酒に狂った男   作:鶏肋

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午前だけで6000文字。書けるモンなんだなぁ

という訳で、いよいよ作者が一番描きたかった竹取合戦パートが近付いて参りました。頑張っていきます


ヤチヨ、明かす

「時間だね」

「ああ」

「忘れ物は?」

「皆無」

「マニュアルモードだよね」

「当然」

「帝様達に失礼の無いように」

「えぇい、みなまで……って俺が言えたクチじゃねぇか」

「ふふんっ」

 

俺にも母さんの記憶なんてほぼ残っちゃいないが、俗に言う“口うるさいオカン”ってのはこういうのなんだろうなと胸を張る真実に思う。最も、蹴っ飛ばしてくれと頼んだのは俺なんだから文句を言う資格は無いんだが。寧ろ嬉しいまであるが。

 

「じゃあ行ってくるわ。吉報を待っててくれな」

「あ、待って」

「?」

 

いよいよログイン、というその時。何を思い出したのか、真実はスマコンに瞳を輝かせて何かを操作。すると俺の方に通知。

 

「何の足しにもならないけど、必勝祈願!」

「良いのか?黒鬼が負けちまっても」

「元はと言えば私が出ようとしてたんだよ?覚悟なんてとっくの昔に付いてるってば」

 

その贈り物で、胸に熱い物が灯る。あぁこれは、ガチでやらんとダメだわ。

 

「分ぁった分ぁった。精々しっかり勝たせてきてやんよ、かぐやと彩葉をな」

「自分を除外しないの。現ちゃんも揃って皆で祝勝パーティ、もう色々準備してるんだからねっ」

 

ここでの“勝利”とは、黒鬼との竹取合戦の事に留まらない。本日夜が最終〆切のヤチヨカップ、その結果も含めての事だというのは、もう言うまでもなく分かっている事。

2人、自然に手を繋ぐ。その温もりに勇気を得て──ツクヨミの世界へと、俺は潜った。

 

 

「よお」

「……!」

 

待っていたのは酒寄。いつもの狐アバター、だが装いとは裏腹に緊張感で満ちているのが素人目でも明らかだ。その目が俺を認識した事で、僅かながらも更に引き攣る。まぁお互い様な所はあるが。

 

「オイオイ、今からそんなんでどうするよ?相手の空気に飲まれちまうぞ」

「ああうん。分かって……る」

 

俺の方は隠せてると信じて気楽を装うが、それでも向こうはなかなか晴れてくれない。ま、残念ながら当然ってとこだろう。

 

あの暴発事件から、RINNEだけでなく現実でも会って謝った。それを酒寄は、やはり「私の方こそごめん」と謝り返して受け取ってはくれなかった。

平行線だ。俺も酒寄も相手の気持ちを素直に受け取れない。互いにそれを分かってるからこそ距離を置いて、なのにその上で再び交わろうとしている。その矛盾がこの苦しみを生んでいる。

 

……どうすりゃ良いんだろうな。真実に勇気こそ貰えても、いざ行動に移せなければ何の意味があるのか。

っつーか、かぐや何処行った?こういう空気を打破すんのがお前の仕事だろうが、いや俺が勝手に押し付けた仕事だk、なんだ後ろか。

 

「かぐやっほ、ってえー!?何で分かったの」

「気配ダダ漏れだかぐガキ。やる気あんのか」

「あるよ!だからもっかいね、かぐやっほ〜!!」

「結局やるんかい」

 

奇襲に失敗したにも関わらず、挫けず飛びついてきた兎。おう早くその爛漫さを酒寄に発揮してやれ、心やられてんぞ。

そうだ、もっと跳ねてもっと強引に……オイ待てなんで俺を連れてく?酒寄が座ってくるソファに俺を引きずってく理由is何?

 

「あははっ、Re:かぐいろ三人同盟〜⭐︎」

「えぇ……」

「日独伊三国同盟じゃねぇんだぞ」

 

負けフラグみてぇな仮称を謳いながら、かぐやはその並び通りに俺達を座らせた。俺と酒寄の間を取り持ち、その真ん中で満面の笑みを浮かべて。

 

「ありがと彩葉。ありがと、Re:AL」

「あ?」

 

そうして出てきたのは、何処か改まった感謝。

何だ?と、そのしおらしさに惑う俺達へと彼女は告げる。

 

「だって、2人のおかげだもん。かぐやがここまで来れたのも、今がめちゃくちゃ楽しいのも、全部さ」

「……なんで、今?」

「だってだってだってぇ、もっと楽しく嬉しくなりたいもん」

 

がおー。そう欲深の炎を吐いて、怪獣は更なる幸せを求める。辛気臭い俺達へも伝播させるように。

あぁそっか。真実が勇気を伝えてくれるなら、コイツが伝えてくるのは……“元気”、なんだろう。

 

「かぐや、今めっちゃ輝いてる。だから次は2人の番ね」

「……」

「ほら、この一瞬を最高のパーティにするーって感じで!ねっ!!」

 

だからもっと元気を出せと、そう無茶ぶりしてきやがる。このかぐガキめ、こっちの事情も知らず……いやもう多分知ってるな……知ってるなら尚更タチ悪いわかぐガキが。

……だが。その強引さこそが、きっとかぐやそのもので。

 

「…………今が最高だなんて、言わないでよ」

「いろは?」

「それじゃ、後は落ちてくだけじゃん」

 

その真っすぐさがやはり、酒寄へと深く突き刺さった。

 

「勝とう。勝ってその先に行くよ、かぐや」

「……っ、〜〜〜!!!」

 

とっくの昔に届いていた想い。それを認識した瞬間、かぐやは爆発する。

 

「やたー!!やったやったやったぁ、彩葉がハッピーエンド行くって言ってくれたぁ〜〜!!!」

「え、ちょ待ってうざい!そこまでは言ってないでしょ?!」

「言ったもん聞いたもん!ね、リアル!!」

「……あぁ。確かに聞いちまったなぁ?」

「ああもう、言うんじゃなかったッ」

 

ははっ、こりゃすげぇ。本当に見事だよかぐや。観念しやがれ酒寄。俺もお前も、このお姫様にゃ勝てっこないってな。

で、もう分かってる。酒寄を救えたんなら、次にテメェの矛先が向かうのは俺だって。

 

「リアル!リアルもっ」

「あ゛ー分かってるよ。俺だってとっくの昔にテメェのお陰で幸せ皺寄せだ」

「茶化しちゃって、じゃぁもっと幸せにしちゃうもんねー。彩葉とリアル、一緒に!」

「ハッ」

 

一笑に伏したのは、決して嘲る意味じゃない。本当に幸せにされちまってたからだ。

そうだよかぐや、俺はもうここで良い。お前が酒寄と望む未来に辿り着く、その助けになる事こそが俺の報い。あまりにも充分な報酬だから。

 

「良い思い出で生き埋めになっときゃ良いんだ、お前なんか」

「何のこと?」

「こっちの話だっての」

 

いつかバーガンディとした約束を思い出しながら、クシャリと撫ぜる金の髪。その下で綻ぶ笑顔に、絆される自分をこそ俺は嘲る。

 

そうだ。俺は幸せだ。

男の幸せは女の幸せを守る事だ。俺が傷付けた酒寄の幸せを、それを導いたかぐやの幸せを守る。

 

それ以上の事なんて、ある筈が無いんだから。

 

「よぉーし!景気付けに帝ワンパン、いや160パンしてプロローグ行くぞ〜!!!」

「馬乗りでタコ殴りにでもすんの?それはそれで視聴率取れそうだが」

「うぅん、見たいような見たくないような……」

 

発奮するかぐやの影で時間は進み、いよいよその時が迫る。フィールドが公開され、敵味方が一堂に会するその時が。

そのカウントダウンが始まるか否か、というタイミングで……なんと、予想外にも語りかけて来たのは酒寄。

 

「……石実」

「……何だ?」

 

アバター名ではなく現実の名前。律儀に呼び分けるコイツにしては珍しい。

それだけ真剣という事なんだろうか、言われる側としてはそう邪推するしか無いが……どうやら正解だったらしい。

 

「ありがと」

「え?」

 

感謝。

謝罪だったらまた無意味な応酬になってた。でもそうじゃなかった。

 

「かぐやを助けてくれてありがと。私を助けてくれてありがと。真実と、芦花をずっと支えてくれてありがとう」

「っ…………」

「謝ったら、また返されちゃうから。かぐやに倣ってみた」

 

気丈を振る舞い、酒寄は微笑を浮かべる。それに俺は……逡巡と葛藤を経てから、こう返した。

 

「……悪いが、それこそこっちのセリフだ」

「どこが?私、石実になんかしてあげれた事あったっけ」

「さぁて」

 

強いて言うなら()()()()()()……って所だろうか。なんて意味不明過ぎて言えやしない。

 

だって、楽しかったんだ。

お前と競うの、大変だったけど、辛かったけど、楽しかったんだよ。お前がどう思ってようと、俺にとってあの日々は。

 

けど今そんな想いに意味は無い。もう切り捨てるべき過去でしかないのなら、目を向けるべきは“今”だ。

 

「もう良いだろ。俺がお前らを勝たせてやるから、大船に乗ったつもりでいろ」

「……じゃ、それもこっちのセリフって事で」

「言うねぇ」

「2人とも〜、もう行くよ〜!!」

 

かぐやの呼び掛けに応え、歩き出す光の彼方。その先の戦場へ、俺は酒寄と共に一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

「貴方だよ。Re:AL」

 

踏み出したらヤチヨに名指しで不埒者(バランスブレイカー)扱いされました。

俺なんか悪い事した?めっちゃして来たわ。糞が!

 

「へ?リアル、チートとか使ってるの?」

「使ってはいない……いねぇんだけど……これ弁解の余地ある?」

「絶対マニュアルモードの仕様の件じゃん!」

『どういう事でしょうか?確かにRe:ALは一時期チーターの噂も流れましたが、続報が無かった事と活動を継続していた事で無実だと思われていたようですが』

『うーん、運営側の検証が進んで判明したとか?でもこちらで見る限り、チートの検出反応は全く無いんですよねぇ』

 

この衆目の中でのカミングアウトだ、観客の間にも瞬く間に動揺が広まっていく。なんなら解説と、実況のオタ公(ポチ姉)も首を傾げてやがる。

ってオイこれかぐやの順位に影響するか?今ここで腹切るか何かすれば取り返し付くかなぁ!?

 

「あ〜……ヤチヨちゃん。その件に関してなんだが、実は俺達も独自に調査してて、機を見計らって報告しようと思ってたんだよ」

 

と思ってたら、望んでこそいないものの有り難い助け舟が渡された。対戦相手の黒鬼からだ。

 

「帝様、何か弁護の余地をお持ちのようで」

「ああ。雷、頼む」

「頼まれた──諸君、刮目してくれ。左がマニュアル使用時のRe:AL、右がオートマ使用時の同人物だ。見ての通り、マニュアルの彼は現実的なKASSENの挙動の範疇に収まっている。これはバグやツールではなく、それぞれのモードの仕様とも呼べる物で────」

「……いつの間に接点持ってたの?映像でRe:ALが()ってる相手、黒鬼じゃん」

「ぁあ〜……ううん……紆余曲折過ぎてちょっと話し難い。けど話せる部分は明日話すから許せ、マジで」

「隠し事だぁ。言っちゃお言っちゃお、真実に言っちゃお」

 

いろかぐコンビに俺が詰められている間に、雷が例のお蔵入り動画を出して公に情報を開示していく。乃依の件も含め、ちょっと駒沢兄弟に頭上がんないなコレ。

決めた。今度からちゃんと帝以外には敬語を使おう、うん。*1

 

「────つまりRe:ALの超常的な運動性能は、現実における彼のセンスとオートマモードの仕様が悪魔的な奇跡でシナジーを発揮してしまった事故(グリッチ)だ。故意性や悪質性はかなり低く、他者による再現性もほぼ有り得ない。何より本人がそれを自覚し、自主的な運用は控えている……よって彼がマニュアルモードでプレイするならば、それを阻害する権利は運営(ヤチヨ)にも無いと思われるが?」

 

そうしてる内に解説終了。しかし周囲の喧騒は止まず、俺に疑惑の目を向ける者・映像で黒鬼と単騎で渡り合う俺の姿に息を呑む奴・全部どうでも良さそうに試合を待つ輩の悲喜交々といったところか。

こりゃどう転んでも、俺が引き下がらなきゃKASSENどころじゃなさそうだ。真実や酒寄にはあんな啖呵切っといて情け無ぇが、ここはログアウトを「ダメっ!」……かぐや!?

 

「誰が何と言ったって、Re:ALを置いてくなんてしないし!彩葉と練習した()()()、絶対間近で見てもらうの!!」

 

瞬間、熱意を乗せた音が仮想の大気を揺らした。俺の手を掴んだかぐやの叫びだった。

一瞬の間だけ、静寂が騒ぎを押し除ける。その中で、果たしてヤチヨの答えは。

 

「────誰が、“駄目”と言いました?」

「「「「「「え?」」」」」」

是。

だがその内容に、全員が思わずポカンと口を開けた。

 

「いやはや、言葉が足らず申し訳ソーリーヒゲガニソーリー♪でもヤッチョ、“Re:ALがパワーバランス崩してる”って旨を言っただけでそれが()()()だなんて言ってないのですよ〜♫」

「……じゃあ、なんで?ヤチヨは何をする為に、此処に?」

「そう、それだよ彩hゲフンゲフンいろ!」*2

 

酒寄の問いに対し、ヤチヨは浮遊。フィールドの俺達からも観客席からもよく見える中空にて、掲げた両手に巨大なスクリーンを投影した。

 

「私はツクヨミを、神々みーんなに楽しんで欲しい、けどそれは、Re:ALみたいな人達が全力を我慢して成り立つような物であって欲しくない……そこで!」

『ま……さか!?』

「KASSEN新モード・OYADAMAを発表するよ〜〜!!!」

「新モードぉ!?」

「おやだまぁ?!」

 

異口異音。けれど同じ事象に同じ驚愕で以て、俺と酒寄の声が重なった。その反応に満悦したのか、ヤチヨはさらに情報を開示していく。

 

「コンセプトは“多対一の非対称対戦”。圧倒的な1人が親玉(ボス)として無双し、チームは手練手管を繰り出しながらそれを攻略する!親玉側のプレイヤーには相手のチーム人数に比例してバフが掛かり、そしてRe:ALのような体質の人もオートマモードで十全に暴れられるよ!!」

『ハイ。ヤチヨ、質問良いかな?』

「どうぞ、乙事様?」

『どーも。確かにKASSENにおいて非対称形式は珍しい、でもコレってメインのKASSENモードを多vs少でプレイするのとどう差別化するのかな?』

「そこも抜かり無く♪親玉は最初は居城にて待ち構え、フィールド上の全NPC(ミニオン)へ簡易的な指示を出す事が出来ます。つまり序盤はミニオンに任せて戦略的に敵チームを弄び、たどり着いた相手を待ち受け跳ね返すボスムーブが可能!チーム側はそれをどう掻い潜って親玉へと至るか、至るまでにどれほど余力を残せるかが肝となるのです!」

『なるほど……まるで将棋だな』

『序盤は盤面を手繰るボードゲーム、それで場を整えてからの終盤のガチンコ!なるほど、頭脳と技術の両方が必要になりますねっ』

 

えーっと?乙某とポチ姉の質問と説明を鑑みるに、ボス側は最初に軍勢率いて相手チームを削って、それを潜り抜けてきた奴らを叩きのめせばWIN。チーム側はその逆って事でOKか。

けど待て。それじゃ結局、この勝負はどうなる?

 

「流れ的に俺が親玉(ボス)サイドになるんだろうが、いろ&かぐやはどうすんだ?この竹取合戦の主旨はかぐやvs帝だぞ、俺はメインじゃねぇ」

「そうだねぇ……だから試運転の特例って事で、今回して貰いたいOYADAMAのルールはSENGOKUとの混合にしようかなって思ってるよ。君というボスへ至るフラグを、いろチームと帝チームで取り合う感じ」

「だからそれじゃ……あっ」

 

成程。そこで合点がいった、だから()()()()()()()()のかって。

改めて目を合わせたヤチヨは、一転して悲しげに目を伏せて降りてくる。そして俺とかぐやと酒寄に向けて、頭を下げた。

 

「ごめんRe:AL!ヤッチョと代わって!!」

「オッケー」

「早っ!?」

「え?」

 

二つ返事よりも先んじるほどの1.5返事。誰よりも早く、かぐやが拒否するより速く。

置いてかれた酒寄はといえば。

 

「え……へ?石実out?ヤチヨin?───

───っェ、ええええええええ!?!??」

 

困惑と喜色の坩堝に、その心身を投じたのだった。うるせぇ。

*1
帝「ちょ待てや」

*2
「バッ、バカタレ!その名前をこんな所で呼んでどうする、帝アキラ(酒寄朝日)も居るんだぞ!?」

「だってぇ!彩葉に話を振ってもらえたの、嬉しくて〜!!」




POWER TO TEARER聞きながらだと作業が進むんじゃ^〜
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