酒に狂った男   作:鶏肋

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前話>Re:ALの得物は、鍔にファーを靡かせる大太刀と短刀。その2本の柄頭を伸縮自在の鎖が繋ぎ、短刀の方を鎖鎌の要領で振り回す事で遠距離攻撃を可能とする

そうだね、釈魂刀と天逆鉾と万里ノ鎖だね(自己開示)


双方、キレ散らかす

KASSEN・SENGOKUモード。3on3での陣取り合戦を行うこのゲームの手順は、大まかに以下の通りだ

 

1。スタート地点である自陣幕営地から、トップ・ミドル・ボトムの3レーンに人員を分けて進撃。

 

2。トップレーンとボトムレーンの行先には櫓が設けられており、そこに座す中ボス牛鬼を撃破して鐘を叩く事で占拠。敵陣天守閣に達磨落としならぬ大将落としが出現する。

 

3。天守閣にいち早く駆け付けた味方が、大将落としを叩いて天守閣に打ち込めば決着。

 

ちなみに櫓を両方とも占拠したらその時点でコールドだ。これを3セット、内2本先取制で行う。

だから定石として、2:1に分かれて堅実に勝利をもぎ取りに行く“2WAY(ツーウェイ)”。相手が狙う櫓を読み切って全賭けする“一点突破(オンリー)”。そして、相手がどんな作戦で来ようと絶対に1人で対抗できる万能策、に見せかけた戦力分散の愚策であり舐めプ前提の“トライデント”。これらの作戦を使い分けるんだが、今回ばかりはそういうのは()()だ。

 

「行ってくるッ!」

「……いってら」

「武運を」

 

俺の単独行。マップから奴がトップレーンを選んだのを確認して、ボトムレーンを突き進む。

去り際、雷は平常を装うけど激情をその目に湛え、乃依の声音は報復心に上擦っていた。だがアイツらなら空回る事なくその闘志を戦闘力に直結させてくれるだろう。

 

\Bチーム、Re:ALが牛鬼を撃破しました/

(ま、なるわな……!)

 

だが進軍速度は明らかに奴の方が速い。尋常じゃない踏破力だ、俺は今NPC(ミニオン)を蹴散らしてようやく辿り着いた所だぞ。やはり現実でパルクール極めてたらそんじょそこらの地形なんか無視出来るんだろうな、あの猿野郎が……っ。

 

「キシャシャァーッ!!」

「そこ退()け、そこ退け。帝サマが通んだよ!」

 

1Fの遅れも自分に許さない覚悟を以て、究極技にて牛鬼を撲殺。所要時間12秒、理論値。間を置かず櫓へダッシュ。

大将落としを出現させる鐘を叩いたその瞬間、雷から接敵の報が届いた。それはつまり、Re:ALの刃が俺達の首筋へと伸びたという事実に他ならない。

 

……だが、読み通りだ。何の為に2人も幕営地に残したと思っている?

 

『上振れだ!最大数の罠に掛かった!』

『鈍足連射は任せて』

 

雷は置き罠のスペシャリスト、そして乃依は相手へのデバフに関しては卓越したプロフェッショナルだぞ。幾らお前が一騎当千の化け物でも、地上を走ってくるなら罠と狙撃の良い的なんだよ!

 

「もたせろ!!こっちは目標まで残り10秒ッ」

『跳躍した!今だ乃依!!!』

『オーケー撃ち落とす……!』

 

背後、自陣天守閣の真隣に立つ火柱。乃依のファインプレーだろう、おそらく助走無しのジャンプで地雷原を突破しかけたRe:ALを再び爆弾の海に叩き落としたんだ。

そして……!

 

「ああ、良くやった──!」

 

カラフルな大将落としを、俺が天守閣へシュート。大爆裂。超エキサイティング……って言うのはいささか古いか。

しかしこれで、1セットを勝ち取った。初動は俺たちの勝利だ。

 

「乃依の矢、喰らい心地はどうだったよ?」

『……』

 

公開チャットにて、溢れ出そうになる罵詈雑言を必死に飲み込みつつ最低限の言葉で煽ってやった。蔑んだ“偽女”に、お前は手も足も出ず封殺されたんだぞと。

それを黙ったまま、クレーターの中心で矢のハリネズミとなって聞くRe:ALの姿は無様で、乃依を貶された分の怒りが少しだけ報われた気分だ──が、まだ足りない。たとえこの勝負、()()()()()()()()()お前は築き上げてきた全てを失う。俺達が奪い去る。彩葉に二度と近付けない身にしてやる。それを精々噛み締めやがれ。

 

……我ながら何とも小物臭いムーブだった。一番空回ってるのはきっと俺で間違いないだろう。

 

『──帝アキラ』

「やっと口開いたか。安心しろって、次は両櫓を俺単独で占拠してコールド負けにしてやるから」

『覚悟しろよ』

 

その反動が、迫り来る。

例えそれが思惑通りだとしても、冷や汗を否定できない程の戦慄と共に。

 

『30秒だ。それが嫌なら守勢に徹しとけ』

 

 

 

第2セット。忠告を無視して同じ作戦で行こうとした俺を、雷が呼び止めた。

 

「帝、待て!明らかにおかしい」

「何がだ?」

()()()()!」

 

アイツが速いのはさっきもう見た。だがそれ以上だった。

 

「開始10秒でもうボトムレーンの櫓に到着した……いくら地形を無視したとしても、徒歩じゃ無理だ!」

「あり得ないって、こんなの()()()()()()()()()()()()()()()()無理だよ!?」

 

KASSENで使用できる移動用ライドは高速型の物と中速型の物で2種類あり、前者はずっと乗っているとミニオンからのヘイトが全集中して総攻撃を喰らう。矢の雨霰を掻い潜って飛行するなど常人には到底できる芸当ではない。

 

だが、奴は常人じゃない……!

 

()()()()()()()()()んだ……野郎、別ゲーおっ始めやがったッ」

「は?ベータコンバットか何か?」

 

\Bチーム、Re:ALが牛鬼を撃破しました/

 

「どうする、また高速ライドで来るならここまで10秒かからないぞ?!」

「迎撃する!3人で大将落としを包囲防御、全方位警戒!!」

 

牛鬼瞬殺により、すぐ側に出現した護衛対象(大将落とし)を全員で取り囲んだ。同時にボトムレーン側の空で煌めく流星、それは最高速度を維持したまま自陣天守閣直上を旋回し始める。その軌跡に昔、ナオの奴とプレイした狩ゲーの彗星(メインモンスター)を重ねた瞬間────来た。

 

加速。

 

激突。

 

HP、全員全損。

 

自陣の天守閣が落とされたのも、時をほぼ同じくして。

 

「31秒。チッ、オーバーかよ」

 

……負けた。けど作戦通りだ。そのまま思う存分力を奮ってろ。

 

ああ、でも、こんなヤツに。

悔しいモンは悔しいわ。糞が。

 

 

 

「どうするの。アレ防ぐの、無理だよ」

「常時飛ばれてはな……」

 

最終(第3)セットを控えた作戦会議時間。だが正直、俺達に勝機は無かった。

というかあんな作戦を実行できると判明した今、Re:ALにKASSENで勝利し得るプレイヤーは理論上かつ事実上の両面で存在し得ない。ある程度において現実の物理法則が適用されるツクヨミのゲームで、妨害不能・回避不能・防御不能の重力加速による流星キックはあまりにも反則技だ。

と、なれば。

 

「俺達も高速ライドで突っ込むしかあるまい」

「……正気?」

「他に手も無いだろ。2WAYでミニオンの攻撃を掻い潜って進み、奴が牛鬼を倒すべく降りた所を2人が足止め。その間にもう1人が櫓と天守閣を両方落とす」

「いいや雷。オンリーだ」

 

一度やり返せた事で乃依は落ち着いている、それは良い事だ。だが俺と雷に今更退く気など毛頭無い。特に、いつになくやる気の雷が案を出し、そして俺がそれを補足していった。

 

「人数不足で仕留め損なえばそこで詰む。だから全員で奴を確実に落とし、櫓を占拠。そして復活(リスポーン)したRe:ALと再度接敵し、2人は死に物狂いで足止め。残った1人が天守閣に辿り着きさえすれば俺たちの勝利だ」

「なるほど。連戦覚悟の強行軍、という訳か」

「……あのさ。帝の妹の件はともかく。俺の事ならもう良いよ?全っ然、気になってないからさ」

「違うぞ乃依。これは俺の為にやってる事なんだ」

 

発端こそそれでも、話の焦点は既に移り変わっている。

アイツは言った。彩葉に恐怖を与えた、と。その内容如何にもよるが……いや、それを知らなければならない。本当に許容できない加害をしていれば公的機関に突き出す。そうでなくとも、妹を傷付けるような奴を黙って看過する訳にはいかない。必ず()()()に置く、その為に奴にもっと存分に力を発揮させ、墓穴を掘らさなければ。

 

「逆に巻き込んでごめん。けど、最後まで付き合ってくれ」

「──トゥエンティーワン」

「「??」」

「週一。無期限。奢ってよね」

「……ありがとう。雷も」

「俺はもう私怨でお前の策に乗っているだけだ。気兼ねするな」

 

そうして作戦は決定。待ち侘びたカウントダウンを経て、俺達はRe:ALが進み始めたトップレーン目指して空を駆けた。

 

 

ミニオン一体一体は雑魚。だが塵も積もれば山となる、そして矢が積もれば空の津波だ。

 

「雷、乃依、先行ってくれ!Re:ALに牛鬼を倒させんな!」

「「分かった!!」」

 

目立ちたがり屋な俺らしく、陽動スキルでミニオンのヘイトを引き受けた。途端に集中してくる鏃の波は躱し切れたものではなく、早々に無傷を諦める。

それでも致命傷を避け、高速ライドを駆り無理な旋回と反転を繰り返す事十数秒。ようやく攻撃を振り切ったその先に、櫓が見えた。

その視界の中央で、相棒がその胸を短刀で貫かれていた。

 

「雷……っ!?」

「そぅ、らッ!!」

 

短刀の柄頭に繋がれた鎖が波打ち、その発信元であるRe:ALが思いっきり振りかぶる。そのエネルギーに従順に答えて、鎖は、短刀は、突き刺さった雷の死体(アバター)ごとこちらへ投げ飛ばされてきた。

 

避け切れずライドに直撃。投げ出された俺は落下ダメージを負うがしかし、怯む事無く突貫する。

一瞬の鍔迫り合い。いなされ、だが読んでいた。前転で勢いを殺しつつ、次に狙うは鎖を掴む左手。

だが瞬時に割り込んできた大太刀がそれを阻む。直感的に身を引けば、返す刃が俺の首の皮一枚を切り裂いていた。

 

(早くて、速い……!)

 

さっきのマニュアル戦闘の時より数段。しかも明らかに舐めプされてこれだ。

と思ってたら、右目が光を失う。

 

(顔面を斬られた!いつ!?)

 

予兆無しの剣閃。顎から右顔面にかけて裂かれたポリゴンが血飛沫を模し、その向こうで大太刀を振り被る鴉天狗の姿。

舐めプじゃない。プロゲーマーでもないのにこの緩急、生粋の戦闘者だな最早……!

 

(くそ、どうすればッ)

「させないよ」

「おっとォ」

「乃依!!」

 

万事休すかに思われたその時、乃依からの援護射撃。見上げれば、彼の背後で牛鬼がゆっくりと打倒モーションに入っていた。

 

\Aチーム、乃依が牛鬼を撃破しました!/

 

「ごめん、既にRe:ALが殆ど削ってたのに手こずった……その所為でお兄ちゃんが」

「いや大手柄だ!俺がもう少しもたせるから、櫓の鐘を打て!」

「そうすりゃさっきの(雑魚)がすぐここに来れるもんなァ?」

「ッ、跳べ!!」

 

情報共有してる間に、鎖をぶん回して加速を付けた短刀が迫り来る。寸での所で回避した俺達は二手に分かれ、俺は再び近接戦闘に臨んだ。

 

(最悪残機1減らす!だが櫓さえ占拠すれば儲け物だ!リスポーンして雷と合流、櫓に即飛んで乃依を敵陣へ進める肉盾になる!!)

「随分と消極的じゃんかよ帝ォ!!」

「んなっ!?」

「ぅあ……!!」

 

だが俺の両手での刺突を、奴は得物も使わず体術(蹴り)で側面パリィ。当たり判定を完全に見極めた妙技を披露しつつ、奴の両手は既に鎖を放ち、そして手繰っていた。

その矛先が向かうは、鐘を狙い矢を放った直後の乃依。占拠を告げる金属音と共に、両足を抉り斬られた乃依はその場に倒れてしまう。

 

「妹見捨ててでも夢見せんだろ?舐めたプレイしてんじゃねぇ!!」

「うっさいねん礼儀知らずがァッ!!!」

 

その上で妹の事で(あげつら)われれば、俺も黙ってはいられなかった。これじゃどちらが誘導(コントロール)されてるか分かったものじゃない。

だがその激情が乗った一撃は、鎖を握る左手を今度こそ破壊。追撃を──と前のめる俺の右脇腹に、想定外の打撃が突き刺さる。

 

(左手首断面で、貫手!?)

「スタートからやり直せッ」

「!」

 

今度こそトドメ。袈裟斬りにされた上体ごと視界が傾き、俺のHPが尽きる。

終わり────じゃあ、ない!

 

 

「スタート?既にここが()()だろうっ!!」

「がっ!?」

 

リスポーンボタンを連打しながら、霞掛かった視界がそれを捉えた。ワープ奇襲を決めた雷が、Re:ALの右足を切り裂く瞬間を。

そうこなくっちゃ、な!

 

「10秒!すぐ追いつく!!」

「1秒待て!」

「了解ッ!!!乃依、中そk──」

「言われなく、ともっ……!」

 

言えたのはそこまでだったが、全員が互いの意図を理解するには充分だった。俺は五体満足で天守閣に戻るや否や、ワープポイントで櫓に直行──を意図的に一瞬遅らせる。

遅れてトップレーン側で閃光。アレは雷の究極技の一つ、自身の残機を全部使い切ってその分だけ威力と破壊範囲を拡大した自爆だ。これでアイツはもうリスポーン出来ないが、それと引き換えにRe:ALも無視出来ない傷を負っただろう。

そして両足を失った乃依は、ミニオンに狙われにくい中速ライドを召喚して爆発範囲から離脱&敵陣天守閣に向かってる。

つまり、勝機!

 

(爆煙に紛れてのリスポーン奇襲だ!!俺単独で奴を櫓に繋ぎ止める!)

 

そう勇み、起動するワープ。目論見通りに俺は爆風の残香に包まれ──

 

 

──迫る短刀の目視が、遅れた。

 

 

「ッ!!?」

「外したか!」

 

逆奇襲。躱せたのは奇跡と言って良い、現に俺の首は皮一枚斬られてポリゴン液を垂れ流し始めた。この程度ならすぐに止まるが、もう少し深ければ……

 

「……ってオイオイ。何だその有様、流石に死んどけよ1キャラとして」

「アンタ、俺が楽にくたばれるタマだとでも?随分お優しいことで」

 

だがそんな思考さえ押しやるほど、煙の晴れ間に見えた奴の体は壮絶な事になっていた。

 

身体中穴だらけの裂傷だらけ。皮膚面積よりポリゴン露出部分の面積の方が明らかに大きく、左手は俺に潰されたまま。額は割れて片目も機能しておらず、翼も全損している。

そして雷の自爆により吹っ飛んだのだろう右足首には……どこぞの金獅子よろしく、自身の短刀の柄が突き立てられて足代わりとなっていた。

 

(……本当に、化け物みたいだ)

 

人間と戦っている気がしない。かと言って獣かと言われるとそれも違う。理性の全てを加害に回した、ある種の“機械”さえ思わせるような……言うなれば殺戮人形のようだ。

 

だが、またそれさえも違う。

Re:ALには意志がある。思想がある。明らかな知性でもって今、俺と対峙している。

そう判断できる()()を、俺は持っている。

 

「────いくぞ」

「来いよ………ッ」

 

それでも勝負。お互い究極技無し、援護無し、退路無し。俺は金棒に内蔵されていた刀を抜き、奴は残った大太刀を逆手に構えた。

 

静寂は一瞬。

交錯は刹那。

 

「シィッ──!!!」

「!!!」

 

衝突。




1話に収まる筈が長くなり過ぎたので、決着と清算は次回
バトル描写に筆が乗り過ぎた……黒鬼は多分キャラ崩壊すごいしエラいこっちゃ……
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