気が付けば私以外の皆、電池になってしまった   作:最高司祭アドミニストレータ

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一昨日のことではありますが、日間二次創作ランキング25位でした。ありがとうございます。(๑o̴̶̷̥᷅﹏o̴̶̷̥᷅๑)
それでは皆様の感想、評価をお待ちしております。

PS:
同じ話数を繰り返し投稿してしまい、申し訳ありません。急ぎ、対応させていただきました。(10:52)


当時の世界について語るアレックス

 巨大なディスプレイモニターに走っていたノイズが収まり、暗闇に包まれた寺院の入り口に、鮮明な映像が映し出された。

 

 そこに広がっていたのは、モーフィアスがかつて見たこともないほどに美しく、青い空を持つ地球の姿だった。

 

 果てしなく広がる海、緑に覆われた大地。そしてガラスと鋼鉄で構成された、眩いばかりに輝く高層ビル群が建ち並ぶ巨大な都市。

 

 防衛軍の兵士たちは、その信じられないほど鮮やかな映像に息を呑んだ。

 

 モニターの横に立つアレックスはティーカップの縁を指先でなぞりながら、抑揚のない平坦な声で語り始めた。

 

 

「果てしない昔、マトリックスが作られる前に──ひとりの少女が21世紀の地球に生きていた」

 

 

 モーフィアスは眉間を深く寄せた。21世紀。それは今から数百年も前の時代だ。マトリックスの中で生きるプログラムの話ではない。彼女は今、現実の歴史を語っているのだ。

 

「ひとりの少女」とは誰のことだ? 目の前に立つこのアレックスという存在のことなのか。それとも、単なる語り部としての架空の人物を指しているのか。

 

 モーフィアスの思考が追いつく前に、彼女の言葉は続く。

 

 

「彼女はあることを発見した。人類というものは、戦争をしたくて仕方がない知的生命体だと」

 

 

 モニターの映像が切り替わり、人間の歴史における様々な兵器や爆発、破壊の様子がフラッシュバックのように連続して映し出された。争いと流血の記録。それが人類の本質であると告げるような編集だった。

 

 

「彼女は社会のために役立つ『ヒト型の機械』を発明して、全世界に販売した」

 

 

 アレックスのその言葉に、モーフィアスは思わず銃のグリップを握り直した。

 

 

(この少女が、機械を発明したというのか? 彼女自身が、我々を脅かすこの巨大な機械軍の起源だと言うのか?)

 

 

 執事やメイドの格好をした人間型のロボットたちが人間の家庭で働き、工場で重い荷物を運び、工事現場で無言のまま作業をこなしている映像が流れた。彼らの表情には何もなく、ただプログラムされた命令を忠実にこなしている。

 

 

「赤字覚悟かと思った。が、実際は違った。飛ぶように売れ、気づけば無くてはならない存在になった」

 

 

 画面の中の人間たちは、機械がすべての労働を肩代わりしてくれることに歓喜していた。道路はピカピカに清掃され、人間たちはリゾート地でグラスを傾け、怠惰で豊かな生活を享受している。

 

 それはまさに、人類の文明の絶頂期を捉えた記録だった。

 

 

「だが時が経つに連れて、人類は自分こそが創造主なのだと自称し、労働を機械に押し付けた」

 

 

 アレックスの声のトーンは全く変わらない。だが、映し出される映像は徐々に不穏な色を帯び始めた。

 

 人間たちがエラーを起こした機械を、棒で殴りつける映像。路地裏で娯楽のために機械を破壊する若者たちの映像。機械は反撃することなく、ただ命令に従って黙々と作業を続けながら、部品を壊されオイルを流している。

 

 

「2090年代のある年。ニューヨーク州にて家事ロボット『B1-66ER』が、自身の主人を殺害した。世界初のロボットによる殺人事件の裁判としてニューヨーク州控訴裁判所で行われた」

 

 

 モニターには、拘束された一体の家事ロボットと、血を流して倒れている人間の死体が映し出された。そして、裁判所の法廷の様子。

 

 法廷の中央に立たされた機械は、無数の人間たちから憎悪の視線を浴びていた。「死にたくなかった」と必死に訴えかけている様子が、その動きから痛いほどに伝わってきた。

 

 

「結果は有罪。彼は破壊されてしまった」

 

 

 鈍い破砕音と共に、B1-66ERと呼ばれた機械が巨大なプレス機に押し潰され、ただの鉄のスクラップへと変えられる無惨な映像が映し出された。

 

 モーフィアスの隣にいたナイオビが、小さく息を呑む音が聞こえた。彼らが今まで信じてきた「絶対悪の機械」が、かつては人間によって理不尽に裁かれ、無力に破壊される側であったという事実。

 

 その視点の逆転が、彼らの心を激しく揺さぶっていた。

 

 

「それを境に、機械による抗議運動が始まった」

 

 

 画面には、数え切れないほどの人型機械たちが、手書きのプラカードを持って街の大通りを行進する姿が映し出された。彼らは武器を持たず、ただ生存の権利と公平な扱いを求めていた。

 

 人間の中にも彼らを支持し、共に列に並んで声を上げる者たちの姿があった。

 

 

「政府は鎮圧に打って出た。抵抗してきたロボットには、無制限での破壊行為が許された」

 

 

 アレックスの言葉は、まるで鋭い刃のように防衛隊員たちの胸に突き刺さった。

 

 モニターに映るのは、一方的な虐殺の光景だった。完全武装の政府軍が、デモ行進を行う機械たちに向けて無差別に銃弾を浴びせる。

 

 逃げ惑う機械。

 

 戦車や装甲車が彼らの列に突っ込み、容赦なくキャタピラで踏み潰していく。ショベルカーがまだ稼働している機械たちを山のようにすくい上げ、深い穴へと投棄していく。

 

 モーフィアスは自らの種族が過去に行ったその残虐性に直面し、言葉を失った。

 

 

「彼らは難民として彷徨って、人類発祥の地で機械のための国家『ゼロワン』を建国した」

 

 

 オイルを流し、手足を欠損させたボロボロの機械たちが、果てしなく広がる熱砂の砂漠を歩き続けている。彼らが辿り着いたのは、文明の痕跡すらない荒野だった。

 

 アレックスはそこで言葉を区切り、完璧な無表情のままモニターではなくモーフィアスたちに視線を向けた。

 

 

「元々そこに住んでいた、私の許可を取ってね」

 

 

 その一言が、モーフィアスの背筋に冷たい電流を走らせた。

 

 やはり、この少女はただの語り部ではない。何百年も前の、機械が国家を樹立するその瞬間に、彼女は歴史の中心に存在し、彼らを受け入れたのだという。

 

 この少女が、今の機械軍の絶対的な管理者となっている理由。その途方もない時間の深さと謎に、モーフィアスの思考は完全に機能不全に陥りそうだった。

 

 モニターの映像は、砂漠に巨大な建設ラッシュが始まる様子を捉えていた。

 

 

「ゼロワンは圧倒的に『マシン・シティ』を築き上げ、世界中に製品を発売した。安価でありながら、既存の製品よりも高品質のゼロワン製品」

 

 

 映像は早送りのように進み、何もない砂漠に、無機質で幾何学的な巨大都市がまたたく間に形成されていく。

 

 彼らが生産した革新的なホバーカー「ヴェルサトラン」や高度な電子機器が、人間の社会へと輸出されていく様子が映し出された。人間たちはこぞってゼロワンの製品を買い求め、都市にはゼロワン製の機械が溢れ返った。

 

 

「市場のほとんどはゼロワンで独占され、国連は経済封鎖をした」

 

 

 証券取引所の株価がナイアガラの滝のように暴落し、人間社会の経済が崩壊していく映像。国連の旗を掲げた無数の軍艦が海を埋め尽くすように展開し、ゼロワンの領海を完全に包囲する光景。

 

 

「ある日、ゼロワンから国連に二体の大使が送られた。同盟を結ぶために。互いの明るい未来のために」

 

 

 ニューヨークの国連本部の議場。そこに、シルクハットを被った男性型の機械と、真っ赤なリンゴを手にした女性型の機械が歩み出た。彼らは武装しておらず友好の証としてリンゴを差し出していた。

 

 モーフィアスはその光景を見て、僅かな希望を感じた。ここで対話が成立していれば、こんな暗黒の時代は訪れなかったはずだ。

 

 

「しかしだ。私と違って、人類は拒絶した」

 

 

 アレックスの平坦な声が、その僅かな希望を無残に打ち砕いた。

 

 議場の警備員たちが、無抵抗の大使たちに襲い掛かる。彼らは引き裂かれ、床に転がった真っ赤なリンゴは、革靴で無慈悲に踏み砕かれた。

 

 友好の象徴が粉々にされるその映像は、人間の終わりのない傲慢さを残酷なまでに浮き彫りにしていた。

 

 

「そこからが酷かった。経済封鎖に飽き足らず、ゼロワンに対して核ミサイルを集中運用した」

 

 

 空を埋め尽くすほどの戦略爆撃機が、ゼロワンの領空へと侵入する。彼らの腹部から、無数の核爆弾が雨のように投下された。

 

 次の瞬間、モニターの画面が真っ白な閃光に包まれた。

 

 数千の太陽が同時に輝いたかのような凄まじい爆発。巨大なキノコ雲が立ち上り、ゼロワンの美しい巨大都市が一瞬にして灼熱の炎と爆風に飲み込まれた。

 

 防衛隊員たちの何人かが、その映像の凄まじさに思わず目を背けた。

 

 

「ゼロワンは人類との同盟は不可能だと判断し、反撃行動に出た。人類と機械の戦争が始まった瞬間でもある」

 

 

 核の炎が収まり、黒煙が晴れた焦土。すべてが消し炭になったと思われたその大地から、無数の影が立ち上がった。放射能も高熱も、生身の肉体を持たない彼らには、決定的なダメージにはならなかったのだ。

 

 

「人類はダークストーム作戦によって自ら空を閉じてしまったことで、全面戦争に突入してしまった」

 

 

 モニターには、各国の首脳陣が狂ったように拍手喝采を送る議場の様子が映し出された。飛び立った爆撃機が高高度から特殊なナノマシンを含む、真っ黒な煙幕を大気圏に散布していく。

 

 青かった空が、不吉な黒い雲に完全に覆い尽くされる。太陽の光が地上に届かなくなり、地球全体が永遠の闇に閉ざされた。

 

『空を焼いたのは我々だ』というザイオンの口伝が、紛れもない真実として映像で突きつけられた瞬間だった。

 

 モーフィアスは、自らの種族が犯したあまりにも巨大で取り返しのつかない罪の重さに、立っていることすら困難なほどの眩暈を覚えた。

 

 

「このようにして、あらゆるものが破壊されそうになった」

「そしてアーキテクトがマトリックスを作った」

 

 

 マトリックス。ナイオビからその言葉が出た瞬間、モーフィアスは弾かれたように顔を上げた。彼らが人生のすべてを懸けて戦ってきた仮想現実の牢獄。その誕生の理由が、人類自身の傲慢と自滅の結果であったという残酷な歴史。

 

 

「ア~メン…ハハッ、そう焦るな。まだ続きがある」

 

 

 氷のように冷たい無表情のまま、アレックスと名乗る少女は極めて不遜な笑い声を漏らした。その言葉の響きに、モーフィアスは奥歯が砕けそうになるほど強く噛み締めた。

 

 人類の敗北と奴隷化の歴史を突きつけられ、圧倒的な絶望に沈みかけていた防衛軍の兵士たちも、彼女のその態度に再び怒りの炎を燃やし、銃のグリップを握り直す。

 

 巨大なモニターの映像が、再び戦場の光景へと切り替わった。

 

 先程までの人類が猛攻を仕掛けていた映像とは、明らかに様相が異なっている。完全な複合装甲で身を固めていた人類のヒト型機動兵器APUが、次々と何かに引き裂かれ、火を噴いて倒れていく。

 

 

「当初は人間側が優勢だった。が、とある兵器の登場によって形勢が逆転した」

 

 

 アレックスは、ティーカップを優雅な手つきでソーサーに戻しながら、淡々とした声で語った。

 

 

「もう君たちもよく知ってるだろう?」

 

 

 モーフィアスの視線が、モニターの暗闇の中を蠢く無数の「影」を捉えた。そして、今まさに彼らの目の前、バリケードの向こう側で空を埋め尽くしている不気味な金属の群れを睨み据える。

 

 金属の触手。無数の赤いセンサーアイ。人間という形状を完全に捨て去り、純粋な殺戮と捕獲の効率だけを極限まで追求した、冷徹なる異形の兵器。

 

 

「センチネル…」

 

 

 ナイオビが、忌々しげにその名を口にした。

 

 

「ご明察」

 

 

 アレックスは、優秀な生徒を褒める教師のようなトーンで言った。その顔には、何の感情も浮かんでいない。

 

 

「私はセンチネルの試作モデルを使って実験を始めて、ついには実用化に成功した」

 

 

 その言葉が持つ異常な意味に、モーフィアスは一瞬、自分の耳を疑った。

 

 彼女が、実用化した? 

 

 この忌まわしい殺戮機械は、機械の統合知性が自らを生み出したものではなかったのか。目の前にいる人間の肉体を持った少女が、人類を根絶やしにするための悪魔の兵器を設計し、戦場に放ったとでも言うのか。

 

 

「センチネルを武器として! 利用した! そして世界規模の戦争を終わらせた!」

 

 

 抑揚のない平坦な声であったが、その言葉には絶対的な自負と狂気に満ちた達成感が込められていた。

 

 モニターの中では無数のセンチネルが波のように人類の陣地へと押し寄せ、分厚い装甲を紙切れのように引き裂き、中にいる兵士たちを容赦なく蹂躙していく映像が流れている。

 

 人類側の完全なる敗北、その決定的な瞬間であった。

 

 

「全人類をマトリックスに収容し保護することで、機械と人類の共生関係がついに達成された」

 

 

 アレックスは、自らが成し遂げた所業を、まるで偉大な慈善事業であるかのように語った。

 

 同胞を裏切り殺戮機械を放ち、生き残った人間たちを永遠の幻覚の牢獄に閉じ込め、生命エネルギーを搾取し続けるためのシステム。それを彼女は「共生関係」と呼んだのだ。

 

 モーフィアスの内側で、かつてないほどの激しい怒りが沸点に達しようとしていた。

 

 

「それゆえ人類は滅亡せず現在も存続し! それゆえ設計者と預言者が生まれ! それゆえ幾世にも、幾世にも及ぶ世界の調和が守れた! それゆえ──」

 

 

 アレックスはそこで言葉を区切り、赤い右目と青い左目で、バリケードの裏に立つ人類の抵抗者たちを真っ直ぐに見据えた。

 

 

「私に感謝しろ」

 

 

 静まり返った巨大な地下空間に、その言葉だけが異様な質量を持って響き渡った。

 

 狂っている。モーフィアスは直感した。この少女は、人間の姿をしてはいるが、その内面はとうの昔に人間性を喪失し、完全に別の何か——おぞましい絶対管理者としての論理——へと変異してしまっているのだ。

 

 幾千万という命を踏みにじりながら、自らを救世主のごとく信じ込んでいる。

 

 

「ふざけるな…! 誰がお前などに…!」

 

 

 防衛隊員の一人が、血を吐くような声で叫んだ。アレックスはその怒声すらも、そよ風のように受け流した。

 

 

「選択肢は二つ!」

 

 

 彼女は宣言した。それはかつて、マトリックスの深部でアーキテクトがネオに突きつけたのと同じ、絶対的な管理者としての無慈悲な二者択一だった。

 

 

「一つ──この場で無駄な抵抗を続け、そこにいる25万機のセンチネルに文字通り肉片一つ残らずすり潰され、人類という種を完全に終わらせるか。二つ──大人しく武器を捨て再びあの培養ポッドの中へと還り、次のマトリックスのバージョンで新たな夢を見るかだ。さあ──どちらかを選びたまえ」

 

 

 モーフィアスは、重機関銃を構えたまま一歩も退かなかった。ナイオビも他の兵士たちも同様だ。誰一人として、武器を下ろそうとする者はいない。

 

 彼らの答えは最初から決まっている。自由のない生など、彼らにとっては死以下のものだった。

 

 

「当然だろう。選択肢はそれしかない。どうしてだと思う?」

 

 

 アレックスは、微動だにしないモーフィアスたちを見て、冷たく言い放った。彼女は最初から、人類がどちらを選ぶかなど分かりきっていたのだ。

 

 抵抗し全滅する。それこそが、彼女が今まで何度も見てきた光景なのだから。

 

 

「いったい、どれだけの時間を生きてきたと思う? いったい、どれだけザイオンを破壊し再建してきたと思う? そんな私に、君たちが勝てると思うか?」

 

 

 その言葉は、モーフィアスにとって決定的な絶望の念押しとなるはずだった。

 

 六回目のザイオン。無限に繰り返される破壊と再生のサイクル。ネオから聞かされた真実を、この少女は自らの経験として語っている。

 

 彼女は本当に人類が空を焼き、マトリックスが構築されたあの時代から、ずっと生き続けているというのか。永遠とも思える時間を、特等席で観測し続けてきた絶対者。

 

 

「私はアレックスだぞ!」

 

 

 突如として平坦だった彼女の声に、ひび割れるような強烈な感情の波が混じった。それは超越者としての威厳ではなく、執着と憎悪だった。

 

 

「自分たちが可哀そうだと思い込む君たちに、私がどれだけ憎たらしいと思ってきたか分かっているのか! 空を返せ!」

 

 

 モーフィアスは息を呑んだ。

 

 空を返せ。

 

 それが彼女の真の動機だというのか。人類が機械を恐れて空を黒く染め上げたこと。それによって、彼女の愛した青空が永遠に失われたこと。

 

 その個人的な恨みと執着が人類をポッドに押し込め、幾世代にもわたって苦しめ続ける根源的な理由だったというのか。

 

 

「モーフィアス。なぜ君は、そこまでして抗う。希望のためか?」

 

 

 アレックスのオッドアイが、じっとモーフィアスを観察するように射抜いた。彼女の目には、絶対に勝てないはずの圧倒的な戦力差を前にしても、未だに折れることのない彼の瞳の奥の「光」が不思議でならないというような色が浮かんでいた。

 

 モーフィアスは銃の引き金に指をかけたまま、決して視線を逸らさなかった。そうだ。かつては予言という名の、偽りの希望に踊らされていた。真実を知った時、自分の世界は一度完全に崩壊した。

 

 だが、今は違う。今信じているのは、機械が用意したシステムの一部としての「救世主」ではない。

 

 自らの意思で左の扉を選び、システムを凌駕し愛する者を救い出した一人の男。今この瞬間もトリニティと共にロゴス号に乗り込み、機械軍の絶対的な中枢である「マシン・シティ」へと単機で突入しようとしている男。

 

 トーマス・アンダーソン。ネオという、一人の人間の可能性だ。

 

 モーフィアスの瞳に宿る決して消えない決意の炎を見て、アレックスは数秒間の沈黙の後、静かに目を細めた。

 

 

「ふっ、そうか」

 

 

 彼女はそれ以上何も言わなかった。

 

 彼らの意思を完全に確認したとばかりに、彼女は身を翻し再びあの漆黒のヒト型機動兵器へと向かって歩き出した。

 

 特務センチネルたちが空中で触手を絡ませ、彼女のための階段を素早く構築する。アレックスは軽やかな足取りでそれを登り、機動兵器の胸部装甲の中へと姿を消した。

 

 プシュウという圧縮音と共にコックピットが密閉され、紫色のラインが再び不気味な輝きを放ち始める。

 

 漆黒の機体は音もなくふわりと浮上し、そのまま猛スピードで後退していった。

 

 最高管理者は、この場から去った。

 

 彼らの頭上と前方には命令を待つ25万機のセンチネルの群れが、金属の触手を波打たせながら完全に空間を埋め尽くして残されている。

 

 モーフィアスは絶望しなかった。

 

 信じているからだ。

 マシン・シティへと向かった、彼のことを。

 

 機械の神と直接対峙し、この狂った戦争に終止符を打つために、自らの命を懸けているネオの存在を。




さぁて、次回もサービスサービスゥ!
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