酒に狂った男   作:鶏肋

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毎日12時更新で頑張っていきたかったんですけど、もう普通に守れてないので諦めます
次に更新する時は多分17時頃で固定です


かぐや、咲き誇る!

「くぉら~リアルぅ~!!まさかさっきのでお寝んねってこたァあるめぇな~~?!」

 

その声は確かにRe:ALに届いていた。それでも立ち上がらなかったのは、彼の裡が疑問符で埋め尽くされていたから。

 

「……なんで」

「んむ。起きてて何より」

「なんで、生きてる?」

 

確かに斬り刻んだ筈だった。この手で。少なくともその方向に斬撃は飛ばした。

にもかかわらず、あのヤンチャで爛漫な金髪は元気にそこで飛び跳ねている。その事実がRe:ALには受け入れ難く、激しく理解に苦しんだ。

対する回答は。

 

「だって当たってなかったもん」

「「え」」

「土煙で見えなくなってたし、それで外したんじゃない?まぁ衝撃波で瓦礫の下敷きにはなっちゃったんだけどね」

 

そもそも被弾していなかったという開示。彩葉が目を向ければ、Re:ALは尚も信じられないといった風に目を見開いている。

 

だが彼女には思い当たる節があった。思い出せ、彼とかぐやの練習試合(SETSUNA)を。

いつぞやのそれが催された時点で、Re:ALとかぐやの間には隔絶した実力差があった。だが結果はお互い無傷のDRAW、時間切れによる決着で。

彼自身、試合後に「わざと舐めプして成長を促した」と嘯いてはいたが。同時に言っていた「気が引けた」という言葉、そちらがメインだったなら?

 

「アンタ、手加減したでしょ」

「……いや。本気……の、つもりだった」

 

彩葉は確信する。こいつ、かぐやに無自覚に手心加えてやがったと。

この局面になってなお、異性を攻撃する事を躊躇したのだと。

同時に、もしや自分との戦いでも手を抜いていやがったのかと。

 

「嘘じゃねぇ。本当なんだ。自分でも手前の甘さにマジでビックリしてる……あと彩葉(おまえ)相手はしっかり全力だったぞ。つっても信用無いかコレ」

「だろうね。あーあ、男に生まれたかったな」

「滅多なこと言うなよ。ンな事言ったら俺が女に生まれてた方が諸々丸く収まってただろうぜ」

「彩葉の男装はめっちゃアリだけどリアルの女装はちょっと……ん?次の企画閃いた!!」

「「ガチでやめろ!!」」

 

一見呑気に和気藹々としつつ、しかし立ち上がったRe:ALと間合いを図る彩葉達の間で空気は張りつめていく。その意図が切れた時が合図だと、三者分かった上で。

その中で口を開くのは、やはりかぐやだ。

 

「リアルってさぁ、どっちかというとフェミ?だよね」

「は?」

「なんか男がー女がー言ってるし酷い事も言うけど、結局めっちゃかぐや達のこと大事に扱うじゃん。もっと自分を大事にしたら良いのに」

 

あまりにも大胆なブッ込みに開いた口が塞がらない。Re:ALは言葉を咀嚼するのも難儀なようで、苦虫をかみつぶしながら豆鉄砲を食らった鳩の様相を晒していた。

一方で彩葉は得心。イシミソだの何だの言われていたし言ってきたが、ずっと抱いていた違和感に納得を得ていく。とはいえフェミというのも何だかこう……手心を加えて欲しいような……

 

「彩葉もそう!」

「私も!?」

「なに関係ないみたいな顔してるの、2人とも自分をおざなりにする所そっくりなんだよ?だから、さ!」

 

だがここで巻き込まれた。目当ての両者を渦中へと巻き込んだお姫様は、今が勝負の最中である事など忘れたかのように両の手を広げて宣う。

 

「そんなの忘れて精一杯楽しもうよ!この一瞬をパーティーみたいにっ!」

 

全てのしがらみを捨てて、飛べるくらいに身軽になって。

そうしてこの3人の思い出を、ずっとギュッと覚えていられるような眩しい日にしよう、と。

 

 

彩葉とRe:ALが噴出したのは同時だった。

 

「──ぷっ……あははははっ!何それ、ホント私達じゃ考えもしなかった事を簡単にっ」

「え~!?笑わないでよ、かぐやは本気で真剣のマジで……リアルもぉ!?」

「ワハハハハ!いや悪い、決して悪意とか嘲笑じゃねぇんだ!全部、今彩葉(いろ)が言った通りでな!」

 

折角高まった緊張感が解れる。だが2人に異論は無く、寧ろかぐやに向けるのは感謝だった。

 

「ああそうだ。俺ってば無闇にギラついてばっかで、折角の縁を台無しにするとこだった」

「私だってそうだよ。競い合えるライバルだなんて貴重な代物を、一時の恐怖や怒りなんかでドブに捨てる所だったなんて」

「へ???」

 

そうだ、()()()()んだ。折角の相手との出会いを、かぐやとの時間を、負の感情まみれで費やすなんて愚行に他ならない。

全ては享楽。心行くままに、ぶつかり合う事さえ楽しんでこそ────今の流れを踏まえて初めて、彼と彼女はそう思えたのだ。

 

「行くぞかぐや!彩葉(いろ)!今度こそ正真正銘の全力だ、偽りは無ぇッ!!!」

 

2対1、満身創痍の苦境。しかしRe:ALは嬉しさに笑って刀を抜いた。

 

「行こうかぐや!!二人で、石実(Re:AL)を超えよう!!」

 

集中力は戻れど帝のバフは尽き、それでも彩葉は楽しさに笑って剣を振った。

 

「上等ぉ!皆で勝ってハッピーエンドだぁ~!!」

 

皆、に帝の犠牲*1やRe:ALまでも丸ごと含め、かぐやは勝気に槌を掲げた。

 

 

『両陣営動いた!今度こそ泣いても笑っても最後、決着の時~~~!!』

「「「!!!」」」

 

実況が、皮切り。

かぐやが駆けた。兎が如く、跳ねてRe:ALへ一直線に。

Re:ALは応じた、短刀の投擲で以て。鎖によって変幻自在の軌道を描くそれは、水中を舞うウミヘビのように襲い掛かり。

 

「ぐぇー!」

『おおっと早速吹っ飛ばされた―!?』

 

直撃。目を×印にして弾き飛ばされる。

しかしその影を縫って駆け抜けるのは彩葉だ。瞬く間に距離を詰め、再びRe:ALとの一騎打ち。

 

「オイオイ酷ぇな!二人で超えに来んじゃねぇのか?!」

「悪いね、ミスったら置いてくって決めてんの!」

「冷てぇ女!新解釈だな!」

 

先ほどの展開をなぞるかのような互角の戦闘を繰り広げるが、大勢的には明らかに彩葉の劣勢だ。再度の集中により機動力こそ取り戻したといえど、火力バフを失った以上はジリ貧。なにせ一撃の威力を見込めないなら手数を重ねるしか無いのに、そこで競り合っていては埒が明かないのだから。

なんならRe:ALが繰り出す乱撃は、先ほどと比べて鬼気迫る重さを失った代わりに良くも悪くも軽く、そして速くなってる様にさえ思える。飽くまで彩葉視点の体感で、の話だが。

 

いずれにせよ1人では勝てない。

 

「へたれの優男に言われちゃお終いよ!!」

「テメッ」

「それにっ──!」

 

だが2人なら?

啖呵を切ったその瞬間、彩葉の背後でキラリ、ジェットが瞬いた。避けようとした時にはもう遅い。

ギョッとしたRe:ALの足を踏みつけ、さらに自分の足ごと地面に突き刺し、彩葉は伏せる。そして叫ぶ。

 

「かぐやは、ついて来れるからッ!」

「ちょっとそこ通るねーっ☆!!」

「ゴファ!?」

 

高速ライド化したハンマーのジェット噴射、それに乗っての突撃。彩葉の頭上を通り過ぎたその奇襲はものの見事にRe:ALの腹へとメリ込み、一挙に数十mの距離を吹き飛ばした。

 

「彩葉がミスってもかぐやは助けるよ、今みたいにっ」

「調子乗んな、また置いてくよ!?」

「大丈夫!だって()()()()()でしょ?」

 

恥ずかしげもなく相互理解を仄めかす相方に、彩葉は内心で快哉さえ叫びながら頷いて。

 

「かぐやの考える事ぐらい、分かってんだから!!」

 

最後の攻勢に出る。

Re:ALもまた同じ。二度に渡り黒鬼を全滅させた自身の最高記録コンボを繰り出すべく身を引き絞っていた。その確死の範疇へ、彼女達は果敢に突入する。

決着まで20秒と掛からない、と予感したのは誰だったか。それは今を戦う彼女達だったかも知れないし、彼だったかも知れないし、解説の乙事照か実況のオタ公だったかも分からない。

 

ただ、叫ぶ声が一つ。

スクリーンを見上げるその影は。

 

「行っけぇぇ彩葉ァァァッ!」

「ッ────!!!」

 

帝アキラ(酒寄朝日)

 

刹那、銅色の刃が煌めいた。

それを鋼色の刀が迎え撃った。

始まる。輝かしい鈍色の嵐の中に、2人の煌めきが乱れ()く。

1合、2合、3合、5、8、13、21、34────!

 

「砕け散れええええええッ!!!!!」

「砕けるもんかあああああ!!!!!」

 

これが最後とばかりの裂帛の気合と共に繰り広げられる剣戟に、周囲の地面が抉れて飛び交う。そんな地獄絵図の中で──Re:ALは驚愕していた。

 

(良くも悪くも理想化された動きだから、ってか!()()()()みてぇに……!)

 

件の143コンボは、このKASSENにおいてRe:ALの動きを以てして初めて繋がる技の最高数。即ち“理論値”と言って差し支えない。常人に真似できるものでは到底ないと言えるだろう。

 

だが酒寄彩葉だけは違う。その法外な頭脳によって石実の世界に入門した彼女なら、ただ同じように動きをイメージすれば、同様にコンボを再現可能なのだ。

ならば、タイミングさえ合わせれば、もしくは先んじて放てば、相手の同じコンボを相殺する事も可能。その理屈によって、彼女は今ライバルと互角以上に打ち合っていた。

だがその先にこそ、Re:ALは勝機の存在を確信していたのである。

 

(143は最高値、それ以上はどんな技でも繋がらねぇ!その切れ目が()()だッ)

 

彩葉ももう限界。一度流れが途切れればそこで集中も終わり、動きについて来れなくなる。その瞬間を()()()()自分の勝ちだと、冷静に分析し。

 

55合。

 

待つ。

 

89合。

 

待つ。

 

142合。

 

最後。

 

……来た!

 

(ここだッ)

「!」

 

143撃目、袈裟斬りを打ち合って両者無傷に終わったその瞬間。Re:ALが選んだのは()()()()だった。

何故なら、相手取っているのは2人。目の前の彩葉が後隙と集中途絶で動けなくとも、虎視眈々とコンボの(終わり)を窺っていたかぐやの存在を、彼は一瞬たりとも忘れていなかったが故に。

飛んでくるだろう槌、もしくは鰻ミサイルの一撃さえ守って、カウンターでかぐやを仕留める。返す刃で動けない彩葉にトドメ。想定したその流れを完遂するべく、自身の後隙が終わったその瞬間にRe:ALはその両手をガード姿勢にした。

 

正確には、()()()()()()

 

爆裂。

 

目の前で起きたそれが、直上から叩き落されたそれが、両腕を消し飛ばす。

見上げた直上。槌を振り切って、不敵に笑うかぐやの姿。

 

(剣戟範囲を突っ切って来てたのか!?)

 

でないと絶対に間に合わない。自分の後隙が解けてガードに移行するより早く攻撃を繋ぐなら、玉砕覚悟でそうしてないと説明がつかない。

それほどまでに彩葉を信頼して、彩葉なら絶対に全攻撃を相殺すると、そう信じたが故の凶行!

 

「そぉ~、れェ!!」

 

思考が追い付かないRe:ALの総身を、続く横振りが打ち付ける。続いて柄による刺突、仰け反った所へ蹴りの追い討ち、その勢いを利用して今度こそ槌の一撃。

いつぞやRe:AL当人から教え込まれたように“コンパクトに纏めて”“小技も交えた”連撃は、さながら意趣返しといった所だろうか?

 

「オラッ、そら、オルァ!!!……あ」

「こン、のッ」

「やべーっ!彩葉ー!!」

「かぐガキがあああゲファッ!?!」

「させないっ……!」

 

それも繋がって10コンボ。硬直したかぐやをRe:ALが牙を剥こうとしたその時、次に繋げたのは彩葉の一閃だった。既に集中状態の維持も再突入も出来なくとも、使い慣れたマニュアルモードに切り替えての突貫だ。

間髪入れずにRe:ALをワイヤーで縛り上げて宙に放り投げれば、彼女はかぐやと頷き合い。

 

「行くよ!!」

「ダメ押しッ!!」

 

落ちてきた相手に、その頭蓋と土手っ腹に、渾身の一撃を打ち込んだ。

……だが、終わらない。

 

斬。

打。

拳。

蹴。

 

2人で互いの隙を埋め合う、一人では絶対に辿り着けない奇跡的なコンボを此処に成立させ、Re:ALへとたたき込む。

最後はかぐや。耐久値が尽き、彩葉によって両断されたRe:ALの上半身目掛けて。

 

「これでぇ~!」

「──ハハッ。こりゃ、」

「勝ち確ゥーーーッ!!!!」

「天晴だよテメェら……!」

 

さながら、溜めに溜めた解放。我慢を超えた自由の味。

全力全開の大振りの究極技(ウルト)が炸裂し、今際の一言さえ掻き消す大爆発。その中に、とうとう親玉のHPを全損させた。

 

『逆転ー!!決まった、決めてくれた~!!!正規の竹取合戦、勝者はかぐや&いろPチーム──ッ!!!』

 

浮かび上がるWINの三文字、それらがかぐや達の頭上に舞う。しかし彼女ら当人はそれどころではなく、疲労と摩耗で思わず荒い息を吐くばかり。歓声にこたえる余裕も無い彼女達だが、それ讃えこそすれ、責められる者など要る筈も無い。

 

だがそれでもかぐやは立った。彩葉の右手を取って。

彩葉は流石に立てなかった。だが立てないなりに、それでも拳を、残る総ての力で掲げたのである。

 

 

 

 

「あー。おめでとう」

「ぅゎびっくりした。そのナリでまだ生きてんの」

「俺自身もビックリだわ。親玉(ラスボス)が散り際に何か言い残す系の演出仕様なのかもな」

 

そんな彩葉達に声を掛けるのは、クレーター中心で散らばる(ポリゴン)片の一つ。言うまでも無くRe:AL、その生首。

 

「なんだろ。サッカーボールにちょうど良さそう」

「オイやめろ。いやプライベートならともかく今この場ではやめろ。人目がある」

「えぇーっ、もっとリアルと遊びたい〜。リアルで遊びたい〜」

「ファン数に直結するよ?」

「やめとくね」

 

スンッ、と言う効果音でもついてきそうな拗ね顔でRe:ALを抱き抱えるかぐやに彩葉は呆れるやら。やがてそんな彼女達にもお迎えが来たようで、転送の光が包み込んでいく。

 

「見たか、リアルッ」

「あぁ見たさ。見せつけられたよ」

「そうじゃなくて、最後のっ」

「ん?」

 

要領を得ないRe:ALを彩葉に預け、かぐやが指で模ったのは“16”の形。その真意を彼女は告げた。

 

「言ったでしょ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()って!」

「いや160も繋げれてないでしょ、私達」

「チッチッチー。他ならない彩葉自身がまずめっちゃ稼いでたじゃん?」

「……あ、もしかして合算!?」

 

かぐやが言いたいのは、要はこういう事だ。

最初に彩葉とRe:ALが打ち合った143コンボ。次いで、かぐやが繋いだ10コンボ。続いて割って入った彩葉と共に、互い違いに放った15コンボ。

足して────

 

「宣言達成、168(いろは)コンボってね!!!」

「ちょっ!?何でよりによってその数字になんの、恥ずいって!!」

「ハッ、この期に及んでンな所にこだわるかよ。かぐガキめ」

「かぐやはこだわりの匠なのだ〜☆」

 

ラスト16秒で達成したそれが余程誇らしいのか、ランランと光に散りながら踊り出すかぐや。先んじて転送されていった彼女を見送りつつ、今度は彩葉が懐のライバルへと言い残す番。

 

「石実」

「……?」

「ありがと」

「そうかい。此方こそ、な」

 

その感謝は、これまでの色んな恩や貸し借りも含めた上での、今回のぶつかり合いについての事。積もりに積もった思いの丈を、その好悪に関わらず全てぶつけた事で、彼女の内心は晴れやか極まっていたから。そうなれたのは、偏に彼が挑んできてくれたからこそだ。

けれどそんな感謝も素直に受け取ってはくれない。それを分かった上で、本命の言葉を彼女の口は紡ぐ。

 

「楽しかった。()()()ろっ」

「!!!」

 

返答は求めない。異論を返せないタイミングを見計らっての一方的な宣言。現実の名で呼んだその意図とは、KASSENに限らず、彼との衝突をもう恐れはしないという事。

その意図に瞠目したRe:ALへ、してやったりと舌を出して、彼と彼女は今度こそフィールドから去ったのだった。

 

 

 

 

 

「ゲンちゃん、まず眼科ね」

「ウス」

「それが終わったら説明ね」

「ッス」

 

数秒後。

界隈を戦慄させたRe:ALの本体こと石実現が、想い人に正座させられていた事を知る者はいない。

*1
帝「死んでねぇよ!」

雷「ゲーム的には死んでるだろう」

乃依「親玉の攻撃による乙は残機強制0だからねぇ。頑張れかぐや~、気張っていろP~」

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