酒に狂った男   作:鶏肋

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巨人のイメージは風神雷神の後者です

……駒澤雷とは無関係っすよ(念の為(当たり前))

【注釈】
前話、灯篭人間(リョウサン型)が波動で倒された後に“消えた”という旨の描写を追記しました。


かぐや、思い出す

「現ッ────!!」

 

彩葉の声で目が覚めた。そして、全部思い出した。

私がどういう存在だったか。何に飽きて、何を厭うて、何を求めてこの世界に来たのか。朧気だった物が全部形を取り戻して、私の自己認識を再構築する。

自我が塗り替えられちゃうとかそんなんじゃない。かぐやはかぐやのまま、その過去を取り戻した。取り戻してしまった。

それ故に、視界に入った状況をすぐに理解できた。

 

(リアル!それにアレは、)

 

確か、月──と便宜上読んでる世界の、攻勢防御を担う存在だ。滅多に現れないとはいえ外敵、またごくまれに起こる内紛に対して威力行使による鎮圧を試みる……こっちの世界で言う警察とか、軍隊とか、そういう存在の一つ。

そんな“彼”と鬩ぎ合ってるリアル。まさか、ううん、状況から考えて間違いない!

 

(私を迎えに来た皆と、リアルが戦ってるんだ……!)

 

私が原因で起きた事件。どうするのが正解かなんて分かんない、でもこれは……止めなきゃ!

 

「かぐや、起きたの?!」

「ぃ、彩葉っ。ダメ、こんなの、ダメだよっ」

「ぇ──」

 

ずっと私を守ってくれてた彩葉には分かって欲しくて、でもテンパった口は思うように言の葉を紡いでくれない。そうしてる内に事態は悪化する。

立ち上がれないリアルに対し、“彼”が振り上げた左手。それが紫電を纏った瞬間、私は意図を理解する。

 

()()()()!?)

 

それはルールを犯した思念存在に対し、刑罰(ペナルティ)──場合によっては削除(処刑)に使われるコマンドだった。思念(いのち)の輪郭を叩き、分解する事で、その存在そのものを揺るがし瓦解させる。依り代が無い単独の思念なら、出力によっては一撃で消滅する事さえある、管理者側しか使用を許されない行い。

彩葉や現は肉体という依り代(バックアップ)がある分まだマシかも知れないけど……それでも、民間人に使って良い物じゃないよ?!

 

「リアルぅっ!!!」

 

叫びをあげた。でも間に合わなかった。“彼”を止める事も、リアルを止める事も。

拳が着弾する瞬間、閃光。リアルを中心に発せられたそれは視界を真っ白に染め上げ、かぐやを再び前後不覚に陥らせてしまった。

 

……どうなったのか。あれから何秒経ったのか、リアルは、“彼”は無事なのか。

ようやく機能を取り戻した両目を見開けば、そこには。

 

 

「おいたは、だめだよー……」

「……ヤチヨ」

 

いつから其処にいたのか。先程までリアル達が競り合ってた場所で、しかしその2人を泡に封じ込めて無力化した彼女がそこ立っていた。余りの早業、かぐやも普通に見逃したね──なんて、茶化さないとやってられない。

 

「ヤチヨ!さっきとんでもない事がっ、」

「うんうん彩葉(いろ)、分かってるよ……でもお忘れかな?〆の言葉が無きゃ、ライブは終われないのです」

 

詰め寄った彩葉をいなすヤチヨ。続いて泡からリアルを解放して彼女に預け、そして“彼”を指の一振りで消し去ってしまう。

でも分かるんだ。文字通りに消し去った訳じゃなくて、アレは……転送に近いって。

ヤチヨが、“彼”を逃がした。なんで?ヤチヨも知り合いなの?

 

「……今のは一体?何が起こってしまうんだ?続報を待て~~~♪」

 

ヤチヨは、どこまで、知ってるの?

 

 

「さぁな。とりま、複雑怪奇な事情があるっぽいのは確かだ」

「だよね……ってリアルぅ!?」

「大丈夫?!起きて平気なの!??」

「あーうん、なんか普通に元気ピンピンだわ。あの攻撃って後遺症残らんのね、実に上位存在らしい優しい攻撃だよ糞が」

「いや普通にヤバい攻撃だったからね月人視点でも!────良かったぁ」

「……心配かけちまったな」

 

 


 

 

ヤッチョ、おこです。

 

激おこぷんぷん丸のムカ着火ファイヤーなのです。

 

理由は二つ。まず現相手に輪郭破壊攻撃なんて言う物騒な手段を振り翳した点だ。確かにあの子の力は脅威的だってデータは散々送ったけどさ、そうしたのは私だけどさ、幾らなんでも程度と加減ってものがあるでしょ流石に。

あの子を殺す気?もしそんな事したら因果が壊れるし、なによりヤッチョも一戦辞さない覚悟だよ?そこんとこ分かってる??

 

「──■~──」

「言い訳無用っ」

「…………」

 

とはいえ、これは(かぐや)が始めた物語。本来は私に叱る権利なんてものは無いし、()()()()()()が無ければ涙を呑んで看過しただろう。ツクヨミの裏手である管理者スペースで、攻勢防御担当君を正座させるなんて事もしなかった。

本当の問題は……

 

「なんで波動対策、ほとんどしてなかったの?」

「………………」

「ヤッチョ言ったよね?あの攻撃はヤバいって、他はともかくアレだけはバックアップ用意するなり防壁設けるなり回避策持っとくなりしてメタれって、そう送ったよね?なのに何あのザマ」

「…………」

「おかげでリョウサン型の皆、寸前でヤッチョが保護してなかったら全員穢れちゃってた(死んじゃってた)んだけど?なんなら今もスリープ状態で回復中なんだけど?君としてはそれこそ輪郭破壊が対策のつもりだったんだろうし、君だけは思念オーバーヒートを逃れたみたいだけどさぁ?範囲攻撃って事前に言ったよね?君は良くても他が巻き込まれちゃうよね??というか強がってるけど君も致命傷1歩手前だよね???」

「……」

「まさか“3次元人が俺らを殺せるワケ無いやろww”とか思っちゃってた??」

 

再三送り続けた警告文書。それを度外視されたとあっちゃ、流石にさぁ……!

私が始めた物語とはいえ!だからこそ忠告は聞いてよ!!命に関わる事なんだよ、そこで舐めプしちゃダメでしょ!?いや現地の風習に則って形式上は従うのは美徳の文化だけどさぁ、警戒が足りてない上に方向性間違ってんの!ちょっと反省して反省っ!!

 

……ふう。落ち着いた。とりあえず今回はここまでで充分だ、攻君は割と聞き訳が良い子だって9000年前から知ってるし、これ以上は私としても逆に申し訳ないから。

じゃあ、話を次に進めよっか。ね、()()()()?()ちゃん?

 

「荵?@縺?〒縺吶?縲ゅh繧ゅd縺昴s縺ェ蟋ソ縺ォ縺ェ縺」縺ヲ縺?◆縺ィ縺ッ」

「!」

「紆余曲折あったのですよ、いやホントに。貴方には毎度迷惑かけちゃうね」

「菴輔r莉頑峩縲ゅb縺??繧後▲縺薙〒縺吶h」

「いやはやぐうの音も出ない──コホン。改めてようこそ、私の世界(ツクヨミ)へ」

 

私達の真横に突如として顕れた巨影。その正体は月人の要職、高位存在である繝懊し繝?ちゃんだ。

私にとってはお目付け役、育ての親……に当たる個体かな?昔から気易い態度で接しちゃってるけど、本来は私も攻君みたいに平伏して沙汰を待たなきゃいけない身分の差があるような、そんなお偉~いやんごとなき御方だったりするんだよね。生まれたばかりの頃は散々お世話にもなってるし、いやはや足を向けて寝られないねタハハ。

 

「縺励※縲√°縺舌d窶ヲ窶ヲ縺?∴縲√Ζ繝√Κ縲りイエ螂ウ縺ッ縺ゥ縺?@縺溘>縺ョ縺ァ縺呻シ?」

「……ありがと。私の目的はただ一つ、定められた因果を完璧に遂行する事にある」

 

知らず温かくなる胸を敢えて無視して、露にするのは表向きの目的。とは言っても決して嘘じゃない。彩葉達との云々なんて、月の皆に言っても仕方の無い事だしね。

 

「その為に。私が得た8000年の情報、その中で組み立てた仮説、今ここで、その全てを貴方がたに開示します」

「?假シ撰シ撰シ仙ケエ縺ァ縺吶°窶ヲ窶ヲ螟ァ螟峨□縺」縺溘〒縺励g縺?」

「私の事なんてどうでも良いのです。何より優先されるべきは、今渡したデータの通りに行動してもらう事。そうしなければこの世界の存続が危うくなってしまいかねない──その上で、最も厚い障壁となるのが」

 

……彼。私とFUSHIが育て上げた石実現だ。

 

「私達は物理的な事象に囚われない存在。故に“穢れ”──即ち“死”に縛られる事は無い。これは貴方がたも当然ご存じでしょう」

「縺昴≧縺ァ縺吶?縲ゅ◎縺励※縲√%縺ョ?捺ャ。蜈?ク也阜縺ョ菴丈ココ縺ッ驕輔≧莠九b縲?」

「さっすが話が早い!そう、地球の皆は実体に囚われているが故に存在証明が私達より明確で、その代償として“穢れ”に染まった。死という終わりからは逃れられない」

 

これは個人解釈なんだけど、私達月人と地球人の間にどっちが上位だとか下位だとか、そんな序列は無いと思ってる。ただ地球人は、月人とは別の場所で別の進化を選んだだけなんだって。

物理に囚われる事で個を確立した彼らと、個を計失する事で物理から解き放たれた私達。そこに有るのは飽くまで分岐、隔たっているのはその箇所だけだと。

 

そんな真逆の道に在る月人(わたしたち)地球人(かれら)。その中で“彼”は──最も()()()()に、立っている。

 

極至物理存在(フィジカルギフテッド)、とでも呼びましょうか。石実現はそういう、謂わば“アンチ月人”なんだ」

「???」

「謾サ蜍「髦イ蠕。蜷帙′豺キ荵ア縺励※縺?k縺ョ縺ァ遘√′莉」繧上j縺ォ縲ゅ◎縺ョ縲後い繝ウ繝√?縺ィ縺?≧縺ョ縺ッ蜊倡エ斐↓縲碁?縲阪→縺?≧諢丞袖縺ァ縺吶°縲√◎繧後→繧ゅ?譛井ココ迚ケ謾サ縲阪?閭ス蜉帙r謖√▽縺ィ縺?≧莠九〒縺励g縺?°??」

「元から前者。そして後者に“なった”、って具合ですかな」

 

物理を極めた命。それが彼、石実現。酒寄家の遺伝子の中に顕在化した肉体強者のDNAを母から受け継ぎ、そして齢16にして目覚めさせた。3次元世界における月人の対極存在だ。

ううん、それに目覚めただけなら良いんだ。でも他ならないヤッチョが、ツクヨミ(電子世界)に招いて、慣れさせて、無駄に追い詰めた結果……()()()()まで覚醒させちゃったんだよねぇ。

 

「■■■?■■ッ!!」

「ごめん!これに関してはホントごめんマジでごめん、メンダコメンゴ!でも8000年()の記録で彼がこの能力を獲得するのは確定してたから、ヤッチョの立場としては探らないワケにはいかなかったのっ」

「莠御ココ縺ィ繧り誠縺。逹?″縺ェ縺輔>縲ゅΖ繝√Κ縲√≠縺ョ豕「蜍墓判謦??隧ウ邏ー縺ッ隱ソ縺ケ縺ヲ縺ゅk縺ョ縺ァ縺吶h縺ュ??」

 

申し訳なさに顔を歪めながら、FUSHIが必死の形相でつい先ほど纏め上げてくれたレポートを展開。そこに記されるのは、私達を穢し得る(ころしうる)、彼の切札についての仔細だった。

 

「あの波動攻撃の正体は、()()()()()()()()そのものです。その外殻が空気のポリゴンと接触・反発した際の発光が、波動の形状となった現象だと判明しました」

「……?」

「簡潔に言えば“自意識の肥大化”って事」

 

オートマモードの要領だ。自身の肉体感覚をそのまま反映させる仕様、それを応用しつつ解釈を広げたのだろう。

仮想世界において、自認する“自分の外殻”を強制拡大──広範囲を自分の体内に取り込む。煮え滾る排他の思念に満ちた、彼の領域(こころ)の中へ。

それに巻かれた敵性存在は、周囲全てから過負荷を掛けられて……()()()()()()()()()()()()()を引き起こすって寸法だね。

 

「ッ!!」

「……縺ェ繧九⊇縺ゥ縲ゅ∪縺輔@縺丞、ゥ謨オ縺ァ縺吶?縲?」

「分かって貰えたようで何よりだよ」

 

いつぞや現自身が陥った思念オーバーヒートだけど、月人にとっては重篤極まる事態に他ならない。地球人で言えば急性心不全に近い致命的病状であり、それを外的に引き起こせる存在なんて脅威でしかないだろう。私や攻君みたいな格のある月人ならともかく、そうでないリョウサン型みたいな子達がその直撃を食らっちゃったら……どうなったかは、見た通り。

 

「縺励°縺励?繧、繧キ繝溘?繧イ繝ウ縺ィ縺?∴縺ゥ荳??縺ョ逕溷多菴薙?縺ォ繧ゅ°縺九o繧峨★縲√←縺?@縺ヲ蠖シ蜊倅ス薙′縺昴s縺ェ鬆伜沺繧貞ア暮幕縺ァ縺阪k繧医≧縺ェ蜃コ蜉帙r蜃コ縺帙k??」

 

ここで繝懊し繝?ちゃんから良い質問。なぜそんな大それた攻撃を、下位次元のただ1人が実行出来るのか。その出力の源は何なのか?

でもねぇ、答えは既に出てるんだなぁコレが。

 

「忘れちゃいけないよ。彼は極至物理存在──仮想の身体とは別に、現実に究極の依り代(にくたい)を持つって事」

「!……?捺ャ。蜈??霄ォ菴薙′繝舌ャ繧ッ繧「繝??縺ィ縺励※閾ェ霄ォ縺ョ諤晏ソオ縺ョ蜴溷梛繧呈球菫昴@縺、縺、縲∝?蜉帶コ舌→縺励※讖溯?縺励※縺?k縺ョ縺ァ縺吶°??」

「正っ解♪」

 

ツクヨミで幾ら自身の輪郭(かたち)を肥大化させようと、現実の肉体が元に戻るべき形状を覚えている。だから依り代の無い私達がやれば即座に自壊しかねない無茶な攻撃をしても、彼は自身の存在を保持できてるの。

そして超人的な身体能力を出力できるだけの神経パルス出力が、その攻撃の威力へと変換されてる。この二つの要素を以てして、現は私達への絶対の破壊力を手にしたってワケ!凄いでしょ、私達の現はさ!!

 

「縺ェ繧薙〒縺昴s縺ェ蟄伜惠繧定ご縺ヲ縺ヲ縺励∪縺」縺溘s縺ァ縺吶°縺ュ縺?」

 

いやもうホント申し開きのしようもない。どうしてこうなったのか。寧ろ、こんな事にならないように育てようとさえしてたのに。

 

でも反省こそすれど後悔は出来ないんだ。だって独りになったあの子を守るのは、そうさせてしまった私に課せられた責務だったから……だからこそ、現が引き起こし得る総てに対して、私が全責任を取る。徹底的に対策を練って丸ごと埋め合わせる。そうして輪廻を遂行みせる。

 

全部その為だ。ライブの終了間際に防壁を緩めて月からの干渉をし易くしたのも。通信接続を切って現をツクヨミから追い出し、リョウサン型がかぐやに接触する時間を稼いだのも。月の一軍を現と接敵させて、その脅威度を知らしめたのも、そうするべく一旦息を潜めて静観に徹したのも、彩葉達を助けたい気持ちを必死で抑えたのも。こうしてやっと、最終局面のスタートラインへと辿り着く、その為だけに。

 

「ここが天王山。凌ぎ切れば後は消化試合みたいなもの──だからお願いします。手を貸してください」

 

散々迷惑をかけた人達へ、頭を下げる。たかがその程度の事を厭うヤチヨじゃない。

果たして彼らの返答は……首肯。その事へあらん限りの感謝を示し、私は自ら作った地獄の総仕上げに取り掛かるのだった────

 

 

 

「縺励°縺励?雋エ螂ウ縺碁?繧剃ク九£繧九?縺ェ繧峨?豁、譁ケ縺ィ縺励※繧りャ昴▲縺ヲ縺翫°縺ェ縺代l縺ー縺ェ繧峨↑縺?コ九′縺ゅj縺セ縺吶?縲?」

「え?」

「縺九$繧?───()()()()()()()()()()縺ィ縲√◎縺ョ莉イ髢薙?譎エ繧瑚?蜿ー繧帝が鬲斐☆繧句ス「縺ィ縺ェ縺」縺ヲ縺励∪縺??隱?↓逕ウ縺苓ィウ縺ゅj縺セ縺帙s縺ァ縺励◆縲?」

 

────で、話は終わらない。繝懊し繝?ちゃんの誠実さが、逆に針となって私の心に突き刺さる。

彼が詫びたのはコラボライブへの乱入の件について。折角の大舞台を台無しにしてしまったと、その大きな体を曲げて頭を下げてきていた。

でも、そんな事されたって……困るだけだよ。

 

「良いって良いって、アレは(かぐや)が“結婚”なんて事言い出しちゃったからじゃん?脱法亡命した子が出奔先で永住宣言なんてカマしたら、そりゃ回収しに来るしかなかったでしょ貴方達は」

 

────「彩葉を幸せ(ハッピーエンド)にしなかったら、

許さないから」      _

「そんなの当たり前っ」   _

 

_ ──「結婚、しよ?」

_    「うぇえっ!?」_

 

(リアル)に影響され、芦花に背を押されて逸った告白だった。まるで迂闊な勇み足そのものに、私自身のやらかしだからこそ苦笑してしまう。

そりゃ月側もビックリするって。むしろそれまで様子見に徹してくれたことに感謝したいぐらいだよ。

 

「譛ャ蠖薙↓縺昴≧諤昴∴縺ヲ縺?k縺ョ縺ァ縺吶°??」

「それ以上は言わないで」

「縺励°縺?……」

「お願い」

「……縺昴%縺セ縺ァ莉ー繧九?縺ェ繧?」

 

それでも繝懊し繝?ちゃんには見抜かれてしまったらしい。私が、あのコラボライブの顛末を、これ以上なく()()()思ってしまっている事を。

 

だって、久し過ぎる機会だったんだ。彩葉の隣で歌う、8000年ぶりの。

省みれたんだ。まだ何も知らずに居られた頃の私、そのかつての自分の輪郭(かたち)を。

ゲンにだって、リアルにだって、最後まで見て欲しかったんだ。そんな私達の晴れ姿を。

 

その結果が、コレ。かぐやに記憶(げんじつ)を押し付けて無垢を濁らせ、彩葉を恐怖させて笑顔を曇らせ、現を危険な攻撃に晒して傷付けた。私って、彼女達の事を本当に大事に思ってるのかな?これじゃ彩葉のお母さんを笑えないや。

こんなに傷付けといて。どの口でさ。

 

「そういう事で。貴方達は悪くないし、私に貴方達を恨む権利なんて無いのです」

 

私が蒔いた種だから。じゃあ、私が刈らなきゃ。

私が始めた物語だから。私がエンドマークを打たなきゃ。

 

「だから……最後まで、よろしくね」

 

 

 


 

 

 

一方その頃、現実世界にて。とあるマンションのとある1室が、それはそれは重苦しい雰囲気に見舞われていた。

中心に1人、石実現。俯いて表情を窺わせず、腕を組んで胡坐を為すその様相は実に威圧感マキシマムである。1年前のメンタルよわよわ彩葉が見たら、卒倒の末に母親と兄が出張ってのスーパー酒寄大戦Zが勃発していたかも知れない。

 

そんな彼に並んで正座するのは諌山真実。彼女もまた精一杯のしかめっ面を露にし──とは言っても可愛さを隠し切れていないが──というかその可愛さに負けない為に現が必要以上に威圧感を出してる節もあるのだが──隣の伴侶*1と意思を同じくし、目の前の存在への詰問を辞さない所存であった。

 

そんな彼・彼女に視線を注がれるのは、床に置かれた水槽。海水に満たされ環境を整えられたそれはしかし、肝心の生物を入れておらず……否、そのフタの上に()()は座している。

 

「────なぁFUSHI」

「言わんぞ!」

「まだ何も質問してねぇよ」

「……え~と。ごめん、まず二人の関係について聞いて良い?」

「「友達」」

「うん、その息の合いようを見るに間違いなさそうだね」

 

かくして始まる最終篇、その序章を終えての一幕。はてさて、少年少女の行く末は如何なるや。

*1
予定

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