Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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アビドス対策委員会編
アビドスへ


 スミ達をシャーレに配属して数日。

 ワカモがバディとしてシャーレにいること(色々端折った説明をした)をスミ達に伝えたら、お前正気か? という目で見られたが気にしないことにした。

 皆大事な生徒だし、まだ子供だ。手が届くなら助けてあげたい。

 そしてスミ達はカタカタヘルメット団の名前を捨て、新たに〈シャーレ防衛隊〉と名乗るようになり、自ら率先してアタシの仕事に関わってくれる。

 これが思ったよりも手伝ってくれるため勉強の合間で構わないと伝えたら、「これ以上世話になったら返せるものがない」と責任を感じて手伝ってくれているらしい。

 アタシの自己満足がスミ達を苦しめていないだろうか......今後は少し気を使うとしよう。

 ヘルメット団をやっていたこともあってか仲間意識が強かったのか、分からないことがあれば周りに聞いたりして解消しているところをよく見かけるし、早いもので既にアタシの仕事の手伝いをしている者もいる。

 スミ達の停学や退学の理由は何であれ、PMCまがいのことをしていたのはそうせざるを得ない状況だったからだろう。

 今のスミ達を見ていると根は真面目な子がたくさんいる。

 きっと他のところにもこんな子達はいるはずだろうから早く何とかしてやりたいものだが──

 

 

 

「──で、ここはどこなんだ」

 

『ごめんなさい、先生......

 このあたりの地図が最新化されたものが無くて、案内しようにも分からなくて......』

 

 乾いた風と砂が身体にぶつかる。

 今いるのは砂漠のど真ん中。正しくは砂漠に埋もれた街のどこかで立ち往生している。

 

 

 ──────

 

『おはようございます、先生!』

 

「おはよう、アロナ」

 

 眠い目をこすりながらコーヒー片手に仕事をしていた。

 

『ここ数日間、シャーレに関する噂もたくさん広まっているみたいですし、

 他の生徒達から助けを求める手紙も届いてます』

 

「そうなの? シャーレは頼ってもいい存在として認められたということかな」

 

『はい! 良い兆候です! 

 私達の活躍が始まるということですから!』

 

 目が輝いてウキウキが隠しきれていないアロナ。

 

『ですがその中に......ちょっと不穏な、こんな手紙がありまして。

 これは先生に一度読んでもらった方が良いかなと』

 

 そう言われ、アロナから手紙をもらう。

 中身を要約すると、

「暴力組織に学校が狙われて、対処しようにも補給が底をつきそう。

 このままだと学校が占領されてしまうので、アビドス高等学校の力になってくれないか」

 ということだった。

 

「不穏とかいうレベルじゃないな、こりゃ......」

 

 学校が占領されるって、しかも地域の暴力組織に。

 子供に手を上げる暴力組織......

 義手の関節がカチリと鳴る。

 

 そもそもなぜ学校を狙う? なにか重要なものが隠されていたりするのだろうか? 

 

「暴力組織の目的はなんだ......?」

 

『全く想像がつかないですね......

 それにしても......アビドス高等学校ですか......

 昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました』

 

 自治区。

 基本的に一つの学園が一つの自治区を治めている。

 例外もあるらしい。

 とても大きい自治区......ゲヘナやトリニティと同じくらいだろうか。

 

『どれほど大きいかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです!』

 

「それ大きさも関係してるけど、どっちかっていうと入り組みすぎてるのが原因だったりしない......?」

 

『そうですよね? 

 いくらなんでも街のど真ん中で遭難なんて......』

 

 さすがに誇張だとは思うが......

 

「それじゃあ、アビドスに向かうとしようか」

 

『すぐに出発ですか!? さすが、大人の行動力!』

 

「困ってる生徒を見過ごせないからね。

 それに暴力団っていうのが気にかかる」

 

 スミ達には悪いが、仕事でアビドスに行ってくるからシャーレを任せたと言ったら

 

「先生、アビドスに行くのか? 

 マジで気をつけろよ? あそこはおっかねぇぞ......

 なんせ行って帰ってきたやつを見たこと無いからな」

 

「先生、悪いことは言いません。やめた方が良いです」

 

 と散々な言われようだった。

 

 ──────

 

 息巻いて向かったはいいが、学校が見つからず何日か迷い続けてしまったというわけである。

 もちろん準備はしてきた。

 方位磁針、予備バッテリー、水、食料、日差し避け、キャンプ道具一式etc......

 ここまで用意周到だったのに尽きるとは......

 

「アロナ、地図見して......」

 

『大丈夫ですか、先生? 

 だいぶ顔がやつれてますが......』

 

「久々のキャンプ生活で......身体が順応しきれてない......」

 

 何年前か分からない地図と方位磁針を見比べるが......

 

「なんで着かないんだ......」

 

 もしかしてアビドスは方位磁針が狂うのか? 

 しかも星の位置で方角を確認しようにも、あっちの世界とは違う星座の並びで全く役に立たなかった。

 

「あなた様」

 

 シュタッと高いところにいたワカモが偵察から帰ってきた。

 ちなみにワカモがいる訳は、「私は先生のバディです。離れるわけにはいきません」と固い意志を感じたためである。

 

「あ、ワカモ。どうだった?」

 

「付近にそれらしい建物はどこにも......

 すみません、お役に立てず......」

 

「ううん、ありがと。ワカモ」

 

 シュンとうなだれるワカモを撫でて周囲を見渡す。

 

 これは本当に困った。

 どうしたものかと思案していると、キキーッと音を鳴らしロードバイクが横に止まった。

 

「ん?」

 

 銀髪にケモミミが生え、学生服を着た子がロードバイクから降り話しかけてきた。

 出発する前に資料で見たな......

 確か名前は、砂狼シロコ。

 というか今の一瞬でワカモが消えたが...まぁ大丈夫か。

 

「......あの......大丈夫? 

 腕の骨折もしてるし」

 

「腕は大丈夫なんだけど、土地勘が無くて道に迷ってね。

 つまりまったく大丈夫じゃない」

 

「堂々と言うことじゃないと思うけど......どこに向かおうとしてたの? 

 ここらへん何もないから、用があるとしてもうちの学校だけだけど」

 

「うちってことはもしかしてアビドス高等学校の生徒? 

 よかった~、アタシはシャーレで先生をしてる風見透子。

 よろしく」

 

「私は砂狼シロコ。

 ......そっか、久しぶりのお客様だ。

 私が案内してあげる。すぐそこだから。先生は歩ける?」

 

「大丈夫、体力には自信がある」

 

 サムズアップして余裕さを出すが、後に後悔することになる。

 

 ──────

 

「ただいま」

 

「あ、足が......震える......」

 

 教室のドアをくぐる。

 一人だけものすごい息を切らしながら。

 すぐそこって言っていたが、全くそんなことはなかった。

 現役の時ならまだ余裕が残っていたが、書類仕事メインになった今は無理だ。

 ワカモは気付いたらおらず、モモトークに「おそらく私はいない方が良いでしょう」と書いてあった。

 まぁ、どこかで見ていると思うし、大丈夫だろう。

 

「おかえり。シロコせんぱ、い......

 

 ってその息絶え絶えで骨折もしてて大荷物を持った人は誰!?」

 

 黒髪ツインテールに猫耳の生えた子、黒見セリカが驚いた声を挙げる。

 

 

「わぁ、シロコちゃんが死にかけの人を連れてきました!」

 

 今度は淡い金髪の子がニコニコしながらひどいことを言う。

 ......いや実際に疲労と喉の渇きで死にかけているが。

 確か、十六夜ノノミだったか。

 

「もしかして拉致!? 

 シロコ先輩がついに犯罪に手を......!!」

 

 リンのように眼鏡をかけ、耳がとがった子がとんでもないことを口走る。

 傍から見て拉致に見えるのだろうか......

 この子が手紙を送った本人、奥空アヤネ。

 

「.............」

 

 連れてきたシロコ本人は絶句である。

 

「説明したいんだけど......その前に水......もらっていい......?」

 

 ──────

 

「いやぁ、助かった! 

 水ありがとうね」

 

「いえ、大丈夫ですよ

 それよりあなたは......?」

 

 荷物を床に置き、四人の前に立ちシャーレのIDカードを見せる。

 

「名乗るのが遅くなってごめん。

 アタシは連邦捜査部シャーレの顧問、風見透子。

 よろしくね。

 今は一部だけど補給品はこの荷物の中にあるから」

 

「......え、ええっ!? まさか!?」

 

「シャーレの先生!?」

 

「わあ☆支援要請が受理されたのですね! 

 よかったですね、アヤネちゃん! 

 

 あ、こちらも自己紹介しないとですね!」

 

「私は十六夜ノノミです! シロコちゃんと同じ2年生です☆」

 

 ノノミはシロコにくっついてピースした。

 シロコも「ん」と言って同じポーズをとる。

 

「私は奥空アヤネです。

 こちらは黒見セリカちゃん。

 私たちは1年生です」

 

 フンッと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 ツンデレ、というやつか。

 

「アヤネ、君が手紙を送ってくれた子だね」

 

「はい! 先生のおかげでようやく弾薬や補給品の援助が受けられます! 

 あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと......」

 

 ホシノ先輩っていうのは3年生で......とアヤネから説明を受けていると

 

「委員長は隣の部屋で寝てるから、私が起こしてくるよ」

 

 そう言いセリカが部屋を出た瞬間。

 

ダダダダダダダダダダダダダダダッ! 

 銃声が響き窓ガラスが割れる。

 

「キャアァッ!」

 

「ッ! 全員伏せてッ!!」

 

 聞きなれた銃声に身体が瞬時に動き、一番近くにいたアヤネを庇うようにしゃがむ。

 

「じゅ、銃声!?」

 

「!!」

 

「先生! 大丈夫ですか⁉︎」

 

「大丈夫」

 

 アヤネから退き、体にかかったガラスを払う。

 

「ひゃーっはははは! 

攻撃、攻撃だ!! 奴らはすでに弾薬の補給を絶たれている! 

襲撃せよ!! 学校を占領するのだ!!」

 

 姿勢を低くしたまま壁に寄り、窓からちらりと外を見る。

 すると校門前に集まって銃を撃ちながら叫んでいるのは、恰好は少し違うがスミ達が以前していたカタカタヘルメット団だった。

 ここでも子供が兵士みたいなことをしているのだろうか、と悔しい思いをしつつ手紙の内容を思い出す。

 地域暴力団に襲われていると書いてあったが......

 だが先ほどのヘルメット団の発言を聞くに、スミ達のようなPMCまがいではなく自主的に襲いに来ている可能性があるため、おそらく倒さないと話にならないだろう。

 

「もしかして暴力団ってカタカタヘルメット団のこと?」

 

 外を見たときに感じたが、スミ達の装備と一緒に見えるが重火器に違和感がある。

 なぜ弾薬の種類が違う......? 

 スミ達は全員共通の弾薬を使用した銃を使っていたのに、あれではもしもの場合の共有ができない。

 

「そうです! ヘルメット団のことです!」

 

「あいつら......!! 性懲りもなく!」

 

 シロコが怒りをあらわにし、拳を握る手に力が込められている。

 どうやらアビドスは過去に何度か襲われているらしい。

 

 どうしたものかと考えていると教室のドアを開け、

 セリカがピンク髪の子供を引き摺って入ってきた。

 先に言っていたホシノ先輩という子だろう。

 資料の写真とも合致する。

 

「ホシノ先輩を連れてきたよ! 

 先輩! 寝ぼけてないで、起きて!」

 

「むにゃ......まだ起きる時間じゃないよー」

 

 銃声が鳴っているのに、ずいぶんと悠長なことを言っている。

 周りとは真逆の反応だが、心当たりがある。

 

 こういう者は”緊張感が無い”か”純粋な強者”の二択に分けられる。

 

「ホシノ先輩! ヘルメット団が再び襲撃を! 

 それと、こちらの方はシャーレの先生です」

 

 アヤネが簡潔に現在の状況を共有する。

 

「ありゃ~そりゃ大変だね......

 

 ......あ、先生? よろしくー、むにゃ」

 

 一瞬だけだったが先生という単語を聞いてホシノの目が鋭くなった。

 

 ......なんだ、この威圧感は

 キヴォトスに来て初めての感覚。

 

 チリッ。

 

 義手の付け根が軽く痛む。

 ホシノは本当に子供か? 

 だがあの目を見て本能で察する。

 

 

 この子は”純粋な強者”だ。

 

 

「先輩、しっかりして! 出動だよ! 

 装備もって、学校を守らないと!」

 

 まるでお世話しているみたいに、ホシノにショットガンを渡しセリカは先に出て行ったときには既に、ホシノからあの目と威圧感は無くなっていた。

 

 ショットガンは〈ベレッタ1301タクティカル〉

 ホシノは最前線で戦うスタイルのようだ。

 

「ふぁあー......むにゃ。

 おちおち昼寝もできないじゃないかーヘルメット団めー」

 

 いまだに眠い目をこすっているホシノを横目にシロコが既に準備を終えていた。

 

「すぐに出るよ。

 先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」

 

 チャンバー確認をするシロコ。

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

 むんっ、とマシンガンを担ぐノノミ。

 ......は? なんで担げているんだ? この子の膂力はどうなってるんだ......

 そのマシンガン〈M134〉はヘリや車に据え付けて使うものなのに......

 

「私がオペレーターを担当します。

 先生はこちらでサポートを......」

 

「それじゃアタシも前に行ってくる」

 

「え!? 先生!!」

 

 アヤネがサポートならアタシが前線に行っても大丈夫だろう。

 皆の武器を見るに部隊としての構成は既に出来ているし、案内してもらってるときに一通り地形は把握した。

 だがヘルメット団への違和感が拭えない......

 違和感を残したまま戦うのは危険だが、それでもいつも通り前線で指揮とカバーをするだけだ。

 そう思い、足早に教室から出ていく。

 

 校舎から出て、一番手前の遮蔽に隠れる

 

「え!? なんで先生が前線にいるの!? 

 先生って一発の銃弾が命取りなんでしょ!? 危ないってば!!」

 

 セリカが気付き弾幕の間を縫って近寄ってくる。

 

「君達の指揮をするためだよ。

 大丈夫、戦う術は持ってる」

 

 腰からリボルバーを抜いて見せる。

 

「噂では聞いたことあるけど、先生ってほんとに戦うの!!? 

 嘘だとばかり思ってた......」

 

「生徒に前線任せて後方で指揮するの性に合わないんだ」

 

 近くで指示している方が分かることも多いしね、と付け加えると本当に戦えると知って少し安心したのか、セリカはアタシの肩を小突いて言う。

 

「だからって無茶しないでよ? 

 一発の銃弾が命取りであることに変わりはないんだから! 

ま、まぁ? いざとなったら私達が全力で守るけど? 

 

 フンッと頬を赤らめて小さな声で言うが、銃声で搔き消されて聞き取れなかった。

 ツンデレだと思ったが、ちゃんと優しい子じゃないか。

 キヴォトスは人を思いやれる子達が多いと、セリカの頭を撫でながら思う。

 

「ありがとう、セリカは優しいね。

 でも本当に大丈夫だよ」

 

 シャーレに来て数日経って分かったことがある。

 

 この子たちから銃を取り上げることはできない、

 銃を握らない平和な世界にはならないと。

 理解したくないし割り切りたくもないが、もうどうしようもない。

 それなら、生徒が傷つかないようにすればいい。

 だからアタシが前線にでる。

 

 スイングアウトし弾を確かめる。

 うん、問題ない。

 

「みんな準備はいいね? 

 戦闘開始だ!」

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