酒に狂った男   作:鶏肋

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昨日、自動ロックされて朝から晩までビビり散らかしましたが首の皮1枚繋がった作者です。対戦よろしくお願いします。
その影響で調子狂いまくったので土日の更新は多分無理っす(エクストリーム言い訳)。


いろ、惑う

「おかえり。どうだった?」

「彼なら元気だったぞ。でも、ここに来れないのがとても悔しそうだった」

「そっかぁ。君同様、彼にも迷惑をかけっぱなしだからねぇ。近く恩返ししないと……ところでFUSHI。そろそろ“君”が彼と出会うけど、見てく?」

「……そうだな。まだボクじゃないバカ犬がどう動くのか、精々観察してやろう」

「全くも〜。素直じゃないんだから」

 

 


 

 

「……とんでもねぇ1日だった」

 

酒寄たちと別れた後、真実に自室へ乗り込まれて、かぐやをパルクールに巻き込んだ件について説教されること1時間。垂れ目を無理やり吊り上げて懇々と詰めてくる姿が可愛すgもとい怖過ぎてブルっちまったわ。ホント頭上がらねぇなぁ……。

 

(というか、説教そのものよりもまみまみグッズを隠す方が大変だったわ。こえ~)

 

アレが本人にバレたらマジで死ねる。そろそろ全クローゼットが埋まりつつあるし、他所に保管場所設けるべきか……っとと、その前にやるべき事が一つ。

 

「FUSHI、ふじゅ~残高の整理画面よろ」

『総残高:100728ふじゅ~!フォルダ分けするか?』

「ああ。新たに“育児予算”フォルダをセット……と」

 

ツクヨミにログインし、FUSHIのAIによるサポートを受けつつ今後の資金繰り。現実でやるよりこっちの方が手っ取り早い。勿論人前で大々的にするのは憚られる内容なので、そこら辺の人気のない建物の屋根に飛び乗って行うのが常だ。

さーてまず削るのは食費。次に光熱費。水呑んでりゃ暑さは耐えられるし、塩さえあれば人間なぞ割とどうとでもなる。まみまみグッズは……削るのは最後だ、うん。

 

「ワン」

「文句言うな。まみまみは全てに優先され、って何だこの犬っころ?」

「クゥーン」

 

気付いたのは即座。屋根の下から感じた視線に見下げてみれば、通路の真ん中に……犬が。ツクヨミは他媒体から動物キャラを連れて来れるとは聞いた事あるけど、ちょっとこのタイプは見た事無ぇな。

 

「迷い犬って所か」

「ワフッ」

 

飛び降りつつ歩み寄ってみれば、犬っころは人懐こしい性格設定らしく元気に飛び掛かってくる。それを受け止め、手慰みに遊んでやることにした。

と言っても“遊び”というより“弄び”、犬っころを高速お手玉するだけの事。だがお気に召したらしく、何度地面に降ろしても繰り返しせがむように飛びつく。やめるタイミングが見当たらないけど……まぁ、いい。

 

(諌山家の弟妹共もこんな具合だったなぁ)

 

真実の下の子達はそれはもう可愛いもので、妹ちゃんは頻繁に抱っこをせがんでくるし弟は足掴んでのジャイアントスイングをよくしてやったっけ。でも最近、前者はなんだかツンツンしてきたし、後者は怪訝な目を向けてくるようになったから普通に寂しい。思春期だァ。

 

『名義確認!飼い主:かぐや!』

「……マジ?」

 

そんな俺の思考を止めたのは、開きっぱなしの管理画面からはみ出してきたFUSHI。

急ぎ確認してみれば、ガチで持ち主名義があのガキと同名。そういや、買ったスマコンの試用もかねてログインしてみるって話をしてたような……

 

……良い機会、か。

 

「ちと乱暴になる。堪忍しろな」

「フスフス」

 

管理画面を閉じ、抱き上げる。犬っころは俺の胸元を数度嗅いでから、まるで全て分かっているかのように、身を預けてくる。

それに(かこつ)けてしっかりホールドした後……つい数時間前に飼い主に対してやったように、俺はツクヨミの夜景へ弾け跳んだ。

 

 


 

 

「犬DOGE~!!どこいった~~!?」

「迷子防止機能を付けてないからそうなるんだよ」

 

ヤチヨのミニライブついでに、かぐやの初ログインを済ませた折。楽しんでる過程でいつの間にやら逸れてしまったペットを求め、私達はツクヨミを駆けずり回っていた。

 

ちなみに迷子防止機能とは、ツクヨミに連れて来たペットキャラが主人から一定以上の距離に離れてしまった時、主人の近くへワープさせる機能の事。他所のプラットフォームから連れて来たキャラでもオートで発動する筈なんだけど、犬DOGEはかぐやが自作したキャラであったためかオート機能がオフになっていたらしい。とはいえ、オフになってたらログインの時に警告が出る筈だけど……?

 

「いっその事1回ログアウトしちゃったら?再ログインしたら自動で近くに再出現(リポップ)するよ」

「え゛ー、そんな事したらデータの連続性が無くなっちゃうかもじゃん。ここでいなくなったならここで探したいよぉ」

「全く……」

 

連続性とやらにどんな意味があるのかは分からないけれど、私にとって重要なのは時間の方だった。なにせミニライブの時間が迫っている、そろそろ向かわないと良い場所を取れない。

でも真剣に犬DOGEを探すかぐやの様子に、それを止める気も起こせず……折角当たったチケットがぁ、と嘆きながら見上げた、満月輝く(フラッシュバック)に。

 

「え」

「お」

「へ?」

 

アイツの影。

それは飾りの翼を盛大に広げて制動を掛けながら、私とかぐやの間を土煙を上げて突き抜けつつ……止まった。

 

「──Re:AL?」

「よォ酒寄にかぐや。スーパーイーツの御届け物ってな」

「あーっ犬DOGEだぁー!!ありがとリアル~!」

「ワフ、ワフッ」

 

呆気にとられる私を他所に、あんなに探しても見つからなかった迷い犬が目の前で受け渡される。さっきのとんでもない挙動といい、このRe:ALは、石実現は……はぁ。

 

「ねぇアンタ。一応聞くけど、チートとか使ってないよね」

「全く。なんでだ?」

「いや動きにバフが掛かるKASSENならともかく、普通のツクヨミフィールドであんな挙動出来るワケないでしょ。マニュアルモードは制限されるし」

 

KASSENのフィールド内だったら分からなくもなかった。あそこなら私だって非日常的な動きも出来る。けどそれは、コントローラーを使ったマニュアル操作に更にバフが乗っかっているからこその話でしかない。

そしてKASSEN以外のフィールドじゃ、皆が縦横無尽に駆けまわってたら雰囲気壊れるからマニュアルモードに制限が掛かって日常的な動きに留まる。なのにRe:ALはそれを貫通してるの、どう見てもおかしいんだ。

 

それについて現実逃避気味に聞いてみれば、返ってきたのは希望を逸脱するレベルであまりにも現実離れした答えだった。

 

「あーその件な。俺オートマチックモードだから」

「ハァ!?!」

 

オートマチック……オートマ!?現実の肉体を動かす感覚をそのまま流用してるアレ!?それであんなに跳んで跳ねたの?!!

 

「何もおかしくないんじゃないの?私達だって今はオートマモード?なんでしょ」

「だからおかしいって話してんの!!」

 

オートマモードは初心者用、または普段使い用の仕様だ。自分が思った通りにアバターを直感的に動かせる。

けれど直感は直感。だからこそ、現実で出来ない動きはオートマでは出来ない。そういう点からKASSENには不向きなモードで、上級者はまず選ばない択なのに。

 

つまりこいつは、逆説的に。

 

「あの動き、現実でも出来んの?」

「え?うん毎日」

「毎日?」

「バイトで」

「バイト」

「彩葉、知らなかったんだ。ホラこれリアルのチャンネル」

 

かぐやが見せてきたスクリーンに映るRe:ALは、明らかに現実世界で宙を舞っていた。ついさっきカッ飛んできた姿と完全に重なる。

……いや。現実逃避の質問だったとはいえ、ガチで現実から逸脱した回答は求めてないんだわ。

 

「とりあえず、KASSENとかやるなら慎重になった方が良いかもね。その動きに更にバフが乗ろうものならチート扱いされかねないよ」

「安心しろ。1回されて以来、ずっと対NPCのソロプレイしかしてねぇから」

「Oh……」

「で、良いのか?時間」

「あ」

 

その言葉に確認すれば、残り10分。不味い……というか、今から行っても着く頃には良い場所なんて取られ切ってるだろう。

ぐぉお、折角のミニライブが……!

 

「かぐや!犬DOGEが見つかったならさっさと……いやなにRe:ALにおぶわれてんの?」

「だってこれが一番早いじゃん。ねっ☆」

「え?いやまぁそうだとは思うが……」

「いやいやいや」

 

あんなただでさえ悪目立ちするような方法で移動するのも、仮想空間とはいえ恐怖の落下体験をするのも、Re:ALに──石実に借りを作るのも御免でしかない。

かぐや養育の件は押し切られたとはいえ、ミニライブは完全に私の都合だから猶更。勿論早く行けるなら是が非でも行きたいところだけど、うぅん……。

 

「いろ」

 

……何?

 

「こんな時に言うのもなんだが────すまなかった」

 

私の煩悶を打ち切るRe:ALの声、そして行動。それはかぐやをおぶったまま、私に深く頭を下げる事で。

 

「なに、が」

「色々あるけど、まず喫緊の事だ。カフェの団欒、俺の所為で台無しになっちゃっただろ」

「やっぱり彩葉とリアルってなんかやらかしてたんだ。ぎこちないと思った」

「カフェでのやらかしはお前もだろが」

「アバババッバ」

 

そんなこと、という気易い許しの言葉。それが何故か出てこない。些細な事なのに、本当に気にする事じゃないのに、この胸の奥で閊える靄は何なのだろう。

 

「まぁ、ともかくだ。会場まで送ってくのがその償いになるってんなら、俺は喜んで引き受けるぞ」

「じゃあ、支援をやめてって言ったら?」

「俺はやめる。二度とお前に関わらない。真実や綾紬がどう動くかは保証しかねるが、俺は死ぬまでそれを貫くつもりだ」

「重っ」

「茶化すなかぐガキ」

「パヤヤヤヤヤッ」

 

背のかぐやを高速震動で折檻するRe:AL。けどその目に──仮想空間のアバターの目を信じるのもおかしな話だけど──誠意があるって、思えてしまった。

そうだと分かった瞬間、私の胸は、どうしようもなく()()()しまったのだ。

 

「──カフェの件は許すよ。でもごめん、やっぱ体を委ねるレベルまでは頼れない。だから先に行って、良い席取っといて」

「っ……ありがとう。んでもって任された」

 

このスッキリ感に戸惑いながらも、チケットの登録情報を修正。そのままかぐやとじゃれ合う彼に渡す。弄ったのは同伴者の欄。人数制限は特に無いと聞いていたとはいえ、無事受理されてよかった。

 

「かぐやはどうする?」

「下ろして。甘やかせば甘やかすだけつけ上がるし」

「だってさ」

「ヤダヤダヤダ~!かぐやここに住むっ」

「やだじゃない!ほら急ぐよ」

 

かぐやを引き剥がすと、軽くなった体でRe:ALは準備運動。それを横目に、私達も遅れないよう走り出す……あ、その前に一つだけ言っとくか。周りに人もいないし。

 

「Re:AL!」

「どしたぁ!?」

「転校の理由、気が向いたら教えてね!!」

「……気が向いたら、なッ!!」

 

それが最後。私達は駆けだし、そして振り向いた時にはもう彼の姿も無かった。巻き上がった土煙だけが彼の行動を物語る。

けど落ち合う場所は、行きつく先は分かり切ってた。私達の縁というのは、こんな風に分かれてはぶつかるように交錯し合うと相場が決まってるんだろう。

ちょっと前までは疎ましく思えたそれを、今の私なら笑って受け入れられそうだ。

 

 

……()()()()

 

 

「わっ、彩葉どしたの」

「私?」

「めっちゃ怖い顔してた。怒ってたとかそんなワケじゃないけど」

「気……気の所為、だよ?」

「そこは断言してぇ~!」

「ワフワフ、ヘッヘッ」

 

だってそんな筈が無い。石実は良いヤツなんだ。ちょっと思想が合わないだけで……それを疎ましいだなんて、思う事自体間違ってる。

だから今のは言い間違いで思い間違い。真実が大好きなアイツを、私が受け入れられない訳が無い────そうでしょ、酒寄彩葉。

 

(うん、うん。もう大丈夫っ)

 

折角のミニライブ、雑念にまみれたままヤチヨを拝むなんて真似は出来ないから。その一念で持ち直して、私達は会場へと向かっていった。

 

 


 

 

(────来た)

 

来て、くれた。

 

まずは会場前の建物の裏手、そこに音も無く立った土煙。その中から、粉塵を払いつつゲンが。

 

遅れること5分。彼が場所取りに勝ったその頃合いで、かぐやを引き連れた彩葉が。

 

私の望んだ光景が、今、目の前に。

 

 

なーんて、ちょっと大仰過ぎたかな?

 

 

(……ふざけてる場合じゃない事なんて、分かってるのに)

 

 

感動でふじゅ~が移動することから分かるように、ツクヨミはログインしている人々の脳波を完全に追跡(トレース)している。無論考えている事を一から十まで把握してるわけじゃないけれど、でも2人が

覚えた感情の機微ぐらいは手に取るように分かってしまった。

 

彩葉は、自分が抱く“忌避”に戸惑い。

ゲンは、彼女に明確に壁を置かれた事に気を沈めてる。

 

それもこれも……私が為した事。彼女と彼に促した別離が発端で。

 

(あなた)が傷付け貴女(わたし)が救う。嗚呼、なんて非道い自作自演だことで)

 

あそこで何も知らずはしゃぐ無垢の金は、本当に彼女ら彼らの希望たり得たのか──ううん、なって貰わなければ。

 

だって彩葉は、私に世界の美しさを教えてくれて。

 

ゲンは私に、自由の重みを教えてくれたんだから。

 

 

ヤオヨロー!神々のみんな〜、今日も最高だったー?」

 

 

だから私は歌うんだ。

この曲が、せめて貴女達の心震わせる物でありますようにって。




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