酒に狂った男   作:鶏肋

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今更言っておきます。
バッドエンドです(え゛ー!?byかぐや


石実現、

光陰矢の如し。時は金なり、夢幻(ゆめまぼろし)の如くなり。

 

端的に言え?まぁ要するに、酒寄との決戦に向けた日々は一日たりとて無駄に出来なかったって事だ。

 

「裏切りだ。二人して夜な夜な会ってたんだ。浮気だ」

「「そんなんじゃねぇ(ない)から!!」」

 

体育祭は当然のように男女両部門で俺と酒寄の無双、文化祭では酒寄の総指揮の下で俺が駆けずり回り大成功を修めた。俺は酒寄以外に負ける訳にはいかなくて、それは酒寄だって同じこと。

だがその間だって、バイトで日銭を稼ぎつつ勉学に総力を注ぐ。綾紬との合同復習会も日に日にその時間を増し、やがて予習部分まで徹底的に行うように。綾紬の睡眠時間を圧迫するのは気が引けるので流石に23時までには終わるけど。俺はその後夜更かしするけど。

ちなみに途中、綾紬に「酒寄の援護に行かなくて良いのか。アイツの負担大丈夫か」と聞いたが「本人は否定するけど私達がいない方が明らかにスピード速い」らしい。あの完全生物め……。

 

だが俺が加速すればするほど、酒寄も目に見えてギアを上げてくる。独力でどこまでも。

中間テストではほぼほぼ互角ながらも僅かに届かない結果。手応えと共に、ここまでやってもまだ追い付けない事実に戦慄すら覚えた。

お互い目にクマを作って、だが止まれない。その形相に誰が引いても、誰が止めてもだ。

 

……そんな激化の様相を辿ってりゃ、復習会の存在が真実にバレるのもまぁ至極当然で。

 

「──あ゛ーっ!芦花に盗られたー!!うわーん!!!──と咆哮したいのは山々なんだけど。それは2人の弁明次第って事で保留するね」

「あくまで保留か……」

「言葉には気を付けろって事だよ☆」

 

酒寄と俺がどんどん勉学にのめり込むのと比例するように成績を上げていく綾紬が、しかし反比例するように顔色を悪くしていく事から察したのだろう。酒寄を救う為に酒寄を裏切る、その罪悪感に苛まれる様相を真実はしっかり見咎めてきた。

しかしここまできて隠しておくのは無理だし、そもそも俺からするとあんまり隠す意味も無い(綾紬は酒寄・真実への後ろめたさから同盟を隠蔽していた)ので、こうなれば全てを説明。なんとかギリギリで理解と納得と信頼を得る事に成功する。

 

「勝負の結果によっては、パパに自己紹介してもらうから」

「諌山のおやっさんに?自己紹介も何もとっくの昔に知り合って……」

「し・て・も・ら・う・か・ら。それが浮気を許す条件ね──そうそう、芦花も同席してよ?証人も必要だし」

「どうしてこんな事に……」

 

変な条件付けられたが。そもそも浮気ってなんだ。お前の説明次第じゃおやっさんに殺されないか俺。

まぁそんな感じで真実も酒寄との緩衝役として加わり、遂にその日は来る。

 

12月上旬。きたる決戦の日。

 

「いよいよ!彩葉は王座を死守できるか、ゲンちゃんは王座を奪還できるか、そして私は赤点回避できるかの天下分け目……っ」

「並べるな並べるな、スケール縮小っぷりがヤバい」

「まぁ言うて懸かってるのは酒寄の命令権くらいならモンだし……」

 

気合いを入れる真実、を嗜める綾紬、にツッコむ俺。同盟も今日が最後、暫しの共犯もこれでお終いって訳だな。

だから……まぁ、なんだ。

 

「そんな辛気臭い顔すんなよ、綾紬」

「──え。私?」

「お前以外に誰がいんだ」

 

相手を想うからこそ、相手の環境を壊す。その一歩を踏み出すのにとんでもない勇気がある事は俺にだって分かる。俺は下手に守ろうとして粉々にされた方の人間だし。

だからその事で何がどうなっても、反省こそすれど後悔する必要は無い。後ろめたく思う必要さえ無い、と俺は考えてた。

 

「一から十まで酒寄への対抗心、要は自分の尊厳の為にしか頑張れない俺と比べりゃ、お前は上々だろ。だからもっと胸張って酒寄と対峙しろよな」

「……張って良いのかな。私のやってる事、裏切りじゃないのかな」

「じゃねぇな。派閥だの何だの言ってきたけど、酒寄もいい仲間に恵まれたなって妬んじまうぜ」

「あははっ。男の嫉妬は見苦しいって聞くけど?」

「応、だから是非とも他言無用で頼むわ」

 

険が取れたその様子に釣られて俺も笑う。コイツやっぱ美人だわ。ずっと笑ってりゃ良いのに、なーんで変に影落とさせんだろうな酒寄は。マジで勿体無ぇの。

 

「……え。待って。ホントに浮気じゃないんだよね?信じるよ??」

「「だからそんなんじゃない(ねぇ)って!!」」

 

なんだか知らんが「押し倒す……もう家に引き込んで押し倒す……それしか無い……」だの何だの呟きながら、真実が芦花と共に酒寄と合流するのを影から見届けて……さぁて、ここが正念場だ。

 

酒寄。お前にも譲れないものがあるように、俺もある意味でこれまでの半生をお前への勝利に賭してるんでね。今日こそお前を引き摺り下ろしてやるから、そのつもりでいろよ……!

 

 


 

 

天王山は数Ⅱ・B。相場は既にそう決まっている。

何故かといえば、先生の出題傾向だ。あの人は私と石実に期待して、毎回明らかに範囲外の高難易度問題を出してくる。点数こそ低いけれど、逃せば当然、満点は取れない。

 

(ここ最近の石実なら獲ってくる。尚更のこと、落とせない!)

 

序盤の雑魚問を蹴散らしながら、でも同時に死体蹴り(見直し)を欠かさず突き進む。さぁ最後、ラスボスを打ち破って勝利を────っ。

 

(え。何これ)

 

先生、これはおかしいって。はっちゃけ過ぎだって。多分お母さんでもおんなじ状況だったら“何ふざけてはるの”って怒るよ。

範囲外とかそんなレベルじゃない。だって、これは……

 

(()()()()()は流石にカバー外ですよっ!?)

 

 


 

 

(勝機ッ!!!)

 

ここ綾紬ゼミでやったとこだ!……いや正確には、綾紬との復習会議で余裕が出来た折、万一を考えて頭に入れといた赤本がブッ刺さりやがった!あの先公いつか()()と思ったぜ!

 

(絶対獲る!この機は逃せん)

 

酒寄のシャーペンの音が止まるこの時を待っていた。やるんだな石実現?

 

(ああ。勝負は今、ここで──!!)

 

公式の羅列と組み合わせで解を導き、それをまた次の公式へ当て嵌める繰り返し。制限時間もあとわずか、だが……間に合った。

時間ギリギリで引いた、解答を表す横線。その瞬間に鳴り響くアラーム、反射的に見上げた名前欄にはしっかり三文字を確認。

……勝った。

 

(……やった!)

 

もちろんテストは他にもまだある、だがそれらに関しても対策は完璧。酒寄と同率満点が予想される以上、勝負はこの数学でほぼ決まると確信していた。それを上手く凌げた現状、もはや敵なしだ──というのは慢心に他ならないので戒めておく。

 

(これで決着だ。結果が出た時、お前がどんなツラするのか今から楽しみだよ……!)

 

後ろの方で沈黙を保つ好敵手に想いを馳せ、内心でほくそ笑む。この時点で有頂天なのを隠せていない俺は、全てを知る者がいたとすれば、果たしてどれほど滑稽に映っていただろう?

 

 

その酒寄が浮かべる、心底からの絶望の表情に気付きもしない、俺という道化は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果?

負けぼの。

 

「1位、酒寄彩葉98点!実質満点だ!!」

「え?!」

 

誰より驚いた表情を浮かべるのは、他ならない酒寄本人。うんうん、あんな自信満々な俺を見て敗北を悟ってたんだろ。残念だったな、お前がNo.1だ。

 

「ちなみに2位は石実の97点な。だが今回、石実は酒寄でも解けなかった東大問題を突破してる。お前らも見習えよ~!」

「っ……」

(言うなー!この状況じゃ自慢にもならんわー!!)

 

つまり他、前半の雑魚問を落としてたって事。ここにきて凡ミス(いつもの)パターンとか泣いて良いか?ラスボスに時間かけすぎて見直しが不十分だったとかオチとしてお粗末すぎるだろ!

というかあんなイキって勝ち誇ってた過去の俺が素直に恥ずかしいんだが?!真美と綾紬からの視線がもう背中に刺さって刺さって、厳しいってホント……っ。

 

「総合成績もお察しの通り、酒寄トップだ。石実だけが追ってるようじゃ話にならん、他も切磋琢磨するように!以上!!」

 

そうして解放。1日終わり、周囲からの無駄な注目を集めつつフラフラと校門を出る。ちょっと立ち直るの難しいかも知れん……

 

と、その時。途上にて小柄の影が立ち塞がった。

 

「……ゲンちゃん」

「あー、真実。どした」

 

ある意味で一番会いたくなかった、格好悪い所を見せたくなかった奴の来臨だ。まぁダサい所見せるのは今更だけど、それでも嫌なモンは嫌。

そんな俺を知ってか知らずか、真実はいつになく真剣な表情──から一転、何時(いつ)ぞやのように花のような微笑みを咲かせて告げる。

 

「私ん()で彩葉の祝勝パーティを明日するから、準備手伝って♡」

 

鬼か?????

 

 


 

 

「彩葉の完勝記念に〜」

「日頃の感謝を込めて〜」

「ご査収くださ〜い」

 

マミマミとしての活動で蓄えた知識を元手に、精一杯用意したご馳走。それを前に輝く彩葉の瞳に、私はどうしようもない達成感を覚える。

 

「すっご……えっ芦花、真実、まさかコレ作ったの?」

「私はノータッチ。全部、真実といs……まぁ全部真実が作ったと言って良いよ。凄いよね」

「悪いよそんなの!!真実がまず食べなってっ」

「いーからいーから、自分で自分が作ったヤツ食べたって何の意味も無いでしょ〜が」

 

これはいつも頑張る彩葉が、特に頑張ったこの二学期に対するご褒美に他ならない。なればこそ、君にいただいてもらわねば困るのだよ酒寄彩葉嬢!

ほら食った食った!初手唐揚げを喰らえ〜!!

 

「んもふっ……っっっまッ!?狡いよこんなの、我慢できる訳ないじゃん!あーもう!!」

「そう来なくてはっ。ほら芦花も食べよ」

「うーむ。今日ばかりはダイエットを忘れるのも致し方なし、なんてね」

 

そうして()()()()()()始まった祝勝会。料理に舌鼓を打ちt……ぅゎ自分で言うのもなんだけどホントに美味し……打ちつつ、談笑を挟んで空気を作っていく。

 

「いやーしかし、流石だよ彩葉はさ。ゲンちゃんにもう何連勝?」

「分かんないよそんなの。っていうか、真実的にはどうなの?石実は大丈夫かな」

「ダイジョブ、アイツめっちゃ物理的にも精神的にもタフだし。ねっ、芦花っ」

「……うん。あんなに打たれ強いヤツ、他には知らないや」

「そうなんだ。知らなかったよ」

 

ん?芦花の声音なんか引っ掛かるな。まぁいっか、兎にも角にも緩やかに和やかに進行続行です。ホラホラこれもどーぞ、特製のスープスパゲティにございまーす。

 

「本格的ぃ……うん、すっごい美味しい!()()()()()()()()()()()()()()!」

 

\\ズココーッ!//

 

「……なんかあった?2人とも」

「「何゛も……無゛かった……」」

 

こうも“タイムリーな合致”を見せてくるとは、やはり私と芦花の推測通り、彩葉とゲンちゃんは似た物同士らしい。警戒レベルを上げつつも、(これはやはり)と確信を深めて次へ。

 

「それはともかくとしてさ。彩葉、決闘に勝ったワケじゃん」

「うっ……そう、だね」

「石実に何を命令するつもりなの?」

 

さぁ。この作戦における第一段階、その大詰めだ。これによってのちのプランが大きく変わる、出来れば予想は外れて欲しいところだけど……?

 

「……それなんだけど、やっぱりこういうの良くないって後から思ってさ。撤回する事に決めたんだ」

 

……残念。第二フェーズに移行だよ、芦花。

そう目配せで伝えると、彼女は徐に鞄を弄り始めた。さぁ私の腕の見せ所でもあるぞ、頑張れ諌山真実!

 

「ぇ〜。勿体無いなぁ、あのイシミソの鼻っ柱を折るチャンスなのにぃ」

「いやいやいや……というか、ヤバい命令とかして良いの?好きなんでしょ、石実(アイツ)の事」

「うぇっ!?何でその事をっ」

 

演技だ。芦花に恋心がバレて以降、私は石実を彩葉以外に盗られたくない一心でアプローチを露わにしてきた。それを見てきた彩葉なら突然気付いてるだろうって、そんな当たりはとっくの昔に付いてる。

 

そうやって彩葉の視線がこっちに向いてる内に、芦花の取り出した飲料ボトルが、彩葉が好んで飲んでたジュースボトルと掏り替えられた。しめしめ。

 

「いや、背中から堂々とあすなろ抱きしといてバレてないワケ無いでしょ。クラスの女子も結構気付いてると思うよ」

「そんなぁ……────ううん。でも良いの。彩葉なら」

「……なんで?」

 

最早作戦は既に成った。後はいっぱい食わせ、いっぱい飲ませ、そしてその渦に彩葉を呑み込ませるだけ。貴様はチェックメイトに嵌まったのだー!

 

「中学時代の石実はね、ずっとつまんなそうだったんだ。ライバルがいなくて、隣に並んでくれる子なんて1人もいなくて、何にも楽しそうじゃなかった。私だってそれをどうにもしてあげられなくて、辛かった」

「……石実が?」

「本当の事だよ。だって誰も追いつかないからね、頭でも身体でも」

 

信じられないといった顔をする彩葉に、芦花がボトルから飲み物を注ぎながら補足してくれる。うん、遠巻きから見てた芦花ですらそう分かっちゃうほどの孤独だったんだ。

 

「でも、彩葉に負けてからは違う。初めて石実の人生に目標ができて、目に見えて活気に満ち溢れたの。それは彩葉のお陰なんだよ」

 

……明らかに、彼の世界が色付いた。

全部を力尽くで薙ぎ払って、焼き払ってきたゲンちゃん。その灰色な焼け野原に、あなたはその名の通りに()をくれたんだ。

 

「だから……今回の決闘、やって良かったと本気で思ってる。彩葉もゲンちゃんも全力でぶつかり合えたから」

「……うん。うん、きっとそうなんだろうね」

 

クピっ、と一口。先ほどまでは紛う事なくジュースだった筈のものを口にしつつ、彩葉は頷いてくれる。ここまでくれば後もう少し。

 

「だから、ちょっとくらい無茶振りしようよ。石実なら受け入れるだろうしさ。ほら飲んで、食べて」

「いやいや、だからって迷惑掛けたいワケじゃないし。うん美味しい」

 

 

「偶にはさ、彩葉も甘える経験しといた方が良いと思うわけよ。これ別に石実への命令権だけの話じゃないからね。なんなら私に命令したって全然ウェルカムだから」

「そんなつもり無いってば〜。ところでだけど、なんか暑くない?」

「気のせい気のせい」

「そっか〜」

 

 

「んむ〜……しつこいぞ。私が命令しないってんだから、命令しないのー」

「強情な。如何してやりましょうか、芦花裁判長」

「うむ。判決、素直になるまで擽りの刑〜〜」

「わわっ。やめて〜〜」

 

やった!やりましたぞ!名付けて「ジュースをしれっと酒入りのに変えて鱈腹飲ませて彩葉をデロデロにしてやろう作戦」成功だ〜!

 

(ここまで酩酊状態になってしまえば、さしもの彩葉といえど多少は自分自身に素直になってくれる筈。そうすれば石実に対する率直な意見や欲求を引きずり出せて、2人の間にある蟠りや偏見だって無くせる!)

(けど真実。加担しておいてなんだけど、やっぱり彩葉に未成年飲酒させるのは不味かったんじゃ)

(でも見たくない?酔って欲望を曝け出した彩葉)

(見たいッ)

(思えたじゃんか)

「何だ2人とも〜、私を置いて密談か〜」

「何を生意気なっ、ほーれコチョコチョ」

「あひゃはっ!やめてってば〜!」

「酔った彩葉……可愛い……好きだなぁ……」

 

芦花さんや。そこで小声で済ませちゃうから貴女は拗らせ続けるのじゃぞ。

と思いつつも、ここまでで彩葉に言った言葉に嘘は全くない。石実と仲良くなって欲しいんだ、本当に。

3人だけじゃなく、4人でもっと深く繋がり合いたい。その結果、ゲンちゃんの恋が成就して彩葉とくっついちゃっても、それでも良い。そうなってしまうとしても、成績なんて物に縛られて対立してる、似た物同士の2人が分かり合う所を見たいの。

 

「だから、言って」

 

あなたがゲンちゃんに何を望むのか。

ゲンちゃんにどうして欲しいのか。

その先にきっと、私達の未来はあるから。

 

 

「────私」

 

斯くして、その時は来た。

 

「私、ね」

「うんうん、何?」

「石実に、ね」

「「!」」

 

出る。待ち望んだ物が、彩葉が隠してきた欲の形が。

随分と()()()()しまった。けどその甲斐はあったと、そう思いながら次の言葉を待って。

 

 

「消えて、欲しい、の」

 

 

「は?」

 

 

空気が。

 

 

「怖いの」

 

 

終わった。

 

 

「私が奪ったのは、分かってる」

 

 

意味が、分からない。

 

 

「分かってても、トップの座は、私のなの」

 

 

これは、彩葉の口から出た言葉なのか。

 

 

「そうでなきゃ、いけないの」

 

 

だって。

こんなに。

 

 

「追いかけて、来ないで」

 

 

切なくて。

弱々しくて。

 

 

「もう、やめ、て」

 

 

恐れに震える、その矮躯は。

 

 

「怖いよ……っ」

 

 

 

 

「いろはっ……!いろはごめんね!ほんとにごめんね……!!」

 

自らも涙を流しながら、蹲ってしまった彩葉を抱き締める芦花。その光景を私は呆然としながら、ただ見つめていた。それしか出来なかった。

 

これ程までに、彼の存在が、彩葉の負荷になってただなんて、思いもしなくて。

私の大好きな人達が、絶対に歩み寄り合えない現実を、受け入れられなくて。

 

「──っ、ぁ……──」

 

分かってた筈だ。彩葉は、母との折り合いを欠いて一人暮らしを始めた身だって。

母に認めてもらうには、学業で優秀な成績を修めないといけないって、本人から聞いた筈だ。

そのハードルがやけに高過ぎる事なんて、彩葉の日々の姿勢から察しがついた筈だ。

 

なのに私達は、それを慮りもせず。

ゲンちゃんを無責任に応援して、煽り立てて。

2人を無理やり並ばせようと画策して、誘導して。

 

その結果が………これか。

 

 

────キィ、と。私の背後で音が鳴る。

 

ドア。わざと少しだけ開けてた。中の声が、外でも聞こえるように。

 

彩葉の欲望が、()の耳にちゃんと入るように。

 

 

「ゲンちゃんッ!!!」

 

 

彩葉の意識がもう少し明瞭だったら、こんな大声で呼んだ時点でもっと事態は拗れてただろう。それでも私は呼ばずにはいられなかった。

 

けど答えは無い。

急いで出ても、彼に控えさせていた廊下はもぬけの殻。

 

「真実!一体どうしたの?!」

「ママ、ゲンちゃんは!ゲンちゃんはどこ!?」

「走って出て行っちゃったわ、だからあなたを呼びに来たの!」

 

そう聞いた瞬間から、既に行動は決まっていた。

彩葉を芦花に託し、靴も履かず、見慣れた背を探して夜の町へ飛び出した。




公式の芦花誕生日イラスト最高でしたね
お陰で彩葉は酒飲んだら記憶飛ばすヤツだと確信出来ましたよ、だからこの話を出せました

アレで記憶残って平然としてたらこえーよ酒寄ぃ
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