酒に狂った男 作:鶏肋
明日は本編に戻ります
【P.S.】
誤投稿すみませんでした。さっき上げちゃったのは明日の分です
ご両親
真実はなぁ……本当にいい子に育ってくれたよなぁ、お前。
「それはもう。自慢の娘ですとも」
ああ、お前に似てな。何より甘え盛りの頃、妹が生まれたらすぐに“お姉ちゃん”になってくれたのが本当に凄いよあの子は。我が子ながら尊敬さえする。
「ええ、もっと甘やかしてあげれば良かったと思うぐらいには。むしろ私達が甘えてしまったのかも知れないわね」
我慢を、早くに覚えさせてしまったのかもな。
まさかそれが原因でイジメに遭ってたなんて、気付けなかった自分が恨めしいよ。父親失格だ。
「だから私達、すっごく感謝してるのよ。真実を助けて、心を救ってくれたあの子。石実現君に」
…………待て。待てお前。俺はまだ奴を認めちゃいないぞ。真実に飽き足らず下の子まで誑かしやがって。
「あらそうだったかしら?趣味のボルダリングを布教して意気投合してたじゃないの」
それとこれとは話が別だ!あんな粗暴な男、俺個人の友人足り得る事こそあれど真実の夫には御免だねっ。例え俺より頼もしかろうとっ……イケてる顔だろうとッ……彼が本当に真実を好いてくれてたとしても!!
「だいたい全部しっかり満たしてるわねぇ。
ぐはっ──
──ともかくだ。少なくとも彼が定職に就くまでは結婚なぞ認めんぞ。真実がどれほど泣きついてきたとしても、そこだけは譲れん!
「…………」
………………?
「気付いてないの?」
何がだ。石実君に関して俺が何か見落としてるとでも?
そんな訳が無い、この7年間でよーく見てきたんだ。その結果分かったのは、彼が
結果、現君は我が家の婿に迎えても何ら問題がないことが分かった!じゃないよ俺なに認めてるんだ莫迦っ!!
「いやそこじゃなくて……ううん、そこも含めての事なんだけど……その一つ前に言った事なんだけど」
“定職に就くまで
けっこん?
「定職にさえ就けば、交際をすっ飛ばして結婚しても良いという事ですね」
ちっ、違う!そういう意味じゃない、断じて!俺は奴を認めるかなんか毛頭ないんだぞ、聞いてるのかオイッ!!
というか交際無しの結婚は真実側の心の準備が出来ないだろう!?こういう場合はちゃんと交際期間で互いの相性を確かめ合って、それで確信を深めた愛を誓うのが結婚だ!だからまずは交際!定職に就くまではそれも認めんっ!!!
「……夫の悪あがきは置いておいて。実は私も石実君の事を100%認めている訳ではありません。夫の言う通り、彼自身の生い立ちや素行に無視出来ない問題があるのも事実です。
でも、彼は真実を息苦しい環境から救ってくれました。彼自身が居場所を追われた時、真実を巻き込まないよう遠ざけてくれました。そして真実自身も、そんな彼と共に在り続ける道を自ら選んだんです。
なら、応援してあげたい。尊重して後押ししてあげたい。それが母親心という物ですから────
────そうでなくとも、7年間見守ってきた男の子だもの。情だって移るし、もはや長男みたいに思ってるわ。ねぇ貴方?」
…………ふんっ。
「あら拗ねちゃった。ごめんなさいね綾紬さん、この人いい年してツンデレの気があるの」
妹ちゃん
え?石実現の事ですか?
放って置いて下さい。あの人と私は何の関係もありません。せいぜい昔遊んでもらった程度です、本当にそれだけです。
だから二度とあんな奴の話題を私の前で出さないで下さいね。幾らあなたがお姉ちゃんの友達で破茶滅茶に美人だとしても、許せる事と許せない事が────
────お姉ちゃんの、友達?
まさか、えっ、芦花さん?あの美容系インフルエンサーの女王ROKA様!?うっそマジですか!?!
待って下さい、それは話が変わってくるというか、とりま握手お願いします!やったー!!二度と手を洗わな……あゝこの前の動画で清潔維持の重要さを話してましたね。くそぅ……。
コホン。取り乱しました。
ROKA様なら、話しても良いです。というか話させて下さい。あの男が私にどれだけ不義理を働いたか。
私が石実現と初めて会ったのは7歳、出来立てほやほや入学したての小学1年生の頃でした。といっても半年は経った頃合いだったけど。どういう経緯かというと、お姉ちゃんが家に彼を呼び込んだんです。
考えても見て下さい、10歳男子vs7歳女子ですよ?年齢比率1.5倍弱ですよ?見上げた私の目に現兄sゲフンゲフン石実現がどう映ったかなんて、想像つくでしょう。
いえ、お姉ちゃんを恨んだりは全くしてません。むしろ日頃からお世話ばっかりしてもらって申し訳なく思ってます……けど!だからと言って私とあの人を一緒にするのやめてって何度思ったか!!こちとら心臓バクバクですよもう、それをお姉ちゃんったら面白がっちゃって!現兄さんも困ってましたからね?!
そのクセちゃっかり一番長い時間くっついてるのはお姉ちゃんだしっ……現兄さんも満更でもない顔しちゃって、見せつけられるこっちの身にもなって欲しいですよ本当に!!!
失礼、取り乱しました。現兄さん呼びしたのも忘れて下さい。
それに石実現も悪いんです。一回、好きなアニメを見てるところを彼に見られたんですけど、「こういうシーンが好きなのか」って聞いてきて。そりゃまだ小学生なんだから、素直にうんって答えるじゃないですか。やってみたいって思うじゃないですか。
だからって、
何回もごめんなさい。ともかく、石実現は悪い奴です。女心を弄ぶ悪鬼羅刹です。お姉ちゃんと自分自身が被害に遭った私が言うんだから間違いないです。吠えてきた犬を追い払ってくれた背中の格好良さは忘れられません。
……だから複雑なんですよ。
私、お姉ちゃんに幸せになって欲しい。私達を幸せにした分だけ、お姉ちゃん自身も楽しく嬉しく過ごして欲しい。
そしてお姉ちゃんが一番幸せなのは……現兄さんの側にいる時が一番なんだって、もう分かっちゃったから。
現兄さんが一番屈託なく笑い掛ける相手がお姉ちゃんなのも、7年間見つめ続けて分かっちゃってるから。
だから私は兄さんを嫌う事にしたんです。じゃないと私が辛いので。これは初恋、初恋は叶わないってジンクスに頼る事にしました。
それが、私の現兄さんを嫌う理由です。お分かり頂けたでしょうか?
ごめんなさい。言っててまた腹立ってきました。ちょっと叫ぶので耳塞いでて下さい。ご協力感謝します、ROKA様。
────スゥーー~~~ッ…………
「チィクショゥォォオチクショーォォオオオッ!!先に!先に私が生まれてさえいればッッ!というかさっさとくっついてよ遅いんだよ何やってんのよォーッ!!!ワンチャンあるかと思っちゃうじゃんんんんん〜〜〜ッッッ!!諦めさせてよバカップルがぁぁぁぁぁ!!!」
あ゛ースッキリした。これで私からお話できる事は以上です。ご静聴ありがとうございました。
え?化粧品を融通してくださる?そんな悪いですよ、ROKA様のお手を煩わせるなんてとてもとても。むしろ私の方がもっと貢ぎたいくらいなのに……
……そこまで仰るなら、有り難く。後生大事に使わせていただきますとも。
ぐすん。
弟くん
あ。こんにちは綾紬さん。姉貴がお世話になってます。
でも僕に何の用で……ああ、現兄ちゃんの事ですか。僕の知ってる事なら何でも。
……ええ。良くしてもらいました。いや違うな、今も良くしてもらってます。僕が幼稚園の時からいっぱい遊んでもらいましたもん、憧れてますよ。
ただ最近は……ちょっと
現兄ちゃんって、僕ら以外にめっちゃくっちゃ厳しいじゃないですか。姉貴の悪口言ってた奴を土下座させてたのを見ちゃって、初めて知ったんです。その時の顔がすっごく険しくて、笑ってるのに寒気がしちゃうくらいで。
ううん、訂正します。その様子を見た時には、実は「かっこいい」って思ったんです。あんな風に誰かの為に、好きな子の為に怒れる男になりたいって。
なんなら本人にそう言いました。現兄さんみたいに強くなりたい、って。
……どう返されたと思いますか?
「やめとけ」ですよ。「ロクな事にならん」ですよ。
当時は意味が分かりませんでしたが、数年たって常識身に付けたら分かるようになりました。そして本人が身をもって実証してくれました。そう、酒寄さんに負けて追いやられる身になった件です。
彼は、自分の行末がそんな有様になるって薄々分かってたから、僕に憧れられるのを否定したんです。
だから疑問なんですよ。
なんで
暴君にならなきゃ追いやられなかったのに。
姉貴以外にも、僕達以外にも優しくしとけば、周りから白い目で見られる事はなかったのに。
そうと分かっててなお、敢えて粗暴で在り続けた。その意図が分からなくて、怖くなっちゃって。
……彼。
それを彼自身、分かってるんでしょうか?
年下なのに変な話かもしれませんけど……心配になります。
あと付け加えるなら、現兄さんが姉貴に向ける視線が怖いです。危険を感じる訳じゃないですが、なんかヤバいです。ちょっと抑えて欲しい。
姉貴が他の男子と話してる時の現兄さんの目、知ってます?もう独占欲の塊ですよ。姉貴も姉貴でなんで気付いてないのかなぁ、挟まれるこっちの身にもなって欲しい。もう一人の姉の方も別ベクトルに可哀想な事になってるんで、ホント早めに。
それに、一回家に上げて貰った時に見かけたまみまみグッズの山が忘れられなくてですね……彼、どこに向かってるんでしょうね。マジでね。
「────このインタビューも1年前かぁ」
真実と石実の関係が気になって、独自調査した高校1年の春夏。諌山一家から集めた証言をまとめたノートを見返しつつ、それからの変遷に想いを馳せる。
色んな事があった。色んな事が変わった。彩葉と石実が激突して、互いに傷付け合って、私達も石実も1回
そこから何も出来ない日々を過ごしたかと思えば、かぐやちゃんが月から来て、彩葉の世界を内から踏み荒らして私達と再接続して、石実さえも巻き込んで、予測不能な未来へと突き進んでいる。
(現状は、望外のベストって感じかな。かぐやちゃんは彩葉を変えてくれる存在。彼女がいれば、彩葉はきっと呪縛から逃れられる)
例え私達自身の功績でなくとも喜ばしい。彩葉の幸せは私の幸せ、その事に変わりなんて無いから。入学式のあの日、凛とした貴女の目に魅せられた。その瞳が輝きを増すなら、こんなに嬉しい事があるだろうか。
実の事を言えば嫉妬が無いとは言えないけれど……それ以上の感謝を、あの子に。
そうして余裕が出来た今だから、思う。
「……石実、現」
彩葉が幸せになれるなら、彼は?
「アイツのこと嫌いだったのに。気付けば入れ込んじゃってるなぁ」
独り
石実にも、幸せになって欲しいんだ。
(って。それは真実の仕事でしょ、
ここまで考えて、無駄に熱くなっている自分に気付く。まだ何も終わってない。
まずは彩葉。彼女の負担が増えないよう、かぐやちゃんの自由が阻まれないよう、サポート体制をもっと充実させなきゃ。
そうと決まればスケジュールの見直しだ。学業を疎かにしないのは当然として、家事を手伝いに行く日を5割増しにさせて貰おう。かぐやちゃんとのコラボの影響で私のフォロワー数も結構増えてるし、集まったふじゅ~での支援の幅も広げられる。いい加減、私だって彩葉を支えたいんだから。石実だけに5割負担させるのも忍びないしね。
(って、またアイツ……)
折角振り払ったのに、また脳裏に
そして机で頭を抱える、この私だって。
ガイドブックを必死こいて探してるところです。もし買えて読んだ折に「ぅゎ矛盾起きとるやんけ」と判断できる箇所が見つかれば、この話は書き直します。