酒に狂った男   作:鶏肋

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何とか書き終えたのが本日の10:53。つまり1時間前
明日の更新は流石に厳しそうっす、サーセン


石実現、理解する

「やるんやったら勝ちに行け言うてるやんな」

 

お母さんが怖い。

 

「俺は1番(トップ)の俺が大好きだ」

 

石実が怖い。

 

「泣くな。泣くんは楽をしてるだけや」

 

お母さんの声が消えてくれない。

 

「要らねぇよ女の金なんか」

 

 

石実の言葉が離れてくれない。

 

「助けて?そないなこと気軽に言えるのが

私の娘やなんて、ほんま驚きやわ」

 

「見捨てる。手前の事も手前で救えないなら、

他にリソース割いてちゃいけなかったんだ」

 

お母さんに突き放される。

 

石実に追いかけられる。

 

両方の相手なんて……無理だ。

 

壊れる。壊される。押し潰されて、何も無くなる。私が私じゃなくなってしまう。

 

だから。

 

「消えて、欲しい」

 

願ったんだ。

()()()()方に。

 

「もう、やめ、て」

 

そう祈ったのは、他ならない私じゃないか。

 

「怖いよ……っ」

 

打ち明けたじゃないか。

恥も外聞も無く。

お母さんの教えさえ度外視して。

 

なんで忘れてたんだろ。

どうして今になって、思い出したんだろ。

あの日。微か耳が拾った、廊下の足音。もし私の推測が正しければ。

 

もう取り返しなんて、つかないのに。

 

 

 

「かぐや」

「なぁに?」

 

独り言ちる。私の中のかぐやに、現実のかぐやにはとても言えない事を。

あの目に映る私に失望の色を塗られたら、生きていけない。

 

「私、屑だ」

 

お母さんの言う通りだった。私は何処までも甘ったれで、甘えてる事に気付かないまま、石実を傷付けた。

 

「屑じゃないよ?」

「屑だよ。どのツラ下げて会ってたのか、もう分かんないよ」

 

その上で支援されて、お金を受け取って、活動を助けて貰って。女王様か何かにでもなったつもりだったんだろうか、私は。

 

「謝りたい」

 

償わなきゃ。

じゃなきゃ、胸なんて、張れっこないよ。

 

「泣かないで。彩葉は屑なんかじゃないよ。じゃなきゃリアルだって助けないよ」

「そんな事言わないで……許さないで……」

「彩葉が彩葉を許さないなら私が許すけど?」

 

言う事聞いてよ。罪は裁かれなきゃいけないの。救いようのない屑なら兎も角、そうじゃないって示したいなら。

だから、夢の中だけでも、かぐやは私を──

 

「もう、分からず屋。彩葉ってばすっごい頑固だよね」

 

──かぐや?

 

「にへへ。豚の冷しゃぶ、完成してるよ」

「な、は、え」

「で~も~?意地っ張りの彩葉が改めないなら、一人でぜーんぶ食べちゃおっかな~?☆」

「ええええええ!?」

 

き……聞かれた!

聞かれたくなかった弱音!全部っ!!

 

「ねぇ彩葉。食べ終わったらお話、しよっか」

 

 

 


 

 

「っつー事があったんだよね」

「おぉ……」

「おおじゃないが」

 

翌日、ツクヨミの中でも豪華絢爛足る一等高級地に建てられた鬼の城。そこに招かれた俺達は、憎っくき帝アキラへと近況を報告していた。ちなみに同伴は綾紬。

 

「いやコレはおおだろ……彩葉は今はもう元気なんだな?」

「ええ、もう回復してます。今度の快復記念パーティを自分から主催したいって言いだす程度には」

「何よりだ。ありがとうな、ROKAちゃん────とRe:AL」

 

ついでみたいな扱いに草。いや良いよ、俺もお前から素直に感謝なんてされたら身の毛もよだつし。

まぁそんな(いが)み合いは置いといて、聞いておきたいのが病院云々の判断の是非なんだよな。あの時に診察させなかったのは良かったのか悪かったのか、酒寄家の人間としてはどうなんだ?後学に活かしたい。

 

「それなぁ……まず妹を助けて貰った身としては感謝感激で◎。兄としては“障害とか残ったらどうすんだブッ飛ばすぞ”で△。ただ母さんの側面を踏まえた判断としては……多分○なんだよなぁ恥ずかしながら」

「その心は?」

善庵(ナオ)の存在だよ。アイツがまた探り入れてきて、彩葉の苦境を母さんに告げ口する可能性を踏まえれば、お前の懸念と判断は充分に有り得る未来だったって事。配慮に重ね重ね感謝するぜ」

「どーも」

 

成程、そりゃ何よりというか何というか。どうやらあの(あん)ちゃんは帝にとって頭痛の種らしく、詳細を問うべく口を挟んだのは綾紬。

 

「差し支えなければ教えて欲しいのですが、帝さん……と善庵さんはどんな関係なんでしょうか?善庵さんからの話し振りでは、そこまで険悪だったとは思わなかったので」

「朝日で良い。で、アイツと俺の関係性なんて険悪どころか絶交済みだよ。小学校の同級生、ついでに同じサッカークラブ入ってた程度の仲だ。」

 

小学校からの仲……まぁ疎遠になる事なら十分あり得る程度の縁ではあるものの、それにしちゃ今も引き摺ってるような節があるのが気に掛かる。何があのか小1時間は問い詰めたい程度には気になる、弱みの匂いがプンプンするし。

 

……が、善庵の(あん)ちゃんに関しては正直どーでもいいので次だ次。酒寄に関して変に公的記録に残るような挙動しちまったら酒寄紅葉に捕まりかねない、その事を知れたのが一番の収穫なんだから。

 

「結局のところ、酒寄紅葉さんとやらは彩葉(さかより)をどうしたいんだよ?第三者視点だと“もしかして娘さんを殺したかったります?”ってムーブにしか見えねぇんだけど」

「!」

「ちょっと石実っ」

 

やはり障害は酒寄紅葉。その一点が、彩葉関連の前進を阻んでいる。

その確信と共に問えば、帝は目を見開き綾紬も動揺を見せた。

 

「言っとくがこの件に関して歯に衣着せるつもりは無ぇぞROKA」

「だとしてもだよ。彩葉(いろは)にとってのお母さんって事は、帝さんにとっても母親なんだから……!」

「知るかよ。母親だから何だ?本人達がどんな関係だろうが、第三者からどう見えるかには何も波及しねぇだろ」

 

酒寄紅葉が本気で彩葉を殺そうとしてようがそうでなかろうが関係無ぇ。第三者から見た客観的事実としてどうか、それだけが現実だ。

その上で、俺という第三者から見た酒寄紅葉は、

 

“娘の意志を人生経験に(かこつ)けて徹底的に叩き折り続けた挙句、独り放り出して碌に援助もせず防犯皆無のボロアパートに押し込んだ人でなし”

 

でしかねぇんだぞ?彩葉(さかより)が意地張ったとかそんなの何の免罪符にもならねぇよ。そこで影ながらバックアップする選択肢を選べないんじゃ、親が存在する意味そのものが皆無だろうが。

 

「これを殺意もしくは敵意無くしてやってるんなら尚更意味分からん。何がしたいの?」

「……ははっ。そうか。他所から見た母さんはそう見えるのか」

「すみません!石実も謝ってッ」

「なんで?」

「だから──」

「良いんだ、ROKAちゃん」

 

そう遮る帝の目はこれ以上なく落ち着いていて、暴言*1を吐いた俺の方がギョッとするほどだった。目が据わる、ってのはこういうのを言うんだろうな。

 

「逆に聞きたい。君が知ってる情報で、彩葉(いろは)以外の俺達酒寄家はどう見えてる?」

「それは……」

「忌憚の無い意見を頼む。自分たちの異常さを自覚したいんだ」

「……端的に申し上げて、彩葉が大事じゃないのかなって、思ってました。貴方も紅葉さんも1回だって訪ねて来ないまま、彩葉はずっと独りきりだったので」

「──あっはっは!手厳しいなこりゃ、ぐうの音も出んわ!!」

 

ここで、何がおかしいと怒ることも出来た。けどそうしなかったのは、帝の声音に果てしない後悔と苦悶と諦念が見て取れたからだ。極まったアンチである俺ですら追撃を躊躇うほどの。

 

「ははっ、ああそうだ。何一つ言い訳出来ないよ、俺は彩葉を大事に出来ちゃいなかった。君がそう断じるなら、俺に拒む余地は無い」

「じゃあ……今からでも遅くはないです。彩葉にちゃんと、口で、大事だって伝えてあげて下さい。自分が家族から大事にされてるって自覚させてあげて下さい。彼女の為にも、貴方自身の為にも」

 

けれど一歩踏み出してみせた綾紬の言葉に、帝は深く深く頷く。彩葉を想う者同士で通じ合えたんだろう、傍から見てるだけの俺視点でも、両者の間に信頼関係が構築されたのが分かる程に。

だが、それで問題が解決するわけじゃあない。酒寄朝日はなんとかなっても……。

 

「本題に戻るぞ。母さんだ」

 

どう足掻いても、そこに帰結するから。

 

「母さんはな。きっと、彩葉に()()()()()んだよ」

「「……は??」」

 

そして明かされた内情に、俺も綾紬も素っ頓狂な声を上げる他無い。え?結局酒寄紅葉は彩葉を嫌ってるって事?違うよな???

 

「反面教師を演じてる、という認識で合ってます?」

「いや、素だな母さんは。その上で、彩葉に反抗して欲しいと願ってる」

「意味不明過ぎてウケる。じゃあ叩き潰すなよ」

「ホントにな。だがもっと嚙み砕いて言うと……なんて形容すべきか……むっず……」

 

聞けば聞くほど難解になっていく紅葉道。三人揃えば文殊の知恵とは言うが、俺も綾紬もなんなら説明してる帝ですら首を捻る始末だ。人間社会で生きるなら人間に理解可能な思考回路をしててくれよ。

と、ここでやっと新要素が帝から。

 

「ああそうだ。昔、学校の行事とかで魚の放流とかやった事あるか?」

「無い。ROKAは?」

「ありますね。水族館の見学で、在来種稚魚の放流をさせて貰った事が1度だけ」

「その時に、“どうか元気で”って祈ったりしたろ?」

 

オイ待て経験無いっつってんだろ。勝手に話を進めんなコラ。

 

「まぁ……私の知らない所で頑張ってね、とは」

「それだよ」

「どれだよ」

()()()()()()()()の部分だ。母さんはな、自分がいない所で、彩葉が自立できるようにしたかったんだ」

「え?自立の芽を潰しといて??」

「それでも出来るって信じてたんだ。だって母さんは、“それ”を出来ちゃった人だから」

 

いやいやいや……自立を促したいからってそんな極端を超えた極端に奔るか普通。やっぱり理解できん。

そもそもの話、自立を促すのに嫌われる必要なんて無ぇだろ。真実を見ろよ。場の和を優先していじめられてた昔はともかく、今はもう俺がいてもいなくともしっかり自立して……

 

 

……真実が、自立。

 

俺が、いなくとも……?

 

 

「ぁぁぁああああ゛ーーーーー~~~~~~ッ!!!!」

「ぅゎうるさっ!?」

「急にどうした」

「全部納得いった!全部!!」

 

ンだよ回りくどく説明しやがって!や、俺が理解を拒んでただけか?!どっちでも良いや全部分かったもん!理解した上で納得しちまったもん!!

これつまりさぁ、酒寄紅葉って要するに……!

 

(真実を切り離そう(パージしよう)としてた頃の俺じゃんッ!!!!!)

 

自分じゃ守れないと思ったから!自分の範疇から大事な者、もしくは物が出ていく時、何の憂いも心配も要らないように、依存させないように撥ねつけた!そういうムーブなんだコレ!!

やっば、アハ体験極まってドーパミンが頭蓋骨圧迫してる!さっきまで忌避と嫌悪を抱いてたのに、1260°回ってめっちゃ酒寄紅葉に共感してる!友達になれそう!!*2

 

「あー、そーゆことね。手段は意味不明だけど意図は完全に理解して納得した。言っとくがフリじゃねぇぞ。“←分かってない”とか付かねぇからな」

「ポプテピネタとかもう15年前だぞ……」

後見人(yachi8000)が時々古いネタ掘り起こしてくんだ、許せ」

 

兎にも角にも、これで地獄の酒寄家の内情はだいたい把握できた。この期に及んで言及されない父親に関してはまぁ色々察しておくとして、酒寄紅葉に関する分析はかなり解像度を増せたと言える。

だが理解した所で、それが彩葉(さかより)の利に直結する訳でもないし放置して良い理由にもならない。むしろ逆、その存在が“毒”である核心は一層深まった。

 

「それで、酒寄朝日サマとしてはなんか考えあんの?自分で言うのもなんだが俺達ゃ部外の人間だ、口出せる順番としてはそっちが先になるけど」

「……成功体験が必要だろう。彩葉に何かが不足してるとすれば、まずそれだ」

「でも紅葉さん関連でそれは難しいんじゃないでしょうか。話を聞く限りでは、寧ろ自分絡みの功績なんて絶対認めてくれないように思えますが」

「ああ。だから、母さん以外で“譲れない物”……それが彩葉の中に生まれている必要がある」

 

結局のところ、彩葉(さかより)の中で彼女自身の拠り所が創られていなければ難しいと帝は語る。それを受けてROKAもまた再び考え込んだ。

けど、もう悩むところはそこじゃねぇだろ?

 

「なんだあるじゃねぇか。とっくの昔に」

「え?」

「呆けんな。アイツの元気は()()()()ってお前が言ったんだぜ、酒寄ソムリエ」

「……何の事だ?」

「テメェの“推し”の話だよバーカ」

「「!!!!」」

 

あの酒寄(いろは)が、閉じ籠った自分の殻ん中に自ら招き入れた特大の“異物”。今も大切に扱われるその存在を、俺達はよーく知っていたから。

 

「ハッ。結局俺達は、一から十までアイツ頼りってワケだ。泣けるね」

 

押しも押されぬ、かぐや姫さんよ。

 

 

 

「だから帝。お前ヤチヨカップ負けろ

「ファッ!?!!?無理無理流石に不可能やって、ファンの期待は裏切れへんぞ?!」

「はァ~~~???成功体験が必要っつったのはテメェだろが!」

「いや流石に八百長は……もっと他にこう……あるでしょ!?」

 

*1
自覚アリ

*2
乱心




だって紅葉語録に目を通したりキャラ解像度を上げる為に紅葉の出てくるシーンを読み返したりするのメチャクチャきついもん……(泣き言)
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