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地味にルート分岐回


東奔西走

スーパーイーツは割と天職だった。他の職を試してみた事も有るが、やっぱ一番安定してるのはこれ。

なんせ俺のパルクールもといフリーランニングと割と相性が良い。地形を無視して超速でお届けしまくればその分だけ稼げるからだ。注意するのは抱えた荷物が崩れないよう慎重を期すだけ、俺的にはこれほど安上がりな儲けも無かった。

 

まぁ……その分、()()()時もあるが。ああいや、物損とかそういう方向じゃない。

 

ただバイト中に出くわした。酒寄と。

 

「ふぃゃああ!」

「おぉ~よしよし、今ミルク出しますからね~」

 

赤ん坊を抱えて歩く酒寄と。

 

「?……っ?、ッッ!!??!?!」

 

理解を拒む脳を他所に、脊髄とそれに従う指の筋肉は一糸の乱れも無くスマホを操作していた。反射って怖いね。

 

< いろは対策委員会(3)                         

                              

落ち着いて聞け    

酒寄が子持ちになってた_

_ROKA

それは嘘だよ

_ROKA

だって彩葉は

_ROKA

せつちゃ

_ROKA

絶対そんなこと

_まみまみ

落ち着いて芦花。ゲンちゃんもちゃんと説明して

 “そういう意味”じゃないんでしょ?     _

いや多分そういう意味 

俺もどうにかなりそうだ_

_まみまみ

えぇ……

_ROKA

くぁwせdrftgyふじこlp

 

 

この時点で3連休最終日の夕方。ここから下手に会う約束も出来ず、かといってRINNEで連絡を取ろうにも応答は無い。ツクヨミでの待ち伏せも功を奏さず、迂闊な報告によってバグってしまった綾紬への対応に追われてしまった事も相まって、詳細な事情聴取は明日の放課後という事になってしまった。俺がまず落ち着くべきだったか……。

 

(しかし結局何だったんだあの赤子は)

 

酒寄の実子、ではない。流石に妊娠してたら真美達が気付いてる筈。

もっと言うとクソ真面目な酒寄が勉学を怠らざるを得ないような事を自分から仕出かすワケが無いので、つまりもし妊娠だったら酒寄が暴漢に襲われた可能性さえ浮上するワケで、その場合は俺が犯人を特定して八つ裂か(ダイレクトアタックし)なきゃいけなくなるワケで。そん時ゃ日頃キッチンにて愛用してる包丁(ドス)の出番だな。

 

けどそんな状況証拠的に有り得ない択を除外しつつ、じゃあ何だと言われると困ってしまうのが、家に帰って一人悩んでいる俺の状況だった。一番順当なのは「親戚から預けられた」って所なんだろうが、防犯皆無ボロアパート一人暮らしJKに預けるか普通?…………娘に防犯皆無ボロアパート一人暮らしさせてる酒寄の親の同類って思えばめっちゃ説得力出てくるな。なんかヤだわぁ。地獄の酒寄さん()

 

(それに……あの瞳)

 

酒寄に抱かれる赤子と一瞬だけ視線が合った。が、何故か覚えた()()()に、俺は理由を付けられずにいる。本当に最近覚えがある筈なんだが、どうにも確信を持てない。

 

「──っぷは。下手の考えなんとやら、かね」

 

結局考えたのはそこまで。どうせ酒寄より頭悪い俺が脳捻ったところで良い考えなんて出て来やしないんだし、後はもう明日に全賭けするとしよう。真実達が「日頃の感謝」という名目で誘き出したスイーツ店で、上手いこと情報を引き出してくれるのを祈るのみ……そう割り切って、俺も眠りに就いたのだった。

 

 

ちなみに、路地裏でボロボロの彩葉が赤子を抱きながら睨みつけてくる夢を見た。最悪過ぎて叫びながら起きたわ。肝冷えたって、勘弁してくれホント。

 

 

< いろは対策委員会(3)                         

                              

_ROKA

【昼報告】        _

 依然、彩葉の様子に異常は無し

 むしろ活き活きしてるまである

そりゃ何よりだが、お前は大丈夫か?  _

無理ならこっちで何とかして埋め合わせるが_

_ROKA

気にしないで         _

 今は対応を真実に任せて連絡役に_

 徹してるけど、もうちょっとしたら

 勇気出して復帰するから    _

りょーかい         _

なんかあったらすぐ言えよ  __

こっちは早退届もう書いてっから_

_ROKA

そこまでしなくても……

 でもありがと    _

 

 

──ここから未読メッセージ──

 

_まみまみ

誘導成功!芦花がやってくれました

 16:30頃にカフェ到着予定だけどそっちはどう?

でかした!こっちも今終わったとこだ
 

じゃあ手筈通りにやらせて貰うぜ  _

_まみまみ

オッケー!こっちは任せろ〜

 

 

そうして訪れた翌日午後。前進を見せた事態に、俺もようやく動き始める。

真実達はある意味陽動、かと言って俺がメインって話でもないが……こっちの作戦目標はズバリ、本丸の赤子そのものだ。

 

(一人でつつがなく登校してきたって事は、子供は今も家にいる筈。酒寄が赤子一人を置いて行くワケが無ぇし、まだ見ぬ同居人が面倒見てる筈だ。そうでないなら、もう親元に返したって線もあるが……)

 

まぁそれなら万事解決なのでそれでも良い。いずれにせよ酒寄の居と赤子が今どうなっているかを把握するのが役割である事に違いは無い。善は急げという事で、道路を駆け塀に跳ね乗り家々を飛び移って、俺は俺の高校から一直線*1に酒寄のアパートへ向かった。

 

 

 

「……いねぇ」

 

結果は良くも悪くも空振り。辿り着いた酒寄の部屋、その周囲360°で聞き耳建てたり嗅いだりしてみたが、赤子の気配も匂いも声も無し──犯罪臭がする?しょうが無ぇだろ他にガチ犯罪(不法侵入)以外で存在確認する手段無かったんだから──という事で、“分からない事(赤子は酒寄宅にはいないって事だけ)が分かった”って具合。となると俺が次に取る手っつったら、真実・酒寄・綾紬カフェで寛ぐ様を遠くから見守るぐらいかな……っと?

 

「んだぁ、テメェ隣の女の何だァ」

(ぅぉっ火曜昼間から酒臭っ)

「彼ピッピってかァ?ガキの様子でも見に来たかァヒック」

「!」

 

ノロノロと這うように、推定無職が隣の部屋から参上。オイオイいよいよ酒寄の居住環境最悪過ぎだろ。今からでも謎に空き部屋だらけな俺のマンションに誘いたくなってきたんだが?

けど見方を変えればある意味チャンスだ。近隣から話を聞く事で得られる情報もあるだろう。

 

「一つ質問なんですけど、隣の……酒寄さん周りで、なんか変わった事とかありました?(元)同級生なんですけど知っときたくて」

「あ゛~?ゥヴェップ……腐る程あったわ!年端もいかねぇクセにガキなんぞこさえやがって、ケッ」

(ビンゴ!)

 

早速辺りを引いた手応えに内心でガッツポーズ。相手の物言いに殺意メーターが若干溜まったが、このまま情報を引き出していこう。

 

「子供……いつからです?」

「知るかよォ。連休中泣いたり笑ったりウルセんだ。厭味かってんだよ、クソが」

我慢しろよ大人だろうが(そりゃ難儀でしたねぇ)。となると、その子供は今どこにいるかご存じで?」

「それこそ知るかァ。昨日の夜から声聞かんし……ああだが、代わりにキーキーうるさい会話もしてたっけな。腹立ってきたわ」

 

連休中……早く見積もって金曜夜から既に、か。話しぶりから鑑みるに、子育ては酒寄単独で(おこな)ってたとみて良いだろう。っぱアイツ流石過ぎる、よう(こな)したなマジで。

だが昨日(最終日)聞こえてきたという会話。これは赤子を迎えに来た第三者との物、という認識で良いのだろうか?

ま、ここいらで充分か。欲しい情報は概ね揃ったし。

 

「貴重なお話をありがとうございました。ご迷惑をおかけしましたね」

「迷惑?ああ全くd──いや、()()()()()()にはなったかァ」

 

──ストレス?発散?

形式の礼だけ告げて帰ろうとしたその時、丁寧な対応に気を良くしたのだろう相手が漏らした言葉。それに足が止まった。

 

「笑い声がうるせぇからよォ、ガンガン壁蹴ってやったのよ。そしたらすぐ泣き声に変わって胸がすいてな……泣か()るのはウザくても、泣か()るのは気分良いかもなァ。オエッ」

「……」

 

へぇ。ほぉ。ふーん。

お前そんな事したんだ。1歳になってるかも分からんガキに。それを抱えた酒寄に。

はぇー。わー。ふぅーん。

 

 

ま、酔ってるもんな。仕方無ぇよな。

 

「──がカハァ゛ッ!?!」

 

辛ぇんだろうなぁ。酔ってなきゃやってられねぇんだろーな。

そういう奴を知ってるから、分からんでもないんだよなぁ。

 

母さんが死んでからの雑魚(おやじ)も、そうだったから。

 

「酒は百薬の長。その側面もあるとは思いますよ、うんうん」

「キぃ、オ……ッ」

「けどやっぱ飲み過ぎはダメっすわ。二日酔いになってたら元も子も無い……ので、今直してあげましょう」

「コヒュッ──ゥ──!!

 

喚くな。藻掻くな。拒むな。喉笛抑えられたお前に、その権利は既に失い。

だからこのまま大人しく──

 

「二度と飲めねぇ身体にしてやる」

 

受け入れろ。

 

 

 

 

 

 

彩葉達が歩いてく。

シュタタタタッ、と近付く。

 

彩葉達が遠ざかる。

シュババババッ、と追いかける。

 

その間も、彩葉は笑ってた。私が見た事の無いくらい屈託のない顔で!!まだ会って5日目だけど!!

 

(んぐぎぎぎぎ……楽しそぉ~……!)

 

言いつけを破って繰り出した地球の街は面白かった。色んな人がいて、色んな営みがあって、人以外の色んな動物もいる。犬とか猫とか可愛かったし、家に帰ったらまたなんか作ってみようかなって思ったりして。

けど、彩葉と一緒なら、きっともっと楽しい。目に映る物も耳に聞く物も、きっともっと楽しくに思える。筈だ。

あの綺麗な瞳と一緒だったら、もっと!

 

「だから一緒にハッピーエンド行こうよ~……」

「トゥルーエンドじゃないのか」

「彩葉のノーマルエンドに比べればまぁそれもアリ」

 

木陰から念を送ってみるも効果なし。くそぅ、月に居た頃はこれで結構いけた気がするんだけどな~。まぁどういけたかも覚えてないんだけども。

 

「っていうか、あの彩葉と仲いい子達は誰なの?こっからじゃ会話も聞こえないし」

「知ってるけど個人情報だ。欲しいならそれ相応の対価は貰うぜ」

「……彩葉の口座のデータって、書き換えて良い奴かな?それでOKなら」

「マジでやめろ。特に書き換える方は絶対やめろ」

 

しっかし、月世界も窮屈だったけどこっちもこっちで中々だ。方向性の違いっていうのかなぁ、法律?ていうのも理解しないと生きてく事も儘ならないらしい。その分娯楽に満ち溢れてるから良いんだけどさ、こっちは。

ねぇ、あなたはどう思──

 

──()()()って、誰?

 

「……酒寄と揃って、防犯意識は壊滅状態ってか。もっと警戒心持てよ」

「誰?誰なのぉ!?」

「シーッ。酒寄たちにバレる」

「んくっ」

 

口の中に広がるは突っ込まれたクレープの甘味。うっま、彩葉のパンケーキと比べたら……いや比べるのが失礼か。

 

そんな感動に身を震わせつつ、いつの間にか私の隣にいた存在へと改めて目を遣る。それは例えるなら()()だった。

脂肪じゃない、筋肉の塊。決してマッチョとかそういうのじゃないけれど……内に押し込められた“密度”が凄いって、私には分かる。勘だけど。

 

そんな図体を統括する頭が、目深に被った帽子が、それに隠された額の傷痕が。

傷痕の下で静かな光を宿す赤い瞳が、私を鋭く見下ろしていた。

 

 

……なのに、なんでそんなに怖くないんだろ?

 

 

「あっ、分かった。河原で飛んだり跳ねたりしてた人だ。リアルだっけ」

「!……そういうお前はどっから来た。宇宙か?」

「ギクゥ」

「口に出すなよ……」

*1
比喩抜き

*2
誓って殺しはやってません(桐生ちゃん並の感想)




現が子持ち彩葉を目撃しない→現が彩葉と再び関わる機会を持たない→原作本編√

現が子持ち彩葉を目撃する→拙作√
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