Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
空き教室で一夜を過ごし、学校周辺の把握を兼ねて散歩していたら見知った顔と会った。
「げっ」
会って最初の一言がそれって...
しかも露骨に嫌な顔されるオマケ付き。
露骨すぎて逆に清々しい。
「おはよう、セリカ。
昨日はごめん。セリカの気持ちをちゃんと聞くべきだった」
「なにがおはよう、よ。
馴れ馴れしくしないでくれる?
私、貴女のことまだ認めてないから!
まったく、朝から散歩なんていいご身分だこと」
めげずに話しかける。
「セリカは今から学校?」
フンッと鼻を鳴らして歩いて行ってしまうセリカを追いかける。
「な、なによ、なんか文句でもあるの?
私が何をしようと関係ないでしょ!」
「まぁ、それはそうなんだけどさ。
できれば学校まで案内してほしいなぁと」
嘘である。学校周辺の地理は既に把握済みでセリカと話す口実になればと言ったが。
「なんで私がわざわざ案内しなきゃいけないのよ。
それに今日は自由登校日だから行く必要はないの」
自由登校日なんてあるのか。
最近の学校は面白い。
「学校じゃないならどこに行くの?」
「そんなの教えるわけないじゃない!
じゃあね、私急いでるから。バイバイ」
早々に会話を切られてしまった。
これ以上粘っても無駄だろう。だが“情報”だけは頂いておこう。
──────
「──ってことがあってさ。
アタシだいぶ嫌われてるみたいだ」
セリカと別れ学校に向かい、対策委員会の面々に今朝のことを話す
「まぁツンデレのセリカちゃんだから、すぐ仲良くなれるよ」
「セリカは単純」
「シロコ先輩、それセリカちゃんの前で絶対言わないでくださいね...」
「ん、気をつける」
「とはいえ、セリカちゃん放課後になるとすぐ帰ってますけど、どこに行ってるんでしょう?」
「モモトークの返信も遅い」
「確かにそうですね」
「それならアタシが...」
「なら放課後セリカちゃんをつけてみませんか?」
「賛成」「さんせーい」「いいんでしょうか...」
「あれ先生、なにか言った?」
「いや、なんでもない。
アタシも賛成だ」
「先生がそんなことしていいの〜?」
「アタシだけなら別にいいけど、
皆気になってるみたいだし。
なによりセリカが急いでる理由が引っかかるんだよね。
大丈夫、責任はとるよ」
「おはよう...ん?」
ガラガラガラと教室のドアを開けて入ってきたセリカに、気まずい一同は。
「あはは...」「うへへぇ...」「ん...」「あー...」「......」
「なに...気持ち悪いんだけど...」
──────
放課後までは空き教室で、事務作業をして時間を潰していた。
するとスミ達から写真付きのメッセージが来ていた。
『先生、こっちは上手くやれてるから心配すんなよ。
というかちゃんと学校に着けたよな?どこかでぶっ倒れてないよな?
まぁワカモの姐さんが一緒なら大丈夫か。
ps.最近ウチの料理好きの腕が上がっててな。帰ってきたら、飯楽しみにしとけ。
だからちゃんと飯食えよ。』
写真の中身は、料理やら整理整頓され観葉植物が置かれ始めた部室やらで、どうやら熱心に働いてくれているようだった。
思わず顔が緩む。
帰ったらちゃんと労ってあげようと、完全栄養食をかじりながら、短く返信を打つ。
放課後、皆が言った通りセリカはすぐに帰っていった。
「それじゃ〜みんな〜。
尾行作戦開始〜」
「「「「おー」」」」
尾行して20分、セリカが入った建物には“柴関ラーメン”という字が。
急いでた理由がラーメン屋...
なんだか拍子抜けだが。
「ラーメン屋?」
「そうです!
ここのラーメンすごく美味しいんですよ☆」
「セリカはラーメン屋で何してるんだろ」
「入ってみれば分かるよ〜」
「確かに。じゃあ入ろうか」
カラカラカラと小気味良い音を立てるドアをくぐり店に入る。
そこには
「いらっしゃいませ〜!柴関ラーメンで...ってなんでいんのよ⁉︎」
エプロンに三角巾をつけたセリカの姿があった。
「似合ってるよ〜セリカちゃ〜ん」
「ん、似合ってる」
「可愛いねセリカ」
「五名でお願いしま〜す☆」
「あはは...」
「お、アビドスの生徒さん達でセリカちゃんの友達かい?サービスしないとな!
おや、そちらの骨折した人は?」
奥から芝犬の獣人が出てきた。先の発言からおそらく、柴関ラーメンの店主だろう。
「アタシはこの子らの顧問の風見透子って言います。セリカがお世話になっています。
骨折はお気になさらず」
「あんた先生だったのか!いやなに、こちらこそセリカちゃんには世話かかりっぱなしだよ!
ほらセリカちゃん、皆を案内してやんな!」
「ううぅ...それではご案内します...こちらへ...」
店主に言われ仕方なしに、とてつもなくぎこちない笑顔を作り席へ案内し始める。
「はい!注文は⁉︎」
「セリカちゃん、ご注文はお決まりですか、でしょ〜」
「ご注文は!お決まりですか!」
「チャーシュー麺でお願いします!」「ん、私は塩」「えっと...味噌で」「私は炙りチャーシュー付き特製味噌ラーメン!」「アタシも炙りチャーシュー付き特製ラーメンで」
「お、先生見る目あるねぇ」
「特製って言葉に弱くてね。頼まないと気が済まないんだ」
なんだかんだ皆と喋ってるうちに、セリカがラーメンを運んできてくれた。
「お待たせしました!」
「おお〜!きたきた!」
「「「「「いただきます!」」」」」
皆がまだ食べてる最中、一人早く食べ終わったアタシは席を立つついでに皆にバレないようにお金を支払った。
──────
「まったく、なんで全員で来るんだか...」
おかげで体力だけでなく精神も疲れてしまった。
「こっちは頑張ってお金稼いでるっていうのに、皆でからかいにきて!」
お金を稼ぐこと自体、自分で決めてやっていることだから別に構わないけど...
「人が働いてるっていうのに、先生先生ってチヤホヤされちゃって、ホント迷惑、なにアレ」
脳裏に浮かぶ透子の姿。
急に外からやってきた大人。
骨折してるくせに前線出てきて、しかもなんか強いし...。
柴関ではスマートに支払いしてたし...。
ホント調子狂う...。
「ホシノ先輩のことだから、昨日のことがあって連れてきたに違いないわ!
.........ふざけないで。
私が簡単に折れると思ったら大間違いなんだから」
怒りによるものか、自然と足早になる。
ブツブツ呟くセリカを暗闇から見ているものが二人。
「...............アイツだな」
「はい、アビドス対策委員会のメンバーです」
「準備はいいな?次のブロックで捕獲するぞ」
そんなこと露知らず歩みを進めるセリカ。
(そういえばこの辺りも人通りが少なくなったなぁ...
治安も悪くなってってるし)
「このままじゃダメだ。
私達が頑張って学校も立て直さないと...ん?」
カランッ...コロコロコロ...
暗闇から自分の足元に転がってくる筒状のなにか。
「ッ!フラッシュバン...ッ」
気付いた時にはもう手遅れだった。
目と耳をやられ平衡感覚すらも分からなくなった瞬間、後頭部を殴られ意識を手放した。
やけに乾いた銃声だけを耳に残して。
──────
ズドンッ
「グァッ!」
「なっ!だ、誰だ⁉︎」
仲間の一人がヘルメット越しに頭部を撃ち抜かれた。
どこから撃たれたか暗くて分からない。
冷や汗が噴き出し、考えがまとまらない。
どうすればいい?どうにかしなければ。
とにかく車の影に...
ズドンッ
「うわぁぁあ!」
頭の真横を掠め、車に銃痕ができたことに腰を抜かし座り込む。
焦りと恐怖から呼吸が浅くなる。
このままじゃまずい。
迷う暇もなくセリカの襟を無理やり引き寄せ盾にした。
「で、出て来い!出てこないとコイツを撃つぞォ!」
数秒の静寂。
「...撃てないんだろ⁉︎なぁ!さっさと出て来いよ!
早く出てこないとコイツを...」
カチリ。
「...ぇ?い、いやウソ嘘冗談だって!だからやめ」
ズドンッ
乾いた金属音が三つ。夜の虚空に響いた。