Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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会議の時間

 アヤネがホワイトボードの前で手を叩き、気まずい空気を変えてくれた。

 

「はい! 話も終わったことですし、対策委員会の定例会議を始めます! 

 先生も参加していただけますか?」

 

「もちろん。顧問だからね」

 

「ということで先生が参加してくれるので、いつもより真面目に会議ができると思いますが......」

 

 三日目にして本格的に対策委員会の会議が始まり、アヤネがホワイトボードに議題を書いていく。全員席に着き書き終わるのを待った。

 議題は【借金の返済】について。

 

「本日の議題内容は私達対策委員会で最も重要な【学校の負債をどう返済するか】です! 

 意見のある方は挙手を!」

 

「はい! はいはい!」

 

 アヤネが言い終わると同時にセリカが手を挙げ立ち上がる。

 

「はい、一年の黒見さん。どうぞ」

 

「......ねぇ、苗字で呼ぶのやめない? ぎこちないんだけど」

 

「でも......せっかくの会議だし......」

 

「良いじゃん、委員会らしくて。

 アタシは好きだよ、会議してるって感じで」

 

「私も良いと思います!」

 

「うんうん、おじさんも良いと思うよ〜。

 今日は珍しく先生もいるし」

 

「珍しいというか初めて」

 

「まぁ先輩達がそう言うなら......とにかく!」

 

 セリカはいまだに苗字呼びが少々気に食わないようだが、先輩達が賛成するため納得したらしい。

 セリカはホワイトボードの前に移動し、意見を述べた。

 

「対策委員会の会計担当として、我が校の財政は火の車寸前! 破綻寸前としか言えないわ! このままじゃ廃校よ! 皆分かってるわよね?」

 

 全員首を縦に振る。

 

「返済額は利息で788万! なんとか稼いでるけど、正直全然足らない! これまで通り指名手配を捕まえたりボランティアじゃ限界があるわ! なんかこう一発大きく当てないと!」

 

 利息が788万......借金の額を聞いた時も目眩がしたが、利息の金額でも目眩がする。

 何度も思うが、よく狂わずに返済してきたなと感心する。

 だがセリカの言う一発当てるとは......

 

「その一発当てるって、具体的にはどうすんの?」

 

「フフ、よく聞いてくれたわ、先生! 

 これよ! このチラシ!」

 

 セリカが自慢げに出したチラシを見ると“ゲルマニウム麦飯鉱石ブレスレットで一攫千金”と書いてあった。

 どこからどう見ても詐欺だと分かるレベルのもので、これを信じきっているセリカがとても愛らしく思え笑ってしまった。

 

「な、なによ?」

 

「いやなに、セリカは可愛いなぁと思ってね」

 

「はぁ!? 急になに!?」

 

「おじさん、先生の言うことも分かるよ〜。

 詐欺に騙されてるセリカちゃん可愛いよね〜」

 

「さ、詐欺!? ウソ、だって......」

 

「恐らくですが、ゲルマニウムが運気アップと関係無いと思いますから......」

 

 そんな......とガックリと肩を落とし項垂れ手首を見ているセリカ。

 バッチリ騙されて買っていた。

 

「まったく、セリカちゃんは世間知らずだね〜。

 気を付けないといつか悪い大人に騙されて人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよ〜?」

 

「うぅ......お昼まで抜いて貯めたお金で買ったのに...」

 

「大丈夫ですよ、セリカちゃん。私がご馳走するので一緒に食べましょう?」

 

「ノノミせんぱぁい......」

 

 セリカは少し天然なところがあるが、こういうのには騙されない子のはず。

 しかしその思考を狂わせ、自分を犠牲にしてでも一発当てたいと考えてしまうあたり対策委員会が抱える借金は相当大きいものなのだ。

 

「では他に意見のある方は......」

 

「はいはい!」

 

「はい、三年の小鳥遊委員長。

 なんとなく嫌な予感がしますが......」

 

「うむうむ、えっへん!」

 

 意気揚々と挙手をしたホシノだが、なぜだろう。一瞬だがヒゲが付いてるように見えた。

 ホシノはふざけているように見えて根は真面目だから、今回もなにか良い案があるのだろう。

 

「我が校の1番の問題は、全校生徒が五人だけってこと。

 生徒の数、つまりは学校の力。トリニティやゲヘナみたいに生徒数を増やせれば、毎月のお金でも相当な金額になるはずだよ」

 

 つまり学費で返済することを考えているわけか。ホシノの考えは悪くないけど、これも大きな問題が生まれる。

 

「なるほどね......

 それで生徒はどこから集める気なの?」

 

「それはね、他校のスクールバスを拉致ればオッケーだよ!」

 

「「.........」」

 

 アヤネとアタシは同時に思わず眉間を押さえる。

 ホシノはこんな論外を言う子だっただろうか。

 それともアタシの勘違いだったのだろうか。

 少なくとも、まともな回答を待っていたアタシがバカだった。

 

「拉致って転入学書にハンコ押すまで帰らせない! これで生徒数増えること間違いな〜し!」

 

「ん、良い考え。

 ターゲットはどうする?」

 

「ターゲット? そうだなぁ......

 トリニティ? いやゲヘナにしよっか!」

 

 いくら責任を取るつもりでいても、犯罪を許容できないし、ましてや生徒に罪を犯してほしくはない。

 内容はともかく生徒達の楽しい会話に水を差す。

 

「流石にアタシは犯罪行為にGOサインは出せないなぁ。

 しかもゲヘナの風紀委員長すごい強いって聞くけど、手出して大丈夫? 

 ヘルメット団の比じゃないくらいの部隊動員してくるんじゃない?」

 

 

「やっぱ無かったことに......」

 

 

 ほぼ無計画だったらしい。

 

「皆さん......もう少し真面目に会議をしてください......」

 

 スッと綺麗に手を上げるシロコ。

 

「良い考えがある」

 

「......はい、二年の砂狼さん......どうぞ」

 

「ん、銀行を襲う」

 

「はいぃ!?」

 

 想像の斜め上の回答だったため、アヤネが素っ頓狂な声を上げる。

 流石にアタシもびっくりしたが、これ以上犯罪の話やらなんやら出てこられても困るためシロコに軽くチョップを入れ叱る。

 

「コラ、さっきも言ったけどアタシは犯罪は許さないよ。

 もう少し現実的な案を出しな」

 

「ん......せっかく計画立てたのに......」

 

 しょぼくれながらシロコは地図とカラフルなニット帽を机の上に出す。

 アヤネ以外のメンバーがシロコの計画ではしゃいでいる間に地図を眺める。

 地図にはターゲットの金庫の位置に警備員の動線、現金輸送車のルートまで書かれていたが、よく一人でここまで書いたものだと少し感心する。

 もちろん行動になど移させはしないが。

 

「さっきから真剣に書いてたのはこれだったのか。

 

 ......うん、これじゃ捕まるね。

 カメラの位置と死角の把握とか色々詰めが甘い。

 でもよく書けてる。

 アタシとしては、これを他のところで活かせると尚良し」

 

 まさか計画の詰めが甘いことを言われるとは思っていなかったのか、全員がキョトンとした顔で見てくる。

 確かに銀行襲撃なんて許しはしないが、褒めるとこは褒めるのが先生だ。

 元気づけるためシロコの頭を撫でる。

 

「ん、分かった......」

 

「まさか先生がダメ出しするとは思っていませんでしたが......

 今度こそ、まともな案をお願いします......」

 

「はい! 次は私が!」

 

「はい、二年の十六夜さん。

 詐欺や犯罪以外でお願いしますね......」

 

 アヤネの精神がゴッソリ削れているのが声と表情でよく分かる。

 

「はい! とってもクリーンかつ確実な方法があります! それは......」

 

「「「「「それは?」」」」」

 

「アイドルです! スクールアイドル!」

 

「却下」

 

 決めポーズしたノノミの横で意外にも即答するホシノ。

 

「これも却下ですかー?」

 

「うへー、こんな小さい身体が好きとか無いわー、人として無い無い」

 

 肩を竦ませ首を横に振りながら答えるホシノだが、却下されると思っていなかったノノミと案外乗り気なセリカが不満そうな表情をしている。

 一応全員の案が出たが、この調子だとまともな案は出ないだろうし、何よりアヤネの堪忍袋が大変なことになりそうだ。

 

「このままじゃ埒が開かないし一旦お昼ご飯にしようか」

 

 時計は12時を過ぎた頃。

 お腹が空いてはなんとやら。

 グゥゥゥとシロコのお腹の虫が鳴いた。

 

「ん、確かにお腹すいた」

 

「じゃあ柴関ラーメンに行きましょう☆」

 

「「「「おー!」」」」

 

 ホシノ、ノノミ、シロコ、セリカがノリノリで教室を出ていき、それについて行こうとするとアヤネが声をかけてくる。

 

「先生、助け舟を出してくれてありがとうございます」

 

「あれくらいアヤネの心労に比べたら大したことないし、むしろこれくらいしか出来なくて申し訳ない」

 

「いえ! 先生がいてくれたおかげで、今回は幾分かマシだったので......」

 

 逆に今までどんな酷い会議をしてきたのか見てみたくなるが、これ以上はアヤネが鬼になってしまうだろう。

 こういう穏やかな子に限って怒った時が一番恐ろしいのは身をもって学んでいる。

 

「アヤネちゃーん? 先生ー? 早く行こー?」

 

 ドアからセリカがひょっこり顔を出して誘ってきて、思わずアヤネと顔を見合わせて笑ってしまった。

 

「???」

 

「ふふ、行きましょうか!」

 

「そうだね」

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