Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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書き溜めておいたものが尽きたので遅れてしまいました


手が届いたなら

AM6:30

昨晩のことで頭が冴えて寝付けずタブレットで事務作業をしているが、あくびが漏れる。

徹夜しているとこういう絶妙な時間に限って眠気のピークが襲ってくるが、インスタントコーヒーで追い返しているとセリカが目を覚ました。

 

「んんぅ...朝...?」

 

「ん、起きた?

おはよう、セリカ」

 

「おはよ、先生.........

ってなんで先生が!ッ痛ったぁ...」

 

「いてて、良い一撃だね」

 

ゴンッ、とセリカの顔を覗き込むような位置にいたため、セリカの頭突きを額にもろにくらってしまった。

セリカは額をさすりながらまた寝転ぶ。

アタシの太ももを枕にして。

 

「ったく、なんで先生がいんのよ...

しかも教室で膝枕されてるし、そもそもなんで教室で寝てたのよ...

ハァ......寝起きからなんか疲れた...」

 

「もう一回寝たら?皆まだ来ないし」

 

提案するも、セリカは起きて横に座り、神妙な面持ちで尋ねる。

 

「そうはいかないわ、先生。

私昨日、誰かに襲われたはずなのになんで教室で寝てるの?

なにか知ってるんじゃないの?」

 

誤魔化すようにタブレットに視線を移す。

 

「バイトで疲れて変な夢でも見たんじゃないの?で、寝ぼけたまま学校に...」

 

「はぐらかさないで!本当は知ってるんでしょ⁉︎」

 

セリカが本気の怒りを露わにし、アタシの左腕を掴む。

少々おふざけが過ぎたのは自覚しているが、正直話して気持ちの良いものでもない。

かと言ってこれ以上誤魔化すとセリカに本気で嫌われてしまう。

というか本当の事を言うまで離してくれないだろう。

 

「...分かった、話すよ。でも一つだけ約束して。

絶ッッッ対に怒らないって」

 

「ため長っ。

......もう分かったわよ。

で、知ってること早く話して」

 

セリカの顔色を伺いながら、事の経緯を話した。

 

実は朝の時点でセリカにGPSを仕込んでいたこと。

理由は、セリカが行く場所を隠すため、気になったから。

が、委員会の皆と話して放課後、セリカを尾行することになったため、後に無効化しようと考えていたが、不穏な気配を察知しGPSを継続。

夜になりセリカが家に着くまでの間になにも起こらなければそれでよかったが、セリカが襲撃されたため、やむを得ず介入。

犯人は全員気絶させたがセリカも気絶していたため、家が分からず学校に連れてきた。

そして目覚めるまで膝枕をしていた。

 

「...という訳なんだ」

 

セリカのことだ。どうせストーカーだとかなんとか言って怒るつもりなんだろう。

セリカの怒りはもう慣れっこだ。むしろ可愛いまであると思っていたら。

 

「...先生ってストーカーだったのね」

 

「ぐぅっ...冷静に言わないで...

自覚してるんだから...」

 

想像の斜め上の反応で心に大ダメージを負ってしまった。

生徒を思うあまりGPSをつけるなんてどうかしてると最初は思っていたが、結果オーライと思っていた。

だが本人からすれば結果がどうであれストーカーされて気持ちの良いものではなかっただろう。

 

「本当にごめん。いくらなんでもGPSはやり過ぎた」

 

「良いってば。私の為を思っての行動だったんでしょ?

しかも助けてくれたし、悪気があったとかじゃないなら別に良いわよ...。

私は私で朝言い過ぎちゃったし、先生が他の大人と違うって分かったから。

でも一言言わせて。

 

次同じようなことしたら本気で許さない

 

「.........うん、もうしない。

セリカに嫌われたくないからね」

 

ふぁあ、とあくびをこぼす。どうやらカフェインが足りていないようで、また追い返すためにコーヒーを注ぎに行こうと立ったら思わずよろけ座ってしまう。

 

「もしかして寝てないの?

私のせいで...?」

 

寝てないのがバレないようにと思っていたが、よろけてしまったのがダメだったか。

軽く微笑み返しその場を切り抜けようとセリカを撫でる。

 

「違うよ、少し考え事したら冴えちゃってね」

 

本当のことでもあるが建前でもある。

もしまた襲われたらと考えると寝てられなかったが、心配させないと誤魔化したのが仇となったようで、立とうとするとまた阻まれる。

 

「またはぐらかすの?

......皆が来るまで時間あるから寝てよ」

 

ちゃんと起こすから、と寂しそうで哀しそうに言うセリカを見て、この良心を無碍にできるわけもなく大人しく言うことを聞いた。

 

「はぁ...座ったまんまなんて寝れないでしょ。

ほら...お返しに膝枕してあげる...」

 

今のセリカを揶揄うことも面白そうではあったが、タイミングよく睡魔が襲ってきたため、膝枕を受け入れて目を閉じる。

 

「...じゃあ...お言葉に甘えて...

皆が来たら...起こして...ね...」

 

人に自分を預けて寝ることなんていつ振りだろうと思い出そうとするも、意識は泥船のように沈んでいった。

 

──────────

 

ふと目を開け身体を起こす。

セリカがいない。教室じゃない。

ただただ白い空間に戸惑っていると、背後から声を掛けられる。その声はもう聴くことすら叶わないはずなのに。

 

 

 

「先輩」

 

 

 

「......香奈...どうして...それにここは...」

 

「珍し。先輩が慌ててるなんて。

安心して、ここは夢の中だから」

 

香奈は笑って説明する。

夢...目の前にいる香奈は幻...

でもそんなこと関係ない。

もう二度と会えない人に会えることが何よりも嬉しくて、悲しくて仕方がなかった。

アタシは香奈に近寄ろうと歩みを進めるが、距離が縮まらない。

 

「こっちに来ちゃダメだよ。

言ったでしょ、ここは夢の中。

本来死んだ私と先輩が会えること自体奇跡なんだから」

 

香奈が言うと同時に、アタシと香奈との間に一本の線が引かれる。

 

どうして。

 

目の前にいるのに触れることすら出来ないなんて、まるであの日と同じではないか。

悔しさのあまり嗚咽が漏れる。

 

「まったく、いない人間に未練たらたらじゃん」

 

「しょうがないだろ!あんたを殺したのはアタシなんだから!」

 

「殺したって... 先輩だって分かってるでしょ?あの時は誰かが殿を務めなきゃいけなかった。

だから部隊の中で一番足手纏いの私がしただけ」

 

右腕を掴み義手を見せる。

それを見た香奈は表情を歪ませる。

怪我さえしていなければ、あんたを──

 

「バカ言うな!あの時足手纏いだったのはアタシだ!片腕を無くしたアタシだったんだ!」

 

「...私は良いの。そうなる運命だったんだから」

 

「運命...?何言ってるんだ...そんなことあるわけ...」

 

ふとどこか遠くから声が聞こえる。

その声は次第に大きく、鮮明になっていく。

 

「──ほら、呼ばれてるよ。

“先生”が守ろうとしてる生徒に」

 

どんどん視界がボヤけていく。

ダメだ、まだ話したいことが沢山あるのに。

手を伸ばし掴もうとして、そしてなにも見えなくなった。

 

──────────

 

「先生、起きて!」

 

セリカの声で目を開く。

何故かセリカの手を掴んでいた。

なんで掴んでるかは分からないが、そっと手を離し身体を起こす。

 

「手掴んでごめんね」

 

「ううん。大丈夫」

 

端末で時間を確認する。

AM7:47

短時間だったが、身体が軽い。

随分深く眠ったようだ。

 

「おはよ、先生。

セリカちゃんの膝枕なんて激レアだね〜

ちゃんと堪能した?」

 

「最高の寝心地だよ。

今度皆もしてもらうと良いよ」

 

「な、なに言ってんの⁉︎

誰彼構わずする訳ないじゃない‼︎

先生のために膝枕してあげただけ!

もうやらない!」

 

「わあ☆なんだか恋人みたいです!」

 

「ん、セリカは渡さない」

 

「シロコ先輩⁉︎なに言ってんの⁉︎」

 

「寝起きなのに騒いじゃってすみません...」

 

「大丈夫だよ。皆のおかげで良い朝を迎えられた」

 

立ち上がり伸びをする。

なんだか嬉しいような寂しいような夢を見た気がするけど思い出せない。

セリカの手を掴んだ感触とは別に手のひらになにか掴み損ねた感覚が残ってる。

まぁただの夢だ。大して重要なものじゃないと思い、カーテンを開ける。

すると端末にメッセージが届く。

ワカモからだった。

 

『あなた様がお休みの間、周辺に動きはありませんでした。

通知で起こしてしまうと思い、報告しませんでした。

事後で申し訳ありません』

 

『偵察してくれて本当にありがとう。

事後報告なんて気にしなくて大丈夫だよ。

ワカモもしっかり休んでね。

今度お返しになにかするよ』

 

返信をし終わった直後、ホシノから疑問を投げかけられた。

 

「ところで先生、セリカちゃんと急に距離近くなったけどなにかあったの?」

 

「...どうして?」

 

「昨日までの態度と全然違うから、なにかあったのかなぁって」

 

セリカに視線を送ると、セリカは頷いた。

短く息を吐き、当時の状況を伝える。

 

 

「......実は昨日の夜、セリカが奇襲された」

 

 

「「「「!」」」」

 

「敵はヘルメット団三名で、セリカが夜一人になるのを狙っていたあたり、計画されたものだったんだろうね」

 

車に一人、奇襲に二人だったが、車の団員は銃を使うまでもなく気絶させることができたため、こちらも奇襲できた。もっとも最後の一人は、わざと射撃を外したのに気絶したが。

 

「セリカちゃん、怪我はありませんでしたか?」

 

「軽くたんこぶが出来たくらいだから大丈夫」

 

ノノミとアヤネが心配そうにセリカに駆け寄り、セリカは後頭部をさすりながら笑って答えた。それをホッとした顔で見ていたホシノだったが、すぐに気付くべき疑問を口に出す。

 

「待って。なんで先生が知ってるの?

柴関の後、学校に一緒に帰ったはずだよね?」

 

「ん、確かに。なんで知ってるの?

もしかしてセリカ助けたの先生?」

 

「あー...そうなんだけど...

ちょっと言いずらいんだよね...」

 

事実を言うべきか否かを迷いに迷っていると、代わりにセリカがため息混じりに答えた。

 

「はぁ...先生は私にGPSくっつけて、襲われた時に駆けつけてくれたってワケ」

 

まずい。色々端折って説明したせいでまずい状況になる。

 

「GPSですか⁉︎なんでそんなものを...

も、もしかして私達全員にも...⁉︎」

 

セリカを除いた全員から疑いと信じられないという目で見られる。この状況はまずい。早く誤解を解かなければ。

 

「付けてないッ!まったく付けてないから!

やめて!そんな目で見ないでッ!」

 

「ん、付けてないならいい」

 

「これにはちゃんと理由があるんだよ...

一つ目は、朝に会った時、純粋にセリカがどこに行くか気になったから。でもついていったら怒られて...

だから付けたんだけど」

 

「どうしてそういう考えになるんですか...」

 

「待って!まだ理由はあるんだって!

はぁ......二つ目は、ヘルメット団の動きを予想して付けておいたんだ。

この中で唯一単独行動をしていたセリカが危ないと思って。

こんな状況、狙ってくれって言ってるようなものだから」

 

 

 

「つまり先生は復讐に来ると踏んでセリカちゃんを囮にしたってこと?」

 

 

 

ホシノの目が鋭くなり誰でもわかる怒りを露わにした。

出会った時と同じ、いやそれ以上に鋭い瞳。

 

「ホシノ先輩...」

 

「......端的に言えばそうなる。

 

皆に言わずにこんなことをしてすまなかった。」

 

生徒のプライバシー侵害に、囮としてヘルメット団殲滅。仲間として許しがたいものだろう。

顧問として責任を取ると言ったのに、対策委員の信頼を裏切るような形になってしまった。

ホシノは軽く息を吐き、許してくれたのかいつものホシノに戻った。

 

「.........セリカちゃんを守ってくれたし、それで不問にするよ」

 

ホシノの言葉に同意するように皆頷いてくれた。

 

「...ありがとう」

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