Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
柴関に着くやいなやセリカは少しでも返済のためと言って店員として働き始め、アタシ達は席に着き各々の注文した。
注文を待っている時に、チリンとドアのベルが鳴り、店に一人の紫髪の少女が入ってくる。
少女から微かにだが嗅いだことのある匂いがする。この匂いはなんだったか......
その少女はショットガンを抱えなにかに怯えるようにおどおどしながら尋ねる。
「あ、あのぅ......」
「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「ここで一番安いメニューって......お、おいくらですか?」
金欠なのだろうか? それにしては服装や装備を見る限り、そういうふうには感じないが。
「一番? 一番安いメニューだと......580円の柴関ラーメンですね! 看板メニューでとても美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
おどおどはしていたが、店に入ってきた時より表情が明るくなり感謝を述べて紫髪の少女は店を出た、と思ったら
「ん?」
今度は三人連れて店に入ってきた。
「くふふ、やっと見つかった〜!
600円以下のメニュー!」
自身の身長よりは少し小さいが、それでも大きめのバッグを持った白髪の少女が嬉しそうに喋る。
「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるものよ。全部想定内だわ」
赤髪にワインレッド色のコートを羽織った少女が、バッグを持った少女に答える。
「そ、そうなのですね......! 流石はアル様......!」
「はぁ......」
先の紫髪の少女が赤髪の少女を褒め称えている横で、パーカーのような服を着た少女がため息を吐く。
「四名様ですか? お席に案内しますね」
「んーん、どうせ一杯しか頼まないから大丈夫だよ」
「一杯だけ......? どうせならごゆっくりどうぞ。
今日はお客さん少ないですし、空いてる席へどうぞ」
「そお? じゃあお言葉に甘えて。
ありがと、親切な店員さん!」
そう言って四人組はアタシから見て左斜め前へ座ると同時に、アタシ達のラーメンが届き食べ始める。
その時、大きいバッグを持った少女が、バッグを置いたとき嗅いだことのある匂いがラーメンの匂いを貫通し漂ってきた。
火薬だ。
この店を簡単に吹っ飛ばせるほどの。
最初に嗅いだ紫髪の少女の匂いも火薬の匂いだ。
だが彼女達から今のところ敵意も感じないし、問題無しか......?
「あ、わがままついでに箸は四膳でよろしく!
優しいバイトちゃん」
「え? もしかして一杯に四膳ですか?」
思ったよりも金欠なのかもしれない。
「ご、ご、ごめんなさい貧乏でごめんなさいお金がなくてすみません......!」
「そんなに謝らなくても......」
「いいえ! お金が無いのは首がないのも同じ! 生きる資格なんてないんです! 虫ケラにも劣る存在なのです。虫ケラ以下ですみません......」
ここまでネガティブだと逆に清々しいまである。あの子になにがあったか気になってきた。
「はぁ......ちょっと声でかいよ、ハルカ......周りに迷惑......」
「お金が無いことは罪じゃないよ!
胸を張って!」
「へ?」
同じお金が無い同士で共感したセリカが紫髪の少女に鼓舞する。
「お金は天下の周りものって言うでしょ?
そもそも私達は学生だし!
それでも小銭かき集めて食べにきてくれたんでしょ? そう言うのが大事なんだよ!
もう少し待ってて! すぐ持ってくるから!」
そう言って大将のところへ飛んでいく。
詐欺に騙されるのも含めて、やっぱりセリカは良い子だ。
困っているもの同士、互いに手を取り合って生きていける生徒達で良かったと思っていると、四人の話し声が聞こえる。
「なんか妙な勘違いをされてるようだけど......?」
「まぁ、私達もいつも貧乏ってわけじゃないんだけどね。
強いて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」
「アルちゃんじゃなくて社長、でしょ。
ムツキ室長、肩書はちゃんとつけてよ」
「だってもう仕事終わった後じゃん。
社長のくせにラーメン一杯奢れないなんて」
「.........」
どうやら図星を突かれだんまりした赤髪の少女はアル、
逆に突いた白髪の子はムツキ、
ネガティブすぎる紫髪の子は少し聞き取りづらかったがハルカというようだ。
「今日の
ふと聞こえた襲撃任務という単語。
初日と言い前日と言いアビドスは襲撃を受け続けたため、その言葉がどうしても耳にこびりついて離れない。
この事をアロナとワカモに連絡を入れるため、水を取ってくると言い訳を作り席を立つ。
〈アロナ、あの四人について調べて〉
〈ワカモ、アタシのカバーができるよう近くで待機してて〉
二つのメッセージを送り、水を持って席に戻った時、ふとパーカーの少女と目が合う。
「カヨコちゃん? どうかした?」
「......ううん、なんでもない」
「ふふふ、でもこうして実際ラーメンは口にできるわけでしょう? それくらい想定内よ」
アルが余裕の態度をとっていたが、セリカが持ってきた超特大盛りラーメンを見て一変し白目を剥く。
今まで色んなラーメンを食べてきたが、こんな盛りに盛ったラーメンは見たことがない。
「はい! お待たせしました! 熱いので気をつけて!」
「ひぇっ! なにこれ! ラーメン超大盛りじゃん!?」
「ざっと十人前はあるね。
......社長、いつまで白目剥いてんの?」
「ハッ! とんでもない量が出てきたから......
というかこれオーダーミスじゃないかしら......?」
「そうですよね...? こんなの食べるお金ないですよぅ......」
四人の戸惑いを他所に、大盛りのラーメンがさも当たり前としらを切るセリカと大将。
なるほど、セリカの人の良さは大将と関わったから磨きがかかったのかもしれない。
「いやいや! これで合ってますって!
ね、大将?」
「ああ、手元が狂っちまったからよ。
気にせんで食ってくれ」
「そういう事なので、ごゆっくりー!」
「じゃ、じゃあ頂こうかしら」
「「「「いただきます!」」」」
四人は手を合わせ麺を口に運んだ途端、目を輝かせ興奮気味に喋る。
「美味しい!」「なかなかイケるじゃん!」
「辺鄙な場所なのに、こんな美味しいなんて!」
「そうでしょう! そうでしょう!」
いつの間にかノノミが四人のところにすっ飛んでラーメンの美味しさに共感していた。
おかしいな...アタシの目の前でまだラーメン食べていたはずなのに完食してるし、全然移動した気配がしなかったぞ...
まぁノノミの身体能力の謎は置いといて、どうやら四人組に柴関の良さを熱弁しているようで、四人も同じことを思ったのか会話が白熱していた。
微笑ましい光景を横目に、勘付かれないように大将のところへ向かい会計を済ます。
「大将、アタシらの支払いにあの子達の分も含めといて」
「良いのかい? あの子らはアビドスじゃないぞ?」
「関係ないよ。アタシが支払いたいだけだから」
「分かった、あの子らには内緒にしとくぜ」
「ありがと大将、ごちそうさま」
会計の後、対策委員会の皆に用事があるから先に出てると伝え店を出る。
あの四人の事を調べてくれたアロナから報告を受けるため、端末を開く。
『先生、あの四人について分かりました!
あの四人は-便利屋68-と名乗り、メンバーはゲヘナ学園の社長の陸八魔アル、室長の浅黄ムツミ、課長の鬼方カヨコ、平社員の伊草ハルカの計四人です。
元はゲヘナ学園の部活動の一つでしたが、度が過ぎたせいか現風紀委員長の空崎ヒナと対立し、学外に事務所を設立してるようです』
「便利屋......」
『はい、確かに便利屋68は「お金を貰えばなんでもする」がモットーのなんでも屋なんですが...』
「うん? なにかあるの?」
『過去に依頼者を裏切ったり、過去に欠席届の偽造販売をして公文書偽造の罪状が掛けられたにも関わらず、肝心の欠席届は一枚も売れていないという......』
「......大丈夫かな、あの子達」
『先ほどの会話からも分かるように便利屋はよく金欠状態になるそうで、ひどい時はテント生活していたりするみたいです......』
一杯のラーメンを四人で分けると聞いた時から薄々感じていたが、まさかテント生活するレベルだとは思わなかった。
ここまで来ると可哀想とかの次元を超えてくるが、今は知りたい事がまだある。
便利屋はラーメンを待っているときに襲撃任務があると、しかも誰かを雇ったせいで金欠だとも言っていた。
疑いたくはないが、襲撃と言われた以上こちらは気を抜く事ができない。
では便利屋はどこを襲う気なのか?
今いる柴関を襲う可能性は?
おそらく低い。襲うとしたらもう既に行動に移しているだろうし、
便利屋のメンバーだけで事足りるため人を雇うメリットがない。
人を雇ったと言っていた。
アビドスで人を雇うと言えばヘルメット団とカイザーの傭兵の二種類。
だが、ヘルメット団は昨日の時点でアタシらが拠点を潰しているため参戦はしずらいはず。
となるとカイザーの可能性が高くなるが、まだ断定はできない。
それならアビドスは?
アビドス高等学校以外に何も無いと、シロコと出会った時に言われたため周辺を散策したが、確かに襲うメリットを感じる場所は無かったため学校を襲う以外に選択肢は無い。
学校であれば人数は多い方が攻めやすいだろうから、人を雇う理由も頷ける。
ヘルメット団だけでなくゲヘナの便利屋まで雇うとは、よほどアビドス高校になにかあるに違いない。
なんにせよ、襲撃されるのは避けたい。
まず生徒同士で撃ち合いなんか見たくもないし。
「アロナ、便利屋の今の事務所ってどこにあるか分かる?」
『事務所ですか? 少しお待ちを......はい! 確認できました!
今から向かうのであればナビしますよ!』
「さすがアロナ、助かるよ。
それじゃあ向かおうか」
──────
アビドスの面々と別れ、事務所の手前まで来てアルはさっきまでの出来事を振り返り感想をこぼす。
「ふう、良い人達だったわね」
心の底から思った事を口に出したアルだったが、ムツキとカヨコは互いに目を合わせ、ムツキはイタズラ顔に、カヨコは呆れたような表情になった。
「「.........」」
「社長、あの子達の服装気付いた?」
面白い瞬間を見れることにワクワクしているムツキを横目に、後で困ると面倒と思いカヨコはアルにヒントを出した。が、本人は全く気付いておらず、なんで急に服装の話? と言わんばかりのキョトンとした表情で聞き返す。
「へ? 服装? なにが?」
自分のボスがあまりにも不甲斐なさすぎて天を仰ぎそうになったが、堪えてため息を吐き、答え合わせをする。
「はぁ......アビドスだよ」
数秒の沈黙。
カヨコの答えが衝撃すぎて固まったかと思えば、徐々に震えて最後は
「なななな、なんですってェ──!?」
事務所の前で盛大に白目を剥き叫んだ。
「あはは! なにその反応! ウケるー!」
「本当に気づいてなかったのか......」
「えっ、それって私達のターゲットってことですよね......? わ、私が始末してきましょうか!?」
「あはは! もう遅いよ。
どうせこの後で仕掛けるんだし、その時に暴れよ!」
ムツキとハルカが物騒な事を事務所までの廊下を歩きながら和気藹々と話している横でプルプル震えて焦っているアル。
「う、嘘でしょ......? あの子達がアビドス......だなんて......」
「なにしてんの? 早く仕事するよ」
「バイトが皆、命令を待ってる」
「本当に......? 私、今からあの子達を......?」
「はぁ.........ん? ちょっと待って」
ドアノブに手をかけたカヨコが異変に気づき、全員を静止させる。
「どうしたの? カヨコちゃん」
「鍵ってかけたよね?」
「え、ええ。確かに鍵かけたわよ?」
鍵がかかってない証拠を見せるためにカヨコはほんの少しだけドアを開ける。
「......鍵開いてる」
「「「!」」」
全員武器を抜き臨戦体制になった瞬間、奥から女の声で全員の名前を呼ばれる。
「アル、ムツキ、カヨコ、ハルカ。
便利屋68の皆、入っておいで」
書くのが楽しくなったあまり投稿するのを忘れていました。
すみません。