酒に狂った男   作:鶏肋

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期間を空けてしまい誠に申し訳ありません
筆者に代わり善庵くんが腹を切ります


呉越の鬼鴉

ツクヨミの夜は豪華絢爛だ。現実で叶わない夢をここで花開かせるみたいに、人はここで自分の望みを露にする。

そんな中を3人、深刻な表情で歩いてたって何か変わる訳もない。

 

「ま、待って。どこ行くの」

「知~らないっ☆」

「……」

 

訂正、かぐやちゃんだけは変わらない笑顔を咲かせてるから2人だ。私は困惑、芦花は無言。特に後者は切れ長の瞳を一層鋭く尖らせて、とてもじゃないけど話を聞いてくれる雰囲気じゃない。ちなみにかぐやちゃんは何故かいつもとは別のスキンで変装中。

そんな彼女達に、私は捕まった宇宙人みたく両手を取られて引き摺られているのが現状。一体全体なにが目的なのか。

 

「いや、言ったじゃん?リアルへ直に聞きに行くってさ」

「そんな……!ちょっと待って、まだ心の準備も何もっ」

()()()()()()の?」

「……!」

 

ようやく口を開いてくれた芦花。彼女の口から出てきた一言に、私のあらゆる意見は封殺されてしまう。

 

「時間切れだよ、真実。悪いけどもう肩を持ってはあげられない」

「ごめん……」

石実(Re:AL)に言って。私に言っても意味無いから」

「ハイハイストップ~!芦花ってばご機嫌斜め過ぎ、そんな怒る事でも無くない?」

「──そうだね。ちょっと、私が許せなかっただけ」

 

違う。芦花の言ってる事は尤もで、だからこそ私は反論の余地は無く受け止めてるんだ。咀嚼に必死で、受け入れられてるとは言えないけれど。

私はゲンちゃんを待たせ過ぎた。ずっと放って置いた。そのツケを払わされるだけの事で、被害者面なんてして良い筈が無い。

 

でも、それにしたってなんでツクヨミなんだろう?ゲンちゃんなら一言呼べば私の家まで10秒くらいで来れる筈。いや私の方が出向くのが道理だけど、それでも30分も掛からない。わざわざログインする必要なんて無いのに。

 

「到着~!」

 

そうしてる内にかぐやちゃんが叫んだのは、憧れたるBlack ony-Xの居城前の広場にてのこと。例え何のイベントが無くとも、平日だろうと休日だろうとそこにはファンが日々集っている。今日も今日とてそれは変わり無く。

 

(稀にゲリラライブが開かれたりするんだっけ……)

 

もし今催されるとするなら、私たちが立つのは正しくべスポジど真ん中といったところだろう。もちろん碌に楽しめる精神状態ではないけれど……

 

──なんて思ってた、その時。

 

「子兎共!!!」

「へ?」

 

気持ちと共に俯いていた視線が跳ね上げられる。見上げた天守、その前にそびえる舞台に……帝、様!?

 

「オイオイ、しけたツラしてんな。折角の“前夜”だぜ?」

「嘘……?!」

「え、何。こんな予定発表されてないよな?」

「ゲリラライブぅ?!」

「明日はこの帝の妹、その折角の晴れ舞台なんだ。それでも気分上げてけないってんなら──ッ」

 

一世を風靡する彼が指を鳴らせば、噴き上がる桜吹雪と共に雷様・乃依様まで登場。その光景に私も、そして周囲の同志(ファン)達もようやく事態を把握した。

 

「俺達が無理にでもブチ上げてやんよ────!!!」

 

この日、この時、この場所で。Black ony-Xのライブが始まるのだと。

沸き立つ歓声は怒号にも近く、瞬く間に伝播して広場に人を溢れさせる。私はその波に揉まれながら、ただただ惑うのみだ。

 

(待って待って無理無理無理!こんな状況じゃ素直に喜べないよっ!!)

 

状況から鑑みて、芦花とかぐやちゃんはコレを予期してた?でもじゃあなんで私をここに?まず解決すべきはゲンちゃんとの問題だって、そうに決まってるのに……

 

……なんて考えてたら。

 

「──が!このままじゃいつもの単独ライブと同じ、“変わり映え”が欲しくはないか?」

\\\欲しい〜〜〜!!!///

「欲は人の華。結構な事だ」

「ふふっ、でも言質取っちゃった〜」

「だなぁ?後悔しても知らねえぞ──来いッ!」

 

刹那、一閃。意味深な御言葉と共に御三方が指を鳴らしたその瞬間、天から煌めいた流星が彼等のいるステージへと着弾した。

舞い散る土煙、起こるどよめき。一拍遅れて抜刀した帝様が飛び退く形で出てくる。

何が起こったのか。誰が“来た”のか。ううん、私は薄々勘付いていた。

 

ヤチヨカップのコラボライブ。その前夜祭の盛り上げ役として、1位の彩葉達の為に2位の帝様達が出張るなら。

あと動けるのは……3位の、彼だって。

 

「呼ばれて飛び出て何とやら、ってなァ」

 

高い声が上がる。でも今度は歓声じゃなくて悲鳴に近い。

一方で私は無言。何も、二の句も告げずに、土煙を吹き飛ばしてその姿が現れるのを見上げるのみ。

 

「後悔しても知らない?無責任な事言ってやんなよ帝さん」

「……その心は?オイRe:ALッ

「俺ァ手前の“天敵”だろうが。身を案じてくれるファンの気持ちを無碍にしてんじゃねぇぜ!」

 

大太刀を盛大に振り回しながら推参したゲンちゃんは、それはもうしっかり悪役面。生来からの吊り目をこれでもかと引き絞って邪悪さをアピールし、それを真に受けたファン達に困惑と警戒を促してくる。私はゲンちゃんをよく知るから疑う事は無いけれど、そうでない人達からすれば、こんな乱暴な介入をされれば無許可の乱入を疑うのも当然か。

そんな皆さんの懸念に応えるように、ゲンちゃんと帝様が双方構えた。高まる緊張、すわ激突か──と思われた矢先。

 

「ようこそRe:AL〜っ❤︎」

「ぐえっ」

 

トテテテ、とそれはもう愛らしい効果音を引き連れて土煙から飛び出してきた無傷の乃依様によって、それは破られたのだった。

 

背中に飛びかかられたゲンちゃんは、さして抵抗する素振りも見せずにダウン・のしかかられる。一転して間の抜けた光景に、観客達は唖然。

次に帝様が構えを解き、更に続いて現れた雷様が差し伸べたのは手。それをゲンちゃんは……苦笑と共に取り、立ち上がる。

ここまで見せられれば説明は不要だろう。けれど改めて、声高に帝様とゲンちゃんは叫んだ。

 

「つー訳で……スペシャルゲストのRe:ALだ!今夜はコイツと一緒に、明日見る夢まで盛り上げていくぜ!!

「甚だ遺憾だがそういうこったな。せいぜい悪夢に酔わせてやらァ兎肉共が!!!」

「ファッ!帝様があの蛮人と!?」

「Re:ALって筋金入りの黒鬼アンチじゃなかったか?!動画見たけど黒鬼の話題になった瞬間マジギレしてたぞ」

「でも乃依ちゃんと仲良さそう!」

「怨……」

「雷様に認められても私は認めないからな!」

「後方何様ヅラで草」

 

「え……えぇ〜〜……?」

「ンムフフフ。びっくりしたでしょー」

 

なるほど、理解はできた……だから芦花達はここに私を連れてきたんだ、ゲンちゃんがから兄とコラボするって知ってたから。えぇそらもうビックリですよかぐやさん、今も事実を頭が把握しきれなくてオーバーヒート寸前だもん。

そして、納得も。

 

「……真実」

「うん。分かってる」

 

これを見届けた先に、かぐやちゃんが言ってた、ゲンちゃんから私へ送られる“答え”がある。きっとそういう事だから。

じゃあもう覚悟を決めよう。腰を据えて沙汰を待とう。例えどんな事になろうとも、彼の思いを受け止めよう。

そう心に誓って、私は再びステージを見上げた。

 

「許してねぇかんな日和見鴉がッ、こんなんじゃ親の育ちも知れるっての!」

「人でなしがデカい口叩くな、あっそうか(ヒトデナシ)だもんなぁ?!お後がよろしい事で!」

「「ブッ(コ□)す!!」」

 

……ねぇー!これ大丈夫かなぁ?!ちょっと目を離した隙に推しと想い人がライン越え発言と暴力かまし合ってんだけど大丈夫かなぁ!?!

 

 


 

 

「しかし、まさかお前とコラボする日が来るとは。初対面の時からは考えもつかないな」

「よしてくださいよ雷さん。アレは俺にとっても割とかなり死ぬほど黒歴史なんですから」

 

作戦……と呼ぶのもアレだが、目論見としちゃ以下の通りになる。

 

ライブの名目は前夜祭。明日に控える彩葉・ヤチヨ・かぐやのコラボライブの前座としてツクヨミを盛り上げる。まぁ名目も何も実際主目的だし、俺がその一助となれるなら全力を尽くさない理由も無ぇが、()()()の主旨はそういう事。

 

「アレからRe:ALってば俺の言いなりだもんね〜?うりうり〜」

「乃依み。お前の過激ファンからの殺意が俺に向くからやめろ」

 

という訳で黒鬼との仲良しこよしと洒落込んでいる訳だが……おうおう中々な反響。滝のように流れてくスパチャ含めた極彩色の濁流(コメント)に引きつつ、雷さんからの弄りと乃依からのツンツン攻撃を受け流していく。俺と駒沢兄弟が絡み合うのがそんなに気に入らんか──あ?「生意気弟ポジktkr」「リア×乃依!?新解釈だっ」?なんかこってりとしたオタク共に刺さっちまった感じ?

 

「何ともいい気味じゃんかよ。どれ、俺様にも一つ」

「あ?気易く触んな」

 

なんてやってたら、乃依に倣って弄ろうとしてきた手。それを跳ね除ければ、帝はそれはもう分かり易く口角を引き攣らせた。

 

「……素直じゃないなホント。年上からのイジリは受け入れるモンだぜ」

「実にイジメっ子の理論で感服すんね。だが陰キャ相手ならまだしもこちとら自認DQNだぞ、手ェ出す空いても選べねぇんじゃリーダーの格も知れるな」

「あぁ?お前今黒鬼(なかま)も巻き込んで貶したか?」

「安心しろよ、俺がバカにすんのは金輪際テメェだけだっての」

 

意図して醸す剣呑な空気は、果たして演技か素か。どっちでも良いしどうでも良い、実際俺としても100%嘘のつもりは無かった。

俺はどうにも帝アキラが気に入らないし、それを直そうとも思わない。帝アキラも同様、俺に遠慮や配慮をするつもりは無い。ある種気を許し合っているとも言えそうな、そんな張りつめた空気感を露にするだけで良い。

 

「ンだよ、そもそも年上だから何だってンだ?俺に開幕1Fで殺されたプロゲーマーの帝サマ!」

「テッメ……上等だ青二才!」

 

舐めた口を利かされ続け、堪忍も限界といった体で抜刀する帝。対し俺も大太刀を再び構えれば、眼下の衆目──その中にとっくの昔に見つけていた想い人含め──はまたもどよめきに揺れる。

 

 

「そもそもお前、ウチの妹に粘着してたの未だに許してねぇかんなこの日和見鴉がッ!こんなんじゃ親の育ちも知れるっての!!」

「はァ〜〜!?そんな大切な妹に放置プレイかました人でなしがデカい口叩くな、あっそうか(ヒトデナシ)だもんなぁ?!お後がよろしい事で!!」

「「ブッ(コ□)す!」」

 

互いに一線を踏み越えれば、これ以上の言葉は不要。観客そっちのけみたいな空気感と共に、俺と奴は幾度目かの剣戟を交わし始めたのだった。

 

「あーあ、始まっちゃった。という訳でこんな有様の帝とRe:ALを背景に“わたしは、私の事が好き。”!いっちゃお♥」

「勝者を湛える(みことのり)。醜い敗者同士の蹴落とし合いをBGMに献上するとしようか」

 

あ、ちなみにコレ全部乃依の仕込みな。

 

 

優勝者であるかぐやへのリスペクトとして選ばれた歌、その長さ1分35秒。その間をマニュアルモードで殴り合い続けた俺達は、駒沢兄弟のキメポーズと同時に切っ先を喉元に突き付け合う事でオチを決めた。

男ながら可憐さを売りにしている乃依はもちろんのこと、隣で踊り切った雷さんにゃ舌を巻く他無い。何が凄いって真顔で通してネタ全振りする択もあったのに、しっかりメロい……って言い方で合ってんのかな。ともかく謎の蠱惑さを振り撒いて黄色い声を引き出してたんだから。他の曲ならまだしも“わたしは、私の事が好き。”でそれをやり果せるとかマジで尊敬するわ、最初に失礼な態度取ってごめんなさいホント。

 

「その、万分の一でも、俺に払う敬意とか、無いのかよ」

「無いッ」

「即答すな」

 

 

三度の飯より黒瑪瑙 5000ふじゅ〜

 ブラックオニキスの“わたすき”とか激レアすぎんか!?!?

 

食寝遊踊見阿呆 6000ふじゅ〜

 Re:ALってマニュアル操作でも帝様と張り合えるのかよ……

 

(ひと)には(ひと)の乳酸菌 5000ふじゅ〜

 雷様が歌うと「可愛い曲」も「エロい曲」になるんやなぁ。目で孕んだ 

 

禪院チャンネル 4000ふじゅ〜

 ええね帝ちゃん、片意地張らずに悪態点ける相手が出来て。

 小学校の時を思い出してまうわ

 

黒鬼アンチは世界の敵 6000ふじゅ〜

 は?小学校?アンタまさか……

 

認めないぞ!リアのいなんて! 10000ふじゅ〜

 みかのい及びリアのいアンチとしては、ここはごくベジみたいに帝×Re:ALで 

 Yes嫌い合いながらYes認め合いながらくっついてもろて

 

は?未来ごはトラが至高だが?? 4000ふじゅ〜

 最強(ホモ)のフュージョンはせっかち

 

自認帝夢女子 7000ふじゅ〜

 私の頭にゴミのような情報を流すんじゃない!!!1!!

 

 

帝からのツッコミを無視して見遣った画面には、それはもう潰れる流れる溢れ出る高額スパチャ。流石は天下の黒鬼、ファンの練度も相応に高いと見える。

それに押されてアイツも……ああ、呆けてやがら。

 

(なーに戸惑いを引き摺ってんだか)

 

真実。芦花達に引き連れられて、来てくれた想い人。ここから先はそんな彼女への贈り物。

 

「さぁさぁ、盛り上がって来た所でお次は新曲っ」

「俺達とRe:AL、4人歌唱と洒落込もうじゃないか」

「気に入らんけどなー!」

 

そう、ここからこそが裏の主旨。俺と真実の関係へとある種の“決着”をつける一打、という主題だった。

それが彩葉から貰って完成させたこの歌、ようはラブレター代わりって寸法だな。

 

(そもそもの話、俺があんな言い逃げみてぇな告り方してなきゃ真実(おまえ)が言いそびれる事も無かったんだ)

 

故に今度こそ、お互い逃げ場の無い場所で、言い逃れのしようの無い気持ちをぶつける。それがこの、自己満足とも言える俺の償いだから。

 

だから、見てくれ。

 

聞いてくれ。

 

「……全部、初めてだった」

 

素人が初めて作詞して、素人が初めて歌う(うた)。不格好に決まってるし、碌な事になる保証なんて無い。何ならこれが原因でお前にフラれるかも知れない。

 

「でも全部込めた。俺が抱くもの、望むもの、全部」

 

……お前に対して思ってきた事。

お前と出逢ってから胸の内で育ててきたものを。7年間の思いの丈を。

 

 

「──受け止めてくれ」




拙作あるある。というか筆者あるある
展開に無駄が多過ぎて長くなりまくる。執筆期間も文字数も
今回で終わっていよいよコラボ&卒業ライブ編へ向かう筈だったのにドウシテコウナッタ
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