酒に狂った男 作:鶏肋
バカでしたね
というか普通に“悪”ですね、死すら生温いので死ぬより辛い目に遭わせます(決定)。あとお隣さんはどこかで救済します、こちらも完全に作者の所為なので
今は昔……ではなくて。
たった今この刹那。現実と仮想が入り混じった鉄火場で。
『これは……これは!絶望的状況下に思われたが、これはッ!!』
対峙する2人の超人高校生ありけり。
『いろP、ここに来て覚醒!謎のパワーアップで彼方まで蹴り飛ばしたぁ!!』
『えっ。これ仕込みとかじゃないの?ガチぃ?!』
『チート検出、デバッグ検出、共になし!素でぇす!!!』
片や、名をば“酒寄彩葉”となむ言いけり。
彩葉って呼ぶべし♪
『Re:ALもただでは終わらない!次弾を躱して即座に立て直すッ』
『ですがこれで勝負は分からなくなりましたよ?流石に余裕も無くなr……え。笑ってる?あの子こゎ〜……』
片や、名をば“石実現”となむ言いける。
リアルとでも呼んどくべし♫
「いろPーっ!頑張れぇぇぇ!!」
「どうか帝様の仇を……!」
そして彩葉は今、初めて自分以外の誰かへ純粋な怒りを燃やす也けり。志を同じくする者達の念を背に受け、一層燃え上がる様は八大地獄の熱も斯くや。
「……全部ぶっ壊しちまえ」
リアルはといえば、陰で仄暗く燻る者達に祈りを託される運び也。しかし彼はそんな事も知らず、己が愉悦に耽て笑うのみで。
「「……────」」
両雄相容れる事、未だかつてなし。各々が己が得物を構え、互いを恨み、尊び、呪い、想い。
『両者睨み合い──いえ激突だ!タイマンだーっ!!!』
とうとう口火を切る最終決戦、その火蓋。
湧き上がる歓声と情動を振り切り、むき出しの情動を彼・彼女はぶつけ合うのでした。
────私?いやはや、弾き出されたお婆ちゃんに為せる事など何一つ。彩葉とリアルが悔いなく戦えるよう、ヤッチョは只々祈るのみなのです。たとえそれが歯痒くとも、口惜しくとも。
今も身を焼く“熱”に、存在そのものを蝕まれようとも。
「ヤチヨ、回復に専念するんだ。僕の方もデータ採取に難航して……」
「そうもいかないんだなぁコレが」
だって今この瞬間こそ、私の愛する2人の大一番。ちゃんと見ておかなきゃ次の8000年をずっと後悔する事になるだろう。
それに……ほら。
皆が彩葉達に集中して見落としてる、さっきリアルが斬り刻んだ天守。その瓦礫の山。
その中の一つが揺らぎ、隙間からサムズアップが顔を出す。這々の体で。
「後は任せるよ」
私じゃない。今の彩葉達を助けるのはあなた。
その武運を祈り、私もまた震える手で親指を立てたのでした。
沸騰する心とは裏腹に、頭脳は冷静に算段を立てていた。
まず、私とRe:ALはこの時点に至ってほぼ対等となっている事。
そして一番は機動力だ。私が石実の動きを脳内で可能な限り再現し、その上でその先を行くイメージを行い、オートマモードでアバター体に投影。これによって私は白兵戦でRe:ALに
何故、上回るイメージをしてるのに“追随”に留まるのか。理由は簡単、経験値の差に他ならない。
当たり前の話だ。真実から聞いた話によれば石実があの超パワーに目覚めたのは去年、私と仲違いしてからの事。要するに今目覚めたばかりの私とは1年の差がある。初撃こそ虚を突いて1発重いのを打ち込めたものの、2度目は無い。
その初撃を蹴りじゃなくて斬撃にして勝負決めとけば良かったじゃないかって?無茶言わないでよ、先述の通り私は今目覚めたばっかりだ。最初から武器なんて満足に振るえやしない、追撃にブレード使ったのだって探り探りなんだから。
(つまりここからは未知。この力の勝手を知り尽くしたRe:AL相手に対し、私はまずその通りを知るところから始めないといけない訳だ)
実戦の中で、従来のKASSEN経験からは考えられない高速の応酬の中で。私に出来るか?アイツ程の敵を相手に?
「──出来るね」
「!」
口を突いて出てきたのは、自分に言い聞かせる独白。とは言っても不安ゆえの自己暗示じゃなく、強い自負に基づいた確固たる物で。
そうだ、出来ない訳が無い。だって私は。
「
先手は私。というより相手が譲った。幾らでも仕掛けるタイミングがあっただろうに、アイツは敢えてそうしなかった。
舐めプだ。この期に及んで私の力を楽しもうって、その為に慣れる時間をくれてやろうって、そう考えてる。
その大層な厚意に甘えて、利用して、後悔させてやる!
「シッ!!!」
「っ──ハァ!!」
踏み込んでの斬撃。彼我10mをコンマ1秒で0mに変えて放てば、奴もまた大太刀でそれを受けた。銅と鋼の刃が音速の火花を散らし、それでも互いに強引に振り切る。
ハラリと舞うのは余波で切れた私の髪、散るのは薄く裂かれたRe:ALの皮膚。それが始まりだ。
「そらッ!!」
「“1”!」
最初を0と仮定し、数を刻む。順々に、一つずつ。
ところで、ここで私が思い出していたのはお父さんとの思い出だった。正確には音楽を習った、その最初の最初。テンポ作りについてだ。
曲において音はある程度の一定を魅せなければならない。ならばこそ正確に間隔を設け、それを市井ではBPMと呼んだりする。100BPMならば、60秒に100回刻みのテンポという事。
「“2”ィ!!」
「……!」
「3456、7ァッ!!!」
それを当て嵌める。Re:ALの動きに。
当然100じゃ足りない。不規則な奴のリズム、その最大公約数には1000でも足りはしない。
なら目算1200。それが最低。
いや、目標1500。ううん、2000!
「見えとんねん、アンタの直情一辺倒はァァァ!!!」
そこからは無尽の剣戟。不慣れな私が、それでも彼と対等に戦えるのはひとえにコレが理由だ。
ずっと見てきたから。
ずっとその猛威に晒されてきたから。故に知っているから。
コイツは……石実現は、アンタは!私に対して、絶対正面からぶつかってくると!!
(ならそのテンポさえ読み切れれば凌ぐのは容易!間隙を縫っての反撃だって──!!)
「それがどォしたァ!?!」
「!!」
でもそこは当然、認め難くも流石の石実。私が読んだのを更に読んで、的確にタイミングをずらしてきた。
互いの剣閃が、折り合わずにすれ違う。私の脇腹、Re:ALの肩口にそれぞれ咲くは紅蓮。
でも私だって同じだ。それがどうした?
「何度だって
「だ・か・らァ!!!それがどうしたっつってんだ、逐一破り捨てちまえば元の木阿弥だろうがッ!」
「相変わらず比喩も行動も一々蛮人やねん、成長せぇへんのか!?」
そういう所がずっと嫌やった!単純に怖い!!常に暴力を言動に醸す奴の近くなんか居たくなくなるに決まっとるやろ普通!
ああ、でもそうやって強がらないとやってられへん臆病者やもんなぁアンタ。強い自分やないと受け入れられへんって前言ってたもんな、その割には筆記成績でウチに全戦全敗のなっさけない戦歴晒しとったけどなぁ!?
「酷ぇ言い様だなオイ?!まぁ事実だからしょうがねぇけど」
「やったらとっとと諦めぇや不器用な生き方!!構ってちゃんとか時代遅れやねんこの令和12年にッ」
攻撃に口撃を交えて、加速。
「20年弱続けてきた生き方をハイソーデスカと切り替えられるかァ!!嫌な奴をわざわざ受け入れようとしやがって、被虐趣味なら家でやっとけマゾ!!!」
「マz……ッ!?殺す!!!!」
「やれよ莫迦野郎────!!」
加速。
加熱。
「「あああああ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!!」」
『凄絶な剣戟!もはや別ゲーと化したがしかし、これはKASSEN!紛れも無くKASSENで、そしてその最高峰の戦いである事に間違いは無いでしょう!!』
『趨勢はどちらに傾くか!?いろPが付いて行けなくなるのが先か、Re:ALが
Re:ALが均衡を破り、私が当て嵌めて押し返し、また破れ、押し返す。その応酬は不可視の嵐となって、空に無数の火花を散らしながら舞う様を描いた。
そう、舞だ。店長を繰り返すリズムの中で、私とRe:ALは舞う。リードする彼と、それを食い破り自分の物とする私。互いにそれを予定調和に織り込んで、その中に勝機を探していた。
『Re:ALの鎖が飛ぶ!いろPのワイヤーが絡め取る!!』
『奇しくも同じ二刀の連結武器です、技量の差がモロに出ますがどうかっ』
見つけろ。
『あーっとズレた!!互いに直撃!』
『でも欠損無し!大勢には影響しません!!』
コイツより先に。
『武器を弾き合って……殴り合いだーっ!!!』
私の隙が見つかるより先に!
Re:ALの隙を!!
「……ッ!!」
地を奔り、空を跳び、城中を駆け巡っての斬り合い。投げ合い。殴り合い。城の弾薬庫に摩擦熱で火が付いたのか、いつの間にやら爆発による大火が私達を取り囲んでいた、その最中。
私の拳に手応え。
「ぃ」
私は出し惜しみしてきた
「──まッ!!!」
発動する!
連打、連打、連打!目だ耳だ鼻だこめかみだ鳩尾だ顎だ脇腹だ!!!
『いろPだー!いろPが行ったぁ~!!!』
「いっけー!!」
「皆のぶんまでやっちまえ!」
「い・ろ・P!い・ろ・P!!」
私の怒り、その全てを叩き込む!何よりここで決めれなきゃ
「これはお兄ちゃんの分!これは雷さんと乃依さんの分ッ!」
「コ……が、は──ッ」
「そしてこれがかぐやの分!後は全部────」
「!!!」
「私の、分ッ────!!!」
そうして叩き込む16コンボ、最後の右ストレートがRe:ALの心窩に吸い込まれる。
炸裂。破砕。爆発。その炎の彼方に、アイツの姿は掻き消えた。
……やった。
そして。
(
ここで既に半分だけ誤算が生じていた。その事実に冷や汗がドッと溢れた。
半分の成功は、集中力の限界にコンボ完遂が間に合った事。無手の私に出来る最高火力の発揮自体は上手くいって、つまり先の状況における最善は尽くせたという事。
一方で半分の失敗は、集中力の限界によるイメージの破損、つまり石実レベルの動きを維持できなくなった事だ。だがこれは良い、今ので決め切れていたなら何も問題無かっただろう。
だが、問題になっている。理由は一つ。
(倒し切れなかった!!)
コンボの内数発を受け流された。HPを全損させるには足りてない、ならどうするか?再度集中してイメージを取り戻す?否、得物を取り戻しての
(武器!)
私のキーボードブレードは。背後に一つ、でも遠い!ならもう一つは、放り出されて伸びたままのワイヤーを辿ればすぐ見つかる筈だ。
……よし、幸運にもワイヤーの先は私の足元、そこを通ってたった今Re:ALを吹き飛ばした先に伸びてる!なら拾い上げてすぐに斬る事も……
……?
なんで触れてもないのに起動s「テメェの勝ちだ」
その瞬間だった。全てがひっくり返されたのは。
ワイヤーの巻取り速度が急加速。とぐろを巻いていたそれは引き絞られ、本来の主人である私を縛り上げる。
その勢いのまま引っ張られる先には──晴れ行く土煙の中で、追い詰められてた筈の壁際で、私のブレードを操作し構えるRe:ALの姿が。
(まず……!)
身をよじり、縛られながらも急所を守るべく構える両手。でもそれこそがRe:ALの狙いだったと気付くのは、1F遅れての事で。
切っ先が向かったの両手首。すれ違いざまに突き立てられたそれは貫通し、背後の壁へと縫い留めた。
磔だ。動きを封じられた……!!
「ッッッ、離れろ!」
咄嗟の判断で放った蹴りは、不幸中の幸いかクリーンヒット。Re:ALの真芯を捉え、10mほどノックバックさせる事に成功する……けど、所詮は時間稼ぎにさえならないだろう。
張力を失ったワイヤーの拘束からは既に脱せど、手首を縫い留めるブレードはビクともしない。藻掻けど足掻けど主人の言う事を聞いてくれないそれに、尚も私は抵抗を試みて────やがて、諦念の中にその身を横たえた。
「────ハ──ァ──……」
襲い掛かる倦怠感は、絶望による物か、それとも無理なイメージの投影による反動だろうか。疎ましくもどこか心地よいそれに夢現を彷徨い始めた私の鼓膜を、足音が叩く。
「……Re:AL」
「先に言っとく。勝ったとは思ってねェ」
自身の大太刀と短刀を拾い上げてそう嘯く彼の顔は、しかし言っている通りに敗北感に満ちていた。
「何、が?アンタの、完全勝利、でしょ」
「テメェに真正面から挑む事を本懐にしてた。でも小細工を使った。自分を曲げちまったんだよ」
「ブレードの逆利用……いつから考えてたの」
半ば遮るように問うた。結果こそ全て、それを否定する
「……武器を取り落とした時点で。打ち負けた時のサブプランとして、立ち位置を調整した」
「じゃあ、アンタの、読み勝ちじゃん。マグレならともかく、計算尽くなんでしょ。誇りなよ」
つまり私は、勢いと出力に任せた結果、本分である頭脳で敗北を喫したと。とんだお笑い草だ、自嘲の笑みさえ零れる。
でもその一方で、正面からの戦いで勝機を見出せなかった石実もまた打ちのめされてるんだろうな。全くお互い、我が事ながら、面倒くさい性分だ。
「言ってくれるぜホント。こうなるぐらいなら負けときゃ良かった」
そんな私の苦笑に釣られてか、同じく笑みを漏らすRe:ALは、太刀を一旦降ろし。
「──けど」
「けど?」
「そうまでしてでも勝利に飢えたのは、俺なんだよな」
また、構える。今度こそ私の可能性を断ち切る為に。
その切っ先の煌めきに、心に巣くっていた不可思議な安寧は消し飛んだ。敗北への覚悟とそれを拒む感情が鬩ぎ合い、顔が引き攣っていく。
「ッ……、く、ぅ──!」
「安心しろや、変に嬲ったりはしねぇ。一撃で終わらせっから」
迫る足音を前に心は揺れる。出来る事は尽くした、なら潔く散ろうと唆す覚悟。何も出来ずとも足掻き続けろ、認めるなと叫ぶ意地。どちらが私の本心なのか、酒寄彩葉なのかなんて分からないままタイムリミットは近付いてくる。Re:ALの足音をカウントダウンとながら。
そして止まる。
「じゃあな、
最期の時。目を瞑る事も叶わず、必殺の一撃が私の頭へと向けられ────
「────がぁ?!!」
消えた。Re:ALの姿が
「へ?」
「いやぁ~遅れた遅れた。っていうかすんごい事になってんね」
理解が追い付かず呆ける私の頭の上で、もう一度横薙ぎの風。金属音と共に過ぎ去っていったそれは、落ちたブレードと、解放された私の両手という形でその正体を現す。
いや、それ以前に声。視界のギリギリ外側で、陽気に笑うその音は。
「立てる?彩葉」
「かぐ、や?」
「うん!彩葉のかぐやだよー☆」
失われた筈の、私の半身。私のかぐや。
そんな彼女が目の前で笑ってた。埃だらけの傷だらけで、でも誰より明るく誰より強く。
分かんなくて、けどただただうれしくて。涙さえ溢れて、止まんない。
「ちょちょちょ!?どしたの、どこかやられたの?酷い事言われたのか、リアルめ~!!」
「違うっ……違う、から!」
飽くまでいつも通りなそのノリにまたも救われ、手を取って立ち上がる。こうなってしまってはもう、先刻までの覚悟なんて打ち捨てる他無いや。
だって。かぐやがいる。かぐやと一緒なら、私は。
「一緒にやろう、かぐや。最後まで!!」
「勿の論!絶対勝ぁーつ!!!」
どこまでだって行けるから。
そんな確信と共に、私は
鬼滅の遊郭編見ながら書きました