Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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プロローグ

「……私のミスでした」

 

若い女性の声と心地の良い列車の音で目が覚める。

どうやら眠ってしまっていたらしい。

 

いまだ睡眠を欲する重い瞼をあけ、少しづつ意識がはっきりする。

 

                                 (血の匂い...)

 

最初に目にしたのは列車の汚れ一つないきれいな白。

そしてその白を塗りつぶすような真っ赤な血。

血は自分の足元にまで広がっていた。

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」

 

声のする方向へ顔を向ける。

白い車内に朝日か夕陽か分からない陽の光が差し込み、思わず目を細める。

逆光でシルエットが浮かぶ。

 

「結局、この結果にたどり着いて初めて、

あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」

 

少しずつ目が慣れシルエットの正体がはっきりする。

 

驚いたのは声の相手がまだ子供だったこと。

 

その女性はピンク色の髪で、床につくくらい長い。

服は何も描かれていないキャンバスのように白く軍服のようで、

将校がつけるであろう胸章がついていた。

 

              (それなりの地位にいるようだが、子供がなぜ軍服を...)

 

 

だがその驚きも上書きされる。

少女の白を基調とした服を、足元に血溜まりができるくらい

おびただしい量の血が赤く染めていた。

 

                               (怪我している...)

 

経験則で分かってしまった。

あの世界で何度も見てきた銃傷。

この少女はもう助からない。

 

だからといって見過ごすことなどできない。

今からでも出血量を抑えれば、医療班を呼べばあるいは...。

 

焦る自分を前に当の本人は気にせず、静かにゆっくりと話す。

 

「……今更図々しいですが、お願いします」

 

少女の治療をしようにも、金縛りにかかったかのように身体が動かない。

 

「透子先生」

 

                           (何故、アタシの名前を...)

 

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」

 

「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……」

 

                        (同じ選択?君は一体...)

 

「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」

 

「あなたにしかできない選択の数々」

 

この少女とは一度もあったことはないはずなのに、どこか懐かしさを感じる。

 

「責任を負う者について、話したことがありましたね。

あの時の私には分かりませんでしたが.........今なら理解できます」

 

「大人としての責任と義務。

そして、その延長線上にあった、あなたの選択」

 

             (選択、か...アタシの選択が正しかったらアイツを......)

 

「それが意味する心延えも」

 

「ですから、先生。

私が信じられる大人である、あなたになら」

 

「この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を......

そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです」

 

「だから先生、どうか――」

 

抗えない瞼の重さに、視界が暗転する。

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