1.南陽郡から旅立ち
友達と楽しく過ごした時間は大切な思い出となります。
のび太にとっては大した事などない。ごく普通な事でした。
僅な時間ですが、共に過ごした事で美羽にとってのび太は、大切な存在と成りました。
恋愛とは違いますが依存と言えるでしょう。
そんな美羽でしたが、のび太から旅立ちを告げられました。
「妾を置いていくのか」と喉まで出かかったのですが、堪えて代わりに引き留めてみました。
「のび太、このまま妾達と一緒に過ごさないか」そう申し出ました。
「不十はさせないぞ」
大人ならやんわりと断るか苦笑を浮かべるのでしょうが、のび太はまだ小学生です。素直な感情表現で困ってしまいました。
「美羽様、そこは男性の台詞ですよ。でもそんなお嬢様も素敵です!」
ちょっと頭のネジが外れていますが、言うべき事は言っておきます。
「お嬢様もそう言ってますし、のび太さん了承して下さいますよね?」
仲良くなった=家族、な認識で手離し難かったのです。
「すみません。華琳様や皆に戻ると約束したので」
春蘭との出会いが出ていく切欠に成ったのは確かです。
七乃は困ったような笑みを浮かべています。
「そうか」残念そうに顔をしかめる美羽。のび太はしょんぼりとした美羽の手を握りました。
「用事が終わったらまた遊びに来るから!」
少し笑みを浮かべる美羽の様子を見て、七乃の脳裏に監禁の二文字が脳裏に浮かびました。でもそんな事をすれば嫌われてしまいます。
ここは恩を売って次の機会に繋げる事にしました。
「これは些少ですがお世話になったお礼です」
ずっしりと重い巾着がのび太に渡されました。中を覗いてのび太は驚きました。金塊や宝石が入っていました。
「こんなにいただけませんよ!」
「お嬢様も私ものび太さんには感謝して居ます」
七乃笑顔で頭を振って、帰そうとするのび太の手を押さえます。
「そんな、ぼくの方こそ良くして貰ったのに」
美羽がのび太の手をきゅっと握りました。
「のび太、いつでも戻って来い。待ってるぞ」
「ありがとうございます」
のび太は北に向かいました。そして行き倒れに遭遇します。
2.一期一会?
陳宮こと、音々音には大望がありました。いつか素晴らしい主君に仕え天下にその名を轟かせる。軍師として主君を支える事は喜びです。
しかし今の音々音には何もありません。
(あの商人、まさか人買いだったとは!)
都に向かう途中、親切に荷馬車へ上げてくれた商人でしたが、眠りこけている所で会話が聞こえて来ました。
「磨けばそれなりの器量だ。良い値で売れるだろうな」
身の危険を悟った音々音は商人の目を盗んで逃げ出しました。
荷物を諦めて着の身着のまま、食糧や水もありません。
「困ったのです」
空腹と披露で動けそうにありませんでした。
生きるためなら何でも許される。食べるために人を殺し奪う事も悪ではない。
そんな世の中で目の前の少年は自分の食料を差し出して来ました。
「お腹減ってるの? 良かったら、これ食べなよ」
それは袁家で用意された肉まんです。いささか冷めてはいますが、肉も皮も極上の逸品です。
そして空腹は最高のスパイスでした。
「この恩は忘れません」
「恩なんて、大層な……」
目を感動にキラキラさせて子犬が尻尾を振る様に控える音々音に、人の良い少年、のび太は困惑の表情を浮かべています。
「音々音は陳宮と申します。真名は音々音です。気軽にねねと呼んで下さい、ご主人様」
「ご主人様!?」
さすがにその呼び方は恥ずかしさがありました。のび太は全力で否定します。
「のび太殿の生国は東の島国ですか」
ご主人様は勘弁して下さいと頼み込み、様付けを止めさせ妥協したのが殿でした。
二人は都に揃って都に向かっていました。都こそ情報や人材の集まる場所と言う考えからでした。
都への道は山を幾つも越えねば成りません。山間の隘路は女子供には苦行と言えました。
それに国の財源は無限ではありません。整備されていない道が殆どです。お陰で地方と大都市の経済格差は広がるばかりです。
「ねねちゃん避けて!」
のび太は叫びました。はっとした音々音が顔をあげると、岩が崩れ落ちて来ていました。
呆然とした音々音をのび太が突き飛ばしました。岩と土砂がのび太を飲み込みました。
「のび太殿!」
脇に流れる谷川にのび太は落ちていきました。
音々音は残された眼鏡を手に震えました。
3.怪力
川を流されたのび太は気がつくとどこかの川原に打ち上げられて居ました。
「ううっ、寒っ!」
濡れた体に尿意を感じて繁みに用を足しに向かいました。
すると、背を向けた少女に虎が襲いかかる瞬間が見えました。
「危ない!」
のび太は声をかけると同時に弓を構え、矢を放ちました。
「へぅ!」
しかし予想外の光景が現れました。
華奢に見えた少女はなんと虎を投げ飛ばしたのです!
少女は虎の頭に矢が三本刺さっている事に気づきました。
唖然としているのび太は弓を持ったまま固まっていますが、少女は自分を救ってくれた相手だと気付きました。
それがのび太と董卓の出会いでした。
「えっと……」
格好つかないのび太でしたが、董卓はそう思いません。
くすりと笑い、感謝の気持ちからのび太を家に誘いました。