酒に狂った男 作:鶏肋
今朝の作者「よう思い出したら、原作時点でヤチヨが記憶いじくれるのほぼ確定しとるやん。原作準拠ヤッター(楽観思考停止)」
本記録は2030/8中旬某日、立川市内のカフェにおいて急遽設けられた私人による脱法裁判の推移を記す物である。
【冒頭弁論】発言者:酒寄彩葉 擬似裁判長
「主文は後回しにします」
「異議あり」
「認めません」
「そりゃねーだろ弁護士の娘ェ……」
出た死の判決文に、被告:石実現は反発。それを受け、彩葉裁判長はクソデカ溜息を放った。
なお、被告は現在椅子に縛り付けられている。膂力的に無意味な拘束ではあるが、その点については考えないものとする。
「分かりました。では検察側から陳述を行って下さい」
【求刑】発言者:綾紬芦花 検察官役
「はい。検察は石実被告に対し、悪質な交際詐欺を働いた事によるえーと……」
「246条の詐欺罪ですね」*1
「そうです。刑法246条の詐欺罪に抵触したものと判断し、“真実への終生懲役刑”を……」
「死刑を求刑します」
「諌山さん???」
「“死刑”を求刑します」
だから気に入っ検察官を遮るように被害者の父が発声。そのまま被害者家族の陳情へ。
【陳情】発言者・諌山夫妻
「俺は……現君を認めていた。見所のある奴だと信じてきた。実の事を言えば、今も自分の目を疑ってはいない」
「……おやっさん」
「何か理由があるのだろう。彼にも言い分はあるんだろう──だがそれとコレとで話は別だ。娘を誑かすだけ誑かして放り出すつもりだったというのなら、俺は容赦しない。絶対に許さない……!」
対し被告は瞑目した後、沈黙する。それは黙秘というより言葉選びに苦しむ形で。
「……っ」
「私達が聞きたいのは動機と経緯よ」
続いて、
「あなたを見てきて10余年。現君、私達は貴方をもう1人の息子としてすら見ていたわ……けれど今になって、貴方が何を考えていたのか分からないの」
ある種、纏う空気は父さんよりも深刻で重い。殺気に近い。怖。
「どんな想いで娘のそばにいたの?好意は本物なの?それとも全部嘘だったの?嘘だったとして、目的は?」
「っ、夫人……」
「もしそれが、貴方へ娘が捧げた“覚悟”にそぐう物でなかったのなら……私の意思・意向は、夫のそれと等しくなるでしょう」
有無を言わさない姿勢に、さしもの被告といえど息を呑む──というか現兄ちゃんは昔から母さんに対して弱いというか割と素直だったからなぁ。だいぶキツそう。
閑話休題。更に続いて、もう1人の姉貴こと諌山亜実。
「最悪です。姉ちゃんを唆して誘って拐かして、その挙句がコレですか。サイッテー。男の屑。カス。女の敵。汚いさすが現兄さん汚い」
「なして棒読み?」
「急に空気軽くなったね……」
「これはもう責任取って別れるしかありません。そしてこんな女の敵を世に放り出す訳にもいかないので、私達姉妹で監督します。家に閉じ込めて封じ込めます。皆のペットにします!」
「 亜 実 ? 」
「ゴメンチャイ」
「姉貴ェ……」
あーもう完全に我欲全開だよ。チャンスだとでも思ったのかな、これを機に現兄さんから人権を剥奪して真実
【直接被害者の告発】発言者:諌山真実 原告
いよいよ本題というか何というか、1番の被害者である真実姉の話が始まった。発奮する家族とは裏腹にどこかおずおずと前に出て、姉貴は……被告と視線を交わし、口を開く。
「……私、怒ってる訳じゃないの」
「真実!お前が最も怒る権利があるんだぞっ」
「黙っててお父さん……いや、怒るより先に、ずっと困惑してて。今目の前の現実を理解できなくて」
「…………」
「ねぇゲンちゃん。私達の関係って、何だったの?」
一つ一つ確かめるように紡いだ言葉は、仮初の法廷に静寂を齎した。
「通じ合ってると思ってた。想い合えてるって疑わなかった……これって、私だけだったのかな」
決して責める意図は無く、飽くまで淡々と。ただ自分達を取り巻く現状を確認するように。
それは恐らく、姉貴の中に現兄ちゃんへの信頼が残ってるから。いや、残ってるというより“揺らいでない”と言った方が正しいか。真実姉は彼からの好意を、想いを、今になっても確信している。
だからこその疑念を受けて、現兄ちゃんは如何なる応答を返すんだろうか。
「……分かんねぇよ」
はたして、そこに答えは無く。
「分かんねぇから、こうなってんだろうが」
投げやりかと言われれば、否。
彼なりに誠実に、正直に、嘘をつかなかった結果がそれだと。一瞬も真実姉から逸さなかった瞳が、それを物語っていた。
それを皮切りに、とうとう被告側の弁解へとフェーズが遷移していった。
【被告側答弁】発言者:かぐや 弁護士役 および 石実現 被告
「とりあえずリアルが謝ったら?」
「何が悪かったのか分からん内に謝っても逆に失礼だろ」
なんかもう全部を放り投げるような提案だった。それを跳ね除けた現兄さんの選択は正解だったのか否だったのか。
「でもこの状況だよ?私だってリアルが悪いって分かっちゃうよ」
「いや俺だってそうなんだろうなって思ってるし、謝って済むならそうしたいぞ?けど何も分からんまま頭下げたって原因解決にはならねぇよ」
「けどまず感情の落とし所をさー」
「被告人および弁護人……えーと、とりあえず何が分からないのか言ってみたら?」
「だってさ」
「だな」
彩葉裁判長からの助言を以て、ようやく前進。被告の主張が始まる。
「まず俺の認識から言えば、真実と付き合ってるつもりは全く無かった。彼女との仲が以前よりも深まっている自覚はあったしその事を嬉しく思っていたが、交際関係だとはつゆほども────」
「異議あり!」
始まった瞬間に終わった。綾紬検察官からの横槍だった。
「こちらをご覧ください。1年前の夏休み、石実と真実が行ったショッピングデートの様子を写した写真です!こんな仲睦まじい様子を曝け出しておいて“恋人じゃなかった”は無理がありますっ」
「「!?!?」」
彼女が掲げたのは、距離感激近で街中を、モールの中を、そしてクレープ店を行く2人の姿を捉えた画像。不味い、なんだ姉貴のあの甘い顔?!現兄さんも見た事ないレベルで優しい顔しとる!!砂糖吐きそうだッ!!!
「ろろろ芦花ぁ!?いつの間にこんなの撮ってんのー!!」
「おまっ、監視してたのは知ってたけど盗撮はダメだろッ!」
「うん、だから表に出すつもりは毛頭無かったよ?大事にコレクションとしてしまっとくつもりだった……けど石実が往生際悪く足掻くんなら話は別!!!」
「アババババッババ」
「亜実ー!しっかりしろーー!!」
あ、巻き添えで亜実姉が泡吹いてる。もうダメかも分からんね。
「うーん、これは今思えば地球人の常識的には“
「オイ被告を見捨ててんじゃねぇよ弁護人」
「静粛に、静粛に!!」
かぐや弁護人がいよいよ放り投げたところで、場を収める裁判長の木槌*2。彼女がいなかったらどうなっていたかは想像に難くない。
そんな彼女に、空気が落ち着いた頃合いを見計らって、続きを促された現兄さんは再び口を開いた。
「……まぁ、俺としてもその連れ合いで高揚しなかったっつったら流石に嘘だ。めちゃくちゃ楽しかった。でもそれだけだ、異性同士とはいえ友達間でやらなくもないだろ」
「異議ありッ!!」
「お前裁判長の立場どうした」
その彼女まで中立を投げ捨てちゃった。あーもうメチャクチャだよ。
「ご覧下さい、この動画は2週間前の8/3、私達4人が現と一緒に海に行った時の物なのですが……なんと!真実が物陰に現を引き込んで、毛布の下で密着し合ってたんです!!」
「ホガァーーーッ!!!」
「彩葉やめてー!!流石に恥ずかしぃぃいいい!!!」
「
「あなた落ち着いて!私が学生時代に同じことをしたじゃないですか、あと亜実も心停止しないの!!」
「お母さん?え、お母さんも??」
うわあああ!!エッチだ!エッチ過ぎる!!何やってんの真実姉、そしてそれを抵抗なく受け入れといて“交際してない”は無いよ現兄さん!もう“現
「……一線は超えてない。あの下で何もしてない。本当だ、信じてくれ」
「無理あるって!!!これもう現義兄さん以外に真実姉をお嫁にやれないっつーか、真実姉が他所に行けないよ!?」
「ええぃさりげなく義兄呼びすんな、満更でもねぇけど今はやめろッ」
「店長、これって……」
「ああ……石実君の負けだ」
父さんは殺気を通り越して殺意を仄めかし、母さんはそれを抑えながら黒歴史を暴露し、亜実姉の心臓は止まった。そして真実姉本人は恥辱に悶えてるし……綾紬さんと、裁判長の座を放棄した酒寄さんと、弁護人の立ち位置を投げ捨てたかぐやさんがそれを介抱してるカオスな状況である。いやあの、真実姉を追い詰めてるのは貴女達ですが???
「石実」
「現」
「リアル」
「「「観念して婿に入れ」」」
「いや入れるなら入りてぇよ」
「ゲンちゃんまで何言ってんのー!?!!?」
ここで何度目かも分からない爆弾の炸裂に、僕はもう意識を手放す事にした。理解にも筆舌にも尽くし難くてちょっと追い付かない。ので、ここからは機械的に発揮し続けた内容である事に留意願いたい。
「ん?リアルは真実と一緒になりたいの?」
「あ?俺は真実と一つになれねぇなら孤独死するつもりだが?」
「ヒウ///」
「双方惚けんなー。じゃあなんで交際してないなんて嘘つくの、誰の得にもならないでしょ」
「いや、
「「「「????」」」」
かぐやさんの問い、酒寄さんの問いにそれぞれ臆面も無く現兄さんは答えた。そこに絶対の自信と確信を持っているかのように。
対して疑惑を深めた様子の綾紬さんが、次の証拠を出す。
「……大声で告白してたじゃん。私も聞いてたよ」
「あっ……うん……忘れる訳無い、あんなに嬉しかった事」
「俺は直接聞いた訳じゃないが、真実が大喜びではしゃいでたのを覚えてるぞ」
「あの日の真実、本当に人生最高潮って感じだったわねぇ」
真実姉自身の証言と、それを保証する父さんと母さんの意見。それに裏付けられた綾紬さんの話に、現兄さんもまた頷いた。
「ああ。あの日の言葉に嘘偽りは無ぇ。これまでも、これから先も」
「じゃあ……尚更なんで?」
いよいよもって理解から遠ざかる事態。納得できるロジックの在処を探して右往左往する全員を前に──場をひっくり返す一言を、現兄さんが放った。
「返事を貰ってないからだ」
全ての前提条件が覆された瞬間だった。
「俺は“好き”と打ち明けた。告白した。でも真実からは言われた事が無い」
「……」
「雰囲気や対応から察しをつけることも不可能じゃなかったが、今後の人生に関わることだ。確かな言葉も受け取らない内に決めるのは早計が過ぎる」
「…………」
「だから真実が同じ言葉を返してくれるまでは、真実は俺の彼女じゃねぇ。同様に、俺は真実の彼氏にはなれん」
……えぇ。
ちょっと待ってよ。半年だよ?半年強、8ヶ月が経ってんだよ?現兄さんが勇気出して告白してくれてから、8ヶ月だよ??
「真実」
「」
「正座」
「」
「え、なんで?責められてんの俺だろ?」
「あ、その裁判は無罪で終わったから。もう別件だから」
「そうなの?」
「そうらしいね」
被告と原告が逆転する。今となっては父さんと母さんも呆れ顔、亜実姉に至っては復活を経て怒髪天を突くと言った具合だった。然もありなん、断腸の念で譲った想い人をそんな扱いされちゃあね。
斯くいう僕も……割と、おこだ。
「「姉さん、説明して」」
「……私……」
姉弟で迫る。姉貴の目は
「私……ゲンちゃんが私を好きだって分かって、嬉しく、って」
やがて、虚になった瞳が、惑うままの現兄さんを捉え。
「自分の気持ち、当然だって、そう思い込んで……」
それだけで全部分かった。姉さんにとって、姉さんが現兄さんを好きな事なんて、あまりにも
当たり前の事は、皆知ってる。実際、僕たち家族も、酒寄さんと綾紬さんも分かってた。かぐやさんは何も分かってなさそうな顔で首を傾げてるので除外。
だからこそ、現兄さんも、それを分かってくれてるって、勘違いしちゃって。
「だから、私……!」
自覚すればもう早い。姉貴の目も唇も体全体も、自責の念に打ち震え出し……
「キュウ」
倒れた。
……えっ、倒れたァ!?
「「「「「真実ーーーーー?!!??」」」」」
「逃げるなー!責任から逃げるなー!!」
「亜実姉落ち着いて!流石に気絶者を責め続けるのはアウトッ」
「店長さん、すみません救急車呼びます!!」
「バッキャロ俺が背負って病院行く方が早ぇわ!!」
「救急車乗せるだけで対応違うんだよ分かれよイシミソっ」
「あ、ダイジョブ。今触ったけど、多分真実の思念は無事だよー。キャパオーバーで気絶しただけみたい」
「かぐやはかぐやで何で分かんの」
「あー、うん。とりあえずベッド貸すので休ませてあげてくださいね」
「「「ホントお世話になります!!!」」」
被告の失神により、本日中の解決は断念。またの日に延期となって、この仮設裁判はお開きと相なったのだった。
いやぁ……内の愚姉がすみません。ホント。
「って事があって以来、真実が会ってくれねぇんですよ」
「アッハハハハ!!全員かわいー!!!」
「乃依」
「アイテッ」
後日。真実ミウム欠乏症に見舞われた俺は、縋る思いで仇敵*3黒鬼に縋った。
yachi8000?「貴方達ならダイジョブ!」と無責任キメ込みやがって頼りにならん、いや実際責任無ぇけど。
FUSHI?「いや……うん……とりあえずそっとしといてやれ。好き合ってるのは間違い無いんだから」と静観を促してくれたけど納得できねぇ、というかこのままだと俺の方が
という訳で、消去法がこれ。目の前で愉快そうに笑う乃依、それを諌める雷さん、その隣で頭を抱える帝こと酒寄朝日に頼っているというのが事の運び。
「不幸にすんな、とは言ったが……まみちゃん側がそうなっちゃったかぁ〜」
「いやアイツに落ち度は無いだろ。俺が一方的に告って勝手に返事を待ってただけの話なのに、なんでアイツが責められる方向に話が進んでんのか訳分からん」
「いやいや。好きなのは分かるし、まみまみちゃんが尽くしたくなる良い子だってのも分かるけど、甘やかしちゃダメだって。“良い男”と“都合の良い男”は違うんだよ?」
「は?
「ダメだこりゃ」
「重症だな……」
俺が真実を好きなのは俺の勝手。返事を待ってるのも俺の勝手。なのにそれがアイツを追い詰めてるんじゃ、それ自体が俺にとって派手に罰というか受け入れ難い苦境でしかねぇんだが?どうすりゃ良いのか見当もつかねぇよ、何が悪かったんだよマジで。
「実はな、ついさっきも彩葉からおんなじ事で相談されてんだよ。お前とまみちゃんの仲を取り持ちたいって」
「……!」
「そこでだ。幸か不幸か、ヤチヨちゃんとかぐやちゃん達のコラボライブも迫っている今、俺達から
ここで渡りに船というべきか、帝アキラから差し伸べられる手。出来れば取りたかないが、真実の平穏に関係するってんなら俺に択は無い。
「一肌脱いでやんだ。お前も気張りやがれ」
「……命令すんな。言われるまで無ぇよ……!」
図に乗る天狗の翼は捨てた。鬼と手を組み、その先は如何なるや。
真実(+その他)が現を恋人と称する事はあっても、現視点で真実を恋人と称した事は一度もありません
今回の為にそこは徹底してました