酒に狂った男   作:鶏肋

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色んな二次読んでて「この作品時空に現がいたらどうなるかなぁ」とか考えたりする

例:某モジュ(どり)
どうなる?:多分物語開始時点でモジュ杖の自称舎弟(金魚のフン)やってる。あと確で両親存命


それぞれの祈り

「ふむふむ。かぐやちゃんの正体は月人で」

 

あの満月の夜、流星に乗ってやって来て。

 

「赤ん坊の姿で彩葉に拾われて」

 

3連休の間に今の姿へ急成長して。

 

「彩葉が登校したら、つまんないから抜け出して」

 

私達を尾行してたら、石実に見つかって。

 

「今に至る、と」

 

……うん。分かった事はただ一つ。真実と声を一つに。

 

「「3人とも休もっか」」

「「いや疲れ果てた末の幻覚や妄想ではなくて()」」

「ま〜面食らうのも無理ないかも?」

 

同じく声を一つに異議を唱えてくる彩葉とゲンちゃんの様相は本当に相性悪いのか疑いたくなるけど、それはそれとして易々と信じられる……いや信じたくはあるんだけど理解の範疇から遥か外にある事態なのは確かだ。取り敢えず2人は疲労が溜まってるのは事実なんだから、帰って寝よ?

 

(とはいえ、かぐやちゃんが浮世離れした雰囲気を纏ってるのも事実)

 

語気も程々に肩を竦める当人の泰然っぷりは、寧ろ先の論に説得力を待たせてくるようで。参ったなぁ、判断に困るよコレ。

 

「……分かった。信じるよ」

「良いのか真実?俺自身としても突拍子の無い言い分だと自覚してるんだが」

「んふふ~、乙女の勘ってヤツかな?それにこんな可愛い子が悪いワケ無いからね~……芦花はどう?」

「パンケーキうまうま」

「餌付けされてるし……」

 

迷ってる内に、何と真実はさっさとあっち側について、かぐやちゃんを甘やかしてしまう始末。これで3対1、多数決じゃ勝負ありだ。

けど私はもう少し粘ってみる。何よりも心配なのは彼女だから。

 

「彩葉は、どうするの」

「え、私?」

「彩葉の家にいるんでしょ。大丈夫なの?」

 

彩葉は一人暮らし。衣食住に加え学業までも全て自分で熟している……けど、そこへ更に年下の子供を養えるだけの余裕があるとは思えなかった。彼女の事は尊敬してるし高く評価してるけれど、人間である以上は絶対に限界がある。

 

「リアルがねー、私を抱えてパルクル?してくれたの!真実も今度やってもらいなよっ」

「おお~そりゃ良かったねぇ──ゲンちゃん。後で()()

「ウス」

 

「……私だって、悪い子じゃないとは思う。でも警察に届け出るのがまずは“筋”なんじゃないかな」

 

石実の膝の上に座って真実にあやされるかぐやちゃんを横目にそう言った。こういう場合、公的機関に頼るのが一番安牌なのは間違いないから。それが一番彩葉に取って負担が少ないなら、私は躊躇なくそれを勧めるのみ。

けれど、私の言葉を受けた彩葉の答えは違っていて。

 

「……ううん。私が面倒を見る」

「なんで?」

“立ち上がった人が全部やらなきゃいけない”。私はもうかぐやを拾っちゃった。この時点で、引き返す選択肢なんて無いんだよ」

 

出てきたのは、そんな強迫的な観念だった。

 

「そんなことっ……」

「芦花が真に受ける必要は無いよ。でもこれが(お母さん)の生き方なの。変えられないし、変えちゃいけない」

 

思わず反論しようとして、でも彩葉の瞳に宿った光を見ればそれも叶わない。こうなった時の彼女は、彼女の愛した母の教えに縛られている時だから……私が踏み入れる世界じゃないから。

踏み入ればどうなるか分かっている。踏み入られた彩葉が、踏み入ってしまった石実がどうなってしまったのか……私は知っていた。

 

ああ。やっぱり私は意気地なしだ。私じゃ、彩葉を助ける事なんて……。

 

「いーろーは~~~~~っ!!!」

 

その時だった。鬱屈を突き破って、かぐやちゃんの体当たりが彩葉に直撃したのは。

 

「うぇっ!?」

「彩葉、またつまんない顔してる!これ食べて元気出してっ☆」

 

差し出されるのはかぐやちゃんが食べてたパンケーキ。さながら“あ~ん”の体勢で差し出される蜜の味に、抗う術など無かったんだろう。

パクリ、一口。咀嚼を経て喉を鳴らした彩葉の顔は……複雑な表情では隠し切れない喜色に満ちていく。

 

「……美味ひい」

「真実に教わったんだ、スイーツはいずれガン?にも効くようになる薬だって。これがかぐやの企てる“皆でハッピーエンド計画”第一段階、ドヤッ!」

「こ、コイツっ。ああもう」

 

そして驚かされた。あの彩葉が、完全に振り回されて、そしてその事を何処か受け入れつつあるだなんて。

 

「真実」

「実際そうでしょ?病は気から、気は飯から~……とはいえ、まさかここまで即実行するとは思わなくてさ」

 

いぇーい、って真実とハイタッチしに行くかぐやちゃんの姿に、私は暫し呆気に取られていた。

今の真実の言葉から察するに、この結果は唆されたというより、かぐやちゃんの生来の行動力による物で。そしてそれは、私たちがこの1年間で突き破れなかった彩葉の心の壁を容易に貫いてみせたのだ。驚かない方が無理だった。

 

(……でも、そっか)

 

だからこそ理解する。

彩葉を助けるのは、救えるのは、きっと私でも真実でも石実でもなく────

 

 

「話を纏めるぞ」

 

諦念に沈みかけた私の意識を引き上げたのは、石実の声。

 

「警察には届け出ない。公に明かす事もしない。ガキ改めかぐやの身柄は酒寄預かりとし──俺達3人がその生活を全面的に支援(バックアップ)する。異論は?」

「異議なーし」

「あ……うん。真実(みぎ)に同じ」

「え?何??かぐやが何???」

「かぐやちゃんが彩葉と暮らしてくのを、私達が助けるって事だよ〜」

 

提案に全く異論は無い。きっと、かぐやちゃんが彩葉を必要とするのと同じように、彩葉が救われるには彼女が必要なんだ。その確信を得られた今、私に拒む理由なんて微塵も無かった。

けれど、いつの間にやら放って置かれた()()はといえば。

 

「え。え────いやいやいや待て待て待って!勝手に決めないでよ!!」

「不満か?取り敢えず金銭面の負担は俺:5・酒寄:3・真実:1・綾紬:1で考えてるが、俺:8でも良いぞ。学校辞めればなんとかなる」

「ゲンちゃんー!?」

「そっちじゃなくて、助けてもらう事自体がお門違いなんだよ!これ私の責任!私が一人で背負う物なのッ」

「え〜良いじゃん〜。かぐや、彩葉や皆といっぱい遊びた〜い」

「ぐっ……じゃなくて!!」

 

石実から私達も引く程の譲歩、およびかぐやちゃんからのおねだりにも屈せず、彩葉は粘る。

 

「さっきも言ったように、()()()()()の。私が拾った、私の責務。それがかぐや──だから月からお迎えが来るまで私が面倒見る。そこに芦花も、真実も、石実も関係無いんだよ」

「そんな事言わないでよ」

 

けれどその物言いに、とうとう私とカチンときた。決して怒ったわけじゃないけれど、でも受け入れられる言葉じゃなかったから。

 

「彩葉。私達の関係って、何?」

「……友達」

「うん。頼って、頼られる。友達ってそういう物でしょ」

 

貴女に踏み入れるのが怖かった。だから二の足を踏んで、でもそれが貴女を傷付け続けるのだとすれば。

 

「頼ってよ。私に、貴女を支えさせてよ」

「っ…………」

 

私だって、考え(勇気)がある。

その一念で振り絞った言葉は彼女を揺らせたのか、それとも否か。きっと前者だと信じて、目を逸らす彼女の瞳を見つめ続けた。

 

「……酒寄。そっちの社会系の授業でも、“核家族化”は習ったよな?」

 

そこへ追撃。私への支援攻撃とばかりに、石実が口を開いてくれる。

 

「その前の家族形態は血族ぐるみ、もっと言やぁ地域ぐるみでの連携が前提だ。特に子育ての側面はな」

「それが……何だっていうの」

「ガキを育てんのは個人じゃなくて社会の仕事だっつー事。で、今お前が面してる社会は俺達5人のコミュニティ……()()しろよ」

 

感情論ではなく、歴史で築かれた合理的観点からの切り口。そこから理性での判断を促す事による誘導。

更に真実から、

 

「私、かぐやちゃんともっと話してみたい。一緒に過ごしてみたい。これは彩葉の為だけじゃない、私がそうしたい事なんだ」

 

私も続けて、

 

「お願い。求めて」

 

最後に、かぐやちゃんのトドメ。

 

「い〜ろ〜はぁ〜……ダメ?」

 

「っ……────だーっ!分かったよもー!!」

 

ここでとうとう彩葉が折れてくれた。その瞬間、感極まって彼女に抱きついてしまった事を、その夜の私は激しく赤面しながら反省する事となる。

 

 


 

 

ゲンちゃんが()()()()()日。

この時の事を、私はそう形容している。

 

「じゃあ、金銭負担は俺:5で酒寄(おまえ):5。そして真実と綾紬がお前ん()へ2日おきに、交代で訪問する……これで決定な」

「それでもやり過ぎって言いたいけど、これ以上は値切れなさそうだから良いよ。でもして貰った分については、将来絶対に返させてもらうから」

「要らねぇよ女の金なんか……真実と綾紬に投資しとけ」

「じゃあそうする。真実へのお金ならあなたのお金にもなるだろうしね」

「私としては毎日でも良いんだけど?」

「ごめん芦花、これ以上は私の罪悪感ががが」

「ふふっ。かーわいっ」

「……真実の金が何故俺の金に……?」

 

ふと漏らした“女の金”なんて暴言。本来なら咎められて然るべき物なんだけど、でもその刹那に私は見たんだ。

ゲンちゃんの瞳の奥に、沸々と煮え沸る、久々のギラついた闘志を。

 

(……良かった)

「どしたの真実?リアルが気になる?」

「まぁねー。でもかぐやちゃん、一体どんな魔法を彼に使ったのかな?」

「んー?……何も!」

「ホーディみたいな事言っちゃって、このこのっ」

「わひゃはあははっ!?ちょ、真実!やめてってば〜!!」

 

尾行中の出会いから今に至るまでに、彼と彼女の間に何があったかなんて分かる筈も無い。けれどただ一つ言える確かな事は──かぐやちゃんに救われるのは彩葉だけじゃない、って事。

 

「ゲンちゃん……一緒に、守ろうね」

「……お前さえよけりゃ、そうすっか」

「2人ともー!早く次のお店行こー!!」

「何調子のいいこと言ってんの。普通に帰り道だからこれ」

「もう日も暮れちゃうし、嬢さん良い子だねんねしな~ってね」

 

夕暮れの中、並ぶ5つの影。これが欠ける日が来ないと良いなって、そう願う帰路。

そんな西日の逆光の中で、私は久方ぶりの渾身の微笑みを浮かべたのだった。

 

 

「そーいえば、これどうやって使うの?スマコンって言うんだっけ」

「何これ。私のやつ持ってきたの?」

「ううん、彩葉のノートPCで買った」

「はぁ!?」

オイ待てかぐガキ……最新式スマコンって確か10万弱とかそのレベルじゃなかったか……?」

「かぐガキじゃないよ、かぐやだもんー!」

「ギャー!!!残高452円ー!!?」

「い、彩葉!!私のふじゅ〜全部あげるから使って!流石に見てられない!!」

「芦花は芦花で覚悟キメ過ぎだよ!?!」

 

────欠けないと良いなぁ。破産者が出ないって意味で……!

 

 



 

 

幾ら夏といえど、老骨に夜更かしは堪えるものだ。

そう独り吐いた息は宙に溶け、聞き届ける者も無く消える。前線を引いた私の居場所、僻地の一軒家にて。

 

……石実の子は、“かぐや”をどうしたのだろうか。それだけを気がかりに想う。

 

(もう少し若ければ、日本に飛んで駆けつけていただろうに……私も最早老害か)

 

駆けつけた所で何が出来る。運命は既に決まっていて、“かぐや”は“私の愛したかぐや”となるのだろう。その過程で、多くの人に悲しみを齎し、そして彼女自身も悲劇を背負う。

 

その坩堝の中で。

 

私の所為で全てを失ったあの少年に。

 

私が今更、何を?

 

「ぅ…っ゛、ゲホッ!」

 

イカンな、少し気が滅入るとすぐこれだ。皺枯れた肉体は意志の強さを反映しないクセに、弱った時にはそのまま現実へ投影する。この苦しみさえ何の償いにもなりはしない。

君もそう思うだろう?なぁ、FUSHI。

 

「……ああ、無意味だな。だってお前の罪じゃないんだから」

「いいや、私の罪さ。君のではない」

「同情はよしてくれ。ボクさえヘマしなきゃ、石実楓は死ななかったんだ」

 

……やれやれ。強情はお互い様、という訳か。

 

「ならせめて、傷の舐め合いと洒落込もう。ウミウシサイズのソファだって用意してあるんだ」

「流石は海千山千のCIA。この手の接待はお手のものだな」

「元、さ」

 

私は、祖国から君達を隠し通せなかった。

君は、迫る魔の手に愛する者を巻き込んでしまった。

結果。かぐやが愛したあの子の母は、全身を刻まれ散った。

 

その罪を肴に、せめて若き命へエールを送ろうじゃないか。なぁ、不死なる友よ。




【姓名】
石実楓
【性別】
女性
【生年】
198●
【職業】
公安
【現在】
2018年殉職。死因は全身裂傷および爆風による重度外傷。
当人物には同職の夫がおり、最後に従事していた任務の情報を共有していた可能性あり。実子の関与程度は不明。
また生き別れの姉がいたとの事だが、謎の電子攻撃を受けデータが破損するため調査は進んでいない。
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