酒に狂った男   作:鶏肋

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難産でした。まさかここまで長くなるとは……


石実現、流石に反省する

攻めはRe:ALから。どうせ先んじれないと踏んで、俺は受け。

だがまるで追い付けなかったこれまでとは違う。全身ボロボロの奴は健在の頃と比べて明らかに減速しており、俺でも後手で捌ける余裕が出来ていた。

 

だがそれでも止まらない。片手の太刀は両手で握る俺の刀より重く、強く、受け流しても衝撃で打ち据えてくる。そこに右足の短刀による蹴り斬りまで交えてくるのがあまりにも難儀だったが、それでも、反撃を挟んで。

 

剣戟、数度。

 

十。

 

二十。

 

三十──ここだ!

 

(いけっ……)

 

極限の集中力が導き出した隙。自身の右手を犠牲に作り出したそこへ、俺の刀が伸びていく。希釈された時間の中でゆっくりと。

 

だが直後、失策を悟った。

切先を追う奴の目が、生きている。この行動を読み切っていた奴特有の目だ。誘い込まれた。詰み。

 

けれど、動かない。俺ではなく、Re:ALが。

 

何故、と思う間も無く。その刺突は、呆気なく貫通した。

 

 

\Game SET!!!/

 

 

同時に鳴り響く音声と爆音は、乃依が天守に大将落としを打ち込んだ証。勝利だ。俺達ブラックオニキスの。

 

なのに……どうして、だ?

 

「──何がしたかった」

「…………ぁあ?」

「避けれただろ。最後の」

 

刺さったまま問う。HPこそ全損していれど、ゲーム終了の影響か、暫く話す猶予があるようだったから。

 

「乃依の離脱だって……お前なら追えただろ」

 

その2つこそが、俺がRe:ALに意思の存在を認めた証拠。合理的なだけでは絶対に選ばない択を選んだからだ。

俺を無視して追えば追いついた。避けて反撃してれば結果は逆だった。なのにコイツは、そんな見え透いた勝機を度外視して、()()()()()()俺との決着を最優先にし続けたような……

 

……見栄えの良い?

 

「“チート使用者を、正義の黒鬼がボコり倒す”」

「……まさか」

「良い撮れ高に、なったろ……?」

 

記録に残らない、非公開のボイスチャット。Re:ALが看破したその内容こそが、全ての事実だった。

 

 

黒鬼は、ブラックオニキスはツクヨミのトップライバー。自分で言うのもなんだがその知名度ゆえの影響力は凄まじく、話題によっては俺達が白と言えば白になる。逆もまた然り。

 

そんな俺達が、Re:ALが常人離れした異常挙動で俺達相手に立ち回る姿を撮る。

その動画に「Re:ALはチーターだった」とという旨の見出しを付けて世に出せばどうなる?──答えは先述の通り。(Re:ALの潔白)(Re:ALはチートユーザー)になる訳だ。例え真実がどうだろうとな。

 

さすればRe:ALは、少なくともツクヨミには居られない。俺達の偏向報道次第によっちゃ現実でも総スカン喰らって、明日食う飯にも困るようになるだろう。

 

 

……嫌だろう、そんなの。という事。

 

そんな風に現実世界での生活を人質にとって、俺はRe:ALを制御(しはい)下に置くつもりだった。彩葉の近くに巣喰い加害を豪語するコイツを無毒化し、彩葉を見守る端末にしてやろうとさえ。その為に、奴にチーターと誤解されるような大盤振る舞いをするよう刺激し続けた。

 

 

だがRe:ALは、そんな俺の思惑を見抜いてたんだ。

見抜いた上で……乗ってきた。

 

「言ったろ。酒寄彩葉に一泡吹かせた、ってな」

「Re:AL、お前は」

「吹かせ()()()()

 

その物言いに、含められた後悔に全てを察する。俺の思惑なんて、全てが勘違いの的外れだった事さえ。

 

「彩葉を、守ろうとして……?」

「みっともねぇ代償行為だよ。嗤ってくれ」

 

その言葉を区切りに、とうとう崩れだす。俺が貫いた心窩からひび割れが奔り、全身を粉と化していく。下手人である俺に、止める術なんて無い。

 

「俺じゃダメなんだ。お前の事は今も嫌いだけど、でもきっと俺よりはマシだ。家族なんだから」

「……ざけんな」

「大真面目だよ。だから、まぁ……酒寄彩葉を、頼む」

「ふざけんな!!」

 

それっきり消えてしまった宿敵を追って、退出ボタンを連打。待機ルームへ行ったのだろう奴が現実世界へ帰るより早く、その手を止めるべく。

 

「今更そんな殊勝な真似(フリ)されて……こっちの動きが変わらん訳あらへんやろッ!」

 

そうして誰も彼もが消えた世界に、黒鬼(Aチーム)の勝利を謳うアナウンスが虚しく響き渡った。

 

 


 

 

「いや帰る訳無ぇだろ。今後の動きを話し合わにゃならんのに」

「帝ってば焦り過ぎ〜」

「早とちりは齟齬の元だぞ」

「まず俺の心配を返せや」

 

何を勘違いさせちまったのか、待機ルームに怒鳴り込んできた帝アキラを3人で迎え入れた。まさかこのまま逃げるとでも?そりゃ何とも安く見られたモンだ、悲しくなるね。

 

「表立っての支援にしろ影ながらの援助にしろ、俺とアンタで引き継ぎしなきゃ何も始まらんぞ。頼むぜ酒寄朝日さん」

「……そないな事言うんやったら、そっちも名前明かし。それで対等ってモンやろ」

「そりゃ失礼。Re:AL改め石実現だ」

 

さて、自己紹介も済んだところで……まず精算すべき所から片付けていこう。酒寄彩葉の件よりまず先に。

席から立って、床に正座して、手をついて。あとは頭を下げるだけの簡単なお仕事。下らないプライドを捨てるのも忘れずに。

 

「駒沢乃依。すまなかった」

「……え゛。土下座!?」

「そうしなければならないだけの事をしでかした自覚はある」

 

アレは言っちゃいけない言葉だった。どんなに腹が立っていたとしても胸の内に秘めておくべき罵倒で、それを俺はさして腹も立たせないままスルッと口に出した。完全な無自覚から出た性根って事だ。

それがアンタの柔い所に突き刺さったってんなら、その罪には相応の罰が無ければならない。じゃなければ示しがつかない。

 

「アンタが俺にして欲しい事を、俺が嫌がりそうな事を何でも言ってくれ。可能な限り全力を尽くす」

「……う〜ん。じゃあ、あの発言を撤回してそれで終わりで」

「スマン、それは出来ない」

「出来ないんかーい」

●すぞ

「うわっ雷がキレた!」

 

余りにもご尤もな憤怒に、だが俺は動じる訳にはいかない。どんな事をされても甘んじて受け入れる覚悟と共に、再び口を開く。

 

「この思想を抱いて10年以上、既に俺の性根になりつつある。俺はこの生き方を誇りに思っちまってるし、今更曲げられない。アンタの生き方に対して抱いてる忌避感を、今も拭えない」

「じゃあ今も乃依を見下してるって事か?謝ってる意味無いじゃん」

「そうだな。けど一つだけ言わせて欲しい」

 

謗りに反論出来る余地は無く、けれど弁解の義務は果たさなければならない。例え醜い言い訳に終始する事になるとしても、俺のスタンスを彼に理解して欲しかった。

 

()()()()()んだ。駒沢乃依、アンタの事を」

 

「……?」

「?」

「??」

「「「???」」」

 

ああ、そりゃ不可思議だろう。この感覚が万人に共通するモンじゃないって、幾ら俺でも分かる。

でもこうも思うんだ。

 

「嫌いである事、苦手である事、それらと“尊敬に値する”事は両立する。俺はそう信じてる」

「えぇっと……ダメだ分からない。どういう事?」

「アンタは俺の選べなかった生き方を選んだ。俺の出来なかった事をした。だから眩しい……って事だ」

 

これは皮肉でも何でもない本心だ。俺は親父の醜態を厭うあまり、女々しさだとか可愛さに走る事を“逃げ”だと断じた。その道を選べなくなった──自分の意思で選ばなかった、ではなくな。それこそ逃げと言っても差し支えない。

だがアンタはその道を行ったんだ。俺の不可能をアンタは可能とした。それを見上げなくて何を見上げるってんだ?

 

「だから、そんな尊い物を侮蔑した俺こそを俺は軽蔑する。それ故の土下座(これ)だ」

「……今も何だかよく分からんが、難儀な生き方をしてるな」

「同情不要。笑い話にしてくれると助かる」

 

呆れの視線を感じながらも、待つは駒沢乃依(ひがいしゃ)の沙汰。彼はうんうんと暫く唸り……やがて諦めた様子を見せた。

 

「ごめん、やっぱり分かんないよ。罰ってのも今度で良い?」

「どうとでも。改めて、すまなかった」

「いーよ面倒臭い、寧ろアンチからどう見えてたか直に知れて良かったまであるし。お兄ちゃんもそれで良いよね」

「乃依が主軸の問題だ。お前が良ければそれで良いだろう」

「だってさ〜」

 

本当に面倒腐そうに手を振るその姿に、若干の救いを覚えてしまう。けれどそんな感傷は置いといて、乃依の件が終わったなら本題に入ろうか。

 

「じゃあ早速、酒寄彩葉保護包囲網の引き継ぎについて」

「待て待て待て待て。俺にも謝らないのか」

「えっ何を?アンタの事は事実に基づいて普通に嫌いだし見下してるけど」

「おまっ、いい性格してんなホンマ!?」

 

しかしなおも不満があるらしい帝アキラに若干イラッとくる。いい加減にしてくれよ、互いに早く済ませてぇだろこういうのは。別に負担から逃げるつもりは無いし、前線から退いてもアンタらのバックアップに全力を注ぐつもりなんだから話を前に進めさせてくれや。

 

「あのなぁ……とりあえず、話を進めるより先に情報共有だ。お前が彩葉に“一泡吹かせた”っつう出来事、その詳細から話せ」

「確かに。じゃあ遠慮無く」

 

盲点だった、そこから話した方が酒寄の状況把握も進めやすい。その提案に乗って、俺はあの忌まわしい出来事を、俺が酒寄に執着した経緯含めて説明する事にしたのだった。

 

色々端折ること30分後。そこには頭を抱える赤髪の出来上がり。

 

「……悪かったRe:AL。お前に非は無い」

「は?あるだろ。男子が女子ビビらせて泣かせるとか普通に死んだ方が良い。死に損なったからここにいるけど」

「いやそれは極論を超えた極論……って言うのは簡単なんだけどなぁ。まさかアイツそんな事になってたとは……」

 

かぐやの事は流石に理解に難過ぎるので隠したが、それでも妹が陥ってる苦境は帝アキラの心に傷跡を植え付けるには充分過ぎたようだ。そうそう、無理して勉強して無理して節約して無理して日銭稼いで無理してボロアパートに住んでんだよアイツ。よく生きてるわホント。もっと安全な場所でフルスペック発揮して欲しい。

で、そんな妹を助ける為に、()()()()()アンタの出番って訳だ。頑張れお兄ちゃん。

 

「嫌味ったらしく言いやがって……さっきの試合の動画、世に出しても良いのかよ」

「えっ出さねぇの?」

 

こっちはその前提で話してんのに何言ってんだ?そりゃ黒鬼の名の下にRe:ALの名が汚名として広まっちまえば、俺は真実とこれまで通りにゃ過ごせなくなるから嫌だが──めっちゃ嫌だが──真実と離れるくらいなら普通に首を吊るが──アンタらがやるってんなら受け入れる気なんだぞ?どうなんだ。

そんな疑念を込めた視線に応えたのは、帝の副官みたいなポジに就いた雷で。

 

「……さっきの動画だが、あまりにもブラックオニキス陣営が弱く見え過ぎてブランドに関わるからお蔵入り決定だ。残念だったな」

「いやチーター相手ってそういうモンだろ。というか勝ってんじゃんアンタら」

「ああ、これは建前に過ぎない。お前を貶めるような動画は出せないという帝アキラの御意向というヤツだ」

 

────はぁぁぁああああ〜〜〜〜〜??????

 

「オイ帝、どういうつもりだ」

「それはこっちのセリフだぜ」

 

瞬間、怒気。俺の問いに対して吹き上がったそれは、刹那の間に場を支配する。

 

「何だお前。散々露悪的な振る舞いで俺達を振り回しといて、そこへ更に“妹の同級生に濡れ衣着せて日向を歩けなくしました”なんて罪状を貼り付けてくる気か?」

「……?俺がゲロらなきゃ問題なくない?」

「はぁ〜〜〜〜」

 

それでも要領を得られない俺に痺れを切らすかのような溜息。数拍の呼吸を経てから、帝はポツリポツリと事情を明かし始める。

 

「……落ち着いて考えてみたんだ。そしたら、お前の言い分が()()()()()と分かった」

「???」

「俺に今更、彩葉と会う権利は無い」

「待て待て待て待て」

 

飛び出してきたその言の葉に思わず身を乗り出した。何ほざいてんだ気持ち(わり)ぃ、今更そんな殊勝な真似されたらこっちの動き方も丸々変えなきゃなんねぇじゃんか!?

 

「あのさぁ!もう分かってるよな!?俺は酒寄のストレッサーだって!近くに居るだけで多分心身削っちまってるって!!だから俺OUT・朝日(アンタ)INでそこの問題の種を除くってのが今回の主旨だろうがァ?!!」

「いやそれだけの話じゃないんだ!何つーんだろうな、“俺達には俺達の家族の(やり方)がある”って言ったのは覚えてるか?」

「そりゃまぁ。だがまさかそんな莫迦らしい事に尚も囚われ続けるだなんて事言わねぇよな」

「ああ、俺も莫迦らしいって思ってる。だが()()()()()()()()()()()()()

「あ゛?────あ〜…………」

 

けどそこまで言われて、思い当たる節があるのを漸く思い出せた。確かに酒寄の奴、そういうとこ意固地だもんな。

……ん?彩葉()

 

「他誰だよ」

「俺と彩葉の母さんだ。あの人は両親いない状況から弟妹養いながら独学で京大行った人でな。彩葉が無茶な生活を自分に強いてるとすれば……間違いない。アイツは()()()()()()()としてる」

「逆方向のマザコンじゃん。アイツともあろうモンが勿体無ぇ身の振り方しやがって」

 

そこから更に話を聞けば、酒寄兄妹の母──酒寄紅葉は子供達にこう教えてたという。

 

曰く“「助けて」は甘えに過ぎひん”。

曰く“頼み事なんて簡単にすることやない”。

曰く“無理は怠けモンの言い訳”。

 

うん。なるほど。

 

「その、なんだ──酒寄紅葉さえ黙らせればなんとかなったりする?

「お前人様の母親相手にようそんな択持ったな!?──いや、出来たとして逆効果だろう。母さんの教えは既に彩葉の中に根付いてる、自力で越えられなきゃ呪われ続けるだけだ」

「難儀な話だなそりゃ」

 

要はつまり、酒寄彩葉は家族(あに)相手でも頼る訳にはいかないって事。一人暮らしを許されるに当たってその手の援助は酒寄紅葉によって殆ど制限されているだろうし、何より母に認められたい酒寄彩葉は救いの手を拒絶するだろうということ。母に倣い自分独りで身を立てる事こそが、それを為す唯一の道だと信じているから。俺と真実と綾紬が支援に漕ぎ着けたのはかなりの奇跡的幸運だったらしい。

 

うん成程。アンタが表立っての酒寄彩葉支援に向かない理由は分かった。いやそれでも土下座して頼み込めとは思うが、酒寄彩葉の心情および信条的にはそのルートが一番穏便なのも分かった。

 

……とすると。俺はどうやって酒寄彩葉と再び距離を置くか。

 

「いや。お前はそのまま彩葉の近くにいてくれ」

 

だがそんな俺の案を、帝アキラは“現状維持”という一見最も愚かな一手で拒絶してくる。

理解不能。怪訝な視線を遣れば、しかし奴の目は至って真剣で。

 

「寧ろ、なんだよ。お前がアイツのストレスになった。なれたからこそ、“もうやめて”の一言を引き出せた。その事に注目したい」

「……!」

()()()()()()()()んだよ、お前は。今の俺には叶わない事だ」

 

……えー。それって、いや、えぇ。

本気で言ってんのか?

 

「このまま酒寄に常時プレッシャー掛け続けて一回へし折れって言ってる?鬼かよ。あぁ鬼だったわ」

「言ってくれやがるな。でももう仲直りしてんだろ?お前が原因でそうそうヤバい事にはならねぇよ、ヤチヨのライブでもかぐやちゃん挟んでワチャワチャしてたじゃんか」

「かぐガキを挟めば、な。というか完全に仲直りしちまってたら意味無いだろその作戦」

「友達にもストレッサーにもなれる、って解釈させてもらうぜ。それで彩葉に自分の弱さを自覚させてくれ」

「そりゃなんとも都合の良い話だ」

 

どうやら相手は俺の事を慮外に高く買ってしまったらしい。何が気に入ったのか、それとも腹が立ったが故の嫌がらせなのかは知らないが。

 

けど……例え仮初でも、酒寄と再び関われてる現状が嬉しいというこの気持ちは、正直否定できない。

だから帝アキラのこの提案に乗るのは、俺個人としては“あり”だ。

 

 

「石実。もう少しの間、彩葉を頼むわ」

「頼まれた。せいぜい仲良しこよしでやってやんよ」

 

 

結局、現状は変えない方針で決定。ただし俺達では対処できない問題が勃発した時、酒寄朝日が大人として出張って最終防衛線となる──この会合はそういう結論で〆と相なったのだった。総じて前進、と言えるかなぁ?

 

 

でもまぁ、はっきり言って意味はそんなに無いだろう。俺のストレッサーとしての役割も、酒寄朝日からの支援も。

だって酒寄彩葉を真に救うのは、きっと。

 

(かぐや以外あり得ねぇよな)

 

酒寄の世界を俺は外から壊そうとした。とするなら、アイツは内側からそれを融かした。

緩く、柔く、穏やかに。俺なんか比較にもなりはしない。それこそが今現状で最良の環境を生み出しつつある──あのガキの生い立ちを説明できない以上、迂闊に帝達に明かせないのが歯痒いが。

 

であればこそ、俺はそれを助けるだけだ。

支えて、守って、繋げる。上等だろ、なぁ石実現。

 

 

 

 

「いや何終わろうとしてんの?」

「えっ。話す事他にあったっけ」

「あるよ。決まったの、君への命令」

 

帰ろうとした俺の背に掛かる駒沢乃依の声……って、あー!そういやそうだった、というかもう決まったのか!?早いな存外!

なんかもう暫く後になりそうって勝手に思ってたわ。いや、早ければ早いほど助かるんだけども。

 

「“俺が嫌がりそうな事を何でも言ってくれ”、だっけ。その通りにさせてもらうね」

「……!」

「まず確認だけど、Re:AL君って、また俺達と会いたい?」

 

質問の意図は読み取れないが、嘘をつかない事はできる。まぁそもそも俺は嘘つくのがかなり下手な方だが、それでも尊敬する相手には誠実に。

 

「正直……あんま会いたくは、ねぇかな」

「じゃあまたコラボしよ」

「「「へ???」」」

 

そうして導き出された答えに、俺と帝と雷の声が重なった。今後二度と存在する事の無いであろう異口同音だった。

 

「え、いや……まぁアンタはともかく帝と会うのは反吐が出るから条件は満たしてるが*1……そんなんで良いのか?」

「良いよ〜。俺も君に興味出てきたし」

「またあんな発言するかも知れねぇんだぞ?アンタの前で」

「そうならないよう気を付けるのも罰ね。ホラ、頑張って抑えてよ?」

「言われずともそうするつもりではあるけど……」

 

存外に強かなその様子に気圧されつつ、命令内容を吟味。いや異論と呼べる程の事ではないが……この腑に落ちない感覚は何だ。ああそうか、実利的にはペナルティにも何にもなってねぇからだ。俺への金・名声・力(メリット)が、俺の一時の不快(デメリット)を上回っている。ブラックオニキス的には損まであるんじゃないか。

 

という訳で。覚悟を決めた。

 

「……一つ条件を付けさせてもらう」

「なに?」

「いーよ兄ちゃん。で、何?」

 

息を吸う。これから告げる事は、ファンを大事にするブラックオニキスにとっては得と言える事。そして俺には、俺自身による追加の罰となる事だ。

ハッキリ言って頼みたくない、言いたくない、絶対に。けどそれは所詮、前述の通り“一時の不快”に過ぎない。ただ我慢すれば皆が幸せ、それで良いだろ。

さぁ言え。石実現。

 

「……全員のサイン、くれ」

「えっ」

 

言えた。

……()()()の、サイン。

 

「俺の好きな子がアンタらのファンなの。腹立つけど。アンタらのサービスでソイツが喜ぶの。胸糞悪いけど」

「お、おう」

「屈辱で(ハラワタ)ねじ切れそう…っだけど!ソイツの為にサインくれッ!!!」

「あぁうん……良いけど……」

*1
帝「オイ」




帝(まみまみって子兎のライブ当選確率上げとくか……)
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